« 渋谷版ウエブサイトのNPO法人〈GEM〉への譲渡契約が成立 | メイン | 今西館長科研の本年度第3回研究会 »

2014年2月20日 (木)

読書雑記(94)高田郁『美雪晴れ―みをつくし料理帖』

 高田郁の〈みをつくし料理帖〉シリーズの第9巻『美雪晴れ』(2014年2月18日)が店頭に並んでいました。

140221_mio9


 前作『残月』から8ヶ月置いての刊行で、待ち焦がれるようにして一気に読みました。

■「神帰月―味わい焼き蒲鉾」
 冬の寒さが伝わってくる文章です。
 本作では、ご寮さんである芳と息子が前面に出ています。新しい展開が予想されます。
 蒲鉾の東西の違いは意外でした。芳の息子佐兵衛の妻であるお薗が、一人の女性として描かれ始めます。さらには、お臼という、相撲取りかと見紛う大女の女衆も加わります。物語に厚みが出てきました。【4】

■「美雪晴れ―立春大吉もち」
 黒豆の皺で、東西の味談義が始まります。私も関西の丹波黒のふっくらしたのが好きです。関東の、皺を長寿のしるしとする豆は、口の中がもごもするので、私はいただけません。
 物語が動いていきます。ガタンゴトンと音が聞こえます。読者の記憶を呼び覚ますように、回想シーンがところどころに配されています。作者と読者が、共にイメージを共有できるような仕掛けが用意されていることがわかります。
 そして、少しだけですが、読者である私の心の中に、何か感じるものが生まれました。このシリーズは一先ず終わりに向かっているのではないかと。【3】

■「華燭―宝尽くし」
 物語が、新たな行き先を探し求めて、ゆっくりと動き出しました。つる屋に新しい料理人の政吉が来たのです。さらに、本シリーズの前半ではほとんど姿を見せなかった、息子の佐兵衛の存在がクローズアップされます。その母の芳も、心情の描写が多くなりました。
 話が、大団円に向かって、まっしぐらに進んでいるような感覚が残りました。【3】

■「ひと筋の道―昔ながら」
 澪の新しいスタートが始まりました。独立し、外に出て、自分が作ったものを売るのです。このあたりから話が性急に感じられ、急ぐ筆の跡から、ことさらに作り話が紡がれている様が感じ取れるようになりました。そんなに先を急がなくても、という気持ちで読むことになります。
 澪は、名料理人になることと、お客の喜ぶ顔を間近で見られる料理を作り続けたい、という2つの選択肢の中で揺れ続けます。【3】

■特別付録「みおつくし瓦版」
 この最後で、次の文章に出会います。


シリーズ開始から早や五年。「みをつくし料理帖」は次でいよいよ最終巻となります。

 本書を読みながら、常に頭を過ぎった大団円へ向かう気配。まさに的中でした。
 また、巻末に「富士日和」という小品が特別収録として収めてあります。これは、朝日新聞の2013年9月22日付に掲載されたものです。なかなか爽やかな挿話となっています。

 完結となる第10巻は、2014年8月に『天の梯―みをつくし料理帖』というタイトルで刊行されるようです。これもまた楽しみにしたいと思います。
 
 
 

コメント

コメントを投稿

コメントは記事の投稿者が承認するまで表示されません。

NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

Powered by Six Apart
Member since 07/2008