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2013年10月29日 (火)

英文を表示しながら日本語で語り終えて

 マドリッドにおける4日目です。
 この日のプログラムの「Panel 2」のテーマは、「The Fine Art of Japanese Translation」です。
 これが、私の出番となるところです。

 朝から、用意した原稿を読みながら、細かい手を入れました。
 そして、娘から届いたさらなる改良版の英訳文を、スクリーンに映す上での微調整をしました。
 来場の皆さんは、スクリーンと手元の英文をご覧になるので、ここに一番気を遣います。

 今日の私の話は、自己評価をすれば大成功です。とにかく、国際会議での英語ばかりの中で、話の内容を英語で示しながらも、私は持論の日本語で語って奮闘したのですから。

 話を始めるにあたり、最初に挨拶文をスクリーンに映した時点でドッと沸いたので、これで成功を確信したしだいです。
 その文章は次のものです。
 


皆様お気づきのように、私は英語が得意ではありません。
As you are aware, I am not good at English.
 
そのため、私の発表は日本語で行います。
Therefore, I will give my presentation in Japanese.
 
その代わりに、発表内容の英訳を準備いたしました。
Instead, I prepared English translations of my presentation manuscripts.
 
皆様のお手元に配布されており、またスクリーンにも表示されます。
They are distributed to you, and also shown on the screen.
 
どうぞこちらをご覧ください。
Please have a look at them.
 
ありがとうございます。
Thank you.
 
それでは、私の発表に移らせていただきます。
Now, let me move onto my presentation.
 

 これをスクリーンに映し出し、ゆっくりと英語を読み上げました。

 その後は、英語と日本語の対訳でお話しする文章を表示し、私は日本語で語りかけました。
 スクリーンの左側が英文、右側が日本文です。

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 スクリーンの英文には、私が話している日本語に当たる部分をカーソルで範囲指定して、色をつけました。これで、今、私が英文のどこの部分を話しているのかがわかる仕掛けです。

 ただし、時々内容に関連するコメントを挟むことは忘れませんでした。
 実際に会場には、日本語がわかる方々ばかりなので、スクリーンの英文にはない私のアドリブに、時々ニヤリとしながら反応しておられました。

 日本語による国際集会という視点を大切に守らないで、世界の共通言語だという誤った認識のもとに、英語による話だけで発言を構成しては、英語が苦手な方の多い日本文学研究者、というよりも日本古典文学の研究者が参加できません。そのような日本文学に関する専門家の意見やアドバイスを受けない国際研究集会は、討議のレベルが上がりませんし、その後の研究も発展しません。

 海外における研究が実りあるものとするためにも、自分たちが話しやすい英語等のことばで自己満足しない方がいいと思っています。
 日本文学の国際集会では日本語で話すことで、日本で研究している専門家の意見を有効に消化吸収する場面となります。英語がわかる者だけの集会では、そこに参加できない大多数のすばらしい研究者の意見をどのように反映させるべきか、あらためて考えたいものです。

 日本文学関連の国際集会は日本語で、という私の持論は、こうした理由からです。今も大切にしている信念です。

 なお、翻訳に関する研究については、個人ではなくて、みんなで共同研究として取り組みませんか、という提案には、賛同が得られたようです。

 今回のお話の内容は、後日整理したものを掲載します。いましばらく、お待ちください。

 持ち時間以内に収まり、予定通りの進行でした。
 終わってから、みなさんからは、よくわかったと言っていただきました。

 ウィーン大学のラインハルト先生の奥様からは、多言語翻訳のテキストに、どうして『十帖源氏』を選んだのか、という質問を受けました。

 これに対して、私は次の4点を示してお答えしました。


(1)ウェブに画像が何種類も公開されていること
(2)絵が入っていること
(3)ダイジェストなのに、和歌が省略されずにすべて入っていること
(4)作者の野々口立甫は、さらに簡略化した『おさな源氏』も著していること

 今回、こうして無事に終わったのも、娘が短時間で私の文章を英訳してくれたことに尽きます。
 その英文を読む練習をして臨むことは、ペルーからの翻訳本が出発間際に届いたこともあり、最終原稿の完成が遅れたために叶いませんでした。
 しかし、私の出番の数時間前まで、映写する英訳原稿のレイアウトの調整を日本でしてくれた娘には、感謝感謝です。
 そして、地球の反対側に数秒で文書が届く、インターネットという仕掛けには、あらためてその威力を実感しました。

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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