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2017年3月 7日 (火)

茶道資料館で筒井先生に武居さんの学位取得を報告

 茶道資料館に、副館長で今日庵文庫長でもある筒井紘一先生をお訪ねしました。
 今日は筒井先生に、武居雅子さんが無事に学位[博士(文学)]を取得されたことをご報告しました。

 筒井先生と武居さんのことは、「茶道資料館で香道具を見たあと筒井先生にお目にかかる」(2013年05月02日)に記したとおりです。
 また、「京洛逍遥(316)京都における香道関係の調査に同行」(2014年04月25日)でも報告しました。

 武居さんの学位論文は「香道と文学 -江戸中期の香道伝書による文学受容の研究-」です。この快挙を、非常に喜んでくださいました。よく頑張ったな、と。
 国文学研究資料館の総合研究大学院大学関係者はもちろんのこと、それ以上に筒井先生は感慨深げでした。教え子の慶事なのです。

 武居さんが博士論文を刊行するなら出版社を紹介するので、遠慮なく言ってほしいとのことでした。ありがたいことです。

 私が今月で国文学研究資料館を定年退職することなど、いろいろとお話ができました。貴重なお時間を取っていただき、ありがとうございました。

 その後、茶道資料館の呈茶室で一服いただきました。
 お菓子は、二條若狭屋の「早わらび」でした。そして私がいただいた茶碗は、元首相の細川護煕氏が陶芸を始めた初期の作品だとのことです。これもありがたいことでした。

 陳列室では「描かれた茶の湯」(3月29日まで)を見ました。


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 茶道資料館のホームページには、内容が次のようにまとめてあります。


 「日常茶飯事」と言われるように、茶は身近なものとして人々に親しまれてきました。
 室町時代には、寺社など人が集まる場で茶が振る舞われる一方、精神性を前面に押し出した「わび茶」が誕生し、茶室の中で亭主と客が一体となって、その空間・時間とともに茶を味わうようになります。天正15年(1587)、豊臣秀吉が貴賤や貧富を問わず参加を呼びかけた「北野大茶湯」では、800もの茶屋が設けられたと言い、茶の湯の流行をみることができます。男性主体に行われてきた茶道は、明治時代になると、身に付けるべき礼式の一つとして女性たちにも広まり、今日に至っています。
 本展では、主に江戸時代から明治時代にかけて様々な形式の茶の湯を描いた絵画を紹介します。

 今回の展示で、私は次の4点に注目して拝見しました。これは、男性中心だった茶の湯が、明治時代中期になると女性が嗜むようになったことがわかる図様だからです。


(1)女礼式之図(安達吟光(1870-1900)画、明治20年(1887)、今日庵文庫蔵)
(2)女礼式之図(安達吟光(1870-1900)画、明治20年(1887)、今日庵文庫蔵)
(3)女礼式茶之湯ノ図(歌川国貞(三代)(1848-1920)画、明治22年(1889)、今日庵文庫蔵)
(4)女礼式茶の湯(楊州周延(1838-1912)画、明治34年(1901)、今日庵文庫蔵)

 明治時代は、文化や文学が大きく回転した、非常に興味深い時代です。
 今後とも、折を見てはこうした資料を丹念に見て歩きたいと思っています。
 
 
 

2017年1月27日 (金)

『蜻蛉日記』の品詞分解に関する協力者を求めています

 現在、『蜻蛉日記』の校訂本文を、日々時間を割いて少しずつ作成しています。
 底本には、阿波国文庫本『蜻蛉日記』を選びました。


国文学研究資料館影印叢書 5
鵜飼文庫 蜻蛉日記 阿波国文庫本
国文学研究資料館 編
今西祐一郎 序
福家俊幸 解題
勉誠出版
2014年3月
ISBN︰978-4-585-29064-3
B5判・上製・570 頁

 この本について、出版社からは、次の紹介文が公開されています。


初の上中下全巻の影印
古本系諸本の親本から直接書写した最善本であると山田清市氏により紹介された阿波国文庫旧蔵本を高精細写真版で全篇影印。
少なからぬ書き入れや校訂の跡を有する本書は、現代の多くの注釈書が依拠する桂宮本を相対化するものであり、「推定本文批判」により成り立つ現在の『蜻蛉日記』研究に対し、本文批評の基盤を構築する礎となる。

 この『蜻蛉日記』の校訂本文本は、本年3月をメドに完成させる予定です。
 次に、人工知能の力を借りて品詞分解をします。しかし、まだその人口知能の精度が高くないので、9割方はそれなりに品詞分解ができても、1割は人間の判断と手作業が必要です。ここに、手間と時間を割くことになります。

 この品詞分解を手助けしてくださる方を一人、探しています。
 実作業は本年3月以降になると思われます。
 この点検・確認作業に興味をお持ちの方は、このブログのコメント欄を通してお知らせください。直接お目にかかって説明をし、お願いできるのであれば、今後の詳しい打ち合わせをしたいと思います。協力のお申し出をいただいた方が多い場合は、こちらで面談の手配を進め、適任者と出会えた時点で確定にしたいと思います。
 完成後に、些少ながら謝礼をお支払いします。そこに期待をなさる方はいらっしゃらないと思いながらも、念のために申し添えておきます。
 資料を持ち寄っての連絡や調整が必要となるため、東京か京都の周辺にお住まいの方を希望します。
 
 
 

2017年1月14日 (土)

【追記】高田馬場で「百星の会」の新年会と点字百人一首のカルタ会

 百星の会の新年会が、高田馬場の社会福祉協議会の中にある視覚障害者交流コーナーで行なわれました


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 40人ほどが集まり、今回も大盛会でした。参加者は回を重ねる毎に増えています。

 今回も全日本かるた協会の松川英夫会長がお越しになっていました。
 嵐山と京都ライトハウスでご一緒した、畑中ご夫妻も新しいカルタ台と新ルールを持って大阪から参加です。
 福島からの渡邊先生は、今回は息子さんが付き添いです。
 「科学でジャンプ」でお世話になった廣田先生からも、元気な声が飛んでいました。
 さらには、ラジオ日本の「小鳩の愛」のスタッフの方が取材に入っておられました。今日の様子やインタビューが、2月に放送されるそうです。

 この「百星の会」のイベントは、来るたびにレベルがアップしていきます。

 今回は、光孝天皇のカルタ「きみがためはるののにいでてわかなつむ〜」にちなんだ寸劇が、「百星の会」の有志によって披露されました。ミャージカル仕立ての、凝ったものです。
 この歌の解説を、福島県立盲学校で国語を教えておられる渡邊先生が、わかりやすく説明してくださいました。歌の背景にある平安時代の若菜摘みの行事や、『源氏物語』の「若菜」巻にも触れるという、熱のこもったものでした。渡邊先生の本領発揮です。興味深い話に、みんなが引き込まれます。

 その後、新年会らしく七草をみんなで触ろう、ということになりました。


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 多くの方が、香りが懐かしいとおっしゃっていました。
 年配の方は、七草の歌なども自然と口ずさんでおられます。
 この七草を、駆けずり回って用意なさった事務局長の関場さんやサポートの方々も、毎度のことながら大変だったことでしょう。

 そして意表を突く、青汁での乾杯です。七草を一緒に食べた気分に浸ります。

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 大阪のカルタ会では「まゆみさんの和歌講座」をしているとのことです。そこで、専門書に書かれている解説を、畑中さんが読みあげてくださいました。詳細な光孝天皇の歌の解釈に、うなずいたり感心したりと、これも中身の濃い時間をみんなで共有することとなりました。

 この「百星の会」では、行くたびに新しい点字かるたの台が開発されています。
 今回も、まだ東京と大阪に1セットずつしかないという、畑中さんの開発による、5列5行に札を並べる新台で、上級者の試合が行なわれました。1人が25枚なので、50枚を取る競技です。こうなると、目が見えるとか見えないということは、まったく問題ではなくなります。
 新しく考えられたルールでは、15分で札を並べ、覚えるのに5分というのが原則なのだそうです。ただし、まだ出来たばかりなので、今後ともさらなる改良がなされるようです。

 今回の新しい競技は、いきなり何の歌かわからないものが読まれます。そのためにも、100首をすべて暗誦することになります。
 今日も、緊張感の中で上級者の試合を観ました。勝負は瞬時に決まります。


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 札は、手前から持ち上げるようにして取ります。左側のケースにある相手の札も取れます。相手から取ると2ポイント。残り1枚を残して、合計ポイントで競います。この台では、相手に札を送ることはありません。
 新たなルールが、いろいろと決められています。

 ちはや台という、横に13枚が2段あるものでも試合が行なわれました。
 烈しい鍔迫り合いや、力技もあります。札が少なくなると、指の隙間が勝敗を分けることも……
 最後まで試合をすると、1試合に1時間以上かかるとのことでした。


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 ここで使われている取り札には、点字が最低7文字は貼ってあります。濁音が多いと点が増えます。そのため、無理やり押し込んでいるそうです。
 札には、表と裏に、上下から読めるように点字が貼られているのです。この点字をたよりに、試合直前まで触読をして、どの歌がどこにあるのかを覚えます。記憶力と反射神経の勝負です。


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 見物は、真ん中で見るよりもどちらかの取り手の側から見た方が、臨場感たっぷりで迫力が伝わってきておもしろいのです。

 初心者や初級者は、それぞれのレベルに合ったカルタと台を使います。
 その方の状況を配慮した道具が用意がしてあり、多くの方々が参加できるようになっています。


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 さらには、実践向けに新たな台というよりも、シートも開発されています。
 次のシートは、取り札を指で摘んで取り合う競技向けではなくて、札を飛ばすことを想定してのものです。点字百人一首は、日々進化をしているのです。


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 途中、外では雪が舞っていました。そんな中でも、かるた会場は熱気に満ちています。
 初めて参加なさった方が多かったので、この会の活動は、今後がますます楽しみです。

 次回は2月25日(土)に、今日と同じ高田馬場で行なわれます。
 興味をお持ちの方は、参加してみませんか。
 こんなすばらしい仲間との世界があることを、ひとりでも多くの方に知ってもらいたくて、今日もこうして長々と報告を記しています。

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※追記 「百星の会」や「点字百人一首」については、以下の記事も併せてご笑覧いただけると幸いです。
 
「「点字付百人一首〜百星の会」に初参加の感想など」(2016年07月17日)

「お香体験の後にカルタが飛ぶ「点字付百人一首 〜百星の会」」(2016年07月16日)

「「点字付き百人一首」とお香のワークショップのご案内」(2016年07月14日)

「「きずなづくり大賞 2015」受賞の関場理華さんと「百星の会」」(2016年02月03日)

「体験型学習会で点字付百人一首のお手伝い」(2015年12月06日)

「書道家にお願いした触読用の『百人一首』」(2015年12月01日)

「五感を使って江戸時代の百人一首カルタにチャレンジ」(2015年11月23日)

「京都ライトハウスでの点字百人一首体験会に参加」(2015年11月07日)

「「点字付百人一首〜百星の会」の紹介と活動内容」(2015年09月01日)

「京洛逍遥(375)嵯峨野で「点字付百人一首」を楽しんだ後は時雨殿へ」(2015年08月31日)

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2016年12月23日 (金)

『日本古典文学翻訳事典2〈平安外語編〉』のオンライン版を公開

 一昨年(平成26年3月)にオンライン版オープンデータとして公開した『日本古典文学翻訳事典〈1・英語改訂編〉』に続き、第2弾となる『日本古典文学翻訳事典2〈平安外語編〉』が完成したので公開しました。
 自由にダウンロードしてご覧いただき、ご意見などを頂戴できれば幸いです。

 今すぐにダウンロードなさりたい方は、以下のリンク先からお願いします。

『日本古典文学翻訳事典2〈平安外語編〉』のダウンロード

 これでうまくデータの入手が出来ない方は、科研(A)のホームページである「海外源氏情報」に接続した後、次の画面からダウンロードしてみてください。


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 なお、印刷した書籍版は、後日、公共図書館などに寄贈する予定です。
 印刷本については、3月になりますので、ご了解をお願いします。

 本事典の制作経緯や意義などについては、次の巻頭に置いた「はじめに」と巻末の「おわりに」に記しましたので、ご覧ください。

 第3弾は、懸案の『源氏物語【翻訳】事典』です。これは、来秋には出版社から刊行したいと思っています。
 いましばらくの猶予をお願いします。


「はじめに」


 —試行版としての事典であること—

 本書は、『日本古典文学翻訳事典〈1・英語改訂編〉』(平成26年3月)を受けて、平安時代の文学作品に限定して世界各国語に翻訳された書籍情報を事典としてまとめたものです。前著に続き、あくまでも暫定的なものであり、試行版として編集した中間報告であることを、まずはお断りしておきます。

 この翻訳事典は前著同様に、2006年4月23日にお亡くなりになった、国文学研究資料館名誉教授福田秀一先生から託されていたメモを最大限に活用しました。
 ただし、多言語にわたる書籍を対象とする関係で、各項目のまとめ方も含めて、まだまだ不備の多いものであることは承知しています。また、最新情報にまでは、十分に手が及んでいないことも承知しています。そのことを知りつつも、類書がないこともあり、ここで私の手元にある情報をとりあえず一まとめにしておくことにしました。これを次の世代に引き渡して補訂してもらい、さらに追加していくことで、よりよい事典に育てていく始発点にしたいと思っています。

 本書作成にあたっては、実に多くの方々が原稿作成のお手伝いをしてくださいました。基本的な情報が整理されていないのであれば、とにかくたたき台でも提示して、それに手を加えながら形を成していく方針で臨みました。項目の執筆者は、必ずしも各言語や各作品の専門家ではありません。しかし、何もない平地に道をつけることを一大方針として取り組んだものということで、至らないところはご寛恕のほどを、お願いいたします。ご批判は、そのまま改訂版に活かします。

 そのような経緯もあり、日本古典文学に関する翻訳事典としては、各項目の立項はもとより、内容もいまだ未整理の状態にあります。今回、その見出し項目と表記上の体裁及び、内容に関する記述の統一を試みました。それでも、いろいろな機会に、多くの方々に執筆していただいた原稿の集積であることから、不統一の感は免れません。各所に編者の判断で多くの手を入れました。あくまでも暫定的な処置に留まるものです。

 そのことを承知で、この時点で公開することにしたのは、これを叩き台とし、より良い情報の提供とご教示を受ける中で、さらに充実した事典に育てたいとの思いからです。まさに本冊子は、試行錯誤の中でまとめた暫定版として利用に供する事典です。

 また、盛り込まれた情報は、編者伊藤が運用する科研のホームページ「海外源氏情報」にも公開しています。
http://genjiito.org
 このホームページを通して、情報の更新を行います。折々に最新情報を確認していただき、翻訳情報を活用していただければ幸いです。

 今回も、この科研を支えているプロジェクト研究員の淺川槙子、技術補佐員の加々良恵子の頼もしい2人が奮闘して、膨大な情報を整理して組み立ててくれました。ただし、『源氏物語』については単独で1冊にするため、本書には収録していません。

 みなさまからの情報提供により、各項目の精度を高めたいと思います。
 今後とも、ご理解とご協力を、よろしくお願いいたします。

2016年12月
日本学術振興会 科学研究費補助金 基盤研究(A)
「海外における源氏物語を中心とした平安文学
及び各国語翻訳に関する総合的調査研究」
研究代表者
大学共同利用機関法人 人間文化研究機構
国立大学法人 総合研究大学院大学
国文学研究資料館 伊藤鉄也
 
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「おわりに」

 現在、翻訳史年表には約580件の書籍データが登録されています。本来ならば全てのデータを事典としてまとめることが理想です。しかし解題を作成するためには、現物を確認できる書籍でなくてはならず、全てのデータを事典に掲載することはできませんでした。日本国内の図書館・研究機関で見ることができない書籍が、数多く存在することを実感しました。なお、解題を作成することができなかった書籍データは、解題の後ろに「平安文学翻訳史年表」の抜粋として掲載しました。〈英語改訂編〉の反省をふまえて、より多くのデータを収集したものの遺漏も多々あると思います。前回に続き、この事典も日本文学研究の一助となることを願ってやみません。

 最後に解題作成を含め、本科研をあたたかく見守ってくださったみなさまに篤くお礼申し上げます。

(淺川槙子)
 
 
 以前発行した『日本古典文学翻訳事典1〈英語改訂編〉』では英語のみでした。前回と異なり、今回は多くの言語で翻訳された古典文学を収録しています。『日本古典文学翻訳事典2〈平安外語編〉』では、特定の古典文学が何度も翻訳・出版されていたり、日記文学が好まれる傾向があるなど、国によって『源氏物語』以外の作品への嗜好が伺えるように思います。また、解題を読んでいると、さまざまな立場の方がそれぞれの目的に合わせて創意工夫をしているさまも伝わり、「翻訳の歴史」の側面が垣間見えてきます。

 残念ながら、今回は解題を掲載できなかった多くの書籍があります。これらの作品名や国名は、翻訳史年表で確認できます。時系列に並んだ出版の記録を眺めているだけでも、そこに関わった多くの人たちの努力を感じます。ただ、どうしてもヨーロッパ諸国など先進国に偏っており、アフリカ大陸の言語などでの発行はまだ見つかっていないようです。これから、このリストに、より多くの国名が追加されることを願ってやみません。

(加々良恵子)
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2016年12月19日 (月)

国文研で開催される12月21日(水)の最終講義

 直前の連絡となりました。
 明後日、12月21日(水)の午後、総合研究大学院大学文化科学研究科日本文学研究専攻では、「平成28年度第2回 特別講義」が開催されます。

 これは、今年度で定年退職する、寺島恒世先生と私との最終講義となるものです。

 私は、これまでに研究してきた成果の報告と、現在取り組んでいる国文研蔵「橋本本」についてお話します。また、池田本『源氏物語』「桐壺」の校訂本文の試行版を、発表資料の一部として配布します。
 今回お話する内容は、後日冊子にして配布される予定です。

 興味と関心をお持ちの方のご参加をお待ちしています。
(どなたでもご参加いただけます。事前申込み不要です。)


■総研大 日本文学研究専攻
 平成28年度第2回 特別講義

日時:平成28年12月21日(水)
   13:30〜17:00(開場 13:00)

場所:2階オリエンテーション室

プログラム:
 13:30〜13:40 開会挨拶
 13:40〜15:10 講義①伊藤鉄也
         「国文研蔵橋本本『源氏物語』の実態」
 15:10〜15:25 休憩
 15:25〜16:55 講義②寺島恒世
         「百人一首と歌仙絵」


 
 
 

2016年9月21日 (水)

『海外平安文学研究ジャーナル 第5号』を電子版で配布しています

 オンライン版として好評の内に刊行している『海外平安文学研究ジャーナル』(ISSN番号 2188ー8035)の最新号(第5号)が出来上がりました。全108頁の分量の電子版です。
 お読みいただき、ご意見等をお寄せいただけると幸いです。

 これは、次の趣旨のもとに、2014年11月より自由にダウンロードできる形で発行しています。


■趣 旨■
 日本文学は「日本の文学」に留まらず、「世界のなかの文学」に位置づけられる時代となりました。
 海外で平安文学に興味を持ち、研究をなさっている方々は、どのような背景や環境のもとで研究や翻訳に取り組んでおられるのでしょうか。
 常々、そのような問題意識を持ちながら、翻訳を含めた多言語に対応した平安文学研究の意義や成果等を、世界各国の人々と一緒に考えていきたいと思っていました。
 英語に偏重しない、さまざまな言語を取り上げるジャーナルを意識して編集するものです。
 このオンライン版の『海外平安文学研究ジャーナル』は、そうした思いを形にすることをめざして創刊しました。。
 世界各国のみなさまから、自由に投稿していただき、自由に読んでいただけるスタイルでの公開を実現しました。

 今号はもとより、バックナンバー4冊も、以下のサイトから自由にダウンロードしていただけます。当初設定していたパスワードは廃止しています。

「『海外平安文学研究ジャーナル』(ISSN番号 2188ー8035)」

 今回発行した第5号(全108頁)の目次は次の通りです。


【第5号目次】

あいさつ 伊藤鉄也
執筆要綱
●研究論文
 中譯本《源氏物語》試論-以光源氏的風流形象為例
   朱秋而(翻訳:庄婕淳)
 「忠こそ物語」と継子いじめ譚
   趙俊槐
●研究会拾遺
 ウォッシュバーン訳『源氏物語』の問題点
   緑川眞知子
 スペイン語版・英語版・フランス語版『伊勢物語』7 種における官職名の訳語対照表
   雨野弥生
●付録
 中国語訳『源氏物語』の書誌について
   淺川槙子
 各国語訳『源氏物語』「桐壺」翻訳データ(中国語)
執筆者一覧 
編集後記 
研究組織 

