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2013年8月15日 (木)

亡き仲間を偲んで我が家でお茶会

 朝の賀茂川散歩では、いろいろな鷺と出会います。
 楽しそうに集う5羽の鷺を見ていると、日本文学データベース研究会(略称はNDK)で27年間苦楽を共にした5人の仲間との日々が思い起こされます。
 
 
 
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 その内の1人が、先月29日に他界。何をそんなに急いで、と思わざるを得ません。まだまだ一緒にしたい仕事がたくさんありました。
 
 
 
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 春先から病気のことは聞いていました。これまでの経緯は、「27年来の仲間を思い出しながらの追善供養」(2013/8/4)に記した通りです。

 思い出してあげるのが一番の供養である、ということで、今日は2人の仲間が集まってくれました。

 まずは、懐石ではなく、妻手作りの野菜料理で会食です。

 その後、部屋を移ってお茶を点てました。
 お茶室らしく手入れをした部屋には、庭に咲いていた花を妻が素人なりに生けてくれました。
 花が大好きな者が持つ感性が、亡き人への追悼の気持ちと共に、ここには盛り込まれていると思います。
 
 
 
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 また、前回同様に、部屋には「空蝉」のお香を置きました。『源氏物語』の第3巻「空蝉」は、谷口さんに最初にお願いした仕事のためにお渡したデータです。この「空蝉」巻のデータで、『源氏物語別本集成』の版下作成プログラムを開発していただいたのです。世の中の誰一人として、『源氏物語』とコンピュータが結びつくことなど、具体的にイメージすらできなかった時代のことです。
 伊井春樹先生を中心とした我々5人が、日本文学の研究とコンピュータの接点を提案し、新しい研究手法を領導してきたと自負しているのは、こうした先見性を自他共に認め、認めていただいているからです。

 外は今日も40度近い気温なので、亭主役の私は少しでも涼しそうな雰囲気作りをと考え、ガラスの水差しに葉蓋を用いることにしました。葉蓋は、思いつきから実現させたものです。

 事の起こりは昨日のことです。寺町通りの一保堂にお茶を買いにいったところ、近くのアンティークショップでガラスの水差しを見つけました。イランの吹きガラスで、口の直径が15センチほどでしょうか。涼しそうなものです。ただし、蓋がなかったので思案しました。

 別の道具屋さんで蓋の相談をすると、葉蓋にしたら、とのアドバイスをいただきました。
 葉蓋を用いたお手前は、11代家元玄々斎がお考えになったものだとか。表千家ではしない、裏千家だけのお点前であることもわかりました。私はこの時、葉蓋ということばを初めて知りました。

 よし、それではそれにチャレンジしてみよう、と決め、「練習していた洗い茶巾のお点前」(2013年8月12日)は見送ることにしました。多少、自信が揺らいでいたこともあります。何度もお稽古をしている運びの薄茶のほうが安心です。

 お茶の先生に相談したところ、葉蓋を用いたお手前のアドバイスと励ましをいただき、俄然その気になりました。

 我が家の庭に、斑入りですがツワブキがたくさん生えています。これは使えるかな、ということで用意を始めました。
 ところが実際に試してみると、葉の大きさが微妙に小さくて私にはとても扱えそうもありません。もうすぐ仲間も来ます。先生に相談をする時間もありません。

 たまたま、お隣の玄関先に大きな蓮が咲いていたので、急遽お願いして1枚いただき、葉蓋をツワブキから蓮に変更することにしました。仲間の追悼のお茶を点てるので、蓮もまたふさわしい葉蓋になると思ったのです。

 突然の思いつきとアレンジなので、これでどうなのか、実のところよくはわかりません。とにかく、涼しそうな雰囲気を仲間に見てもらいながらお茶を点てることを大事にしました。

 写真を撮るために、蓮の葉を拡げてみました。
 水滴がきれいに大きな水玉になった時、思わずオーッという声と拍手が聞こえました。
 
 
 
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 本来どうあるべきものなのかは、まだ初心者の私にはわかりません。しかし、偶然が重なってのこととはいえ、これだけ楽しいことが目の前に繰り広げられると、みんな大満足です。

 水差しの蓋を取る時、葉を5センチ角に畳んでから軸を突き刺し、葉が開かないようにしてから建水の中に捨てました。

 まずは、亡き谷口さんにお茶をさしあげました。この前の4月7日に我が家でお茶会をした時、お正客の席に座っておられたので、今日もここを本日の追悼の席としました。
 お盆に載せたお菓子の最中には、「翁」という文字が刻まれています。そんなイメージを持ってお付き合いをして来たので、あえてこのお菓子を選びました。
 
 
 
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 そして、続いてお客さんに点てました。お客さんにと用意したお菓子は、大徳寺納豆を仕組んだゼリーと道明寺粉を使ったゼリーで、どちらかを選んでいただきました。

 暑かったので、少し温めのお湯で点てました。しかし、熱い方がいいとのリクエストもあり、3服目には適温になりました。

 お茶を点てながら、この前のお茶会で話した内容や様子を思い出し、この席にいないことが信じられないと言いながら、明るく語り合うことができました。もし元気にこの席におられたら、腰の調子が悪いと言って寝そべり、「てつっ!」と言いながら「楽しいのう。」と喜んでくださったはずです。返す返すも、あの優しい語り口の言葉が聞けないのが残念なことです。

 お茶と話でお腹が一杯になったこともあり、また隣の部屋に移って、思い出話や日本文学データベース研究会の今後について語り合いました。

 楽しい時間というものは刻を忘れさせるようです。気が付いたらもう6時半を回っていました。
 すぐ近くのバス停まで見送りました。
 何十年という時が凝縮された半日となりました。そして、今後の活動の確認もできました。
 気の置けない仲間というのは、ありがたいものです。
 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉を舞台にして、また新たな提案をし続けようと思います。
 今後の我々の活動を、どうか楽しみにしていてください。

 明日は、京都五山の送り火です。
 京都が大好きだった谷口さん。
 京都大学で、そして光華女子大学で、本当にいろろいとお世話になりました。
 これまで同様に、我々をずっと見守っていてください。
 ご冥福をお祈りしています。
 
 
 

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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