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2010年5月11日 (火)

吉行淳之介濫読(4)「鼠小僧次郎吉」「小野小町」

吉行淳之介濫読(4)「鼠小僧次郎吉」「小野小町」

■「鼠小僧次郎吉」
 読んで楽しい、吉行初の時代小説です。
 江戸の蛤町から深川八幡あたりを舞台として、おもしろおかしく話が展開します。
 現在、私が深川に住んでいることもあり、以前に読んだときよりも親近感をもって読めました。物語の舞台を知っているのと知らないのとでは、やはりその楽しさが違います。他所のできごとではなくて、自分が知っている場所で登場人物が動くので、話がグッと現実味を増します。その意味でも、語られる場所や人物に関する知識は、話に入り込んでいくのに有効なものだと言えるでしょう。ことばだけの文芸のありようについて、考えてしまいました。

 さて、この小説は、物語の合間に入る作者の解説が楽しいのです。限られた空間しか聞こえない会話術や、千両箱の重さや現在の金額への換算などなど。対談の名手と言われた吉行の、間合いを計っての息抜き話が、読者を惹きつけます。
 また、カッコ付きで記された作者のコメントが粋です。時々、「ところで……」と作者が顔を出します。その軽みもいいものです。

 中盤から出てくる養父の敵捜しの話は、さらにおもしろく展開します。
 「在来の次郎吉物語では〜。しかし、われらの次郎吉は〜」などと、落語的な吉行版「鼠小僧」となっています。
 「(当然、大坂弁で喋るのだが都合で標準語で書いておく)」なども、好感の持てる流れを作っています。

 なにはともあれ、最後の素直な「結びの章」が秀逸です。【4】
 
 
初出誌
原題は「鼠小僧異聞」
『週刊現代』昭和37年11月18日号〜38年4月4日号に、「雨か日和か」(謎解きの仕掛けあり)と題して20回にわたって掲載
 
 
 
■「小野小町」
 これまた、吉行版「小野小町」です。
 日本古典文学に対する愚痴から始まるのがおもしろいのです。
 藻之瀬二郎(謎解きの仕掛けあり)なる者の説を元にして、風変わりな小野小町が語られます。
 「講釈師見てきたような嘘を言い」というのを地で行く物語です。
 ただし、小町が殺人を、というところは、話の流れに馴染んでいないように思えました。
 最後で、深草少将(後の僧正遍照)が言う「恐い」、という意味は納得できました。【3】


初出誌
『週刊読売』昭和44年8月8日号〜8月29日号までの4回連載

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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