 また、現在、『海外平安文学研究ジャーナル 6.0』の原稿を募集しています。
 さまざまな視点からの原稿をお待ちしています。

・詳細は、本科研のHP「海外源氏情報」に掲載している、「『海外平安文学研究ジャーナル』応募執筆要綱」をご覧ください。
 トップページにある「研究と成果・報告書」から「ジャーナル」の項目へと進んでください。
・原稿の締め切り 2017年1月16日(月)
・刊行予定    2017年2月15日(水)
・ご注意 原稿執筆者は公開から1年以内に1度だけ、原稿を《改訂版》に差し替えることができます。
・重要なお願い
 『海外平安文学研究ジャーナル 第6号』は、本科研最後の報告書となります。
 そのため、締め切り厳守でお願いいたします。
 
 
 

2016年9月14日 (水)

聞いてわかる科研の研究計画調書を公開

 昨年度より取り組んでいる科研「挑戦的萌芽研究」で公開しているホームページ「古写本『源氏物語』の触読研究」(http://genjiito.sakura.ne.jp/touchread/)で、新たな見出し項目を追加しました。

 これまでの項目に「聞いてわかる研究計画調書」が増えましたので、この場を借りて報告します。


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 これで、ホームページの見出しタイトルは、以下の通り6項目となりました。
 さらに詳しい目次は、「サイトマップ」をご覧ください。


「古写本『源氏物語』の触読研究」(トップページ)
「計画」
「聞いてわかる研究計画調書」(新設)
「触読通信」
「研究会報告」
「サイトマップ」

 この「聞いてわかる研究計画調書」は、目に障害がある方がパソコンのスクリーンに表示された文章を読み上げさせることで、本科研の研究計画を耳で理解していただくために作成したものです。

 ウインドウズのユーザーは、OSに標準でインストールされている「ナレーター」というスクリーンリーダーで聞くことができます(私はマックユーザーなので、できるそうです、と言っておきます)。ただし、これはあまり完成度が高くないようで、「NVDA」や「PC Talker」を使っておられる方が多いかもしれません。「PC Talker」は私も使ってみました。多機能で使い勝手がいいと思いました。ただし、4万円もするので思案なさっている方が多いのではないでしょうか。

 マックをお使いの方は、アクセシビリティには長年の蓄積があるので「VoiceOver」で十分です。私はこの「VoiceOver」で確認しました。
 しかし、文章に手を入れて、わかりやすいものに改善すべき点は、まだまだあります。

 ウインドウズとマックには関係なく、聞いてみての感想を、本ブログのコメント欄を通してお寄せいただけると幸いです。

 なお、この取り組みは、科研運用補助員の関口祐未さんの労作です。
 今後とも、本科研のホームページの利用者のために、さらなる工夫を盛り込んでいくつもりです。

 変わらぬご支援のほどを、よろしくお願いいたします。
 
 
 

2016年7月22日 (金)

《仮名文字検定》2018年夏より実施のお知らせ

 一昨年より検討を重ねていた《仮名文字検定》について、検定試験の準備が整いましたのでその実施概要を公表します。

 今から2年後(2018年)の夏に第1回を実施します。
 近日中に公開するホームページを、おりおりにご確認ください。
 
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■《仮名文字検定》実施概要■

         (2016.7.22 公表)

◎主催
 仮名文字検定委員会

◎協力
 株式会社 新典社
 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉

◎仮名文字検定 事務局
 〒101-0051東京都千代田区神田神保町 1-44-11 新典社ビル
 Tel 03-3233-8054(10:00〜12:00 および 13:00~17:00、土・日・祝日を除く)
 ・問い合わせ用メールアドレス:
    info@kanakentei.com
 ・公式ホームページ(近日公開):
    http://www.kanakentei.com/

◎検定趣旨
 《仮名文字検定》は、平安時代から伝わる平仮名を幅広く学び、その運用能力を高め、日本の古典文化を継承する中で、日本語の読解と表現世界を豊かにすることを目的として実施するものです。
 日本古典文学における中古・中世の時代に普及していた数多くの仮名文字が、広く一般的にその習得の意義を再評価されるようになりました。日本文化の理解を深め、文化資源としてさらに身近なものにするためにも、《仮名文字検定》の必要性が求められる時代が来たといえるでしょう。
 現在私たちが使っている平仮名「あいうえお〜」は、明治33年に1書体に制限され統制されてからのものです。それまでは、多くの仮名文字が使われていました。現行の「平仮名」以外を「変体仮名」と呼び、昭和初期までは普通に流通していたものです。
 日本の古典籍や古い印刷物には、さまざまな書体の仮名文字を用いた文章が記されています。今でも、博物館や資料館のみならず、街中の書道展や看板などでも、変体仮名をよく見かけます。
 明治時代後半から使わなくなってきた変体仮名が、日本文化の見直しと再発見の中で、新たに注目を集めるようになりました。「国際文字コード規格」(ユニコード化)に登録するために「学術情報交換用変体仮名」が提案され、国際的な場で承認に向けて審議が進んでいることは、変体仮名の再認識を促し新たな活用が期待できるものだといえます。
 多彩な文字をちりばめて表現された、見た目にも美しい仮名文を読んで理解する能力を高めませんか。変体仮名を使った楽しい遊びの空間に身を置くこともできます。時代を超えて情報と気持ちを交わす技術を習得する上で、この《仮名文字検定》を豊かな日本文化の理解と継承の鍛錬道場として活用していただくことを望んでいます。
 なお、《仮名文字検定》では、点字と立体文字が触読できる視覚障害者も受験できる体制を用意しています。

◎検定内容
 仮名文字に関する知識と読解力を問う

◎検定開催年月日
 年1回8月末開催
 第1回は2018年8月末
 (第8回 日本文学検定と同時開催)

◎開催場所
 東京・京都

◎受験料(個人受験・団体受験・学割・再受験)
 4,900円(学割・再受験 4,600円)(税込)

◎受験資格
 学歴・年齢その他制限なく、どなたでも受験できます。
 ※ 視覚障害者は、点字と仮名文字の触読による受験ができます。

◎受験時間
 60分

◎合格基準
 新人級:60%以上の正解
 玄人級:70%以上の正解
 達人級:90%以上の正解
 ※ 試験で獲得した点数により、各級が決定される方式。

◎問題形式
 全50問筆記

◎公式テキスト
 『仮名文字の達人』
  (A5判・192頁・本体1500円・新典社発行・2017年12月末)
 〈目次〉(案)
   1 仮名の歴史と書道史(高城弘一)
   2 仮名の字母の基礎知識(伊藤鉄也)
   3 読み・書き・連綿の知識(田代圭一)
   4 未来の仮名文字活用法(高田智和)
   5 視覚障害者の触読実践(渡邊寛子)

◎申込み方法
 クレジット(公式ホ一ムページ)
 郵便振替(リーフレット付載)

◎関係者(敬称略、50音順)
・監修者:高城弘一(大東文化大学)
     高田智和(国立国語研究所)
     田代圭ー(宮内庁)
     渡邊寛子(福島県立盲学校)
・協力者:淺川槙子(国文学研究資料館)
     須藤圭(立命館大学)
     畠山大二郎(愛知文教大学)
・企画運営総括:伊藤鉄也(国文学研究資料館)
 
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2016年7月17日 (日)

「点字付百人一首〜百星の会」に初参加の感想など

 昨日の、「点字付百人一首 〜百星の会」による「香りのワークショップ&かるた会」に関する続きです。

 初参加の田中圭子さんと尾崎栞さんから、今回のイベントの感想をいただきました。
 多くの方に「点字付百人一首~百星の会」の活動を知っていただき、また目が見えない、あるいは弱視の方々へ参加のお誘いの意味も込めて、ここに紹介します。
 
 田中さんから。


百星の会では、百人一首を通じて多くの方が古典文学の世界や古代史に関心をお寄せになっていらして、素敵だなあと感じました。
年齢や性別に関わらず、誰もが夢中になれる道具とルールを考案なさったのは本当にすごい。
お互いに一枚の札を争うような段階になれば、相当白熱するでしょうね。
ルールやテクニックが今後ますます洗練されて、高度かつ白熱した対戦が可能になる頃には、皆さん、空手などの試合で使用する防具(マスクや手指のサポーター等)を使用なさっていらっしゃるかしれません。
それは美的によろしくなさそうですが、一層の御精進をお祈り致しております。

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 尾崎さんから。


田中先生のお話、大変興味深く、印象に残っております。
お香をこねるという大変貴重な体験をさせていただき、大感激です。
機会がありましたら、もっと詳しいお話を伺いたいです。
百人一首かるたも人生初体験でした。
点字のかるたがあるなんて、すてきだと思います。
かるたを触ってみると、会員のみなさまが一丸となって試行錯誤しながら作られたご様子が伺えました。

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 田中さん、尾崎さん、ありがとうございました。
 かるた会にお誘いした甲斐がありました。

 「点字付百人一首」の札を取り合っておられる場に身を置くと、日本の伝統的な文化が思いがけないところで、意外なかたちで共有されていることに気付かされます。
 『百人一首』を通して、これまでつながりのなかった方々とお話もできるのです。
 文化の共有というと、何やら難しく思われることでしょう。
 目が見えない方々と一緒に、和歌のことや、古代の人々のことや、競技の歴史のことを話すことは、日本社会の背景にある物や文化を実感することにつながります。
 もっと楽しさを分かち合える集まりにしようと奮闘努力なさっている関場理華さんたちの、ますますの創意工夫と活躍が楽しみです。

 社会に対して、あまりお役に立たっていないと言われる日本文学の中でも、古典文学はさらに魅力を訴える必要性があることを感じています。
 「百星の会」の活動を知り、渡邊寛子さんや尾崎栞さんと一緒に立体文字の変体仮名を読み進める中で、お役に立つ国文学があることに遅ればせながら気付きだしました。
 自分の問題としては、科研やNPO活動を通して、日本の古典文学を触読する環境作りを進めていきたいと思います。具体的には、指と耳で『源氏物語』の古写本を読むことへのチャレンジです。
 さまざまな困難な状況に身を置いておられる方々と、古人が書き記した文字を一緒に楽しもうという活動を、牛歩ながらも続けていくつもりです。
 
 
 

2016年7月16日 (土)

お香体験の後にカルタが飛ぶ「点字付百人一首 〜百星の会」

 先日お知らせした通り新宿区社会福祉協議会で、「点字付百人一首 〜百星の会」が主催する「香りのワークショップ&かるた会」が盛会の内に開催されました。60名が集う、賑やかで和やかな中にも熱気溢れる会でした。


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 会場に入るなり、運営しておられる関場さんから新しい道具を見せていただきました。「視覚障害者用(音声ペン i-Pen)」というものです。


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 これは、まず音声を録音してドットシールというものを作成します。そして、それをカルタに貼って、そのシールを i-Pen でなぞると、録音した音声がスピーカーから流れる、というものです。これは、『百人一首』を覚えたり、どのカルタがどこに並んでいるかを知るのに重宝します。

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 私はすぐに、『源氏物語』の写本を立体コピーで触読する時に、手助けしてくれる道具として活用できることに思い至りました。障害者でなくても1万円ほどで入手できるそうなので、後日手に入れ次第に実験してみます。

 さて、お香のワークショップの前に、百星の会の有志によって、本日のテーマであるお香の名手藤原公任の理解を深める寸劇が披露されました。点字の台本やブレイルメモなどを手にしての熱演でした。
 完成度が高いものだったので、これは全国公演ができます。関係者のみなさま、実現に向けて検討してください。

 田中圭子さんの薫物のワークショップは、その語りの当意即妙と言うべき軽妙さもあって、みなさんも興味を深めておられました。質問も多く、関心を抱かれたことがよくわかりました。
 事前に公開した難しい説明は、以下の記事にゆずります。

「「点字付き百人一首」とお香のワークショップのご案内」(2016年07月14日)

 また、田中さんの研究内容は、ご著書『薫集類抄の研究』(三弥井書店)をお目通しいただければさらに理解が深まると思います。


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 福島県立盲学校の渡邊寛子さんが、田中さんのアシスタントをしてくださいました。
 田中さんは広島県から、渡邊さんは福島県からと、北と西から遠来のお客人も集っての、これ以上にないすばらしいパフォーマンスが展開したのです。

 各テーブルに配られた「紅梅」「黒方」「梅花」の粉末を嗅ぎ、それぞれの香りの違いを体験しました。


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 私は、妻と共立女子大学の尾崎さんと一緒に参加しました。今日はお客人として大いに楽しませていただきました。
 また、日比谷図書文化館で翻字者育成講座に参加なさっている方も参加なさっていました。以前、デージー教材の仕事をしていたとのことで、意外なつながりに嬉しくなりました。

 実際にお香に蜜を混ぜたものを練って、正露丸のような玉を各自が作りました。自分の手で黒い玉を丸めたことの感動が忘れられない、と後でみなさんがおっしゃっていました。目が見えないからこそ、なおさらのことだったようです。

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 そして、丸めた練り香を実際に焚くことで、また違う香りの世界に誘われました。


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 すばらしい感動的な時間を、みなさんと共有できたことは、参加者全員がすばらしい思い出となったようです。田中さん、すばらしいパフォーマンスをありがとうございました。

 引き続き、「点字付百人一首」によるカルタ取りとなりました。
 今回は、本邦初となる新開発の「決まり字相対台」と「ちはやふる台」という、まだ仮称ながらも画期的なカルタ取りの手法が試行されました。

 次の写真は、左上がこれまでの点字付きのカルタです。そして右下が「決まり字相対台」と呼ぼうとなさっているものです。これは、弱視の方や前出の「視覚障害者用(音声ペン iPen)」を活用した対戦を想定してのものです。
 カルタには、大きな文字で『百人一首』の決まり字までの数文字が書かれており、それに対応する点字が貼り付けられています。


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 さらに「ちはやふる台」というのは、上級者がカルタを飛ばすことを想定してのものです。映画「ちはやふる」が大いに影響しています。
 今日は、2人の達人が対戦し、みごとにカルタを左右に飛ばして取っておられました。その迫力たるや、本当に目が見えないのかと不思議に思うほどの早業でした。

 次の写真は順に、(1)男性が手前の札を取るところ、(2)女性が瞬きをする間もなくカルタを飛ばすところ、(3)同時に手を飛ばしたところです。

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 (3)の同時に手が飛んでいる勝負は、女性の方の勝ちでした。早さから言えば男性の方が早かったのです。しかし、距離を勘違いされ、1段下の札を飛ばされたのです。女性は正確に正しい札を飛ばしておられます。
 目にもとまらぬ早業とは、まさにこのことをいうのです。しかも、全盲の方が……

 後で上級者は、本当に札が飛んでいるのか不安で、何回も机を叩いたとおっしゃっていました。しかし、実際には特別な布が敷かれているので、強く叩くと逆に飛ばないのです。優しく飛ばす、という高度な技術が求められる上級者の試合でした。

 今回は、全日本かるた協会の松川英夫会長(永世名人)が会場にお越しになっていて、最後にあいさつをなさいました。

 さまざまな方々のご理解とご協力の中で、この「点字付百人一首」が続いています。百星の会の運営をなさっている関場さん、ますますの盛会となることをお祈りしています。私も、今後ともお手伝いをさせていただきます。
 参加される人数が増えると、さらに楽しいことができるのでうれしくなります。
 大いに盛り上げていきましょう。
 8月末の栃木県での夏季合宿も、多くの方に声掛けをしてみます。
 
 
 

2016年5月24日 (火)

【復元】チベットの伝統舞台芸術公演を観て

 『竹取物語』に関してクラッシュした記事を復元する過程で、『竹取物語』のチベット語訳をした教え子のことを書いた文章と写真も出てきたので、ここに復元します。

 最後に紹介しているDVDが手元にあるので、その表紙と解説書の写真を追加します。


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(※本記事は、平成19年3月に消失したブログの復元です。)
 
********************** 以下、復元掲載 **********************
 
2006年7月11日公開分
 
副題「仏教王国の軽快なリズムを堪能」
 
 今夜は、チベット舞台芸術団東京公演を観に行きました。
 仏教音楽かと思っていたのです。ところが、非常に軽快な明るい舞踊を楽しんで来ました。居眠りをする暇もないほど、舞台に見入ってしまいました。
 写真は、最後の挨拶のところです。

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 この催しは、ダライ・ラマ法王14世71歳の誕生祭の一環として行われたものです。

 ダライ・ラマは、1949年に中国のチベット侵略によりインドへ亡命し、デリーの北にあるダラムサラにチベット亡命政権を樹立した人です。ガンジーと同じく非暴力を説き、1989年にノーベル平和賞を受賞しています。

 私はインドへ行くと、定宿の近くにあるチベットハウスと、デリー大学の近くにあるチベタンコロニーとニュー・チベタンコロニーへ必ず行きます。宿舎の方々がチベットから逃れてきた人たちであるだけでなく、私がデリー大学で教えた大学院生の1人が、チベット出身で亡命政権の仕事をしている人だったからでもあります。

 彼は、『竹取物語』のチベット語訳の絵本を刊行したりしています。英語バージョンもあるので、両方を並べてみました。刊行前に、絵などについて質問を受けました。装束などについて少しコメントをしたのですが、結果は原本を見てのお楽しみです。なかなか楽しい絵本に仕上がっています。

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 その彼が、今は東京にあるダライ・ラマ法王日本代表事務所に勤務しています。そして、今回の公演に招待してくれたのです。

 今回の公演では、12の演目がありました。前半が終わった休憩時間に、彼と話すことができました。オープニングセレモニーの通訳などで忙しい合間に、久しぶりに話をしました。昨年から電話では何度か話をしていました。直接会うと、立派になった姿に圧倒されました。

 チベットの舞踊は、日本の民謡や演歌や盆踊りや雅楽や能楽や狂言や歌舞伎などの要素が、随所に見受けられました。あくまでも、日本人の目から見てですが。
 そして、その明るさに驚きました。仏教臭さを先入観として持っていたからでもありましょう。在りし日の日本につながる、親しみのある旋律と身のこなし方に、非常に親近感を持ちました。
 リズミカルな男性の踊り、透きとおった女性の歌声に、チベットの自然を感得しました。中国の弾圧にもめげずにチベット文化を伝えようとする使命感を肌で感じて、今の日本にはこのような情熱があるのだろうか、との想いを強く持ちました。

 私が大好きな井上靖の『星と祭』という小説に、主人公がエベレスト山麓で満月を見るため、カトマンズからタンボチェへと向かう場面があります。舞台を見ながら、その姿を彷彿とさせるシーンに出くわしました。インドの定宿の方の出身地であるラダックの自然をも思い起こしました。
 ダラムサラには、何度も行こうと思っていました。それが果たせないままの自分に、今度こそはとの思いを強くしました。

 休憩時間に、ロビーの出店で『ヒマラヤを越える子供たち』というDVDを買いました。デリーで定宿にしているお寺の人たちが、命からがら、ヒマラヤを越えてデリーに来たことを知っていたからです。命がけでチベットを脱出した彼らを、少しでも理解しようと思い、DVDをいただきました。裸足で極寒のヒマラヤを越えたことを、彼らから直接聞いていたからです。

 人間の不屈の精神とおおらかな生き様に、学ぶべきことが多いように思うイベントでした。

********************** 以上、復元掲載 **********************
 
 
 

2016年5月14日 (土)

小林一三記念館を伊井館長に案内していただく

 逸翁美術館の少し先に、創業者である小林一三の旧邸「雅俗山荘」を中心とした「小林一三記念館」があります。
 そこで現在開催中の展示を、伊井春樹館長の案内で見せていただきました。
 入口には、立派な長屋門があります。

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 今秋予定している池田亀鑑賞の授賞式は、日南町の美術館で池田亀鑑の特別展が開催されている期間に設定されました。そのため、特別展のための参考になれば、との計らいで見物することになりました。
 この記念館は、逸翁美術館から少し歩いた所にあります。しかし、たくさんの方が見学にいらっしゃっていました。


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 展示は、伊井館長の発案が至る所で生かされており、阪急電車はもとより、宝塚や東宝の歴史などなど、昭和初期にタイムスリップして楽しめる構成となっています。
 私も学芸員の目で、興味深く拝見しました。

 小林一三は茶人逸翁でもあります。庭の茶室を、じっくりと拝見しました。

 「人我亭」は、小林一三の命日に、ここで逸翁白梅茶会が催されます。


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 「費隠」は、小林一三が商工大臣を務めた時の内閣総理大臣、近衛文麿の命名です。
 窓の多い茶室です。


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 壁の腰張りには、郷民の連判状らしい古文書が貼られています。


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 「即庵」は、椅子席の茶室で、昭和の名席と言われています。


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 いつかこれらのお茶室を借りて、伊井先生にお茶を召し上がっていただきたいものです。
 まだまだ私の点前は力不足で未熟ではあっても、目標の一つにしておきたいと思っています。

 今日は、逸翁美術館に隣接する池田文庫の会議室で、第5回池田亀鑑賞の選考委員会がありました。これまでずっと、ここを利用させていただいています。


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 1ヶ月以上にわたる審査の結果、無事に本年度の受賞作1点が決まりしました。


