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2014年8月23日 (土)

京洛逍遥(337)下鴨神社の盆踊りと地域の地蔵盆

 今夜は、下鴨神社の盆踊りです。午後7時から9時まで、朱の楼門前が会場となっています。
 世界遺産の境内で、国宝や重要文化財の前での盆踊りなので、それに参加できることは贅沢の極みと言えます。
 しかし、午後から雨模様で、6時を過ぎると大粒の雨となりました。

 私はこれまでにこの盆踊りに行ったことがなかったので、今年はぜひ行くつもりで待機していたのです。とは言うものの、この雨では残念ながら楼門前で盆踊りはできません。
 雨天時は参集殿で、となっていたので、6時45分頃に傘をさして参集殿へと歩いて向かいました。

 楼門前に櫓が組まれているはずなので、その様子を見てから参集殿へ行こうと思って西の鳥居から楼門に回ったところ、浴衣を着た人と警察の方がいらっしゃいました。

 これから移動なのだろうか、と思って見ていると、赤い毛氈の上にビニールをかけた床几を、姉さん被りに襷姿のみなさんが丁寧に拭き掃除をなさるのです。


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 楼門越しに夜空を見上げると、雨はすっかり止んでいます。盆踊りの準備が急ピッチで進みました。
 そして、7時ちょうどには、櫓に上がってマイクを手にされた下鴨御所音頭・紅葉節保存会会長の椎村悌知さんが、元気よく開会の挨拶を始められました。
 みなさん、ほっとした表情です。

 不思議なことです。開催時刻になると、突然に雨が降り止むのですから。
 賀茂の御祖神の威徳としか言いようがありません。

 踊りが始まると、次第に輪が大きくなります。最初は、御所音頭紅葉節の「三社めぐり」です。
 海外から来られた男性が、すぐに輪の中に入って踊られたのには驚きました。


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 歌詞を印刷したプリントを配ってくださいました。どうも何箇所かに誤植があるようです。しかし、それを元にして、印刷されたままの歌詞を引用しておきます。


「三社めぐり」の歌詞

豊かなる。秋の思ひをかけまくも、三ツの社に詣でんと。志すこと目出度けれ。君に大津と志し。勢田の長橋打渡り。露にぬれつつ夜もすがら、忍ぶ草津の手枕に、堅くちかひし石部宿。水口々に浮名立つ、土山越えて坂ノ下。勇むや駒の鈴鹿山。大竹小竹しなやかに、むねの関路の別れ道。言わぬ思ひを柘植の櫛。
長野豊久を打越へて。今宵必ず松坂と、人目を包む小畑川。明星の御茶屋過ぎ行きて、よい中川原連れ立て、程なく参る宮どころ。実や天照御神を、拝めば心五十鈴川、鈴振君や八乙女の、神楽のつつみ聲ゞに、高天原や岩戸山。ありがたさにぞ振袖の、しぐるる雨やぬれぎぬの、千代とささごと間の山、お杉お玉の弾く三味に、可愛いゝと鳴く烏。きぬぎぬ頃に立ち出でて、めぐる末社のかずつもり、二見ヶ浦や朝熊山。富士の煙の見まほしと。是より心いそいそと新たまる声打越て、登や恋の大和路へ。かかる契を初瀬山。彼の貫之が人はいざ。心も知ぬ我が恋は。ちぢに思をこもりくや。誓を三輪のすぎの門、二世をかためし雁の文、ふるの社を伏拝み、互に之を水鏡。其の在原の筒井筒、結ぶえにしの竹の葉の。千代をこめたるささめごと。心床しき帯解の流れも清き猿沢の、池の畔の八重桜。うねめの宮や衣掛柳。のどかに晴る春の日の、社々を伏し拝み妻恋慕う小男鹿の、声は聞ゆる三笠山。若草山の木の間より、出づる月影まん丸に、南円堂や大佛の、十三鐘や廣福寺二月堂には若狭井戸、色に染たるもみじ葉の、龍田の川や法隆寺。此処は名所も多けれど、君に心の急がれて、昔の都立ち出て、この手かしわの奈良坂を、越ゆれば早くも木津の里。井手の玉川玉水の、岸に乱るゝ山の、花色衣主や誰。問へど答へぬ口無しの、契りの末は長池と、小倉堤を打ち渡り、心の淀み流れ行く。今は盛の男山、鳩の峯越し来て見れば、名にし八幡の御社、登る山路の七曲り。彼の頼風とおみなめし、くねると詠みしの言葉を、互に之も石清水。めぐりめぐりて今茲に、心気心どを打ち忘れ。花の都も近づけば、嬉しさ限り長月の、よいとたわむれ遊ぶゑ。

