« 京洛逍遥(321)古田織部400年遠忌追善茶会で大徳寺へ | メイン | 今西科研の第1回研究会のご案内 »

2014年6月12日 (木)

京洛逍遥(322)京都ライトハウスにて

 北大路通りを大徳寺の前から西へ、金閣寺に向かって行くと、緩やかな上り坂が続きます。そして、千本北大路の交差点から少し南に下ったところに、視覚障害者のための「京都ライトハウス」があります。ここは、創立53年ということなので、長い歴史と実績がある社会福祉施設です。


140611_lighthouse1


 目の不自由な方と一緒に古写本を読むための方策を、このところ模索しています。何か手がかりを、との思いから、大徳寺から自転車で駆け付けたのです。受付で訪問の趣旨を伝えると、情報ステーションの野々村好三さんとの面談をセッティングしてくださいました。

 いただいた点字が組み込まれた名刺を拝見すると、「NPO法人 全国視覚障害者情報提供施設協会 情報アクセシビリティ検討プロジェクト委員会委員長/NPO法人 全国視覚障害児童・生徒用 教科書点訳連絡会理事/点字技能師」とあります。幅広い活動と実績をお持ちの方でした。

 私が説明をし、それに対して可能性について答えてくださる、というやり取りが長時間続きました。
 以下に、私が理解できてわかった範囲のことを列記します。


・視覚障害者が長時間にわたって点字を読むのは難しいそうです。
 慣れない縦書きの変体仮名ならなおさらのことです。

・読書の延長ではなくて、体験として写本の1頁くらいなら可能性があるようです。

・視覚障害者が読む時の特性として、横書きがいいとのことでした。それは、実際には両手を使って行を確認しながら読んでいるために、横書きが理に適っているからだそうです。縦書きは、両手が縦に並んで指が交差するので、日常の読書などと違いすぎるようです。

・縦書きを横に倒して置いても、文字の認識は日常とは異なるので難しいのです。

・文字を読むのには、人さし指が一番敏感だと思われます。鼻、頬、耳朶、舌などについて、その感度を伺っても、やはり人さし指がいいのでは、との回答でした。

・熱による文字の認識は、直線などの認識で混乱が予想されるので現実的ではないようです。

・表面が濡れているかどうかによる文字の識別は、熱以上に難しいようです。

・つまり、温度差と湿気による文字の識別は、実際には現実的ではないのです。

・結論としては、紙面の凸凹が一番読み取りの精度が高いとのことでした。これは、点字で慣れているから、ということもあります。

・点字の場合で言うと、凸面でも凹面でも読んでくださいました。しかし、やはり慣れということもあり、凸面の点字の方が早く読めるそうです。

・浮き上がった文字を識別するために、ひらがなであれば、その文字の大きさは3~4cmは必要だとのことです。

・視覚障害のある方々にも、文字や言葉を認識するレベルの幅が大きいようです。これは、いつ視力を無くしたかで、言葉に対する感覚や理解が異なるからです。目が見えても、日本語の読み書きは人それぞれに違うのです。特に、字を覚える小学校入学までに失明した人は、漢字や仮名文字などのイメージができないそうです。


 中学2年生までは、カレンダーの大きな数字はかすかに見えた、とおっしゃる野々村さんは、さまざまな体験からのアドバイスをしてくださいました。

 最後に、立体コピーの実物を見せていただきました。


140611_tenji


 添えているシャープペンの鉛筆部分は、0.5ミリの芯が出ています。
 この図の中で、トイレの男女の別を識別するのは、熟練者の野々村さんでも難しいとのことでした。これは、男女の違いが腰から下の、ズボンとスカート、足の開閉という微妙な変化を感知する必要があるからです。

 なお、京都府立盲学校では、かつては木版で授業をしていたとのことです。私が版木に反応したこともあり、関係者を紹介していただけることになりました。

 それにしても、予想以上に難問山積です。
 それでも、一歩ずつ前に進んでいる手応えは感じています。

 野々村さんには、800年前の鎌倉時代に書かれた古写本の変体仮名という文字を読み、コミュニケーションツールとしての日本語の歴史や意義、また、その文字で伝えられてきた日本文化の理解を深めることは、新しい文化体験となるはずである、ということを伝えました。日本をよりよく理解できるツールや技術を習得することは、夢のある話なので嬉しいです、と野々村さんはおっしゃっていました。

 来週は、高田馬場の日本点字図書館で、担当者と相談をする予定です。
 
 
 

コメント

コメントを投稿

コメントは記事の投稿者が承認するまで表示されません。

NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

Powered by Six Apart
Member since 07/2008