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 来週末の中古文学会までに、「池田亀鑑賞のホームページ」に、この第5回目の受賞作が発表されます。
 楽しみにお待ちください。
 
 
 

2016年5月11日 (水)

来週末に埼玉県本庄市で『群書類従』のお話をします

 以下の通り、『群書類従』に関するお話を、塙保己一ゆかりの地でいたします。
 これは、「古写本の触読研究に取り組むきっかけとなった講演録」(2015年11月16日)に記した『温故叢誌』という冊子から派生したものです。
 総検校塙保己一先生遺徳顕彰会事務局と、本庄市教育委員会生涯学習課の方々のお世話になります。どうぞよろしくお願いいたします。

 今回の話は、上記冊子にまとめたことに加えて、古写本や『群書類従』を目の不自由な方々と一緒に読める環境作りに取り組んでいることを、具体的な事例を交えてお話をする予定でいます。塙検校が当日の会場にいらっしゃることを想定して、検校に語りかけるような内容に組み立てているところです。

 また、目が不自由な方々にも聞いていただきたいと思っています。
 『群書類従』の版本の一部を立体コピーしたものを、当日の会場でお一人ずつに配布する予定です。実際に触読体験をしていただきますので、後で感想をお聞かせいただけると幸いです。

 『広報ほんじょう5 2016 No.124』(編集/本庄市役所企画財政部秘書広報課)には、次の予告がなされていますので、併せて紹介しておきます。


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総検校塙保己一先生遺徳顕彰会総会の記念講演

         記

1.開催日時 平成28年5月21日(土)
   受 付 午後1時30分から
   開 式 午後2時から
      ※記念講演は午後3時からの予定
2.会  場 本庄市児玉文化会館(セルディ)ホール
       所在地:本庄市児玉町金屋782-2
       電 話:0495-72-8851
3.演  題 「世界中だれでも読める『群書類従』」
   講 師   総合研究大学院大学
         国文学研究資料館 伊藤鉄也


 
 
 

2016年4月21日 (木)

古都散策(50)【復元】初夏の散策(7)若草山

 10年前、大和平群に住んでいた頃に書いた、初夏の旅の記を再現しました。
 家族だけでなく、多くのお客人をここに案内し、大和の地を眺め、我が家があった信貴生駒の峰々と平群の地を目で追ったものです。

(※本記事は、平成19年(2007年)3月に消失したブログの復元です。)

********************** 以下、復元掲載 **********************

2006年5月8日公開分

副題「『枕草子』の鴬塚はここか?」

 奈良市街を一望のもとに見渡す所といえば、何はさておき若草山です。三笠山の続きにあり、東大寺裏の正倉院横から奥山ドライブウェーですぐに行けます。
 私は、海外からいらっしゃった方を奈良にお連れした時には、まずここに案内します。藤原京から平城京へ、そして長岡京を経て平安京へと、都が北上して行くさまが実感できる位置だからです。
 眼下に東大寺の大仏殿が見えます。
 ここから左上手の方には、我が家のある生駒山地から二上山の山並みも見えます。


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 この若草山の山頂には、鴬塚古墳があります。
 ここは、清少納言が『枕草子』に、「陵は、うくるすの陵。柏木の陵。雨の陵。」(三巻本、第15段)と言った所だと言われています。ただし、いろいろな説があり、確定したものではありません。

 『枕草子』の本文に「うくるす」とあるのは、他の写本では「うくひす」とあり、これによって『大和志』は若草山がそうだとしています。それとは異なる考え方もあり、大阪の百舌にある仁徳天皇陵を充てる『春曙抄』や、藤原氏歴代陵墓のある宇治木幡を充てる『環解』などがあります。

 若草山に上ると、説明板にはここがそうだと記しています。


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 山頂部の石碑の裏には、清少納言の言う鴬塚はここであると刻した文字が、かすかに判読できます。


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 さて、清少納言がいう「うくるす」の陵は、いったいどこでしょうか。
 清少納言は、旅衣でこの若草山を上ったかもしれません。
 麓から歩くと、1時間はかかります。春の若草山の山焼きの後の新緑の頃に、鹿たちと一緒に上ったと、私は想像しています。平安の都から見れば、この平城の都は、まさに古里なのですから、清少納言の興味を惹き付けたはずです。

 『伊勢物語』の初段には、「昔、男、うゐかうぶりして、平城の京、春日の里にしるよしして、狩に往にけり。」とあります。若草の小高い山から見下ろすと、清少納言が好みそうなアングルで古里が一望できるのです。京都の清水寺から見る平安の都よりも、もっと雄大な景色が臨めるのですから。

 若草山の裏には、世界遺産に指定されている春日の原始林が広がっています。「天の原ふりさけみれば春日なる……」と歌われたこの地は、奈良時代から平安時代へと移り変わる雰囲気を、今でも見せてくれます。

********************** 以上、復元掲載 ********************** 
 
 
 

2016年4月20日 (水)

国文学関連のウェブサイト「JGJ」が誕生しました

 日本語と日本文学の調査研究に関する、新しいウェブサイトが生まれました。
 「日本語学日本文学研究情報・成果公開サイト」(Japanese.gr.jp、略称 JGJ)(2016年4月17日 公開)がそれです。
 サブタイトルは「日本語日本文学研究の未来のために」となっています。

 その言挙げをお祝いいたします。

 このサイトは、近藤泰弘氏(青山学院大学文学部教授)と近藤みゆき氏(実践女子大学文学部教授)の共同運営によるものです。

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 その目的と発信される情報の内容は、「サイト概要」によると以下の通りとなっています。


1. 日本語学および日本文学研究において、文理融合型・領域横断型の研究を行い、その研究方法を公開する。

2. 研究用データ・ツール等を公開し、広く人文科学、特に日本語学・日本文学研究において同様の研究を行っている研究者との情報共有を計る。

当面は、以下に述べる科研費の補助を受けて、その研究成果を中心に公開する予定にしています。
また、過去に出版した関係論文や資料なども可能なものからオープンアクセスとして公開していきます。

サイトコンテンツは以下の通りです。
なお、本サイトは基本的にXMLの書法によりHTML5準拠で書かれています。

1. 成果・報告(特に紹介したい論考の紹介と閲覧)

2. テキストアーカイブ(研究用に作成した古典語・現代語のデータリストとダウンロード)

3. ソフト・ツール紹介(本サイト関連で作成したソフトウェア・ツールの紹介とダウンロード)

4. 業績紹介(研究業績リスト)

5. 関連リンク(この分野に役立つサイトへのリンク)

 私は1995年9月から、ささやかながらもインターネット上に国文学関連の情報を公開して、今にいたっています。
 これはあくまでも個人的な営為の延長に留まるものであり、しかも『源氏物語』に限定しての周辺情報の公開です。
 そこから、本ブログ「鷺水亭より」が派生しました。

 その後、いろいろな方がサイトを立ち上げられ、今も利用させていただくものがいくつも存在しています。
 そのような中で、今回のサイトは、これまでの研究実績とウエブコンテンツを熟知したお2人が、共同で運営されるということです。
 これは、今後の幅広い展開が期待できます。

 一人でも多くの日本語や日本文学に興味を持つ方々に告知する必要を感じ、ここに紹介するしだいです。
 充実した情報の提供と共有をめざして、当サイトがますます発展することを楽しみにしたいと思います。
 
 
 

2016年1月 7日 (木)

総研大日本文学研究専攻特別講義を聴いて

 新春早々、得難い勉強の機会に恵まれました。
 かねてより知りたいと思っていたことを、お2人の先生からわかりやすい話でうかがうことができたのです。

 田中大士先生は、「春日懐紙の書誌学」と題したお話でした。
 「打ち紙」「墨映」「相剥ぎ」などなど、具体的な例をあげての説明だったので、よくわかりました。
 「相剥ぎ」について、田中先生は「あいはぎ」と言っておられました。しかし、私が教えを受けた先生は、「あいへぎ」とおっしゃっていました。どちらでもいいようです。しかし、「あいはぎ」は「おいはぎ」みたいで、品が感じられません。私は、これまで通り「あいへぎ」でいこうと思います。
 「打ち紙」については、次の大高洋司先生の資料にも、絵として紹介されていました。

 大高洋司先生は、「近世職人尽絵詞の注釈を終えて」と題するお話でした。
 大高先生は今年度で定年となられるので、最終講義となるものです。また、私の隣の研究室におられるので、いろいろとお世話になった先生でもあります。
「表具師」の絵に、竹篦(和紙を持ち上げる)、包丁、定規、提げ槌(紙を打つもので、『邦訳日葡辞書』には「一本の長い竹に吊してある槌または杵で、紙を叩くのに使うもの。」とある)が描かれていました。自分が関心のあるものなので、興味深く資料を見つめ、お話をうかがいました。
 この絵詞は、松平定信がプロデューサーとなって製作されたものだそうです。江戸時代の文化人が残したものは、その背後にもおもしろいことがたくさんあるようです。

 お2人の先生が取り組んでおられる研究成果の一端から、自分の問題意識と絡み合うものがいくつも関連をもってつながりました。
 ありがとうございました。
 
 
 

2015年12月 6日 (日)

体験型学習会で点字付百人一首のお手伝い

 東京の護国寺にある筑波大学附属視覚特別支援学校で、「科学へジャンプ! イン東京 2015」というイベントがありました。

 このことは、先月下旬に「五感を使って江戸時代の百人一首カルタにチャレンジ」(2015年11月23日)でお知らせした通りです。

 昨日は、宇治で〈運読〉のワークショップのお手伝いをした後も、参加されたみなさまと情報交換を夜遅くまでやったために、今朝は早い新幹線で上京することになりましました。

 地下鉄烏丸線の駅へ急ぐ道々、北大路橋から賀茂川を見下ろすと、水が冷たくなったこともなんのそのと、鷺とユリカモメが遊び出したところでした。


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 川の東側では、土砂が堆積した中洲の整備が始まっています。
 写真中央奥には、京都五山の送り火でメインとなる、如意ヶ岳の大文字が寒そうに姿を見せています。


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 東京駅から1駅もどって有楽町駅に出て、そこから東京メトロ有楽町線で護国寺駅まで行きました。

 駅から筑波大学附属視覚特別支援学校への道は、目が見えないと大変だろうと、来るたびに思います。複雑な交差点の信号と横断歩道を渡りきっても、次は急な石段が待っているのですから。
 平らな道は大幅に遠回りになるので、みんなこの階段を使うのです。


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 校門に着くと、いつもほっとします。


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 今日の「「科学へジャンプ! イン東京 2015」は、36種類ものワークショップが各教室で進行していきます。ワークショップの担当者の他にも、補助者やボランティア学生などなど、多くの方々の支援でイベントが成り立っています。

 私は午後の部で、「点字の付いた百人一首を使って、楽しみながら、古典の世界に親しもう」というイベントのお手伝いとして、『百人一首』のお話をするのが任務です。

 埼玉県立特別支援学校塙保己一学園の先生を中心として、百星の会のみなさま、長野県立松本盲学校の先生、それに加えて筑波大学と明治学院大学の学生スタッフのみなさに助けられながら、無事に『百人一首』のカルタ取りを楽しむことができました。

 今日の内容は、「坊主めくり用カルタ」「近衛家旧蔵『百人一首』の立体コピー」「お内裏さまとお雛さまの人形」「マネキンの頭部」「塙保己一座像」「匂い袋」「源氏絵付き貝合わせセット」「点字付百人一首」などなど、多彩な小道具による演出で、中学1年生の参加者に『百人一首』の世界を多角的・立体的に味わってもらえたと思います。
 先日、東京駅で打ち合わせたことを踏まえて、無事に予定通り進行しました。

 私が選んだ10首とその現代語訳と簡単な説明は、百星の会の関場さん親子の不眠不休のおかげで、無事に点訳されてこの日に間に合い、生徒さんの手元に置いて進めることができました。

 撰歌、訳文、説明を中学生向けにわかりやすい文章にするにあたっては、生徒指導の経験が豊富な妻の力を借りました。この日のためのスペシャルバージョンです。

 ちょうど先週から私のメールが不調だったこともあり、この点訳資料の作成には、関場さんに本当にご苦労をおかけしてしまいました。ありがとうございました。

 そうした結晶としての点訳資料を、私の説明を聞きながら指を走らせて触読してくれている生徒さんの姿には、感動を超えるものがありました。
 今日の点訳を持ち帰って読むことで、さらに『百人一首』が好きになってもらえたら幸いです。

 台盤にセットして臨んだ「点字付百人一首」のカルタ取りも、回を重ねる毎にスピードがアップして、熱気が伝わるようになりました。読み手として奮闘された廣田先生も、子どもたちへの当意即妙の対応が小気味よくなされていったせいもあって、あっという間に時間が来てしまいました。

 生徒さんには、過日書道家の先生が書いてくださった『百人一首』をもとにして作成した立体コピー版カルタを、参加記念として1枚ずつ差し上げました。

 終わってから、参観しておられた方々が、持参した近衛家旧蔵『百人一首』の複製を時間をかけて興味深く触っておられました。
 確かに、こうした美術品クラスの道具は、なかなか直に手に取って見ることは叶わないものです。
 いい機会に触ってもらえて、有意義な時間をみなさまと共有できました。
 私にとっても、貴重な勉強をさせていただいたことは、みなさまにあらためてお礼もうしあげます。

 なお、本イベントの実行委員長をなさっている入試点訳事業部の高村良明先生は、私の科研「古写本『源氏物語』の触読研究」でもさまざまな視点からご教示をいただいています。
 本日ご挨拶すべきところを、運営責任者として奔走なさっていたので、そのまま失礼しました。
 またの機会にお声掛けいたしますので、今日のところはこのブログで簡単な報告にかえさせていただきます。
 
 
 

2015年12月 1日 (火)

書道家にお願いした触読用の『百人一首』

 今日、念願だった『百人一首』の立体コピーを完成させました。


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 取り札と、数首を並べたシートの2種類を試作しました。
 これを使って、目が見えない方々と一緒に『百人一首』のカルタ遊びをし、また、変体仮名の学習に役立てたいと思います。
 その先には、もちろんハーバード本『源氏物語』を触読する目標があります。

 ここに至るまでの経緯を、簡単に記しておきます。

 書家のMさんから初めて本ブログにコメントをいただいたのは、本年4月末でした。
 料紙制作20年、かな書45年、表具制作25年という経歴の方でした。
 新潮日本古典集成の活字校訂本文をもとにして、『源氏物語』の写本を作成しておられるとのことです。そこで、書写に関するアドバイスを、ということで連絡をくださったのです。

 私からは、かつて私が次のブログで批判したことと同じことをなさっているように思われます、という返事をさしあげました。

「何故かくも愚行を誇らしげに」(2010/9/26)

 この5年前の記事で私は、活字校訂本文を書写することを批判しています。それが今回は、「岩波・古典大系」が「新潮・古典集成」に変わっただけなので、直接お目にかかってお話ができないでしょうか、との申し出をしました。

 善は急げということを実践している私は、すぐに5月初旬に中央線の駅前の喫茶店でMさんとお目にかかり、長時間お話をうかがい、『源氏物語』を書写することについての私見を語り合いました。

 Mさんは「何に書くか、どのように書くか」ということに力点を置かれていました。
 それに対して私は、「何を書くか」という、物語本文に拘って話したように思います。
 この「何に、どのように」と「何を」は、まったく別の視点から生まれているものだと思われます。
 私は、「何を」の方が、古典を書写するにあたっては、まず解決すべきことだと思っていることを強調しました。

 鎌倉時代に書写された『源氏物語』を実見なさることをお薦めしていたところ、7月に国文学研究資料館所蔵の写本を閲覧に来ていただくことになりました。しかし、お互いにいろいろと雑事に追われる中で、それが9月末になり、それも延期となって、10月初旬に国文学研究資料館所蔵で鎌倉期に書写された「榊原本 源氏物語」を直接閲覧していただくことになりました。

 特別閲覧室でご一緒に、説明と共に質問に答えながら、楽しく鎌倉時代書写の『源氏物語』を見ることができました。

 その折、目の見えない方のために変体仮名を触読することにチャレンジしている話をしました。そして、『百人一首』を触読用に書いていただけないかとお願いしたところ、快く引き受けてくださいました。

 その後、試しにお書きになった写真を拝見し、手応えを感じました。
 いろいろとやりとりをしているうちに、ついに初版とでもいうべき20首の作品を送ってくださったのです。

 私からお願いした恋の歌20首は、次のような形でお弟子さんとの協力により、触読するための『百人一首』として仕上げてくださったのです。

(1)恋の歌20首の内、前半10首を変体かなを使った散し書き
(2)恋の歌20首の内、後半10首を高野切の文字を集めた倣ち書き
(3)恋の歌20首を、変体仮名を使わないで2字連綿・3字連綿

 本記事の冒頭と次の写真は、(3)にあたるもので、変体仮名を使わない作例です。


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 今回いただいた3種類の『百人一首』を実際に目が見えない方々に触っていただき、その反応や感想をもとにして、さらに書写文字に検討を加えていきたいと思っています。
 例えば、決まり字までは大きな文字で書くとか。

 掲出写真の背景をなしている数首を並べたシートは、液晶パネルを活用した音声ガイドと連動するシステムでの利用を想定しています。

 この件については、もうすこし具体的な活用事例が報告できるようになってから、あらためて詳細な報告をしますので、しばらくお待ちください。
 まずは、速報として現状をお知らせしました。
 
 
 

2015年11月23日 (月)

五感を使って江戸時代の百人一首カルタにチャレンジ

 来月12月6日(日)に、東京・護国寺にある筑波大学附属視覚特別支援学校で、「科学へジャンプ! イン東京」というイベントが開催されます。

 これは、小学校高学年〜高校3年生の視覚に障害のある生徒たちに向けた、理数系を中心とする体験型の学習会です。

 ここで、「点字付百人一首~百星の会」のみなさんが「五感を使って感じられる百人一首」というワークショップをなさいます。

 「百星の会」については、本ブログの「「点字付百人一首〜百星の会」の紹介と活動内容」(2015年09月01日)で詳しく書いていますので、ご参照願います。

 今回のワークショップのお手伝いを、私もさせていただくことになっています。
 今日は、関係者と東京駅で、長時間にわたり打ち合わせをしました。

 実施の詳細は、さらに当日まで検討を加えますので、お楽しみに、ということにしておきます。
 ただし、現在思案中のことをここに記し、本ブログをお読みいただいている方々からのご教示をいただけると幸いです。

 私の手元に、江戸時代の寛文頃(1670年前後)のものと思われる、陽明文庫(近衛家)旧蔵『百人一首』の複製(昭和56年10月、おうふう)があります。
 また、かつて教えていた学生が作成した、『源氏物語』の一場面を描いた貝合わせも幾組かあります。


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 これを、今回のワークショップの中のどこかで活用できないか、と思っています。

 今日はこれを打ち合わせの場所に持参し、「点字付百人一首」のクィーン位の女性に触っていただき、いろいろと感想をうかがいました。

 そのために、あらかじめ小野小町の絵札と取り札の1セットを拡大コピーして、立体コピーに仕上げたものも触っていただきました。


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 この変体仮名は読み難い字形をしているので、今回は触読のチャレンジはしません。

 江戸時代のお姫さまたちが遊んでいた『百人一首』のカルタがどのようなものだったのかを、少しでも五感を通して生徒たちに伝われば、との思いからの試みです。
 これは、「点字付百人一首」のカルタ取りへの導入で取り入れられないか、と思っているところです。
 ただし、まだまだ思案中です。

 思いつきでも結構ですので、ワークショップの内容へのアドバイスをいただけると幸いです。
 今回は、6名ほどの目が見えない中学生に体験してもらう、ということを想定して準備中です。

 また、このカルタを収納しているケース(帙)も、手探りで触っていただきました。
 これについては、見えなくても指の感触だけで、その豪華さが実感として感じ取っていただけたようです。


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 貝合わせについては、また別の角度から検討したいと思っています。
 この活用についても、ご教示いただけると助かります。

 1人でも多くの目が見えない生徒さんたちが、日本の古典としての和歌に興味をもってもらい、カルタも楽しんでもらえたら、と思って取り組んでいるところです。
 
 
 

2015年11月22日 (日)

突然の連携プレーとなった国文研フォーラムと国語研シンポジウム

 このところ少し温かかった多摩地区も、今日は少し寒さを感じました。
 国文学研究資料館の前の紅葉も見頃です。


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 昨日と今日の2日間、国文学研究資料館では「学術交流フォーラム 2015」が、国立国語研究所では「シンポジウム 字体と漢字情報」が同時進行で開催されていました。


 隣接する敷地にある2機関のイベントなので、両方のテーマに関係する私は、プログラムの進行を見ながら行ったり来たりと忙しい一日でした。
 国文研から国語研へ行く細道は、落ち葉を踏みながら行きます。