 もう、これは語りです。口伝えしかないとのことなので、正確な歌詞は後日確認します。
 滋賀から三重を経て奈良と大阪を経巡る内容です。紀貫之の和歌が織り込まれるなど、丁寧に解釈するとおもしろそうです。

 この御所音頭は、かつては京都御所で披露され、今は下鴨地域に伝わるものです。今春5月に、明治以降初めて御所で披露されたことがニュースとなりました。この他に20曲も残っているそうです。男声でゆったりと歌われ、女性が踊るのが特徴です。

 この音頭は、下鴨小学校の4年生たちに法被と共に、地域学習として引き継がれています。伝統文化の継承が、子供たちに受け継がれて行くようです。確かな手応えが伝わってきます。

 下鴨学区社会福祉協議会から用意された飲み物を飲んだ子供たちが、みんなで輪の中に入ります。すでに習い覚えた踊りです。子供たちが嬉しそうに輪に加わると、とたんに楼門前が賑やかになりました。


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 この時は音頭も変わっていました。その歌詞を、これもいただいたプリントから再現しておきます。


鴨音頭(A)

サッサエー
若葉青葉の糺の森に  誰が唄うか下鴨音頭
鳥もきれいにソレないている  サッサ下鴨ウチトコヨイトコ
サテヨイトコ  シヤシヤリコ  シヤンシヤン
 
サッサエー
衿に葵の大臣のお馬  牛にきかしょか下鴨音頭
声にひかれてソレ花が散る  サッサ下鴨ウチトコヨイトコ
サテヨイトコ  シヤシヤリコ  シヤンシヤン
 
サッサエー
高野河原の友禅もよう  水にきかすか下鴨音頭
流れそまつてソレ今日の色  サッサ下鴨ウチトコヨイトコ
サテヨイトコ  シヤシヤリコ  シヤンシヤン

サッサエー
橋のたもとに蛍がとんで  拍子うれしや下鴨音頭
よい子揃ってソレ夜が更ける  サッサ下鵬ウチトコヨイトコ
サテヨイトコ  シヤシヤリコ  シヤンシヤン

サッサエー
比叡のお山にあかりがつけば  風も楽しい下鴨音頭
そろう団扇にソレ浴衣がけ  サッサ下鴨ウチトコヨイトコ
サヨイトコ  シヤシヤリコ  シヤンシヤン
 
 
 
下鴨音頭(B)

一、賀茂のなア  賀茂の社にさみどり燃えりや  ヨーイヨイ
   葵祭の葵祭の絵巻物
   サテ ホンマニ マツタク 花よりも
   下鴨よいとこ よいところ よいところ

二、夏はなア  夏はみたらし夏越の矢取  ヨーイヨイ
   身体丈夫に身体丈夫に身を護る
   サテ ホンマニ マツタク 力持ち
   下鴨よいとこ よいところ よいところ

三、山はなア  山は  比叡よ心の姿  ヨーイヨイ
   写す鏡は写す鏡は加茂の水
   サテ ホンマニ マツタク 月よりも
   下鴨よいとこ よいところ よいところ

四、冬はなア  冬は比良木お火焚きまつり  ヨーイヨイ
   上げる作品は上げる作品は  みな上手
   サテ ホンマニ マツタク 雪の色
   下鴨よいとこ よいところ よいところ


 
 帰り道でのことです。町内の地蔵堂の前で、地域の子供たちが演芸会をしていました。


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 この下鴨地域は、歴史が古いことも併せて、こうした伝統的な文化の継承が、楽しく守り伝えられています。千年の歴史の重み恐るべし、と言うしかありません。

 今、我が家には、これに参加する子供がいません。3人共に成人したからです。もしいたら、大はしゃぎで踊り、大声で歌っていることでしょう。この体験を町内会の仲間として味わわせることができなかったことが、少し心残りです。奈良の生駒で、奈良時代を思う存分味わったはずなので、それはよしとしましょう。

 こうして守り伝える日本文化があることと、それを子供たちが受け継いでいることは、本当に頼もしい限りです。生きた歴史と文化を見ることができました。
 
 
 

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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