« 国文研の【特別展示・物語の生成と受容】本日より開催 | メイン | 井上靖卒読(100)新発見「中国行軍日記」に見る夫婦愛 »

2009年11月10日 (火)

古都散策(29)2年ぶりの正倉院展

 昨秋は、源氏物語展の開催に集中していたために、どこへも行かずじまいでした。
 今回、ようやく時間を見つけて、正倉院展に行くことができました。

 一昨年は、「古都散策(25)正倉院展」として、本ブログに書きました。

 あの頃は、展示のことばかり気になっていたせいか、学芸員の眼で見ていました。
 今年は、研究者の眼で見て回りました。
 今回は、特に写経に関するものが気になりました。

■「続々修正倉院古文書(写経生の作業報告書)」
 
 
 
091109syousouin1
 
 
(正倉院展の図録104頁より・部分)
 
 
 これは、天平14年(742)までの写経事業に関する報告書です。
 経師(書写を担当)・校生(校正を担当)・装瀇(装丁を担当)は、毎月末に各自が作業報告書を提出していたのです。
 この古文書は、提出された紙を貼り継いで、集計に用いたものです。
 作業従事者と、それを処理する事務担当者の現場が、こうして生々しい資料で見られるのです。しかも、1250年も前のものだけに、すごいことです。それが、我々にも記された文字が読めるのですから、日本の文化は恐ろしいということを実感します。
 
 
■「続々修正倉院古文書(写経生の報酬等に関する規則ほか)」
 
 
 
091109syousouin2
 
 
(正倉院展の図録105頁より・部分)
 
 
 
 天平勝宝3年(751)の記録で、写経所で仕事をする人々の給与計算に関するものです。
 図録の解説から列記します。

・「経師」は、紙40枚に写経をして「布一端」の給与を得る
・「校生」は、初校と再校を500枚ずつで「布一端」の給与を得る
・「装瀇」は、400枚で「布一端」の給与を得る
・表紙に題を書く「題師」は、100巻で「布一端」の給与を得る

 さらに興味深いのは、「経師」が書写する文字を間違った場合です。
 給与が減額される、という現実があったのです。

・脱行1行につき紙4枚分の減額
・脱字5字または誤字20字で紙1枚分の減額

 校正をする「校生」にも、減給があります。

・脱行を1行見落とす毎に、紙100枚分の減額
・脱字を1字見落とす毎に、紙20枚分の減額
・誤字1字につき、紙5枚分の減額

 ウーン、と唸ってしまいます。
 写経生たちの厳しい現実を、この生の資料は語っています。

 今年の正倉院展も、充実した内容で満足しました。

 なお、奈良公園の中の興福寺でおこなわれていた阿修羅等の拝観は、2年前に見ていることと、待ち時間が2時間以上だったのでパスしました。

 2年前のちょうど今頃、本ブログに「古都散策(26)興福寺の秘仏」として書きました。
 おついでの折にでもどうぞ。
 
 
 

トラックバック

このページのトラックバックURL:
http://app.blog.eonet.jp/t/trackback/350595/22253953

古都散策(29)2年ぶりの正倉院展を参照しているブログ:

コメント

コメントを投稿

コメントは記事の投稿者が承認するまで表示されません。

NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

Powered by Six Apart
Member since 07/2008