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2014年6月20日 (金)

江戸漫歩(82)高田馬場の「日本点字図書館」へ

 目の不自由な方が古写本を読める環境作りを模索する中で、高田馬場にある日本点字図書館の和田勉さんを訪ねて行きました。


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 メールとブログのやりとりで、私の意図するところは理解してくださっていたので、色々な情報を教えてくださいました。また、多くの疑問にも答えていただけました。

 日本点字図書館の廊下に掲示されていた国立民族学博物館のポスターより、いくつかの道具の写真を紹介します。


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 視覚障害のある方々とのコミュニケーションをとるための文字にも、いろいろとあるようです。


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 各種各様の文字を考えた、先人の労苦が偲ばれます。

 次の本も、考えるヒントが満載でした。

「ユニバーサル・ミュージアムをめざして―視覚障害者と博物館」

 この本は、私が学芸員の資格を取る時に勉強した内容の延長線上の内容です。さまざまな事例を扱っており、非常に参考になります。
 上記サイトからテキストファイルをダウンロード出来るので、後でじっくりと読むことが出来ます。

「百聞は一見をしのぐ!?」

 この本の内容も、ネット上で読むことが出来ます。
 こうしたダウンロード環境が構築されていることについて、見習うべき点が多いと思いました。

 これ以外にも、文字が浮き出る本を拝見しました。

●『きのくにの祈り─さわって学ぶ祈りのかたち─』(和歌山県立博物館、平成24年3月)


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●『さわる─みんなで楽しむ博物館─』(吹田市立博物館、平成23年度秋季特別展)


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 また、書くと線が盛り上がるペンがあることもわかりました。

「みつろうペン(触図筆ペン)」(■年■月■日)

 この「みつろうペン」に関しては、過日、京都町家で開催されていたイベントで見つけた印刷手法を思い出しました。それは、友禅染めの糊に顔料を混ぜた「色糊」を用いて印刷する表現手法です。金属粉などを混ぜることで、多彩な色の表現が可能になったのです。これは、インクが盛り上がるので、触覚による識別にも応用できそうです。太平印刷の開発になるものでした。その時には解説文などの用意がなかったので、後で資料を送ってくださるとのことでした。この記事には間に合わなかったので、届いたらまた報告します。


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 こうした技術は、いろいろと開発されているようです。

 和田さんから実物をもとにしてお話をうかがったことを、忘れないうちにメモとして残しておきます。

(1)木刻文字の例から、1文字ずつ積み木のブロックを重ねるつもりで習得するプログラムを考えるといい。


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 これは、正方形の厚い用紙に図様が浮き出たカードです。ひらがなの下には点字が刻されています。その裏側には、説明が書かれています。
 また、右上が切り欠けになっています。これは、触ったときに上下左右が識別できるようにした配慮です。

 ・パーツとしての文字は、大き過ぎないこと。
 ・4〜5センチの大きさのカードに、2〜3センチの大きさの文字が妥当ではないか。
 ・日本語の文字は、ゴシック体が形を捉えやすい。
  ただし、筆で書かれた変体仮名については、どの大きさがいいのかはわからない。

(2)達成感も大事なことだと思われる。最初から文章が書かれた古写本ではなくて、和歌からなら、入門にいいのではないか。

(3)文字を読むことだけではなくて、『源氏物語』や平安時代の歴史などの背景も説明すると、おもしろさが持続する。
  その意味では、教養講座と座学実習を兼ね備えたものがいい。

(4)1時間くらいのワークショップとして実現できるようなプログラムを作るといい。

 その他、身体の中では舌が一番敏感であるという話の中で、点字本で血の付いたものが残っているそうです。それは、舌を使ったためのものだと思われる、とのことでした。

 和田さんは、触覚の識別という研究で人間科学の博士号をお取りになった方でした。私の問題意識に一番近い方なので、和田さんとの出会いは幸いでした。

 今回のご教示の中でも、ボールペンで書いた文字が盛り上がる「表面作図器(レーズライター)」という筆記用具については、さまざまな活用が思い描ける刺激的なツールでした。想像の世界がさらに拡大する、衝撃的な出会いとなりました。

 帰りに、1階入り口にある「わくわく用具ショップ」で、早速この魅力的な筆記具を購入しました。
 写真ではよくわかりません。しかし、手書きの文字が浮き上がっているので、触ると文字の形がわかります。


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 また、「小型点字器5行×20マス」(次の写真下)と点字キーホルダー「マスコットブレイル」(次の写真右上)も買いました。


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 さらに、次の2冊の本も。


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 『アジアの点字』には、次の25言語が掲載されていました。
 『源氏物語』の多言語翻訳を研究テーマの一つにしているので、これらの言語表記によって、『源氏物語』の有名な一節だけでも点字で読めるようにできないか、という新たな課題を夢想するようになりました。


アラビア語点宇
インドネシア語点字
ウズベク語点字
カザフ語点字
韓国語ハングル点字
キルギス語点宇
クメール語点字
スリランカ点字
ゾンカ語点字
タイ語点字
タジク語点字
チベット語点字
中国語点字
日本語点字
ネパール語点字
バーラティ点字(インド点字)
ビルマ語点字
フィジー語点字
フィリピノ語点字
ベトナム語点字
ヘブライ語点字
ペルシア語点字
マレー語点字
モンゴル語点字
ラオ語点字

 なお、この『アジアの点字』は、今回お世話になった澤村実希さんと旦那さんが精力的に制作に携わっておられることがわかりました。

 東京都人権プラザの林さんに始まり、伝言ゲームのようにして、そのお仲間である日本点字図書館の澤村さんと和田さん、そして京都ライトハウスの野々村さんと、ありがたい皆様とのつながりによって、貴重な情報が得られています。

 まだまだ、情報を収集しているところです。
 関係者を訪ね歩いてお知恵を拝借し、アドバイスをいただく段階です。
 しばらくは、この試行錯誤の日々は続きます。
 
 
 


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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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