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2013年12月24日 (火)

尾州家河内本『源氏物語』の新聞記事に掲載されたコメント

 多くの方に待ち望まれていた『尾州家河内本 源氏物語 全10巻』(原本所蔵・監修:名古屋市蓬左文庫/解題:岡嶌偉久子、八木書店、2010年12月〜2013年12月)が、遂に今月完結します。慶事です。
 この本は、尾張徳川家に伝えられて来た貴重な写本で、今は名古屋市蓬左文庫が所蔵する、重要文化財の『源氏物語』です。
 今回の精緻なカラー版によって、その実態が徐々に明らかになっていきます。

 昨日の朝日新聞(平成25年12月23日(月)、名古屋本社版、社会欄、31頁)に、この尾州家河内本の記事が掲載されました。6段抜きで、大きく扱われています。
 関西と関東は、後日掲載されるかと思われます。

 その記事の見出し語を引用します。


尾張徳川家伝来の写本 蓬左文庫所蔵

源氏物語「河内本」原本か

研究者調査 膨大な修正跡 確認

 本記事には、岡嶌偉久子さんが尾州家本を丹念に調査研究された内容が、簡潔に記されています。
 そして後半に、岡嶌さんが今回の収穫だとする見解が、次のように引かれています。


過去の調査では目立たなかったが、膨大な修正が極めて綿密に行われており、大変な労力と並々ならぬ執念が伝わってくる。親行校訂の稿本との結論に行きつかざるをえない。

 最後の「親行校訂の稿本との結論に行きつかざるをえない。」というのは、岡嶌さんらしい非常に慎重な物言いです。この点について、その可能性は大だといえるでしょう。

 なお、本記事の最後に、大阪大学の加藤洋介先生と私のコメントが紹介されています。
 この、朝日新聞名古屋本社・都築和人氏の取材を名古屋駅で受けたことは、先日の本ブログで紹介した通りです。
 今、参考までに、そのコメントの部分を引いておきます。

131224_kawaticomment



 「河内本源氏物語」の成立に詳しく、「尾州家河内本」を以前調査した加藤洋介・大阪大学教授は、「とても魅力的な仮説だと思う。校訂した親行自身がどのように源氏物語と取り組んだのかが手に取るように読み取ることが可能になる」。
 「源氏物語」の本文を研究する伊藤鉄也・国文学研究資料館教授は「尾州家本の素性が固まることで、他の写本との比較検討が容易になる。貴重な研究成果だ」と評価した。
             (都築和人)

 最近の『源氏物語』の研究は、もっぱら活字による校訂本文によってなされています。現代の混態異本とでもいうべき本文で、『源氏物語』がこれでもかと精緻に読み込まれています。これは、憂うべき時代にある、という認識を私は抱いています。
 古典から離れた活字本だけによる研究の域から1日も早く脱し、これを機会に、若手研究者がこうした古写本にも興味をもち、それを読解する楽しさを体得してほしいと願っています。

 なお、本新聞記事を入手するにあたっては、都築さんから送られてくる前に、中部大学の本田恵美先生とその知人の方のご理解とご協力が得られたために、こんなに早くお知らせすることができました。みごとな連係プレーに感謝します。

 また、中部大学の蜂矢真郷先生からは、「河内本原本であるかも知れないとは驚きました。そうであるとすると、声点の時代設定も変わってきます。」というコメントをいただきました。
 この尾州家本『源氏物語』が、さまざまな分野でその存在意義を示し、研究に資するものとなることを言祝ぎたいと思います。
 
 

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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