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2013年11月25日 (月)

米国ハーバード大学蔵『源氏物語』の写本

 米国ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』の「須磨」巻を、新典社から影印本として出版していただきました。

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 日本各地に留まらず、世界各国に現存する『源氏物語』の写本を、可能な限り調査・拝見して廻っています。そして、その写本に書かれている文字を翻字し、本文データベースとして加工しています。

 このハーバード大学本は、鎌倉時代の中期に書き写されたものであり、完成度の高い美術品とも言える古写本です。日本を含めて現存最古と言っても過言ではない、非常に意義深いものです。

 このハーバード大学本「須磨」巻と「蜻蛉」巻は、数ある中でも私が大好きな写本の1つです。今回、影印本として公開することにした所以でもあります。
 ハーバード大学と美術館の皆さまには、大変お世話になりました。

 この本の発売は、すでに1ヶ月前のことでした。しかし、私がスペインへ行っていた時期のことでもあり、この本の紹介を本ブログで報告する機会を逸していました。あらためて、ここに紹介します。

 ハーバード大学本としては、今回の「須磨」巻以外に、もう一冊「蜻蛉」巻があり、現在それも刊行の準備を進めています。もうしばらくお待ちください。

 以下に「編集後記」を引いて、刊行までの経緯を確認しておきます。


 米国ハーバード大学美術館所蔵の古写本『源氏物語』(「須磨」と「蜻蛉」)に関しては、鎌倉時代に書写されたものとしてかねてより注目していた。
 平成一八年二月に、元国文学研究資料館教授の鈴木淳先生とイェンチン図書館の McVEY 山田 久仁子司書のご理解とご協力を得て、原本の調査とデジタル画像の入手を果たすことができた。同行者は総合研究大学院大学大学院生だった大内英範氏(現在は筑紫女学園大学准教授)。元サックラー美術館のAnne Rose Kitagawa学芸員には、調査や写真撮影などでお世話になった。
 平成二〇年一一月に、ハーバード大学で開催された国際集会「日本文学の創造物 書籍、写本、絵巻」で、私はこの二冊の『源氏物語』について報告する機会を得た。その折に、前国文学研究資料館長の伊井春樹先生も本書をご覧になり、私が鎌倉時代〈初期〉の本文だと考えていることに関連して、書写は〈中期〉でよいのではないか、とのご教示をいただいた。
 その後、平成二三年一月に、國學院大學大学院生だった神田久義氏(現在は國學院大學講師)と、この二冊の『源氏物語』のさらなる精査をした。
 海を渡った『源氏物語』の古写本を、こうして三度も見ることができたのである。
 ハーバード大学の文子・E・クランストン先生(「須磨」に収録)とメリッサ・マコーミック先生(「蜻蛉」に収録)には、所蔵機関の立場から解説を執筆していただけたことも有り難いことであった。
 なお本書の刊行にあたり、ハーバード大学美術館の関係各位には迅速な対応をしていただいたことを、この場を借りて厚くお礼申しあげたい。
   平成二五年一〇月二四日
                              伊藤鉄也

 このハーバード大学本は、これまで読んできた藤原定家の流れを汲む本文とは、いろいろな所で違いがあります。本書の巻末資料に、他本との本文異同を一覧できる対照表を付けました。

 些細なことであっても、その1つ1つを解決していく中で、平安時代の『源氏物語』の姿を確認して行きたいと思っています。
 一人でも多くの方が、このハーバード大学本の読み解きに参加なさることを、楽しみにしています。

 どのようなことでも結構です。この写本や本文に関連することで閃きがありましたら、本ブログのコメント欄を活用してお寄せください。
 堅苦しくない思いつきが、おもしろい読みの可能性を拡げてくれると思っています。
 800年前に書き写された一冊の本を手にして、ああでもない、こうでもないと、一緒に考えてみませんか?
 
 

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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