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 国語研の中庭もみごとに彩られています。


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 お昼には、国文学研究資料館の1階展示室で、特別展示「韓国古版画博物館名品展」のギャラリートークが、入口敦志先生の解説で行われました。これは、韓国古版画博物館のご協力を得て実現した、日本初の韓国古版画の優品を展示するもので、今日が特別展示の最終日だったのです。
 その担当者である同僚の入口さんの説明を、私は楽しみにしていました。
 私は、いつでも見られたのに忙しかったこともあり、つい見ないままでした。『高麗大蔵経』と『仏説大目連経』が特に見たかったものでした。

 展示室で『高麗大蔵経』に添えてあったパネルの文章を、記録として引いておきます。


1-2 高麗時代の仏教版画

 高麗時代11世紀初頭に刊行された高麗大蔵経の版木は、13世紀のモンゴルの侵攻により消失してしまいます。しかしその後すぐにすべてが刊行し直されました。約八万枚の版木でできているため、「八万大蔵経」とも呼ばれています。13世紀に再刻された版木は現在も韓国の海印寺に大切に保管されています。そのはんぎから刷り出されたものが、1と2の『大方広仏華厳経』で、韓国における仏教版画の原点と言うべきものです。

 そのギャラリートークが終わるやいなや、大急ぎで今度は国語研に移動し、これまた研究仲間の高田智和さんが主宰する「セッション5 : 文字データベースと連携」に参加しました。

 昨日から何度も行き来する国文研と国語研の敷地の間では、紅葉がきれいに色付いています。


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 国語研の研究発表では、最後の研究発表だった東京大学大学院情報学環の永崎研宣先生の「SAT大蔵経データベースをめぐる漢字情報」に関して、私は専門外ながらも質問をしました。それは、永崎先生の発表で言及のあった『高麗大蔵経』の韓国での刷り物2枚が、今まさに国文学研究資料館の展示室に並んでいることについてでした。
 永崎先生をはじめとして、会場にお集まりの方々はみなさん、すぐ隣の国文研の建物で『高麗大蔵経』が展示されていることをご存知なかったのです。
 司会進行役の高田さんから、「今日は何時まで展示されているのですか?」との確認があったので、「4時までです」とお答えしました。

 国語研のシンポジウムは3時に終わりました。
 国文研の展示を見に行こうとされている方がいらっしゃったので、私はすぐに国文研の展示室に引き返して、展示状況を確認しました。
 残念ながら、展示室は3時半で閉められていたのです。

 事務の方に確認すると、今日は3時半まで入場でき、4時まで見られる予定だったそうです。ただし、30分前の3時半に誰も入場者がいなかったので、展示資料を片付ける準備もあるので閉室した、とのこと。
 そして、今日が展示の最終日であり、明日は展示品の撤収をし、明後日には展示資料のすべてを韓国に送り返すことになっている、とのことでした。

 国語研での事情を事務の方に説明し、予定通り、あと30分の開室をお願いしました。
 関係者に連絡をして手配してくださり、快く再度の開室となりました。
 そうこうするうちに、国語研の参会者の皆さんが国文研にぞろぞろとお出でになりました。しかも、15名もの方がいらっしゃったのです。これについては、事務の方も入場者の増員ということで喜んでくださいました。

 もっとも、こんなに多くては私一人では対応できません。
 大急ぎで2階の大会議室に行き、国文研のイベントである講演会場におられた入口さんに事情を説明しました。お昼に行われたギャラリートークをもう一度していただくことが、幸運にも叶いました。


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 永崎先生をはじめとする若い方々に、こうしてなかなか見られない資料を実際に間近に見ていただくことができました。しかも、展示担当者である入口さんの詳細な説明を聞くことができたことも、若い方々にはいい勉強になったことと思われます。

 入口さんと私は、これまでにも一緒に何度もインドへ行き、旧満州にも行くなど、わがままが言える間柄でした。おまけに、10年以上も同じ宿舎にいた仲間であることなどなど、今回の思いがけない幸運には、こうした背景があってのことだったのです。

 それにしても、無理難題を聞いてもらえた入口さんには感謝します。また、迅速に柔軟な対応をしていただけた事務の方々にも、感謝します。みなさま、ありがとうございました。

 今日11月22日は「いい夫婦の日」でもあります。
 バタバタと走り回った後は、新宿に出て、妻と一緒にいつもの「岐阜屋」で諸々のお祝いをしました。今日は、ほろ酔いでこの記事を書いています。


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 本日の国文研と国語研でのイベントのプログラムは、以下の通りでした。
 記録として残しておきます。
 

学術交流フォーラム 2015
 文学際―「文化科学」を発見する―


会場:大会議室

《口頭発表 第三部》

「東ニカラグア、ミスキート諸島海域のアオウミガメ漁船」
    高木 仁 地域文化学専攻

「明治期音楽療法思想の変遷に関する一考察
  ――神津仙三郎・呉秀三を中心として――」
    光平 有希 国際日本研究専攻

《講演会・パネルディスカッション》
講演「碁盤の上のからくり人形」
    武井 協三 国文学研究資料館 名誉教授

講演「ロボットとからくり─科学と芸能の狭間を生きた田中久重─」
    山田 和人 同志社大学文学部 教授

パネルディスカッション
 
 

シンポジウム 「字体と漢字情報」
―HNG公開10周年記念―


 
開催場所:国立国語研究所2階 講堂
 
《セッション4 : 字体研究2》
司会 : 岡墻 裕剛 (常葉大学)
「画像データベースと漢字字体」
    佐藤 栄作 (愛媛大学)
「初唐の標準字体の再検討」
    斎木 正直 (北海道大学)
「近世から近代日本における異体字使用の変化」
    山下 真里 (東北大学)
 
《セッション5 : 文字データベースと連携》
司会 : 高田 智和 (国立国語研究所)
「平安時代漢字字書総合データベース構築の方法と課題 ―『類聚名義抄』を中心にして―」
    池田 証寿 (北海道大学)
「開成石経と拓本文字データベース」
    安岡 孝一 (京都大学人文科学研究所)
「東京大学史料編纂所と奈良文化財研究所での文字画像データベースの連携について」
    井上 聡 (東京大学史料編纂所)
「SAT大蔵経データベースをめぐる漢字情報」
    永崎 研宣 (人文情報学研究所)

 
 
 

2015年11月16日 (月)

古写本の触読研究に取り組むきっかけとなった講演録

 『温故叢誌 第69号』(温故学会編、平成27年11月発行)が発行されました。


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 ここには、平成26年5月5日に塙保己一史料館講堂で開催された「塙保己一検校 生誕第二六八年記念大会」で、私が「英国ケンブリッジ大学と米国バージニア大学の『群書類従』」と題してお話をした内容が、文字となって収載されています。

 その日のブログには、「早朝の地震の後、渋谷の温故学会へ」(2014年05月05日)として、当日の様子を記しています。

 この日の懇親会で、私は、塙保己一は『群書類従』の版木を触って読んでいたのでしょうか、という素朴な問いかけを、お集まりの関係者のみなさまに発しました。そのことから、『源氏物語』の写本を目が見えない方と一緒に読める環境を作りたい、という提案に展開しました。
 会場にいらっしゃった方から、いろいろと親切なご教示をいただきました。
 また、夜の渋谷に繰り出してからも、ありがたい励ましをいただきました。

 それから1ヶ月ほどして、「目の不自由な方と写本を読むために(1)」(2014年06月04日)を記しました。

 このあたりから、この古写本『源氏物語』の触読について、私は具体的な動きを始めています。

 あれから1年半。

 その後は思いもよらぬ幸運に恵まれ、科研に採択され、多くの協力者のおかげによって、今はホームページ「古写本『源氏物語』の触読研究」を基盤として着実に成果を公開するまでにいたっているところです。

 私にとって、この平成26年5月5日に塙保己一史料館講堂でお話しした「英国ケンブリッジ大学と米国バージニア大学の『群書類従』」は、記念すべきものとなりました。

 非常に個人的なこととはいえ、今の展開を考える原点と言えるものとして、『温故叢誌 第69号』を紹介しておきます。
 
 
 

2015年11月14日 (土)

第39回 国際日本文学研究集会-2015-

 本日14日(土)と明日15日(日)の2日間は、国文学研究資料館2階大会議室で、国際日本文学研究集会が開催されています。

 今では数ある国際集会の中でも、日本文学研究ではもっとも老舗といえるイベントです(主催:国文学研究資料館/後援:総合研究大学院大学)。

 昭和53年(1978)2月に開催された第1回では、ドナルド・キーン先生が「日本におけるモダニズム作家について」、リチャード・マッキノン先生が「狂言と現代との接点」と題する特別講演をなさっています。

 以来、この研究集会から国際的な研究者を多数排出しています。
 来年は、記念すべき40年目を迎えます。

 今回も、興味深い視点からの発表が並んでいます。

 私は、個人的には須藤圭さんの研究発表が、今日の中では一番よくまとまっていたと思います。
 手堅く事例を整理し、明快でわかりやすい発表でした。


「源氏物語の「女にて見る」をどう訳すか ―翻訳のなかのジェンダーバイアス」 (須藤 圭・立命館大学助教)

 ショートセッションの部では、邱春泉さん(北京外国語大学博士課程、国文学研究資料館外来研究員)の「『とはずがたり』巻二に描かれた「色好み女房」としての自画像とその意義』」を、興味深く聞きました。ただし、15分という非常に短い限られた時間だったので、論文にまとめられたらあらためて読ませていただきます。

 今日の私は、この国際集会の総合司会を担当していたので、全体的な進行に気を取られていました。
 お一方ずつの発表にコメントを付す余裕はないので、勝手な感想はこれだけにしておきます。
 
 嬉しい出会いがありました。
 田中圭子さん(広島女学院大学総合研究所 客員研究員)と、初めて会えたのです。
 今回田中さんは、「〈新作薫物〉と平安文学 ─王朝の言葉とこころを具現化した香りたち─」というポスター発表で参加です。
 私がお香に興味があることはそれとして、田中さんには今は亡き森一郎先生から、私が取り組んでいる『源氏物語』の翻字のお手伝いをしてもらえる方として、以前に紹介していただいていました。しかし、私がバタバタするばかりの日々の中で、十分に力添えいただかないままに年月が経っていたのです。
 森先生からは「こき使って鍛えてやってくれ」、と仰ってくださったままでした。それが、やっと今日会えました。

 森先生がお元気なうちに、田中さんに仕事を手伝ってもらっている旨の報告ができなかったことが心残りでした。しかし、今日いろいろと話をして、森先生が太鼓判を押して紹介してくださっただけの方なので安心しました。

 森先生は、私が高校の教員をしていた時から、研究者の道を諦めないようにと、ご自分も同じ身にあったこともあってか、折々に励ましてくださっていました。ある時、突然に大学の教員の口を紹介してくださったことは、実現しなかったとはいえ教え子でも何でもない私に、本当に有り難いことでした。。

 これから、『源氏物語』に関して翻字などの仕事に田中さんも加わっていただき、一緒に取り組んでいこうと思います。
 ずっと気になっていたことだけに、遅ればせながら先生への報告ができることになり、とにかく安堵しています。

 もう一人、邱春泉さんは、ショートセッションの発表者です。
 河添房江先生からうかがっていたので、研究対象は異なるとはいえ、気にしながら発表を聞きました。しっかりしたいい発表でした。
 レセプションで親しく話をしました。中国での指導教授である張龍妹先生と、日本で指導なさっている河添先生の写真が掲載されている『源氏物語国際フォーラム集成』(源氏物語千年紀委員会編、平成21年3月、非売品)を、今回の発表記念として差し上げました。


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 これからのますますの活躍を楽しみにしたいと思います。

 個人的な話ばかりになりました。
 いい出会いがあったので、記し留めておくしだいです。
 
 
 

2015年11月 7日 (土)

京都ライトハウスでの点字百人一首体験会に参加

 ワックジャパンで源氏を読む会では、先月は『源氏物語』の舞台である内裏を散策しました。
 今日は、京都ライトハウスで開催された点字百人一首の体験をしてきました。
 次回は、12月5日(土)に宇治で開催される「視覚障害者文化を育てる会」の『源氏物語』に関するイベントに参加します。

 しばらくは、座学を離れて身体で『源氏物語』を感じる勉強会を続けます。

 さて、京都ライトハウスでは、毎年、日本の点字制定記念日である11月1日前後に「点字普及イベント」を開催しておられます。
 今日は、滋賀県立盲学校教員のロイ・ビッショジト先生の講演と、点字付き百人一首の体験会が、4階あけぼのホールで開催されました。

 プログラムは以下の通りです。


13:10〜14:40 講演「点字で切り開く私の人生〜言葉と文字の壁を越えて」
    講師:ロイ・ビッショジト先生(滋賀県立盲学校教員、日本点字委員会委員)
15:00〜16:20 点字付き百人一首体験会
    講師:点字付き百人一首〜百星の会
    協力:京都小倉かるた会

 本日の司会進行役は、京都ライトハウスの野々村好三さんでした。
 メモがテーブルに置けなかったこともあり、お腹に当てた点字資料を巧みに触読しながらの進行です。


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 野々村さんは、目の見えない方と一緒に古写本『源氏物語』が読めないか、ということを私が具体的な問題として最初に相談した方です。
 去年の初夏のことであり、「京洛逍遥(322)京都ライトハウスにて」(2014年06月12日)で詳しく記した通りです。

 その後、「京洛逍遥(375)嵯峨野で「点字付百人一首」を楽しんだ後は時雨殿へ」(2015年08月31日)で再会し、
2週間前にも、「京都ライトハウスで体験三昧」(2015年10月25日)でお会いしました。
 ご縁と親しみのある、『源氏物語』の触読研究についてのよき理解者でもあります。

 ロイ先生のお話は、非常に具体的でわかりやすい内容でした。
 その内容は、以下の通りです。

  1 私の母国バングラデシュの紹介
  2 バングラデシュの社会状況
  3 バングラデシュの視覚障害者
  4 私自身が辿ってきた路
  5 日本に来たきっかけ
  6 日本に来て
  7 点字に対する思い

 流暢な日本語で、ユーモアを交じえて語ってくださいました。
 インドの方々がそうであるように、どうやら日本語の習得や発音は問題が少ないようです。
 さらに、日本語の点字は、英語やベンガル語の点字に比べて、非常にうまくできていて、覚えるのに易しかったのだそうです。音の組み合わせがよく考えられているとのことでした。

 バングラデシュは日本の半分の面積にもかかわらず、人口は日本よりも多い1億6千万人だそうです。それだけに、教育の普及が遅れていることへの対処が大変です。
 また、視覚障害者の数は、日本が35万人であるのに対して、バングラデシュでは100万人と3倍です。

 日本に来て、日本文化の壁としては、日本語という言葉以上に、箸を使うことがもっとも難しいものだったそうです。
 また、現在は、日本語で考え、日本語で夢を見るのだとか。
 こうした楽しい話を織り交ぜながら、1時間があっという間に経っていました。

 質問時間の最後に、私は「日本のマンガ文化」についての感想をお尋ねしました。
 ロイ先生は、読む機会がないので申し訳ないが……とのことでした。
 このマンガとアニメ文化については、目の見えない方々にも体験してもらえる方策を検討しているところです。

 後半は、『点字百人一首』の体験です。
 今日は、ワックジャパンで源氏を読む会の仲間と一緒に参加していたので、その中から若者2人がカルタ取りにチャレンジしました。
 2人とも、大学で平安文学を専攻しているので、カルタを取るのは問題ありません。
 それよりも、点字付きのカルタを使ってのゲームが初めてだったので、貴重な体験となったようです。


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 今、変体仮名で書かれた百人一首を作成中です。
 それを立体コピーにして、そのゲーム化を考えた時に、今回の体験は大いに生きるはずです。

 今回は、初心者用の体験だったので、対戦式のルールとは違うようです。
 一応、今日のルールの一部をメモとして残しておきます。


・審判 正しさと速さを判定
・取った札は枠の外に出す
・札の場所を移動してもよい
・三枚残った時点で終了

 続いて、お馴染みの「坊主めくり」を、点字カルタでやりました。
 これには、私も参加し、2回目には11枚も取り、大勝ちしました。
 私がゲームに勝つのは、めったにないことです。


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 このルールのメモも残しておきます。


・姫 もう一枚
・男 そのまま
・坊主 すべて出す
・座布団の男は姫と同じで二枚ひく
・座布団の姫は場に捨ててある札すべてをもらう

 いろいろな機会を好機として、目の見えない方々のイベントに参加しています。
 少しでも多くの体験を通して、古写本『源氏物語』の触読研究をさらに発展させていきたいと思っています。
 今後とも、さまざまな情報をお寄せいただけると幸いです。
 
 
 

2015年10月21日 (水)

論文目録データベースと国際集会の案内

 『国文研ニューズ No.41 AUTUMN 2015』(平成27年10月16日発行)がウェブで読めるようになっています。


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 今号には、多年にわたり精力的に論文目録データベースの構築に尽力してくださっている浅田徹氏(お茶の水女子大学・教授)による、「『国文学論文目録データベース』の、あまりよく知られていないこと」(6~7頁)という文章が掲載されています。

 日本文学関係の研究論文を書く際には、実証的なものであれば、全員がこのデータベースを使っておられるはずです。これまでの研究成果の確認と、最新情報や資料収集でも活用しておられることでしょう。

 『国文学年鑑』(平成17年版、2007.10で終刊 )も含めて、長い年月利用されているこの「国文学論文目録データベース」は、平成 26 年春に装いも新たに公開しました。その経緯などについては、本データベースを担当している者として、「『新・国文学論文目録データベース』について(国文研ニューズ No.34 WINTER 2014)という報告をしました。

 以来、多くの方々に幅広く利用されています。
 しかし、国文研版のデータベースについて、「国立情報学研究所サイニー」や「国立国会図書館サーチ」との違いは、あまり理解されていないようです。

 今回、長年にわたって本データベースの公開に携わっておられる浅田氏の説明を読んでいただくと、その検索結果の的確さの背景がわかり、あらためて驚かれることでしょう。とにかく、人手がかかっているデータベースなのです。
 データベース構築の実際を知ると、この論文検索のさらなる有効な活用を試みたくなるはずです。
 思う存分に、いろいろなキーワードで検索をしてみてください。

 国文学論文目録データベース室では、このたび広報のためのリーフレット(三つ折り)を作成しました。
 これは、今週末に開催される中古文学会(会場:県立広島大学)で配布するために、新たに室内のみんなで検討を重ねて作ったものです。
 中古文学会会場のフリースペースに置いてありますので、ご自由にお持ち帰りください。


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 また、このリーフレットを学生等に配布してくださる方は、本ブログのコメント欄等を利用してお知らせください。送付先と担当者名を教えていただければ、こちらから必要部数を郵送いたします。

 なお、今号には、来月11月14日(土)・15日(日)に国文学研究資料館で開催される、「第39回 国際日本文学研究集会」の案内を兼ねたプログラムも掲載されています。
 立川まで足を運んでいただくと、多彩な研究発表が堪能できる一日となることでしょう。
 私は、第1日目の総合司会をしていますので、終日バタバタと飛び回っています。
 ご用等がおありの方は、2日目にお声掛けいただけると助かります。
 
 
 

2015年10月16日 (金)

研究会「表記の文化学」で日本語の表記について考える

 今年も、お正月恒例の箱根駅伝の予選会が話題となりだしました。
 予選会の会場が国営昭和記念公園なので、立川駅構内には参加大学の旗がズラリと並びました。


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 今、日本の若者たちは元気です。
 その熱気が、この各大学の旗からも伝わってきます。
 みんなに元気を配るイベントは、大いにやってほしいと思います。

 さて、今日は国文学研究資料館で開催された、入口敦志先生の共同研究会「表記の文化学 第3回(平成27年度第2回)」に出席しました。


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 この研究会は、「日本語の歴史的典籍の国際共同研究ネットワーク構築計画」という大型プロジェクトの一環として行われるもので、日本語の歴史的典籍における表記意識をさぐろうというものです。

 今日の研究発表は、
(1)入口敦志(国文学研究資料館)
   「標記と様式」
(2)一戸渉(慶應義塾大学斯道文庫)
   「和歌の真名書―大嘗会和歌からアララギ派まで―」
の2つでした。

 入口さんは、書籍の様式と表記との関係から、「図と文との関係」と「匡郭の有無」を取り上げ、そこに内在する問題点を示してくださいました。

 ・中国では、絵が先で文が後、日本では文が先で絵が後となっている。
 ・中国は匡郭があり、日本はない。
 ・和文脈か漢文脈かによって、本の体裁や表記が異なっていた。

 いろいろと刺激を受け、今後に発展する興味深い内容でした。

 続いて一戸さんは、非常に大きなテーマを抱えての発表でした。
 「和歌の真名書」ということに、最初は理解が及びませんでした。しかし、例示を解説してもらう中で、次第に問題の所在がわかってきました。
 和歌の書かれ方から見て、漢字で和歌を書いた真意は何か、という点に、私は注目して聞きました。これも、今後の展開が楽しみです。

