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2010年4月21日 (水)

【復元】縦書き & 横書き

(※本記事は、平成19年3月に消失したブログの復元です。)

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2004年08月14日「ミクシィ」掲載分より

 『横書き登場—日本語表記の近代—』(屋名池誠、岩波新書、2003.11)を読みました。日本語の歴史を考える上で、非常に得ることの多い本でした。この本に盛られていない縦書き問題の実例を、以下に紹介します。

 私は、パーソナル・コンピュータの出始めの頃の、それもまだ全角文字が存在しない時代に、まずはローマ字で、そして半角のカタカナで『源氏物語』の本文を入力してデータベース作成に着手していました。もう20数年前のことになります。
 パソコンを活用して日本語で自分の考えを表記することを続けていると、どうしても縦書きと横書きの問題に無関心ではいられません。拙著『新・文学資料整理術 パソコン奮戦記』(1986.11、桜楓社)でも、「タテの会」を紹介しています。
 
 
 
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 また、ルナ企画と共同で開発した検索表示ソフト〈プロムナード〉は、徹底的に縦表示にこだわったものでした。『データベース・平安朝 日記文学資料集 第一巻 和泉式部日記』(1988.11、同朋舎)と『データベース・平安朝 日記文学資料集 第二巻 蜻蛉日記』(1991.6、同朋舎)に実装しています。パソコンでの縦表示については、涙ぐましい裏話があります。ただし、それはいずれ、ということにしましょう。

 さて、今回読み終えた『横書き登場』の58頁で、縦書きのぶら下がり文字について書かれていました。句読点や促音・拗音などの表記のことです。

 これについては、拙編『句集 ひとつぶのむぎ』(1983.4、私家版)の組版が、こうした分野における歴史的な資料になると思います。この本は、私家版の限定出版だったので、関係者しか知らない本ですが…。
 
 
 
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 『句集 ひとつぶのむぎ』は、父の川柳を、癌で死ぬことがわかってから急遽3ヶ月間で句集としてまとめて刊行したものです。ただし、まだパソコンが普及していない時代におけるディスクトップ・パブリッシングだったこともあり、技術的にいろいろな問題に直面する中で、個人出版レベルで刊行に漕ぎ着けたものです。
 この本の巻末に記した拙稿「新時代の私家版—本書刊行について—」で、詳細にその出版事情などについて書いています。中でも、初期の横書き用の簡易ワープロソフトで縦書き印字をする際の無謀さは、今から見ると信じられないことでした。横書きの文字をBASIC言語によるソフトウェアによって強引に縦に並べ替えるだけなのです。したがって、詰まる音や句読点は、文字の右横下、それも行間の不自然な位置に印字されるのです(前掲写真参照)。パソコンのワープロ機能が、日本古来の縦書き文化に馴染んでいなかったための現象です。

 同じ8ビットのパソコンを使っても、それから4年後に刊行した拙編『わがままいっぱい』1987.2、私家版)では、句読点は本行の文字の間に位置しています。出回りはじめたパソコンワープロの機能を活用して刊行された20年前の、当時の私家版の出版物を見ていくと、IT技術の進歩が、表記をより自然なものにしていく流れが見えてきます。現在の出版文化の背景には、こんな時代もあったのです。

 繰り返し記号である踊り字について、『横書き登場』の65頁で、縦長の「く」に関して「\/」が紹介されています。しかし、私はこれまで「/\」を用いてきました。
 『源氏物語』の古写本約376冊を翻刻した拙編資料集『源氏物語別本集成 全15巻』(平成元~14年、おうふう)のデータは、約3億3千万字を対象としてデータベース化したものです。当該刊行書では外字で誤魔化していますが、元データの踊り字は「/\」で入力しています。縦書きの「く」を長くした踊り字を縦書きで表記する時に、スラッシュ(/)とバックスラッシュ(\)の組み合わせを使うと、それが横書きで表示されると「/\」となるので重宝するのです。拙著『源氏物語の異本を読む』2001.7、臨川書店)の図15の横書きキャプションや、拙著『源氏物語本文の研究』2002.11、おうふう)の巻頭口絵写真の横書きキャプションなどをご参照いただければと思います。

