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2011年7月24日 (日)

JISカナ・キーボードの存続が危うい

 銀座のアップルストアに行った折に、iPadで日本語を入力する時に用いるJISカナ入力方式が実装されたかどうかを、店頭の方に聞きました。

 私は、iPadの初代機を持っています。昨年、入院中に小さな iPhone での入力に苦労したので、急遽購入しました。しかし、そのiPadでは、日本語はローマ字入力か50音順入力しかできないのです。そのためもあって、自宅のiPadは放電したまま放置されています。
 もったいので、トイレでウエブを巡ったりしていました。日本語入力をしない使い方に適している場所だと思ったからです。しかし、意外と日本語で検索などをしたくなり、そのために役目を果たさず、今は惨めな記念品の一つとなっているのです。

 iPad2が今春発売され、今度こそと思っていたのですが、アップルからはJISカナ入力は無視されていたのです。その後、どうなったのかを、アップルストア銀座で尋ねたのです。

 すると、そのカナ・キーボードによるカナ入力が何なのかを、店員の方に理解してもらえないのです。3人目の方で、ようやくわかってもらえました。

 JISカナ・キーボードは、もう日本人にはなかなか理解してもらえない存在になったのかと思うと、悲しくなりました。そして、店員さんの答えは、アップルとしてはJISカナ・キーボードとそれに準拠したカナ入力に対応する予定はないのでは、ということでした。
 アップルから絶縁状を突きつけられた思いがしました。

 アップルストアの中でも、銀座店は店員の接客態度が酷い上に、知識の面でもとにかくその質が疑われることは、これまで何度も書いてきたのでここでは置いておきましょう。レベルの低いお店の一店員の発言なので、実際にはどうかわかりません。しかし、さもありなん、というのが最近の動向です。

 私は、昭和55年(1980)からコンピュータを仕事や研究に本格的に活用しています。
 文字を入力するのは、最初は電卓型のテンキーで数字だけを入力していました。モニタといっても、セグメントが横に8個並んだものでした。まさに、電卓です。
 次に、AからFまでのアルファベットがテンキーの周りに付いたもので、それで16進数を入力してコンピュータのプログラムを作っていました。
 まもなく、C言語やBasic言語を勉強し、アルファベットを駆使して、簡単な英語でブログラム作りを始めました。

 昭和54年にNECからPC−8001が発売されると、翌年にはそれを購入し、文学研究に活用し出しました。まだ、半角のアルファベットとカタカナしか使えず、ひらがなや漢字が使えない時代の昔話です。

 やがて、雑誌に掲載されていたBasicのブログラムを入力して、日本語のワードプロセッサらしきものを使えるようにしました。日本語の辞書がないので、漢字の一字一字をJISコードを調べて入力してモニタに表示し、それを組み合わせて一語一語を辞書として登録しながら日本語の文章を書き出しました。
 そうした早い段階から、私はずっとJISカナ・キーボードで日本語を入力してきました。もう30年も、カナ入力で来たのですから。アルファベットでローマ字式の入力によって日本語文を作る能力は、今の私にはありません。

 JISカナ・キーボードの配列は、かつてのひらがなタイプライタに遡ります。

 私は、コンピュータを導入する前は、シルバー精機の電動ひらがなタイプライタを使っていました。京大型カードを使っていたので、そのB6カードの大きさの特製私家版を作り、そのカードをタイプライタに差し込んでメモなどを印字していました。

 その時、ひらがなはハンマー式で打ち出すのです。打鍵スピードが速いと、当然ハンマーが絡みます。ジャミングと言っていたと思います。それを避けるために、ひらがなの配列が工夫され、今のJISの配列が決まったようです。
 実際に、左右の指がうまく動くようにひらがなが並んでいます。この絶妙の配列には、いつも感心します。
 参考までに、今私が愛用しているJISカナ・キーボードを掲載します。
 このキートップに印字されたひらがなが消える日が来そうな気配を、ひしひしと感じるようになりました。
 
 
 

110725_keyboard
 
 
 

 それにしても、アップルはこのJISカナ・キーボードを見限るのでしょうか。そうなれば、アップルとの縁が切れてしまいます。かといって、今さら不出来なウインドウズマシンを使う気はありません。キーボードだけでも、今あるものを確保しておくしかありません。

 これまで、どんどん最先端のものを導入してきました。しかし、そろそろ保身にも気を配る必要があるようです。
 もっとも、OSレベルでJISカナ配列をサポートしてくれなくなったら、いくらJISカナ・キーボードがあってもひらがな入力はできません。

 JISカナ・キーボードによるカナ漢字変換方式は、日本人が開発した、すばらしい日本文化の逸品だと思います。あの入力スピードを誇っていた富士通の親指シフト方式が姿を消した今、その双璧とも言えるJISカナ入力と共に、世界技術遺産(?)に登録すべきです。

 それはさておき、JISカナ・キーボードはいつまでも使い続けたいものです。
 ローマ字変換では文章が追いつかない日本語文を入力をしている者が、まだ地上に残っているのです。
 日本語の衰退と共に、日本語の入力方式の一つが消えていくことに、寂しさを感じています。
 
 
 

コメント

伊藤先生

埼玉大学の武井です。本当にすつかりご無沙汰してをります。

『賀茂街道』、一ヶ月に一度程度ではありますが、愛読?してをります。お体、どう
かくれぐれもおいとひ下さいませ。

さて、「富士通の親指シフト方式が姿を消した今」といふことが書かれてゐましたので、少しコメントさせて下さい。
Macユーザーの方は(残念ながら)余りご存じないのだらうと思ひますが、
現在でも、富士通は、親指シフトキーボードを(複数)製品として発売してゐます
し、ノートPCの親指モデルも、『からうじて』といふレベルではありますが、一
度も途切れることなく、販売してくれてゐます。
ワープロソフトとしてのOASYSもまだ現役製品、IMEのOAKもJAPANIST
と名前をかへてこれまた現役、最近、WINDOWS7のx64モードにネイティ
ブで(β版ではありますが)対応してくれて、まだ、命は繋がることとなりました。

細かなことは、以下の親指専門SHOP?でご覧頂ければと思ひます。

  http://access-fs.com/

因みに、Mac用の親指シフトエミュレーター、複数存在してゐるやうです。

武井先生
こちらこそ、ご無沙汰ばかりで失礼しています。
富士通の親指シフトキーボードの件、大変ご無礼を申し上げました。
コンピュータやワープロの草創期から、ずっとご活躍の武井先生からのご教示をいただき、恐縮しています。
ホームページを見て、親指シフトの世界が継承されていることに感激しました。
またまた、日本人のすごさを教えていただきました。
ソニーのサポートには誠意を感じていました。富士通の対応にも、改めて感心しています。
何か、うれしくなる情報です。ありがとうございました。

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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