 この研究会のテーマは、少しずつみんなで考えていくことによって明らかになることが取り上げられます。
 回を重ねることで、ますますおもしろくなることでしょう。

 日本語の表記について、私は今、古写本『源氏物語』を「変体仮名」を交えた翻字を進めているので、この研究会でも成果の一部を発表しようと思っています。「翻字」ということにポイントを絞り、みなさんと問題点を共有し、いろいろと教えていただきたいと思っています。
 
 
 

2015年10月14日 (水)

『日本古典文学翻訳事典1〈英語改訂編〉』もパスワードなしで公開

 先週、「『海外平安文学研究ジャーナル』の第1・2号もパスワードなしで公開」(2015年10月07日)という報告をしました。

 これで、電子版の『海外平安文学研究ジャーナル』は、これまでに公開した全3冊分を、自由に読んでいただけるように、オープンアクセス化を果たしたことになります。

 科研の成果として、「海外源氏情報」(科研HP)を通してオンライン公開していたものでは、『日本古典文学翻訳事典1〈英語改訂編〉』がパスワードを必要とするダウンロード方式として残っていました。

 その発行の経緯などは、本ブログの「『日本古典文学翻訳事典 1〈英語改訂編〉』を発行しました」(2014年04月01日)に記した通りです。

 これについても昨日、無事にオーブンアクセスにして公開することができました。
 以下のサイトからお手元に届きますので、自由に活用していただければ幸いです。

「日本古典文学翻訳事典1<英語改訂編>を再公開(2015年10月)」(2015年10月13日)


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 パスワード方式の際にお尋ねしていた、「第一言語」と「現在の居住地」に関する情報は、本研究の成果の利用実績として参考にしようと思っていたものです。
 しかし、その質問に応えていただくことがオープン化の妨げになっていることがわかったこともあり、思いきってパスワード方式を中断したしだいです。

 この科研(A)「海外における源氏物語を中心とした平安文学及び各国語翻訳に関する総合的調査研究」は、多言語を対象としたものです。その情報を必要とされる、また興味を持たれた方の「第一言語」と「現在の居住地」を教えていただくことは、情報の受容実体を知る上で有効なものとなるはずです。この2つは、個人情報には抵触しないものだと思っています。
 ダウンロードの際の必須事項から外しましたが、今後の参考にさせていただきますので、よろしければコメントとして残していただけると幸いです。

 今後は、『日本古典文学翻訳事典Ⅱ』として、〈英語〉以外の〈諸言語編〉を公開する準備を進めているところです。

 また、『海外平安文学研究ジャーナル』の第4号も、原稿を募集中です。

 多くの方々のご支援をいただく中で、お役に立つ情報の発信を続けていくつもりです。
 今後とも、ご理解とご協力を、どうぞよろしくお願いいたします。
 
 
 

2015年10月11日 (日)

点訳された古文の教科書と読み上げソフトを使った確認の必要性

 昨日の本ブログの記事について、仲間の渡邊さんから以下の情報が寄せられました。


現在の高校の古典の教科書では、「仁寿殿」は「じじゅうでん」で点訳されています。
ふりがなも、そのはずです。
「大鏡」の「若き日の道長」肝だめしのところ、第一学習社です。

本文テキストデータを音声パソコンで読みあげすると、「にんじゅでん」(学校の職員室の私のパソコン)だったり、「つとむことぶきどの」(自宅パソコンはこれ)だったり。
音声読み上げソフトの種類・バージョンにもよってまちまちです。

点字使用者が漢字を正しく読み上げてもらうのは、古文、漢文では難しいです。
どれが本当のよみなのか、わからなくならないようにしないと、と思っています。

生徒にも、先生方にも、特に試験問題の点訳をするとき、教科書通りにと、確認してもらうことにしています。

私も源氏物語ゆかりの地めぐり、機会があったらお願いしたいです。
距離感がつかめるというのは、素晴らしいですね。
実際に歩いてわかること、何よりだと思います。

 古文の教科書の本文を、音声読み上げソフトで確認しておく必要がありますね。
 全国の盲学校での教育現場では、どのように対処しておられるのでしょうか。
 目が見える見えないの問題ではなくて、正しく生徒や学生に伝わっているか、ということの確認のためにも、情報を集めてみる必要がありそうです。

 どなたか、情報をお寄せいただけませんか。
 また、調査されたことがおありの方がいらっしゃいましたら、その経緯と結果をお知らせいただけませんでしょうか。

 「仁寿殿」や「紫宸殿」の読み方に留まらず、さらにいろいろな問題点も浮上することでしょう。
 日本の文化を、各自が持つハンディキャップにかかわらず、等質な情報として均一で平等で正しくバトンタッチしていくためにも、この確認は大切なことのように思います。

 また、内裏の中や都大路を歩く事は、身体で古典を読むことにつながります。
 目が見えない方にこそ、この体験を通して、実感的に『源氏物語』を読んでもらえたらと思っていました。
 清涼殿から淑景舎(桐壺)に行くのには、北に105歩いて右に曲がり、まっすぐ90歩行くと着くのです。
 渡邊さんの希望に応えるべく、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉として京都散策の取り組みも考えたいと思います。
 なお、この『源氏物語』ゆかりの地とされた40箇所において、ハンディキャップの方への配慮は皆無です。もちろん、源氏千年紀が終わった今では、見常者である旅人への配慮もなく、ただ設置されているだけの状態です。これも、なんとかしなくてはいけませんね。

 12月5日に、広瀬浩二郎さんのグループのイベント「視覚障害者文化を育てる会(4しょく会)」で宇治を散策しますので、こうした折に私も案内方法やコツを学んで来ます。
 このイベントの詳細は、近日中にこのブログでも案内します。
 
 
 

2015年9月15日 (火)

京都ライトハウスの点字普及イベントの日程変更

 過日の記事「「点字付百人一首〜百星の会」の紹介と活動内容」(2015年09月01日)で、次の案内を記しました。


 10月31日(土)に開催される京都ライトハウスの体験会には、私も参加しようと思っています。
 点字の触読とともに、変体仮名の触読にも興味と関心をお持ちの方がいらっしゃいましたら、遠慮なくお声掛けください。

 この京都ライトハウスの点字普及イベントについて、日程が変更になりましたので、お知らせします。

 日時の変更と内容は、以下の通りです。


日時:11月7日(土)13時〜16時30分(受付は12時30分から)
 会場:京都ライトハウス 4階あけぼのホール
 内容:講演「点字で切り開く私の人生〜言葉と文字の壁を越えて」
    講師 ロイ・ビッショジト先生(滋賀県立盲学校教員、日本点字委員会委員)
    点字付百人一首体験会
    講師 点字付百人一首〜百星の会
 申込:10月20日(火)までに情報ステーション(075-462-4579 担当:高木・野々村)までご連絡ください。

 
 このイベントに、日頃はワックジャパンで『源氏物語』を読む会のメンバーも参加することにしました。鎌倉時代の変体仮名を読んでいることと、触読百人一首の話の流れから、この予定に変更することにしたのです。

 みなさんと一緒に、いろいろな切り口から日本の古典文学に親しんでいきたいと思います。
 
 
 

2015年9月14日 (月)

源氏を読みながらいただく季節の生菓子

 一昨日のワックジャパンでの源氏を読む会では、いつものように娘から季節の和菓子の差し入れがありました。
 秋らしいお菓子です。


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 手前は、両口屋是清の「お月見 ささらがた」です。私はウサギ歳生まれなので、このデザインが気に入りました。

 奥は、福壽堂秀信の生菓子で、左から「梢の九月」「山の秋」「菊のきせ綿」です。

 「菊のきせ綿」については、昨秋の重陽の節句の記事「京都で『源氏物語「蜻蛉」』の写本を読む(第13回)」(2014年09月06日)で、甘春堂本舗のお菓子「着せ綿」を紹介しながら詳しく書きました。

 『紫式部日記』に「九日、菊の綿を、兵部のおもとの持て来て、」とあり、『枕草子』には「九月九日は、暁がたより雨すこし降りて、菊の露もこちたうそぼち、おほひたる綿など、もてはやされたる。」とあることなどを例に引いています。

 お菓子で季節を感じるのもいいものです。目、鼻、舌、喉などなど、身体のいろいろな感覚を総動員して楽しめます。

 今回の両口屋是清は名古屋、福壽堂秀信は大阪と、いつもの京菓子とは違います。あらためて包装紙に書いてある住所をみたせいか、そんな気がするだけですが……

 「蜻蛉」巻の輪読については、昨日の記事に譲ります。

 次回のワックジャパンで『源氏物語』を読む会は、写本を読むのはお休みして、季節もいいので街中を源氏散歩することになりました。
 10月10日(土)午前10時から午後2時の短い時間ですが、かつて大内裏があったあたりを散策する予定です。
 内容は、源氏千年紀だった2008年に京都市内とその周辺に設置された、『源氏物語』に関する説明板(40箇所)をめぐるものとなります。
 このすべてを探訪した記録は、本ブログでは「源氏のゆかり~」として40本の記事を掲載しています。検索してお読みいただけると幸いです。
 第1回目となる来月10日は、「源氏のゆかり(4)説明板16-大極殿跡」(2008/4/10)からスタートすることになるかと思います。

 プランがまとまりましたら、また案内を記します。

 その次のワックジャパンで源氏を読む会も、写本を読むのではなくて外での勉強会となりました。
 予定では、11月7日(土)に開催される京都ライトハウスの点字普及イベントとしての講演と、「点字百人一首」の体験会に参加しようと思っています。
 これについては、明後日(15日)に詳細を本ブログに書く予定です。
 少しお待ちください。
 
 帰りに、寺町通りの一保堂を少し下ったところにある「紙司」さんへ立ち寄りました。


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 現在、国立歴史民俗博物館所蔵の「鈴虫」巻のことを調べています。
 この鎌倉時代の中期に書写された古写本には、「丁子型押し」がみごとな料紙が使われています。今確認できる現物の感触を知りたかったので、紙を専門に扱っておられるお店に寄ったのです。

 「丁子型押し」とは、丁子を煎じた黄茶色の液体を型の上から蒔いた、高級な染料染めを施した用紙です。その美麗さを実感したいと思っています。
 お店の方とお話をしていると、丁子染めの紙は出してくださいました。しかし、それは紙全体を丁子で染めたものだったので、全体が黄色っぽい紙でした。
 丁子で型押しや染料を蒔いたものについては、週明けに出入りの紙屋さんに聞いて調べてくださることになりました。
 わかりしだいに、また報告します。
 
 
 

2015年8月31日 (月)

京洛逍遥(375)嵯峨野で「点字付百人一首」を楽しんだ後は時雨殿へ

 JR嵯峨嵐山駅に隣接するトロッコ嵯峨駅のロビーには、牛車と撮影用パネルがあります。
 この地に立つと、もう平安朝気分になります。


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 この駅の目の前に、「ホテル ビナリオ嵯峨嵐山(コミュニティ嵯峨野)」があります。
 昨日は朝からここで、「百星の会」主催の「点字付百人一首」のイベントが行なわれました。


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 会場に入ると、カルタ取り競技の準備中でした。
 27名の参加者の内、全盲の方は12名です。
 京都ライトハウスや京都小倉かるた会からも、応援と支援のためにお出でです。

 特製のカルタ台に、点字付百人一首の札を、1ケース10枚をセットにし、2セット20枚が自分がこれから取る札となります。時間を惜しんでは、自分の札を暗記し、その位置を確認しておられます。


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 自分用の勉強用点字シートで、札と和歌の確認をしながら、作戦を練っておられる方もいらっしゃいます。


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 この点字付きカルタ取り競技は、『五色百人一首』を元にして各人の力量に合わせて行なわれるのです。

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 手元のカルタは、横に2枚のカルタ台を並べる方と、縦2段に配置される方がいらっしゃいました。これは、自由に組んでいいようです。


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 上級者の相対札の取り合いでは、各自20枚の札を守りながらも、相手の陣地にも攻め入ります。指もぶつかり合います。
 まさに、私がよく見る競技カルタと同じ迫力があります。


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 この上級者用の札には、対面するお互いが札の和歌が両方向から読めるように、点字が工夫して打たれています。
 また、カルタ台の札を固定する所にも、どちらからも持ち上げられるように、上下に溝があります。


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 初級、中級、上級と、それぞれの札で色分けされたグループが、和やかに、そして熾烈な局面を見せながら会場は盛り上がります。

 4つのテーブルに分かれ、各テーブルに選手3人ずつと1人の審判がつきます。
 和歌が読み上げられて、札を取って上に掲げると、審判は挙手で知らせます。


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 休憩を挟んでテーブル毎の対抗戦など、いろいろなゲームが組まれていました。
 みなさん、取り遅れた悔しさからか、次第にヒートアップしていかれる様子がわかります。

 いろいろなお話を伺いました。
 カルタ取りのルールは、まだ確定していないところがあります。特に、札を取ったらカルタを持ち上げるのですが、その早さの判定がまだ改良の余地があるそうです。
 ルールは、これから実践を通して見直されていくことでしょう。

 カルタ取りが終わると、全員で松花堂弁当をいただいてから、歩いて渡月橋の手前を桂川沿いに上り、百人一首の殿堂として知られる時雨殿へと移動しました。


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 時雨殿の常設展示室では、室内の周囲を百人一首を刻んだチタンパネルが貼り巡らされています。みなさんは、展示品を見ることができないので、説明を聞くしかありません。しかし、優しくなら触ってもいいとのご許可をいただき、このパネルに刻まれた文字を触読しておられました。


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 変体仮名で和歌が書かれているので、みなさんが読めるわけではありません。しかし、何人もの方が読める文字を見つけては大喜びをしておられました。これは、私が進めている触読研究の原点に出会った気がしました。

 2階に上がり、別室で平安朝の文香の体験です。
 今回は、「からくれなゐ香」「よはのつき香」「さねかずら香」の3種類を袋に入れて持ち帰ることになりました。


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 その後は、大広間で平安装束の体験となり、この着付けショーを、みなさん大いに楽しんでおられました。

 帰りは、みなさんとご一緒に、元来たJR嵯峨嵐山駅から電車に乗りました。

 私は、この点字付きの札が、変体仮名の立体コピーにしてもできる、という確信を得ました。
 ルールは「点字付百人一首」に倣いながら、墨字の仮名で書かれた札も取れるようになると、視覚障害者の興味と関心はさらに脹らむことでしょう。
 これから、その可能性を探っていきたいと思います。

 特に、点字を付けたカルタの場合には、古文の表記に問題が生じます。これは、点字と墨字で、日本語の表記体系が異なるからです。
 墨字で仮名文字の古文を読む場合には、点字とは異なる表記の問題が発生します。また、覚える文字の種類も多くなります。

 しかし、こうしたことは、『源氏物語』の触読を通して少しずつ解決する方向を探っているので、『百人一首』の場合もいずれは問題の解決に至ると思っています。

 京都駅に向かわれるみなさんとは、再会を楽しみにして、私は二条駅で電車を降りました。
 みなさまとの出会いに感謝しています。
 
 
 

2015年8月 2日 (日)

啓発と刺激を後で思い起こすための会合メモ

 このところ、多くの方のお話を伺う機会に恵まれています。
 研究発表や講演やシンポジウムを聞くと、その内容を理解しようとして真剣に耳を傾けます。
 自分が知らなかったことや、物の見方や考え方の開陳は、後に新たなひらめきにつながることが多いので、積極的に参加するようにしています。
 新たなネタの獲得や論理構築において、外部から注入されて啓発を受けた快感は知的刺激に満ちています。折々に思い出すことで、自分の栄養となっています。

 この猛暑の日々の中で、そうした場に身を置くことが重なったので、充実した夏となっています。
 もっとも、すぐに語られた内容を忘れてしまいます。
 ふっと断片を思い出しては、いつ、どこで、誰から受けた情報に端を発していることなのか、あれこれと思いをめぐらすことも多くなりました。一応自分では、加齢に伴う思考と情報の混乱だ、と思うことにしています。

 そんな時のためにも、発表題目や講演題目、そしてディスカッションのテーマなどを記録しておくことが、意外と後日役立つことがあるのも事実です。
 そんな意味からも、先週参加した集まりのプログラムを摘記して、備忘録の1つとしておきます。
 あまりにも多くの情報が行き交ったので、今ここに整理する暇がないことも一因です。
 あくまでも自分自身のための、文字を羅列しただけの無粋な情報です。
 


「表記の文化学 第2回 研究会」
 研究代表者:入口敦志
■日時 平成27年7月31日 午前10時半~12時
■場所 国文学研究資料館・第4会議室(南館3階)
■研究発表
  金子祐樹 「全一道人と行実図系教化書の比較研究」
 
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第1回 日本語の歴史的典籍国際研究集会
「可能性としての日本古典籍」
■日時:平成27年7月31日(金)〜8月1日(土)
■場所:国文学研究資料館大会議室
 
◎7月31日(金)
13:30 開会の挨拶 今西祐一郞
13:35 機構長挨拶 立本成文
13:40 来賓挨拶 文部科学省
13:45 趣旨説明 谷川惠一
14:00〜15:00 基調講演「古典籍共同研究とオープンサイエンス」有川節夫
15:20〜16:50 パネル1「古典籍研究の近未来」
 座長 山本和明
  報告1 寺沢憲吾
  報告2 橋本雄太
  報告3 北本朝展
  報告4 永崎研宣
 討議司会 後藤真
 
◎8月1日(土)
10:30〜12:00 パネル2「総合書物学への挑戦」
 座長 谷川惠一
  報告1 陳捷
  報告2 落合博志
  報告3 入口敦志
 ディスカッサント ルーカ・ミラージ/飯倉洋一/小林一彦
13:00〜13:50 講演「国際共同研究の意義--古活字版の終焉に向けて」
       ピーター・コーニツキー
14:00〜15:30 パネル3「紀州地域と寺院資料・聖教--延慶本『平家物語』の周縁--」
 座長 大橋直義
  報告1 宇都宮啓吾
  報告2 中山一麿
  報告3 牧野和夫
 ディスカッサント 佐伯真一/藤巻和宏/舩田淳一/牧野淳司
15:40〜17:10 パネル4「キリシタン文学の継承:宣教師の日本語文学」
 座長 郭南燕
  報告1 李梁
  報告2 陳力衛
  報告3 李容相
  報告4 ケビン・ドーク
 ディスカッサント 北原かな子/申銀珠/谷口幸代

 
 
 

2015年7月25日 (土)

江戸漫歩(107)乃木坂での講演後に公園で盆踊りを見る

 国文学研究資料館では、歴史的典籍に関する大型プロジェクトが進行しています。
 国際的な共同研究ネットワークの構築へ向けた一大プロジェクト「日本語の歴史的典籍の国際共同研究ネットワーク構築計画」が、平成26年度からスタートしています。

 これは、人文社会学分野では唯一、かつ初めての大型プロジェクトです。
 今年は、10年計画の2年目に当たります。

 今日は、「日本語の歴史的典籍データベースが切り拓く研究の未来」と銘打った公開シンポジウムが、都内の乃木坂にある日本学術会議講堂で開催されました。


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 その内容は、以下の通りです。


公開シンポジウム
「日本語の歴史的典籍データベースが切り拓く研究の未来」

日時 2015年7月25日(土)
会場 日本学術会議講堂(港区)

プログラム
司会 谷川惠一
開会の挨拶 長島弘明
「日本語の歴史的典籍データベースの構想」今西祐一郎
「和算資料が示唆する数学の将来」上野健爾
「文理にまたがる古医書の研究」ミヒェル・ヴォルフガング
「日本古典籍からみた料理文化の展開--料理書から料理本へ」原田信男
「東アジア文献アーカイブスの現状と未来」内田慶市
討議
閉会の挨拶 木部暢子

 本日の講演の内容は、いずれまとめて公開されるので、ここでは少しだけ個人的な感想を記しておきます。

・西洋の数学に対する江戸時代の和算における発想のユニークさと、関孝和の人となりについて興味を覚えました。

・日本の古医書には写本が多いという事実を初めて知りました。また、日本の鍼灸に関する情報をもっと聞きたいと思いました。

・平安から鎌倉時代にかけての料理書について詳しく調べたくなりました。江戸時代の料理本の多さには驚くばかりです。

・私がデータベースに着手したのは1981年です。それから34年経った今、画像処理が向上したこと以外には特段のトピックは少ないようです。

 いずれの講演も、国文学以外の異分野・他分野における興味深い内容で、大いに刺激をいただきました。寒すぎるほどに空調がよく効いた講堂の中だったので、体温と知的興奮とが適度にブレンドされて、心地よいシンポジウムとなりました。

 帰りがけに、浴衣姿の女性を多く見かけました。


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 行き先を見やると、青山公園(次の写真右側の木立の中)に入って行かれます。