 一太郎というワープロなどでは、「く」を縦長にする技法がとられています。しかし、これをみんなが使えるテキスト形式にすると、ナントひらがなの「く」に戻ってしまい、後でどれがその踊り字だったかを見極めるのに苦労します。デジタルデータを後で有効利用することを考えると、使用する文字は、プレーンなテキストにしたときの形状を考慮したものであることが大切です。

 文字の歴史は、大変おもしろいものがあります。特に、パソコンの普及にまつわるよもやま話は、いろいろとあります。みなさんそれぞれが、その人ならではの涙と笑いの物語があるのではないでしょうか。
 
 
 
///// 本記事に対する関連コメント /////

■2004年08月15「ミクシィ」掲載分より
 「ディスクトップ」について。
 私は今の今まで、無意識に「ディスクトップ」と表記してきました。しかし、S王さんがご指摘のように、発音や意味から考えても、これは変ですね。「デスクトップ」と表記するのがいいのでしょう。これまで、違和感なしに読み書きしてきたことばなので、そのよってきたる所を考えてみたいと思うようになりました。

 今思いつくところでは、「デスク」という発音があまりにも泥臭いので、英語コンプレックスの固まりである私は、「ディスク」という言い方で外来語らしくしていたのではないでしょうか。苦しい言い訳みたいですね。

 それにしても、『ASCII』や『The BASIC』を初めとする各種雑誌の創刊号から貪るように情報を漁りながら目を通し、「パーコン」から「パソコン」へという呼称の変遷を体験する時代に身を置きながら、この「ディ」という表記に関してはまったく気づいていなかったことが、今さらながら不思議です。
 「スタンドアローン」という言葉は、すでに私は20年前から使っていますが、「ディスクトップ」を使い始めたのはいつからでしょうか。また、社会的にも、「ディスクトップ」と「デスクトップ」は、どのように使われてきたのでしょうか。

 おもしろそうなので、自分なりに調べてみます。私の勘違いで終わるかもしれませんが、それはそれで興味深い思い込みの事例となることでしょう。

■2004年08月15「ミクシィ」掲載分より
 今は幻のワープロソフト「たまづさ」は、私も愛用していました。
 開発元のコーシングラフィックという会社は、いいソフトを作製していましたね。「グラン・ミュゼ」を職場のパソコン60台にインストールする件で、社長に直接会って相談を持ちかけたりしました。札幌発のサポートもよかったですね。

 私がマックユーザになる前に使用していたワープロソフトのメモが、お盆の合間に書類を整理していたら出てきました。8ビット時代はともかく、16ビットマシンになった1984年からは、以下のワープロソフトを利用してきました。

 JWORD2(¥82,000)→ jXW太郎(¥58,000)→ 一太郎(¥58,000)→ 松(¥128,000)

 「松」は価格以上に最高でした。すごい文化遺産です。
 この「松」は、コピープロテクト問題で一躍物議をかもした、管理工学研究所の作品。
 当時私は、毎月10種類以上の雑誌を購入して、溢れる情報の海を泳いでいたものです。

 そうそう、原稿用紙スタイルで印字した私家版を出版したのが、1985年でした。『まぼろし』と題する父の追悼文集で、装丁は折本仕立ての糊入れ画帳スタイルです。装丁に贅を尽くしたものです。この版下作成に使用したのが、「JWORD2」でした。MS-DOSで動くワープロだったので、その後もデータの使い回しに重宝しました。

 それにしても、原稿用紙というのも、非常にレベルの高い文化が生んだ文房具ですね。縦書き・横書きの両方に使えるのもすごいことです。句読点や半角文字を記入するのに、一マスを4分割して利用したり、ワクの外に文字をぶら下げるなど、心憎い文化遺産だと思います。

■2004年08月15「ミクシィ」掲載分より
 Yさんの「たまづさ」に対するメモを記している内に、「ディスクトップ」と「デスクトップ」の件が氷解しました。
 フォローをありがとうございます。
 でも、勘違いということで長年使用していた者としては、「誤字等の館」の説明は理屈としては理解できるのですが、何か違うと思うのです。日本文化の中における外来語のありようについて、誤用だけでは切って捨てられない、何かがあるのではないでしょうか。

 素直じゃなくてすみません。書かれているようには、そんなに簡単なことではないという気がしますが。
 説明してハイ終わり、ではない問題として、これはおもしろいことですね。"


********************** 以上、復元掲載 **********************


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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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