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2008年6月25日 (水)

心身(15)初体験に困惑

 通勤電車に飛び乗って、やや混みぎみの車内で吊り革を引き寄せました。
 しばらくして、車中で自分が立つポジションが決まり、やおら本を取り出して読もうとした時でした。
 目の前に座っていた、見るからに新入社員といった若者が、スーッと立って、どうぞ座ってください、と言うのです。
 スーツにネクタイをキッチリと締めた青年というよりも、少年といったほうがいいほどの男の子です。

 なぜ、あえて自分が立ってでも私に席を譲ってくれるのか、その意味がわかりませんでした。何があるのだろう、と少し訝しく思いながら、それでいて断っては彼の好意が無になるので、ありがとう、と言って座りました。

 若者に席を譲られるのは、これが初めての経験です。

 座ってから、正面を見ると、若者は降りるわけではなくて、自分の真新しいカバンを私の頭上の網棚に置きました。
 目を瞑って、この事態を考えました。
 どう考えても、一人の若者が、疲れ切った年寄りに席を譲った、という状況です。

 その日の朝は、血糖値も114と良好でした。また、そんなに疲労困憊の様子だったようには思えないのです。格好が、いかにも高齢者だったのでしょうか。いや、2週間前に妻が選んでくれた、ネクタイをしなくてもだらしなく見えないシャツに、夏らしいサラッとした水色のジャケットを着ていました。
 自分では、年よりも若作りをしていたつもりです。

 内心、大いにショックでした。本や新聞などで読んだ、若者に席を替わられた時の体験談などを思い出しました。意地をはって、申し出を断る人もいるそうです。しかし、それは善意に基づく若者の行為を無視することになります。ありがたく受けるのが礼儀です。
 その通りにしたのですが、やはり人から弱者に見られ、同情を誘ったことに対する、晴れない気持ちがモヤモヤと残っています。

 何といっても、私の体力年齢は18歳なのです。

 しかし、今回のことは、自分の中で年とともに老い衰えていくものを、如実に意識させる出来事でした。

 ついに、若者から見た分類では、高齢者の域に突入したのかと思うと、仕方ないとは思うものの、実際には困惑を通り越してショックです。

 こうして、現役から少しずつ枠外に追い出されるようにならないためには、今、何をすべきかを考えました。しかし、これは、なるようにしかならないのです。

 困惑と衝撃と諦念が複雑に去来する電車のシートに身を置きながら、おなじ線を20代の頃に利用していたことを、セピアカラーの映像として、懐かしく思い出したりしました。あの頃の電車は、座席のシートなどはない、ただの通学のための箱だったのです。私が思い出したシーンでは、座席はないのです。それが見えていなかったので、思い出しても、それがないのでしょう。
 35年前と今とが突然行き来し出したので、しばらくは目を瞑って、今昔のシーンを切り替えながら楽しんでいました。





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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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