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 太鼓と撥の音が賑やかに聞こえるので、公園に寄ってみました。
 これは霞町盆踊り大会で、これから夕刻にかけて、ますます盛り上がりそうな雰囲気でした。


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 全国各地で盆踊り大会が催されることでしょう。
 夏がやって来た、ということを実感しながら帰路につきました。
 
 
 

2015年7月10日 (金)

異分野の仲間から触読のアドバイスを受ける

 1万点にも及ぶ古書販売目録の調査のために、朝から千代田図書館へ行っていました。

 お昼休みに、最上階のレストランから皇居を眺めました。
 連日の雨がやっと上がりました。しかし、晴れたとはいえ、まだ不安定な気候の中にあることには変わりません。


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 千代田図書館が所蔵する目録資料調査に着手して4年目です。しかし、調査に行ける回数が少ないこともあり、まだ4パーセントの冊子を確認しただけに留まります。とにかく、捗りません。

 東京に居られる期間も、あと2年を切りました。図書館の書庫の書棚に眠る膨大な資料群は、誰かに託すしかありません。と言っても、まだ後継者が1人もいません。興味と関心がある方との出会いを、今も待ち望んでいるところです。

 当初より、『源氏物語』の古写本に限定しながらも、その周辺の情報も抜き出して整理しています。
 今日は、『源氏物語』に関しては数点抜き出しました。しかし、目新しい情報ではありません。古書価格の変移がわかるので、メモをしているものです。

 その代わり、私の問題意識が移り変わることが影響してか、視覚障害に関する本の書名が目に留まるようになりました。これまではまったく目にも止まらなかった書名が、急に視野に入ってくるのです。おもしろいものです。

 昭和10年に刊行された、盲目の村長に関する本がありました。インターネットで検索したところ、偶然にもその一部を読むことができました。明治31年から40年までの10年間の体験談から、貴重な情報が得られそうです。早速メモとして抜き出しました。

 この千代田図書館では、休憩時間などに館員の方や別件で調査に来ている仲間との情報交換で、思いがけないヒントやアドバイスがもらえます。
 今日は、触読や朗読に関する有益な情報を、数多くいただくことができました。
 以下、忘れない内に列記しておきます。


・古写本の文字をカラーコピーしたものを立体コピーすると、浮き出し方に高低の変化がつけられるのではないか。

・縦書きの文字であっても、それを横に寝かせた(文字を90度倒した)状態で指を横方向に移動させて触読したらどうなるか。

・文字を触った時に、その文字に対応した音声が流れるシステムを開発した際に、読み上げる声の抑揚に気をつけること。

・平成25年4月1日から「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)」が施行されたことに関連して、今回の私のテーマの後押しとなる支援がないかを調べること。

 現在取り組んでいる課題を、一緒に考えていた時のことです。そして、こうした異分野からの多視点のアドバイスを、自由な発想で意見として言ってもらえる仲間が身近にいることに、感謝しているところです。
 気の置けない仲間というのは、何でも言い合えて、本当にありがたいものです。

 この日の調査は午後3時で打ち切り、千代田図書館から目と鼻の先にある共立女子大学まで、高田郁の『みおつくし料理帖』の舞台である飯田川沿いを歩いて下って行きました。

 (以下、共立女子大学の話につづく)
 
 
 

2015年6月 4日 (木)

聞香の体験会で裏を読みすぎたこと

 今日は、総合研究大学院大学文化科学研究科日本文学研究専攻で博士論文を執筆中の武居さんが、国文学研究資料館の大学院生のための部屋で、聞香の体験会を開催してくださいました。
 大学院生として国文研に来ておられますが、武居さんはお香とお茶の先生です。

 これまでにも、武居さんとお香のことは、以下の記事で取り上げています。

「充実していた総研大学院生の研究発表会」(2012年11月29日)

「同志社大学でお香談義」(2013年05月01日)

「茶道資料館で香道具を見たあと筒井先生にお目にかかる」(2013年05月02日)

「京洛逍遥(316)京都における香道関係の調査に同行」(2014年04月25日)

 今日の参加者は、日本人4名、中国人留学生7名の計11名です。
 日本人というのは、大学院の専攻長や主任指導教授に副主任という、武居さんにとってはプレッシャーのかかる存在の教員たちです。

 まずは、ウエルカムの意味で「夏木立」というお香で部屋に迎えていただきました。
 そして我々お香に馴染みのない者のために、「文学と香道」というわかりやすい内容のレクチャーから始まりました。


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 一通りお香に関する勉強をした後、武井さんが香元となり、組香である玉川香をやりました。
 これは、武居さんの学位論文の中心となる『香道蘭之園』(菊岡沾凉、1737年)の巻7にも記されているものです。武居さんは現在、この『香道蘭之園』と共に大枝流芳による伝書群とも格闘中です。

 香炉の準備から始まる所作を、間近に見ることができたのはいい勉強となりました。
 なお、今日は立礼席で、テーブルのスペースに限りがあったため、作法通りの位置に道具を置けないなど、臨機応変な対処がなされたことを申し添えておきます。以下お読みいただくにあたって、ご理解のほどをお願いいたします。


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 試みの後、3炷を聞きました。

 本番である出香からの3炷を、私は次のように聞きました。
 これも厳密には正確ではありませんでしたが、今は出香された順番が問題なので、それはおいておきましょう。

  1 辛い 2 苦い 3 甘い

 ここで、解答用紙である名乗紙に答えを「一 二 三 むつ千鳥」と書こうとして、はたと思い留まりました。それが、あまりにも単純な数字列だったからです。

 この場に集まっているメンバーはみなさん初心者です。ほとんどが初めての体験です。その意味から言えば、分かり易い「一 二 三」という答えになる出香は、いわば一番無難なものです。
 しかし、と思い返したのです。

 武居さんの横に並んでいるのは、初心者だといっても、ここでは指導教授を始めとして武居さんにとってはそれなりの立場と重みのある先生方です。そうであれば、あまりにも易しい解答となっては、かえって先生方を軽く見たように思われないかと、気づかわれるはずです。

 とすると、あまりにも見え透いた単純な解答ではなくて、香元としては少しひねることで、それなりの敬意を表した対応を考えておられるのではないか、とも思われたのです。

 特に、一番目と二番目の香は、後で聞くと「きゃら」と「らこく」という、似た傾向の香りがするものでした。
 そこで、この似た香で混乱させて、後で間違えた先生方への説明をしやすいように仕組んでおられるのではないか、と私は読みました。
 私が名乗紙に書いた答えは「二 一 三 近江萩」です。「一」と「二」をあえて入れ替えたのです。

 正解は、「一 二 三 むつ千鳥」でした。

 後で武居さんに伺うと、混ぜ合わせることで、香元も答えが何かはわからない状態で進んでいくものだ、とのことでした。
 香元が香包みの用意はなさいます。しかし、焚く直前にシャッフルするため、香元であってもどの香がどの順に出るかは、いついかなる場合もわからないそうです。
 つまり、順番を変えるといったような作為は絶対にできないため、私が勝手に推測したことはまったく無意味なことだったのです。たまたま「一 二 三」という解答になった、というだけのことだったのです。

 まったく余計な先読みをしすぎていたのです。もっと素直に、自分が感じたままに名乗紙に「一 二 三」という答えを書くべきでした。浅知恵で裏を読もうとするな、ということなのでしょう。

 その意味でも、今日の聞香はいい勉強になりました。

 今日の「香之記」は、一点を取った中でも上座におられたひろしさんに贈られました。


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 その後の休憩時間には、両口屋是清の「二人静」と涼しい羊羹がお茶菓子として出されました。


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 和三盆糖を使用した「二人静」だけをいただき、その後の質疑討論会は早退して次の予定が組まれていた千代田図書館へ急ぎました。

 以下、その後の九段下の千代田図書館と、日比谷の日比谷図書文化館でのことは、長くなりますので明日にします。
 
 
 

2015年4月 1日 (水)

速報・科研費「挑戦的萌芽研究」で内定通知をいただく

 新年度がスタートした今日、新規プロジェクトとして申請していた科学研究費補助金による私の研究テーマが採択された、という内定の連絡をいただきました。

 昨年の5月5日に、東京・渋谷の温故学会で「塙保己一検校生誕 第268年記念大会」が開催されました。その記念講演として、私は「英国ケンブリッジ大学と米国バージニア大学の『群書類従』」と題するお話をしました。

「早朝の地震の後、渋谷の温故学会へ」(2014年05月05日)

 その時の懇親会で、目の不自由な方々と一緒に『源氏物語』の写本が読めないか、というかねてよりの問題意識を話題にして以来、その課題解決に取り組んで来ました。

 昨秋、私とは専門を異にする先生方のご理解とご協力を得て、日本学術振興会に「挑戦的萌芽研究」の分野で新たな科研費研究を申請しました。それが、本日、幸運にも内定通知をいただくことになったのです。

 現在私は、科研費研究としては、「基盤研究(A)︰海外における源氏物語研究及び各国語翻訳と日本文化理解の変容に関する調査研究」(課題番号:25244012、平成25年度〜28年度)に取り組んでいます。
 今回採択された「挑戦的萌芽研究」も平成28年度までの2年間なので、この2つの科研費研究は私が定年となる2年後に、共に終了となります。
 その意味では、これが私にとっては最後の公的資金を導入した研究となります。
 「基盤研究(A)」の方は着実に成果をネットに公開しているところなので、共に稔りある研究となるように努力したいと思います。

 今回新規に採択された課題遂行上の条件など、詳細な情報は追って通知が来るそうです。
 早速、以下のテーマとメンバーで、このプロジェクトの計画を推進する準備にとりかかります。


研究種目:「挑戦的萌芽研究」(平成27年〜28年)
分野:社会科学
分科︰教育学
細目︰特別支援教育
細目表キーワード︰視覚障害・聴覚障害・言語障害
細目表以外のキーワード︰古写本・仮名文字
研究課題名:「視覚障害者と共に古写本の仮名文字を読み日本古典文化を共有するための挑戦的調査研究」
課題番号︰15K13257
研究経費:4,896,000円(2年間、申請額)
研究組織:伊藤鉄也(研究代表者)・広瀬浩二郎(連携研究者)・大内進(連携研究者)・中野真樹(連携研究者)・高村明良(研究協力者)・岸博実(研究協力者)・間城美砂(研究協力者)・淺川槙子(研究協力者)

 
 なお、この新規プロジェクトの申請書には、次のように「研究目的」を記しました。


 現在、視覚障害者(以下、触常者という)の読書活動は受動的である。近年、パソコンの活用により、触常者の読書スタイルが多様化し豊かになった。しかし、点字と音声だけでは、先人が残した文化遺産の受容に限界があり、温故知新の知的刺激を実感し実践することが困難である。そこで、日本の古典文化を体感できる古写本『源氏物語』を素材として、仮名で書かれた紙面を触常者が能動的に読み取れる方策を実践的に調査研究し、実現することを目指すこととした。墨字の中でも平仮名(変体仮名)を媒介として、触常者と視覚に障害がない者(以下、見常者という)とがコミュニケーションをはかる意義を再認識する。触常者と見常者が交流と実践を試行しながら、新たな理念と現実的な方策の獲得に本課題では挑戦するものである。

 解決すべき課題が山積しており、容易に実現しないと思われる研究テーマです。しかし、刺激的な異分野の仲間と共に、失敗をおそれず挑戦的にテーマへの体当たりを敢行したいと思います。

 今後とも、さまざまな視点からのご教示を、よろしくお願いいたします。
 
 
 

2015年3月11日 (水)

電子ジャーナル『海外平安文学研究 第2号』を公開

 本日、『海外平安文学研究ジャーナル 2.0』(オンライン版)を「伊藤科研(A)のホームページ「海外源氏情報」」から公開しました。
 PDFでの公開です。ダウンロードしてご自由にお読みください。

 まず、トップページ左横にある〈NEW 『海外平安文学研究ジャーナル』〉か、中央下にある〈翻訳史&論文データベース〉の中の左下にある〈海外平安文学研究ジャーナル(20150311)〉をクリックして、〈海外平安文学研究ジャーナル〉のページに進んでください。


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 そして、〈ダウンロード〉の中の〈2.海外平安文学研究ジャーナル vol. 2.0(2015/03/11)〉をクリックすると、電子ジャーナルの表紙と目次の下に、〈●アンケートに回答する(パスワードはアンケート回答後に表示されます)〉というボタンがあります。


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 この〈アンケートに回答する〉をクリックすると、ご自身の第1言語と現在の居住地をお尋ねする画面となります。


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 これは、パスワード取得前に簡単なアンケートをお願いしているものです。
 日本国内の方の場合は、「第1言語」は「日本語」、「現在の居住地」は「日本」、「メッセージ」は随意で結構です。


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 この後に送信ボタンを押していただくと、画面にパスワードが表示されます。


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 ダウンロード後にお読みになる時には、PDFファイルを開封するために、このパスワードが必要となります。
 何度でもパスワードは取得していただけます。もちろん、上記の「第1言語」と「現在の居住地」以外の個人情報を求めることはありません。
 最初のダウンロードで、このパスワードをメモしていただくと、後々簡便にファイルを閲覧していただけます。

 少し面倒な手続きを踏んでいます。公的資金によって編集・作成した刊行物の公開のため、報告書に記載する利用調査報告の一部とするものです。海外向けの情報発信でもあることを意識して、こうした設定となりました。
 科研の成果報告であるという趣旨をご理解いただき、言語別・国別の情報提供にご協力をお願いいたします。

 今回の第2号では、平安文学を中心にした以下の内容を掲載しています。

〔1〕研究論文
〔2〕小研究(note)
〔3〕研究余滴(column)
〔4〕翻訳実践

 また、[目次]は以下の通りです。


・あいさつ 伊藤 鉄也
・原稿執筆要項
◎特集「国際研究交流集会」(2014 カナダ)
 序文
 国際研究交流集会プログラム
 英訳された『枕草子』が作り出した大衆文化 Gergana Ivanova
 小説として読まれた英訳源氏物語 緑川 眞知子
 1955 年のサイデンステッカー訳蜻蛉日記について 川内 有子
 カナダ国際研究交流集会レポート 海野 圭介
 新出資料『蜻蛉日記新釈』(上・下) 伊藤 鉄也、淺川 槙子
◎研究の最前線
 『源氏物語』韓国語訳と李美淑注解『ゲンジモノガタリ1』 李 美淑
 スペイン語に訳された『源氏物語』の書誌について 淺川 槙子
・執筆者一覧
・編集後記
・研究組織

 なお、引き続き、『海外平安文学研究ジャーナル3.0』の原稿を募集しています。


・詳細は、本科研のHPに掲載された、「『海外平安文学研究ジャーナル』応募執筆要綱」をご覧ください。
・原稿の締め切り 2015年7月31日(金)
・刊行予定    2015年9月30日(水)
・ご注意 原稿執筆者は公開から1年以内に1度だけ、原稿を《改訂版》に差し替えることができます。

 この電子ジャーナル刊行について、お知り合いの方にも連絡していただけると幸いです。
 お気付きの点などは、「サイトの諸注意(リンク・利用など)と情報提供のお願い」の最下段の〈情報提供のお願い〉からお寄せください。
 今後とも、ご教示などを、よろしくお願いいたします。
 
 
 

2015年3月10日 (火)

読書雑記(118)今野真二『日本語の考古学』岩波新書

 今野真二氏の『日本語の考古学』(岩波新書、2014.4刊)を読みました。
 その読書メモを残しておきます。


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 最近は、仮名文字の成立に関する歴史に興味をもっているので、楽しく読みました。
 著者が平安文学の文献にも興味を持っておられるので、その用例が大いに参考になりました。
 また、過去の時点に視点を置いた語り口から、現在がくっきりと炙り出されていたように思います。
 書写されたモノに語らせる手法で解説がなされているので、わかりやすく読み進めることができました。

 以下、切り抜き帳として、注目した箇所を列記します。

・「稿者はかつて『源氏物語』を一帖ずつ「翻字」し続けていたことがある。「翻字」とは、過去の日本語に関していえば、幾分か行草書的に書かれた漢字やいわゆる「変体仮名」を、現代わたしたちが使っている漢字や仮名に置き換えることである。なぜそのようなことをやったのかといえば、ひたすら「過去の文献が読めるようになるため」であるが、これは稿者が大学で国語学を学んでいた頃は、必須のスキルであった。考古学者が遺跡からきれいに出土品を掘り出すためのスキルのようなものであろう。当時写真版で刊行されていた『源氏物語』はすべて翻字したので、結局、『源氏物語』五十四帖を二回ほど(あるいはそれよりも多く)は写した計算になるが、それでもスキルを磨くのに充分とはまったくいえない。そのため、『源氏物語』の翻字が終わった後も十年間ほどはそうしたことを続けていた。するとある時、ある人に、電子化されたものがあるのに、なんで手で写しているのか、電子化されたものをあげるよ、と言われたことがある。しかし、手で翻字することによってわかることは多いし、そうしなければわからないこともありそうだ。スキルを身につけるために時間を費やさなければならないが、その時間は何らかのプロセスでもある。少なくとも稿者はそうした手法を認めたいし、そうした手法に魅力を感じる。」(ii~iii 頁)
【ここで言われる写真版の『源氏物語』とは、おそらく筆者が大学に就職されるまでに刊行された、書陵部本(1968)、高松宮本(1974)、尾州家河内本(1977)、穂久迩文庫本(1979)、陽明叢書(1982)の、5種類の内の2セットあたりでしょうか。】

・(『(宗祇)初学用捨抄』という室町期に書写された初学者用の連歌作法書について)「この写し手は書写の際に、原本の漢字を仮名にしたり、原本の仮名を漢字にしたりという変更を加えていたということになろう。そうすると、この写し手にとっては、(ということはおそらくこの時期の書き手にとっては)仮名で書くか漢字で書くかということは、かならず「本文」どおりにしなければいけないことがらではなかったことになり、これもきわめて興味深い。」(181頁)
【親本に書かれた文字を、どれだけ正確に書写したかということです。この例は、室町期の作法書なので、平安や鎌倉の物語とは、その書写態度が異なるものです。こうしたことは、物語にもいえることなのか。さらなる検証を進めてほしいと思いました。】

・「現代に生きるわたしたちは、「現代」と無関係に存在することができない。わたしたちは今生きている状況において育まれた価値観にしたがって、抽象的な面もふくめて、物事を見たり判断したりする。それは当然のことであり、悪いことではないが、前提としてそのことをきちんと自覚しないと、つねに現代をよしとした基準によって(過去の事物まで含めた)あらゆることがらを判断してしまうことになる。現代を基準として過去を認識しようとすると、見損なうことも少なくない。
 「きちんと」というのは、細部まで目を配って、ということでもある。本書で見てきたように、その時代の意識や認識の仕方というのは、うっかり見落としてしまうような細部にあらわれることもままある。「書き方のそんな細かな違いはどっちでもいい」というのは、その「違い」が失われてしまった現代の感覚かもしれない。」(253頁)
【写本や資料が書写された時代を尊重して、きちんと読み解く必要性を語っているところです。「現代」をモノサシにして、「現代」の感覚でものごとを判断することへの警鐘ともなっています。】
 
 
 

2015年3月 9日 (月)

〈第4回 池田亀鑑賞〉の募集は平成27年3月末日が〆切りです

 〈第4回 池田亀鑑賞〉の募集は平成27年3月末日が〆切りです。


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 応募の〆切りまで、あと3週間となりました。

 これまでの受賞作は、以下の通りです。
 弛まぬ努力が結実した、すばらしい成果に対して贈られました。


 平成24年度 第1回受賞作 杉田 昌彦氏『宣長の源氏学』(新典社)
 平成25年度 第2回受賞作 岡嶌 偉久子氏『林逸抄』(おうふう)
 平成26年度 第3回受賞作 須藤 圭氏『狭衣物語』(新典社)

 募集内容や選定に関する詳細は、「池田亀鑑賞のホームページ」をごらんください。

 応募対象は、平成26年4月1日〜平成27年3月末日の間に刊行された奥付のものと発表分です。
 自薦・他薦を問いません。

 この「池田亀鑑賞」の趣旨は、ホームページに以下のように明記されています。


「池田亀鑑賞」は、文学の研究基盤を形成する上で、顕著な功績のあった研究に対して贈るものです。
その地道な努力を顕彰し、さらなる成果の進展を期待する意味を込めています。
「池田亀鑑賞」は、伝統ある日本文学の継承・発展と文化の向上に資することを目的として、池田亀鑑生誕の地である日南町と池田亀鑑文学碑を守る会が創設しました。

 また、選定にあたっては、「前年に発表された『源氏物語』を中心とする平安文学に関する研究論文や資料整理及び資料紹介に対し、学界に寄与したと評価されるもの1作品を選定します。」とあります。

 つまり、「研究論文や資料整理及び資料紹介」が対象であることが、この池田亀鑑賞の特色です。

 応募先は以下の通りです。


〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1-44-11
新典社内 池田亀鑑賞事務局
TEL:03-3233-8051  FAX:03-3233-8053
e-Mail︰info@shintensha.co.jp

