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2014年8月24日 (日)

読書雑記(105)高田郁『天の梯 みをつくし料理帖』

 高田郁の『天の梯 みをつくし料理帖』(角川春樹事務所ハルキ文庫、2014年8月)は、先週読み終えていました。しかし、何かと雑事を始めとして本ブログにも他に書くことが多く、やっと今日になりました。これが、「みをつくし料理帖」シリーズの第10巻にあたり完結編です。


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■「結び草――葛つくし」
 自力で生きることを決心した澪は、頼もしく成長していました。夏の旱魃が、人々の心の優しさを浮かび上がらせます。
 俎橋から見上げる月が、きれいな場面を生んでいます。人間の情が節度を持って語られているので、上品な作品として心に染みます。【4】
 
■「張出大関――親父泣かせ」
 酢の物が絵皿を溶かすことが印象的です。一気に読ませる筆力が戻りました。自然な流れで、江戸の食べ物事情が理解できました。そして、何よりも源斉先生の描き方が変わりました。【3】
 
■「明日香風――心許り」
 正月の艶やかさと華やぎが伝わる、上質な文章で語られています。加えて、酪をめぐる謎解きや
緊張感溢れる展開が楽しめました。本作でも、月が効果的です。
 最終巻を冷静に語り収めようとする、十分に計算された作者の気働きが伝わってきます。【5】
 
■「天の梯――恋し粟おこし」
 「粟おこし」は、小さい頃から私の好物でした。「岩おこし」と言って、小さな塊をおやつとして母からもらい、口にしていました。島根県の出雲にいた小学校低学年の頃は、生活をしていた本家の離れの2階の屋根裏部屋で、両親が夜業仕事としておこしを作っていました。お米や粟を加工したものを水飴で固めたものを、父は行商としてポン菓子作りの工賃を稼ぎながら持ち歩いていました。私も父の自転車を押したりポン菓子機を回したりして、山奥の村々で売るのを手伝ったりしました。このことは、「わが父の記(2)川で流された時」(2008/5/20)に記した通りです。おこしの生姜味は、出雲や大阪にいた頃の想い出深い味として、さらには両親が苦労した日々と共に、旧懐の情を呼び戻します。

 それはさておき、本話はみごとな大団円となっています。【5】
 
■「特別付録・文政十一年 料理番付」
 勧進元は「日本橋柳町 一柳 改メ 天満一兆庵」です。
 東大関は「自然薯尽くし 元飯田町 つる家」
 西大関は「病知らず 四ツ橋 みをつくし」
 本書から11年後の番付です。眺めていて飽きません。
 私は、西小結の「寒天尽くし 西天満 井川屋」が気になりました。
 後日、特別巻を刊行する用意があるようです。この番付がその内容を予測させます。
 
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 高田郁の「みおつくし料理帖シリーズ」については、この5年間に以下のような感想を記してきました。
 これまでの9冊へのリンクと、併せてそれ以外の高田郁の作品関連の記事のリストは、以下の通りです。ご笑覧いただければ幸いです。
 
 
(1)「読書雑記(21)高田郁『八朔の雪 みをつくし料理帖』」(2010/11/25)
 
(2)「読書雑記(22)高田郁『花散らしの雨 みをつくし料理帖』」(2010/11/26)
 
(3)「読書雑記(23)高田郁『想い雲 みをつくし料理帖』」(2010/12/2)
 
(4)「読書雑記(24)高田郁『今朝の春 みをつくし料理帖』」(2010/12/4)
 
(5)「読書雑記(33)高田郁『小夜しぐれ みをつくし料理帖』」(2011/4/22)
 
(6)「読書雑記(42)高田郁『心星ひとつ みをつくし料理帖』」(2011/9/9)
 
(7)「読書雑記(48)高田郁『夏天の虹 みをつくし料理帖』」(2012年04月09日)
 
(8)「読書雑記(74)高田郁『残月 みをつくし料理帖』」(2013年07月26日)
 
(9)「読書雑記(94)高田郁『美雪晴れ―みをつくし料理帖』」(2014年02月20日)
 
 
(A)「読書雑記(25)高田郁『銀二貫』」(2010/12/5)
 
(B)「読書雑記(26)高田郁『出世花』」(2010/12/6)
 
(C)「読書雑記(85)高田郁『あい 永遠に在り』」(2013年11月22日)
 
 
(壱)「江戸漫歩(74)『みをつくし料理帖』の舞台を歩く」(2014年02月23日)
 
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 なお、「Roadside Library」で構築されているデータ集のうち、「時代小説館」の中の以下の情報は、「みおつくし料理帖シリーズ」の書誌情報として簡便ながら非常に有益なものです。
「高田郁「みをつくし料理帖」 シリーズ一覧」(2014年08月22日)
 
 
 

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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