 選考は、以下の6人の委員があたります。


伊井春樹(会長)
伊藤鉄也(委員長)
池田研二
妹尾好信
小川陽子
原 豊二

 今年もすばらしい作品の応募があることでしょう。

 選考委員の一人として、池田亀鑑賞のホームページに私は次のコメントを寄せています。


文学研究の基礎を支える資料を整理し、成形し、提供する営為には、多大な時間と労力と根気が必要である。そして、こうした作業や仕事にこそ、弛まぬ努力と継続への理解と応援が必要である。池田亀鑑賞は、日頃の地道な調査研究活動に光を当て、さらなる励みと新たな目標設定を支援するところに意義があると思っている。達成したものばかりではなく、進行しつつあるものも含めて、研究環境の整備に貢献した仕事を顕彰したいと思っている。
 コツコツと研究を続けて歩んで来られた成果が、今回も応募作として並ぶことを、大いに期待し、楽しみにしています。

 池田亀鑑賞についてのお問い合わせは、上記「新典社内・池田亀鑑賞事務局」にお願いいたします。
 
 
 

2015年2月26日 (木)

渋谷氏の「源氏物語の世界」NPO法人 再編集版を公開

 渋谷栄一氏が高千穂大学を退職されるにあたり、それまでに構築して来られた『源氏物語』とその周辺に関する膨大なデータ群を、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉に委譲していただきました。
 この経緯については、以下の記事で詳細に報告した通りです。

「渋谷版ウエブサイトのNPO法人〈GEM〉への譲渡契約が成立」(2014年02月19日)

「NPO設立1周年記念公開講演会を終えて」(2014年03月23日)

 渋谷氏が公開して来られたデータベースの中でも、「源氏物語の世界 藤原定家「源氏物語」(四半本型)の本文と資料」に関しては、早くから渋谷氏のサイトにリンクを張ることで、NPO法人として広く公開し、活用していただけるようにお手伝いをしてきました。

 それ以外のもので、高千穂大学をベースにして公開されていたものは、その整理に手間取っていました。
 それが、今週(2月22日)、その再編集版の公開に漕ぎ着けることができました。
 (広報担当の中村美貴さん、根気強く対処していただき、ありがとうございました。)
 
「渋谷栄一氏より委譲「源氏物語の世界」NPO法人 再編集版」

 まだリンク切れや文字化けなどの不備が残っているかもしれません。
 これについては、一般に公開する中で、少しずつ形を整え、データの補訂をしていきたいと思います。
 お気付きの点やご要望などを、ご教示いただけると助かります。
 このデータベースも、さらに使い勝手のいいものに育てていくつもりです。
 
 
 
 

2015年2月23日 (月)

帰国直前に大英博物館で日本美術を見る

 前々回ケンブリッジに来た時には、電車が途中で止まり、代行運行のバスに乗り換えて行きました。 ロンドンとケンブリッジ間の電車は、大幅に遅れたこともしばしばあります。

 イギリスを発つ日なので、早めにロンドンに入っておくことにしました。
 朝早くにケンブリッジ駅からの出発でした。しかし、駅には外のバス停まで長蛇の列です。みなさん、切符を買うために並んでおられたのです。理由がロンドンに着いてからわかりました。自動券売機の操作が大変なのです。あらかじめリターンチケットを買っておくべきでした。

 キングスクロス駅に荷物を預け、歩いて15分ほどの大英博物館へ行きました。帰国までの寸暇を惜しんでの行動です。

 街中には、こんなレトロな建物が点在しています。


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 この大英博物館の周りのブルームスベリーと呼ばれる地域は、かつて文学者たちが集まっていたただけに、いろいろなことを想像させてくれます。『源氏物語』の英訳をしたアーサー・ウェイリーも、その仲間の一人でした。

 大英博物館のすぐそばには、アーサー・ウェイリーが滞在して『源氏物語』を翻訳したと言われる、ホテル・ラッセルがあります。


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 ここは、すぐ近くのロンドン大学などに来る時などに、いつも立ち寄るようにしています。

 銀婚旅行で来た2003年7月末は、このホテル・ラッセルに泊まり、すぐ横にあるハーツでレンタカーを借りて10日間の自由な旅をスタートさせました。


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 オックスフォード、バース、コッツウォールズ全域、ストラットフォードアポンエイボン、レスター、そして当時は娘が留学生活をしていたヨークに立ち寄り、ケンブリッジ、そしてロンドンに戻るという1周旅行だったのです。通りかかった街で宿を探すという、妻と2人で行き当たりばったりの気ままな旅でした。

 しかし、今回は円のレートが悪いので、ホテル・ラッセルは高すぎて泊まれません。

 それでも、ここの雰囲気を味わうために、中に入れてもらいました。
 私は、この入口からすぐ右手の階段が好きです。写真は、2階から降りた踊り場から玄関口のホールを撮ったものです。
 正面突き当たりのコーナーは、人との待ち合わせによく使わせていただくエリアです。


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 大英博物館では、アジアとエジプトの美術を見ました。特に、ルーム92から94の日本ギャラリーは、じっくりと見ました。

 まず目に飛び込んで来たのは、日本の漫画を横に置いた展示でした。漫画人気も手伝ってか、他のセクションにも漫画がありました。日本の物に親しんでもらうためには、いい演出となっています。


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 茶道のコーナーが一番気になりました。
 お茶のお稽古に行く時間がなかなか確保できない日々です。1月は1回、2月は1回も行けません。そのせいもあってか、身体で覚える機会が少ないので、見られるものがあるとすぐに反応します。

 室内に設けられたお茶室「和英庵」は、裏千家の協力で作られたものでした。定期的に実演があるそうです。しかし、この日はありませんでした。


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 茶釜と蓋置が展示されていました。由緒はわかりません。


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 左から、「つくばね蓋置 義之助(生年不祥)作」、「田口釜 初代門脇喜平(1918年生)作」、「撫肩竹紋筒釜 十五代菊池直正(1959年生)作、「八角面取甑口釜 高橋敬典(1920-2009年)作」とありました。

 日本の古典文学に関する展示では、偶然でしょうか、『伊勢物語』の東下りの段が2作品もありました。

「伊勢物語 東下り・富士の山 住吉如慶(1599-1670年)筆」


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「伊勢物語 嵯峨本(初版本、1608年)」


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 2時間ほど、駆け足で観て回りました。
 これだけで、もう満足です。
 
 
 

2015年2月13日 (金)

仮名文字に関する2つの研究会に参加

 今日は、2つの研究会が一部重複して同時進行でありました。共にメンバーとなっているので、慌ただしい参加となりました。

 まず、入口敦志先生が研究代表者としてスタートされたばかりの【表記の文化学 ―ひらがなとカタカナ―】です。これは、国家的規模で推進されている「日本語の歴史的典籍の国際共同研究ネットワーク構築計画」(大規模学術フロンティア事業)における共同研究です。

 今日は今西祐一郎館長の挨拶と問題提起で、第一回目の研究会が始まりました。
 多彩なメンバーが集っています。私は、中古文学の領域からの参加です。
 時代も分野も異なる先生方のコラボレーションとなるので、今後の成果が楽しみです。
 私が来月から行く天理図書館の調査は、この研究の一環となるものです。

 別会場では、少し時間をずらして、今西館長科研の最終回となる研究会がありました。
 これは、私が5年間お世話をした科研の会です。今回が最後の研究会なので、私も現在進めている研究の一部を発表しました。

 今日の私の発表は、「次世代に引き継ぐ翻字資料作成に関する提言 ─変体仮名を混在させて表記すること─」と題するものです。
 今取り組んでいる〈変体仮名混合版〉による翻字について発表をしました。

 内容は、すでに本ブログで公開したことが中心です。
 今日は、最近整理した資料をもとにして、ハーバード大学本「須磨」と「蜻蛉」、そして国立歴史民俗博物館本「鈴虫」の3本が、同じ文化圏で書写された写本であることを報告しました。
 変体仮名の文字遣いを通してわかったことの一例として、特徴的な字母表記である「ものかたり」という文字がどのように表記されているか、ということをとりあげたものです。


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 「可多り」「可多里」「可堂里」「か多り」と書写されている例の検討です。
 これは、変体仮名を混在させた翻字資料があるからこそ可能な研究となります。
 ここからも、三本に書写された文字の表記傾向が明確にうかがえます。
 〈変体仮名混合版〉による翻字は、次世代に引き渡す翻字資料として、今後とも有益なデータとなることでしょう。

 今日は統計学の手法を導入した若手の発表が2つもあり、活発なやりとりがなされました。
 仮名で書くか漢字で書くかというテーマは、まだまだ検討課題が山積しています。

 現在、研究報告書の第4号の編集が、プロジェクト研究員の阿部さんのもとで進んでいます。3月には出来上がりますので、しばらくお待ちください。
 昨秋カナダのブリティッシュ・コロンビア大学で実施した、国際研究集会の報告などが掲載されています。
 
 
 

2014年12月29日 (月)

教科書に見る平安朝・小学校—国語(11)三省堂・信濃教育会出版部

 三省堂が作成した小学校国語の教科書で私が実見したのは、昭和36年度版の13冊だけです。
 また、信濃教育会出版部の教科書も、実見したのは昭和36年度版と昭和40年度版の25冊だけです。
 これらは、京都府立図書館に収蔵されている戦後の学校教科書のコレクションが調査対象だったことに起因するものです。
 
 
【三省堂】(13冊)
 
昭和36年度用


2年下 「小さなかみさま」 大国主命と少彦名命の話
5年上 「日本の文字」 字母のことが少し
5年下 「むかしの都」 京都・奈良・大阪の文章


*本年度の三省堂の教科書には、古典の香りがまったく感じられない編集となっています。

 
 
【信濃教育会出版部】(25冊)
 
昭和36年度用

一ねん中 「一寸法師」
二年下  「かぐやひめ」
三年上  「大きなふくろをしょった神さま」(因幡の白兎の話)
四年上  「海ひこ山ひこ」(神話)
五年下  「わたしたちの文字」 万葉仮名、カタカナ(元の漢字の一部)、平仮名(元の漢字の一部)
六年上  「古都だより」 京都と奈良の文章
     「わたしたちの古典」 「万葉集」「源氏物語」


*五年下の「わたしたちの文字」には次の説明文があります。
 「「源氏物語」のようなりっぱな小説が、一千年もむかし、世界のどこの国にもさきだって作られたのも、かなのおかげである。」
*六年上の「わたしたちの古典」の冒頭説明文中に「万葉集・源氏物語などは、日本の代表的な古典です。」とあります。
 『源氏物語』は二節に分けて紹介されています。「若紫」と「末摘花」の二巻を元にして少女若紫の姿をかわいらしく小学生用に書き換えたものです。

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    昭和40年度用
一ねん上 「一寸法師」 二年下  「かぐやひめ」 三年上  「大きなふくろをしょった神さま」(因幡の白兎の話) 四年上  「海ひこ山ひこ」(神話) 五年下  「わたしたちの文字」 上記昭和36年度版と同じ 六年上  「古都だより」 ただし昭和36年度版を少し削除したもの      「俳句と和歌」 「一茶の俳句」と「万葉集」に変更
*昭和36年度版の「わたしたちの古典」の単元名が「俳句と和歌」に変更されました。そして、この単元では、残念なことに『源氏物語』が削除されて「一茶の俳句」と入れ替わっています。『万葉集』はほぼそのまま再録されています。
   

2014年12月27日 (土)

教科書に見る平安朝・小学校—国語(10)大阪書籍

 大阪書籍が作成した小学校国語の教科書で、昭和28年度から平成8年度までの40冊の内、平安朝の理解につながる教材を確認します。
 以下に取り上げた教材は、多分に個人的な趣味のものも多いことを、あらかじめご了解ください。
 
【大阪書籍】(40冊)
 
昭和28年度用


5年上 「書物の研究」という文(18頁)に日本の写本のことはまったく出ない。
5年下 絵巻物として「鳥獣戯画」が取り上げられている。「衣川」(『義経記』)

 
 
昭和29年度用

5年下 昭和28年度版にあった「マハトマ・ガンジー」が「インドの父」として採択。
    「衣川」(『義経記』)が「主従愛」(指導の記載)を考えさせる教材として再録。

 
 
昭和32年度用

1ねん下 「いっすんぼうし」
2年上  「浦島太郎」
2年下  「やさしいかみさま」 『古事記』より大国主命の話
3年上  「かぐやひめ」
4年上  ・昭和28年度版にあった「本のれきし」がこの改訂版では削除
4年下  ・昭和28年度版にあった「ぞうの話」がこの改訂版では「羽衣」と共に削除
5年上  「京都の春」 7頁にわたる写真入りの風物詩。
     「春はあけぼの」が再録。
     昭和28年度版にあった「ひえだのあれ」が「『古事記』の編集」として
     挿し絵入り6頁で再掲載。
6年上  「京への旅」(『更級日記』)は、昭和28年度の目次にもある。
6年下  「わかむらさき」(『源氏物語』)


*1ねん下の「いっすんぼうし」では、各頁上下いずれかの段にカラーイラスト(計8枚)が挿し絵として使われています。


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 なお、文節が泣き別れとなる箇所(上図5行目末尾「おかあさん=を」)に「=」が付されていることについては、現在調査中です。この年の教科書は、私が小学校1年生の時に実際に使用した年度です。まったく記憶がありません。大阪書籍以外では、そのような記号は使われていないようです。この件で、何かご存知の方がいらっしゃいましたらご教示をいただけると幸いです。

 昭和28年度版にあった「春はあけぼの」(『枕草子』)が現代語訳と挿し絵入り6頁で再録されています。冒頭の紹介文には、次のような説明があります。
 「同じころに書かれた「源氏物語」とならんで、平安朝文学の代表作とされ、むかしから多くの人々に読まれ、親しまれて来ました。」

 「『古事記』の編集」の最後には、次のような記述があります。
 「「古事記」で、音を表わす字として、漢字を使うようになったことが、やがて、ひらがなやかたかなができるもとになりました。そして、かなが使われるようになって初めて、源氏物語などという、世界じゅうの人々に愛される文学作品が、生まれました。」

 「京への旅」は菅原孝標娘が『源氏物語』を読んだことを、挿し絵入りで語るものです。この冒頭に、「この文に出てくる「源氏物語」は、この日記より五十年ほど前に、書かれたものです。」とあります。

 「わかむらさき」は、冒頭に詳しい『源氏物語』の解説があり、末尾に以下の文が記されています。
 「この文は、源氏物語の一部を、現代語に書き直したものである。(中略)近年英語訳も出版され、日本ばかりでなく、世界で最もすぐれた作品の一つとして、高く評価されている。」
 内容は、「若紫」と「末摘花」の一節を現代語訳したものです。挿し絵は、国宝源氏絵巻とイラスト2葉。

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    昭和36年度用
1ねん下 「いっすんぼうし」

2年上  「白うさぎ」「かぐやひめ」

3年上  「力くらべ」 アイヌ伝説と神話

4年下  「白い鳥」 『古事記』よりヤマトタケルのクマソ征伐の話



*「いっすんぼうし」は昭和32年度と同じ教材の採択。ただし、この昭和36年度用と次の昭和39年度用では、昭和32年度用の最終頁にあった堀川少将になる頁(上掲図版の頁)がカットされています。

 
 
昭和39年度用

1ねん下 「いっすんぼうし」

2年上  「白うさぎ」「かぐやひめ」


 
 
昭和40年度用

三年下 「インドからぞうが来た」「力くらべ」

五年上 「「古事記」の話」で上記同文で『源氏物語』に言及。

    「本の歴史」に写本の説明はない。

五年下 「北国落ち」(『平家物語』)の説明文

六年下 「すさのおと大国主」。「古都の花」は『平家物語』の忠度の都落ちの話。



*「インドからぞうが来た」は、昭和24年にインドのネルー首相から上野動物園に「インディラ」というゾウが贈られた話です。

 
 
平成8年度用

5上 「日本語の文字と言葉」に字母のことが少し

6上 短歌に人麿・敏行・実朝の歌あり。

   与謝野晶子の歌碑のカラー写真が巻頭にあり、晶子の文学碑について8頁もの文章があります。マザーテレサについても書かれています。


 
 
 

2014年12月26日 (金)

教科書に見る平安朝・小学校—国語(9)日本書籍(その2)

 日本書籍が作成した小学校国語の教科書で、五年生と六年生の教材を確認します。
 「ゼロの発見」(インド)については、個人的なメモとして追記したものです。
 
【日本書籍】(127冊の内)
 
昭和28年度用


6年の2 「鳥獣戯画」(説明文だけ)

 
 
 昭和31年度用

5年の1 「御所の岩」(『吉野拾遺』より)は平安らしい内容

 
 
 昭和33年度用

6年の1 「古典から」の単元に『宇治拾遺物語』『徒然草』『十訓抄』(「船上の一曲」)

 
 
 昭和36年度用

6年の1 「古典から」の単元に『徒然草』『十訓抄』(「船上の一曲」)。『宇治拾遺物語』がなくなる

 
 
 昭和40年度用

5/1 「日本の文字」に平仮名とカタカナの字母表
6/1 「古典から」の単元に『宇治拾遺物語』、『十訓抄』(「船上の一曲」)。『徒然草』がなくなる
6/2 「ゼロの発見」(インド)、「和歌(持統天皇・実朝)。「御所の岩」(『吉野拾遺』より)は平安らしい内容

 
 
 昭和43年度用

5.1 「日本の文字」に平仮名とカタカナの字母表
6.1 『十訓抄』(「船上の一曲」)
6.2 「ゼロの発見」(インド)、「和歌(持統天皇・実朝)。「御所の岩」(『吉野拾遺』より)は平安らしい内容

 
 
 昭和46年度用

5上 「船上の一曲」(『十訓抄』より)
5下 「日本の文字」に平仮名とカタカナの字母表
6下 「ゼロの発見」(インド)


*秋山虔加入

 
 

 昭和49年度用


5上 「船上の一曲」(『十訓抄』より)
5下 「日本の文字」に平仮名とカタカナの字母表
6下 「ゼロの発見」(インド)

 
 
 昭和52年度用

5上 「はかまだれ」
5下 「日本の文字」に平仮名とカタカナの字母表
6上 「馬ぬすびと」(頼朝の時代の話)、「ゼロの発見」(インド)


*稲賀敬二加入

 
 
 昭和55年度用

5年下 「ゼロの発見」(インド)
6年上 「日本の文字とことば」に平仮名と『源氏物語』のこと。字母表あり。


*これまでの仮名の説明では『万葉集』だけが引かれており、6年生の「日本の文字とことば」で『源氏物語』に触れるのは珍しい。

「今、わたしたちの使っているひらがなのもとになった漢字、くずした形の表を、次のページに示しておきましょう。ひらがなは、平安時代の婦人たちのあいだで発達したものらしく、古くは「おんな手」とよばれていたようです。「源氏物語」などは、このひらがなによって書かれたけっ作です。
 むかしは、同じ音を表すにもいくつかのひらがながあったのですが、明治時代になってから、今日の形に統一されました。そば屋ののれんに残る「楚者゛」という字は、むかしのひらがなのなごりです。」

 なお、ここに掲載された表では「字母」ではなくて「ひらがなの字源」となっています。


 
 
 昭和58年度用

5年下 「船上の一曲」、「ゼロの発見」(インド)
6年上 「日本の文字とことば」に平仮名と『源氏物語』のこと。字母表あり。巻頭に変体仮名で書かれた暖簾のカラー写真を掲載。学習用の「手引き」が一新されている。
6年下 「和歌」に志貴皇子あり

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 昭和61年度用


6年上 「日本の文字とことば」は書き換えられている。字源(字母)表はそのまま。『源氏物語』のことが消える。

「ひらがなは、平安時代(八~十二世紀)から女性に主に使われ始め、作りあげられたので「おんな文字」とか「おんな手」とよばれました。」

 「紙の歴史と文化」の項目が充実し、和紙の価値について詳しく書かれ、紙による文化の育成を強調しています。ただし、写本については触れられていません。

「平安時代の半ばごろからさかんになった絵巻物も、和紙に書かれたみごとな芸術品です。
(中略)「紙は文化のバロメーターである。」といいます。紙の消費量が文化の高さの尺度になるというのです。テレビなど映像文化の発展にもすばらしいものがありますが、紙による文化を守り育てていくことの大切さも忘れてはなりません。」


 
 

2014年12月25日 (木)

教科書に見る平安朝・小学校—国語(8)日本書籍(その1)

 2010年の10月から12月にかけて、小学校国語科教科書の中に見られる平安文学の諸相を調査した結果を整理し、本ブログに報告をしていました。

 その経緯については、以下のブログの記事をごらんください。

「教科書に見る平安朝・小学校—国語(1)」(2010/10/31)

「教科書に見る平安朝・小学校—国語(2)中京出版・大日本図書・二葉図書」(2010/11/8)

「教科書に見る平安朝・小学校—国語(3)学校図書」(2010/11/9)

「教科書に見る平安朝・小学校—国語(4)教育出版(その1)」(2010/11/11)

「教科書に見る平安朝・小学校—国語(5)教育出版(その2)」(2010/11/19)

「教科書に見る平安朝・小学校—国語(6)教育出版(その3)」(2010/11/22)

「教科書に見る平安朝・小学校—国語(7)光村図書出版」(2010/12/16)
 
 その後も少しずつ調査を進めていました。しかし、本ブログに次々と書いておくことが生まれ、いつしか資料が棚の隅に追いやられていました。
 以来、自分では問題意識があるものの、少しずつ忘れていく状態にあるので、空白となった4年を置いてやっと整理を再開し始めました。

 ここでは、日本書籍が作成した小学校国語科教科書をとりあげます。
 この中に取り上げられている平安文学は、以下のものがあります。
 まずは、「日本書籍(その1)」として小学1年生から4年生までの教科書について掲載します。
 
【日本書籍】(127冊)
 
 
 昭和31年度用


2ねんの2 浦島太郎の絵のお姫さまに平安朝らしさはない

 
 
 昭和32年度用

4年の2 「本のいろいろ」の単元に「ひげのおじいさん」、「昔の本・今の本」、「印刷工場見学の記録」を収録


*「ひげのおじいさん」の中に次の文があります。
 「三人は、そっと、つくえの上の本をのぞいてみた。すすけた色の日本紙をつづった本で、字は筆で書いたものであった。
 「昔のほんなんだね。」
と、馬場君が小さな声で言った。谷村君と佐野君は、だまって、うなずいた。」
 挿し絵の写真を見ると、江戸時代の版本の辞書のようです。

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 「昔の本・今の本」には、次の文章が見られます。

 「紙で本を作るようになってからは、持ち運びは便利になったが、一さつの本を見て、別の本に書き写さなければならないので、手かずが、かかるばかりでなく、写しちがいをすることも多かった。
 それよりも、もっと、こまることがあった。それは、どんなに本をよみたいと思っても、容易に手にはいらないことである。なにぶんにも、一さつ一さつ、一字一字を、手で書き写さなければならないのだから、本が行きわたらないのも、あたりまえのことだ。」

 話はこの後、木版・木活字・鉛活字のことになり、次の文で締めくくられます。

 「今日では、国の文化の高さは、どれだけの紙を印刷物に使っているかということで、わかると言われている。」

 この教科書では、手書きの写本というものに対するイメージを明確に語り伝えようとしています。ただし、最後のまとめの文章は、電子化が進む平成の時代など想像だにし得ない語り口となっています。
 これに続く「印刷工場見学の記録」は、活版印刷の人手による製作過程を詳しく語るものです。


 
 
 昭和33年度用

2ねんの2 浦島太郎の絵の姫に平安らしさはない
4年の1 「本のいろいろ」の「昔の本・今の本」は前記昭和32年版と同文

 
 
 昭和36年度用

2ねんの1 「白ウサギ」の民話に神様たちが出てくる

 
 
 昭和40年度用

1/1 浦島太郎(乙姫の絵だけ)
1/2 浦島太郎と一寸法師に絵はない
2/1 「白ウサギ」の民話に出てくる神様たちの絵が小さくなる

 
 
 昭和43年度用

1.1 浦島太郎(乙姫の絵だけ)
2.1 「白ウサギ」の民話に出てくる神様たちの絵が小さくなる

 
 
 昭和46年度用

1上 一寸法師(姫の絵あり)
3下 「かぐや姫を読んで」
4下 「鳥獣戯画」(相撲)を見て作文する


*別記に秋山虔

 
 
 昭和49年度用

1上 一寸法師(姫の絵あり)
3下 「かぐや姫を読んで」
4下 「鳥獣戯画」(相撲)を見て作文する

 
 
 昭和52年度用

1上 一寸法師(絵が変わり姫が2つになる)
    わらしべ長者、牛車と姫
3下 「かぐや姫を読んで」
4上 「鳥獣戯画」(相撲)を見て作文する


*秋山虔編、他に稲賀敬二

 
 
 昭和55年度用

1ねん下 「ひなまつり」で内裏様とお雛様の写真3種

 
 
 昭和58年度用

1ねん下 「ひなまつり」で内裏様とお雛様の写真3種

 
 
 昭和61年度用

1下 「ひなまつり」で内裏様とお雛様の写真が変わる

 
 
 

2014年12月12日 (金)

新春刊行予定の『日本古書目録大年表』のこと

 現在、千代田区立千代田図書館で古書販売目録の調査をコツコツと進めています。まさに、孤軍奮闘という状況にあります。
 さまざまな情報が収集できるので、本ブログでも、この古書販売目録コレクションの調査への参加を呼びかけていました。
 過日の調査の報告は、「千代田図書館の調査中に八木書店の会長と池田本談義」(2014年12月04日)や、「千代田図書館で古書目録の調査を続ける」(2014年11月06日)をご覧ください。
 
 その目録1万冊はすでにデータベース化されており、私はざさざまな情報を活用しながら調査を進行させています。

 新年早々に、この古書目録が整理されて『日本古書目録大年表』(全3冊、金沢文圃閣、2015年1月刊行予定)という、年表形式のレファレンスブックとして刊行されることになっています。

 内容は、明治から平成にかけて、日本全国で発行・配布された古書目録の総整理版です。
 この古書資料コレクションの価値と意義を知っていただきたく、またさらに本資料の調査に興味を持っていただく意味から、ここにそのパンフレットを画像で紹介します。

 古書に興味をお持ちの方の知的好奇心を刺激できたら幸いです。
 

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2014年12月 6日 (土)

盛会だった国際シンポ「男たちの性愛―春本と春画と―」

 今日の立川は快晴でした。冬の気配は、国文学研究資料館と国立国語研究所の間の木立にもうかがえます。


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 日だまりで散歩はできそうです。しかし、もうすっかり冷気が身に凍みます。

 国文学研究資料館では、昨年度より国際連携研究「日本文学のフォルム」いう国際シンポジウムを実施しています。本日の第2回のテーマは「男たちの性愛 ―春本と春画と―」です。


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 これは、これまでに国文学研究資料館が取り組んでこなかったものです。今日の今西祐一郎館長の挨拶でも、初代館長だった市古貞次先生は認めなかっただろうし、歴代の館長もこのテーマには難色を示したはずだ、とおっしゃっていました。時代と社会の状況が変わったのです。

 後半のシンポジウムにおいて、昨秋から今春にかけて、大英博物館で春画展を主宰されたロンドン大学のガーストル先生からは、「今日はおめでたい日だ!」とのコメントをいただきました。国文学研究資料館でこのようなシンポジウムが開催されたことは慶賀であり、お祝いしたい、との言葉をいただきました。

 それだけ、このテーマが時宜を得たものであり、充実した内容であった、ということです。
 このシンポジウムの代表を務める者として、好意的に評価されたことを喜んでいます。

 私自身のためにも、本日の4人の先生方の発表とパネルディスカッションでの意見交換に関するメモを、以下に残しておきます。

■ダニエル・ストリューブ先生(パリ・ディドロ大学)
  「西鶴晩年の好色物における「男」の姿と機能」

 西鶴の『色里三所世帯』の再検討を中心にして、男の性愛について語られました。その中で、女性の視点を通して描かれるようになったという指摘に、新しいものの見方の啓発を受けました。
 
■ジョシュア・モストウ先生(ブリティッシュ・コロンビア大学)
  「若衆 ―もう一つのジェンダー―」

 若衆遊びの場画をスクリーンに写しながら、客観的なテキストの分析をなさいました。眼前に写し出された春画が、説明を聞きながら見ていると、まったく卑猥な感じがなく、提示された4つのジエンダーがよく理解できました。
 
■中嶋隆先生(早稲田大学)
  「その後の「世之介」 ―好色本・春本のセクシュアリティと趣向―」

 セクシュアリティが笑いと結び付くことで非日常性が消えた、という趣旨がよく理解できました。浮世草子の春本化については、いろいろな問題があるようなので、今後のものの見方を教わりました。
 
■石上亜希先生(立命館大学)
  「春本・春画の読まれ方―男の読者、女の読者―」

 大英博物館で開催された春画展のコーディネーターでもあり、若さあふれる発表でした。近代から近世へと、春画に対する意識の変化が理解できました。春画の読者として女性がいたことが、昭和の初めまでの寄贈本によってわかるそうです。また、『女大楽宝開』の紹介は興味深いものでした。
 
 4人の発表を受けて、コメンテーターである染谷智幸先生(茨城キリスト教大学)と小林ふみ子先生(法政大学)の意見をいただきました。

 発表の間は静まりかえっていた会場も、意見交換になると場内に活気が蘇りました。スクリーンに映し出された春画に、各自がどう反応していいのか戸惑いながらの進行だったからかもしれません。
 私の記憶に残ったコメントは、次のような内容です。


※春画はアバンギャルドではなくて、保守的な世界が描かれている。

※文化人類学や近世社会の分野から、さまざまな切り口が可能なテーマである。

※風刺と好色だけでなくて、笑いとの関連でもこのテーマは広がりを持つ。


 
 武井協三先生は、今日の成果は笑いを取り上げたことだ、とおっしゃいました。

 来年度の第3回は、「日本文学はどう訳されたか」と題し、谷川恵一副館長にコーディネートしていただくことになっています。これも、すでに準備を始めていますので、お楽しみに。

 最後に、閉会の挨拶を手短かにしました。
 今回のために、日頃は読まない男色関係の本をたくさん読んだことと、『男色の日本史』(ゲイリー・P・リューブ、作品社、2014年9月)が一番印象に残っていることにも触れました。


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 そして、今日は女性からの視点で春画を見るおもしろさがわかった、ということも織り交ぜました。

 来年は、また趣向を凝らした国際シンポジウムにしたいと思います。

 本日のコーディネーターを務められた神作研一先生と、開催実務で奮闘された谷川ゆきさん、お疲れさまでした。

 このシンポジウムは、3回分をまとめて2015年度末に一書として刊行されます。これも、稔り豊かな成果となるように、鋭意編集を進めていますので、楽しみにお待ちください。
 
 
 

2014年11月30日 (日)

第38回 国際日本文学研究集会の第2日目

 職場に隣接する国立国語研究所の周りは、紅葉がみごとです。自治大学側が特にきれいです。

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 国際日本文学研究集会の2日目のプログラムは、以下の通りです。


  総合司会 神作研一
【第3セッション】
  司会 深沢眞二
[7]『秋夜長物語』の絵巻と奈良絵本について
    ―東京大学文学部国文学研究室蔵の絵巻を中心に―
        金有珍(東京大学大学院博士課程)
[8]黄表紙の批判性の再考
    ―青砥藤綱像を使用する寛政年間の黄表紙の特徴をめぐって―
        CSENDOM Andrea(一橋大学大学院修士課程)
[9]鶴屋南北の合巻
        片龍雨(東京大学大学院博士課程単位取得退学)
[10]多和田葉子とヨーロッパ
        RIGAULT Tom(パリ第4大学博士課程、パリ第7大学博士課程、
               立命館大学客員協力研究員)
[11]「在満作家」牛島春子の女性文学
        鄧麗霞(立命館大学大学院博士課程)

 最初の金有珍さんは、写本を読むアルバイトとして、科研の仕事を手伝ってもらっています。日頃はあまり専門的な研究の話はしません。今回、手堅い手法で絵巻を調査していることを知り、頼もしく思いながら聞きました。しかも、わかりやすい発表でした。引用された絵図がカラーだったので、資料も見やすくて、言いたいことがストレートに伝わってきました。ただし、絵画の「引用」については、もっと丁寧な説明を聞きたいと思いました。

 この分野を専門にしておられる先生の話では、研究の基礎的な所を押さえようとしているので、その研究姿勢に好感が持て、今後の展開が楽しみだとおっしゃっていました。東京大学で指導をしておられる田村先生と廊下で会ったので、そんなコメントを聞いたことを伝えました。
 若いときには、古典籍の諸本をもとにして、しっかりと基礎研究をすべきです。後のノビシロが違ってきますから。

 その後のみなさんの発表は、私の興味と関心が異なる分野なので、コメントは控えておきます。

 午後は、「【シンポジウム】図像のなかの日本文学」がありました。
 登壇のみなさんは、以下の4人です。


 司会 板坂則子(専修大学教授)
 パネラー GERSTLE Andrew(SOASロンドン大学教授)
      楊暁捷(カルガリー大学教授)
      土佐尚子(京都大学教授)

 板坂先生とは、ロンドンとケンブリッジでご一緒しました。
 ガーストル先生とは、ロンドンの郊外にあるご自宅にまでお邪魔して、お話を伺ったことがあります。
 楊先生とは、ハーバード大学でご一緒しました。
 土佐先生には、今回初めてお目にかかりました。

 3人の先生方の基調講演の後、参会者とのディスカッションとなりました。

 ガーストル先生は、36年前に早稲田大学の学生として、この国際日本文学研究集会で研究発表をなさったそうです。この研究集会で発表をした方の多くが、今も海外で大活躍をなさっています。研究者の登竜門と言える国際集会となっています。

 先生のお話は、江戸時代中期のパロディーとしての春画を、会場の巨大スクリーンに写しての熱弁でした。国文学研究資料館では始まって以来ではないでしょうか。
 来週は、「男たちの性愛」という国際シンポジウムがあります。これまた、大胆で刺激的な図像や話題が展開しそうです。その予習をしているようで、興味深くうかがいました。


 春画・春本は、猥褻な本ではなくて反体制的な性格を持ち合わせていた。
 文章表現よりも、イメージのインパクト・効果がある場合もある。

等々、専門的で難しい話と、一転してきわどい画面が目と耳に飛び込んで来て、そのギャップがおもしろく展開しました。日ごろ見慣れない図像と単語に、会場はいつもと違う雰囲気でした。

 思い出すと際限がないので、この辺にしましょう。
 さまざまな情報や知見が得られた、充実した2日間でした。
 みなさま、お疲れさまでした。
 
 
 

2014年11月29日 (土)

第38回 国際日本文学研究集会の第1日目

 宿舎の近くにある深川図書館の前のイチョウの黄葉がきれいです。
 建物の風格を高めるのに一役かっています。


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 ここから2時間弱の立川への移動も、今日は土曜日なのでスムースに行けました。
 今年の国際日本文学研究集会は38回目です。
 国文学研究資料館は創設42年を迎えるので、開館してまもなく国際集会が始まったのです。
 当時は、伊井春樹先生がいらっしゃった時代です。
 日本では老舗の日本文学関係の国際集会なのです。
 お昼頃に少し雨が降りました。
 しかし、それも一時だったこともあり、会場となった大会議室はほぼ満員の盛会です。

 今年も、国内外から若手を中心とした多彩な研究成果が発表されました。
 プログラムを簡単に紹介します。


  総合司会 入口敦志
【第1セッション】
  司会 伊藤鉃也
[1]B.H.チェンバレンによる『古事記』英訳―「枕詞」の場合
          高橋憲子(早稲田大学大学院博士課程)
[2]三代集における紀貫之の位置づけについて
          大野ロベルト(日本社会事業大学助教)
[3]『源氏物語』が語るもの―宗祇『雨夜談抄』が開拓する「読み」とその意義
          KNOTT Jeffrey(スタンフォード大学大学院博士課程、
                  早稲田大学外国人研究員)
【第2セッション】
  司会 海野圭介
[4]『徒然草』における漢籍受容の方法―『白氏文集』の場合―
          黄昱(総合研究大学院大学博士課程)
[5]『十訓抄』における孔子
          尤芳舟(北京日本学研究センター博士課程、
              早稲田大学外国人研究員)
[6]「大やうなる能」と「小さき能」―能の位とその典拠の正統性をめぐって―
          TARANU Ramona(早稲田大学大学院博士課程)
【ショートセッション】
  司会 青田寿美
①『うつほ物語』と近世国学者
  ―文化三年補刻本『うつほ物語』絵入版本の書き込みから
          武藤那賀子(学習院大学人文科学研究所客員所員)
          富澤萌未(学習院大学大学院博士課程)
②否定的な母親像と暗澹たるふるさと
  ―坂口安吾から観た「出自」論―
          DEWI Anggraeni(インドネシア大学専任講師)
③永井荷風「監獄署の裏」試論
          刀根直樹(東京大学大学院博士課程)
④藤本事件と「熊笹にかくれて」―療養所内での救援活動の実態
          西村峰龍(名古屋大学大学院博士課程)
 
【レセプション】


 第1セッションの3人の司会は、私が担当しました。
 若手ということもあり、25分の発表時間は短いようです。しかし、これはどこの学会でも同じなので、いかに時間を有効に使って簡潔に述べるか、ということに尽きます。資料の作り方にも工夫がいります。
 質疑応答は5分です。これは、司会者泣かせです。簡潔に手際よく進めても、2人の質問を受けるのが精いっぱいです。幸い、今日は質問も回答も要領良くなされたため、ちょうどの時間で役目を終えることができました。
 意欲的な発表が多いので、もっと質疑の時間があればいいと思います。これは、全体的な運営の問題なので、毎年の課題でもありますが。

 なお、発表の中に出てきたことばの読み方で、『白氏文集』を「はくしぶんしゅう」と言うのは、今の読み方ではそうなっていることは理解できています。
 しかし、「校合」を「こうごう」と発音されると、これには抵抗を覚えます。どの辞書を見ても、「こうごう」の項目は「きょうごう」を見よとなっています。これは、やはり今しばらくは「きょうごう」と発音してほしいところです。
 ただし、しだいに「こうごう」になっていくのは時間の問題であることは承知しています。「発足」が「はっそく」と言われるようになったように、こうした流れは止められませんから。

 ロビーでのポスター発表も、充実していました。

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【ポスターセッション】
●『忠臣蔵』の翻訳―日本人の今として、過去として―
          川内有子(立命館大学大学院博士課程)
●<資料紹介>鞍馬寺蔵・与謝野晶子自筆歌稿
          関明子(東洋大学ティーチングアシスタント)
●太宰治「誰も知らぬ」論―オトメ共同体の外縁にある少女表象について―
          王盈文(中華大学助理教授)
●昭和十年代の「みやび」
          大石紗都子(東京大学大学院博士課程)
●中国における星新一小説の受容
          丁茹(鹿児島大学大学院博士課程)
●国文学論文目録データベースの利用状況に関する考察
          江草宣友(国文学研究資料館事務補佐員)

 いずれも、やや文字が多いかと思われました。
 文学は図式化しにくいので、こうしたブレゼンはさらなる工夫が必要です。

 ケンブリッジ大学のレベッカ・クレメンツさんが参加していました。昨夜、参加するとのメールがあり、久し振りに会いました。いろいろと話をしようと思ったのですが、忙しいようなのでまたの機会にすることにしました。

 充実した一日目を終えた後のレセプションでは、かつてこの国際研究集会の委員長をなさった神野藤昭夫先生が乾杯の音頭をとられました。先生とは、過日の雅楽をご一緒して以来です。話は、自然と健康の話題が中心となります。


 帰りに、隣の自治大学の校舎越しに、煌々と照る月を見上げることができました。


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 宿舎の近くの黒船橋からは、さらにきれいに撮影できました。


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 明日は終日、缶詰め状態で発表とシンポジウムに参加となります。
 
 
 

2014年11月19日 (水)

国際シンポジウム「男たちの性愛―春本と春画と―」のご案内

 国文学研究資料館では、昨年度より実施している国際連携研究「日本文学のフォルム」の第2回国際シンポジウムとして、「男たちの性愛―春本と春画と―」を下記の要領で開催します。

 これは、これまでにテーマとして取り組んでこなかったものです。
 日本文学に関して、新しい発見や知見が得られる場となることでしょう。
 本日、国文学研究資料館のホームページより告知されましたので、このイベントの担当者として、この場を借りて広報を兼ねてご案内いたします。


日時:平成26年12月6日(土)
   13:30〜17:00
 場所:国文学研究資料館 大会議室
 
《パネリスト》
■ダニエル・ストリューブ(パリ・ディドロ大学)
  西鶴晩年の好色物における「男」の姿と機能
■ジョシュア・モストウ(ブリティッシュ・コロンビア大学)
  若衆―もう一つのジェンダー―
■中嶋隆(早稲田大学)
  その後の「世之介」―好色本・春本のセクシュアリティと趣向―
■石上亜希(立命館大学)
  春本・春画の読まれ方―男の読者、女の読者―
 
《コメンテーター》
 染谷智幸(茨城キリスト教大学)
 小林ふみ子(法政大学)
《コーディネーター》
 神作研一(国文学研究資料館)
 
 使用言語:日本語
 事前申込み不要・入場無料

 さらに詳しい内容については、以下の国文学研究資料館のホームページとポスターをご覧ください。

「シンポジウム・研究集会」

「第2回 シンポジウム ポスター」
 
 
 

NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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