« 江戸漫歩(86)背中を意識して国営昭和記念公園を歩く | メイン | 読書雑記(107)沢田ふじ子『短夜の髪 京都市井図絵』 »

2014年9月11日 (木)

朝日新聞の講読を解約する決断

 朝日新聞に目を通し出したのは、私が中学生になってからのように思います。

 高校を卒業するにあたり、大学生活は東京で送ることに決めました。
 しかし、家庭の事情で学費や生活費は自力で工面するのが条件でした。
 そこで、迷うことなく朝日新聞の奨学生になり、東京で新聞配達や集金業務をすることで目的を果たすことにしました。

 高校3年生の冬、大阪の中之島にある朝日新聞社へ行き、朝日奨学生の手続きなどをした時に出されたオレンジジュースは、今でも忘れられません。
 それまで家では、粉末を水で溶かしたジュースしか飲んでいなかったのですから。
 それが、実際に果物のオレンジを搾ったジュースが、分厚いガラスのコップで出てきたのです。
 使い慣れないストローから喉に届くザラザラとドロドロは、私にとっては懐かしい感触です。

 上京して配達を始めてすぐに、十二指腸潰瘍穿孔性腹膜炎で内臓が破裂しました。
 一命を取り留めて、退院後は自宅のある大阪の高安の里でしばらく静養しました。
 ちょうど、千里丘陵で万国博覧会が開催されていた頃です。

 その年の秋に再度上京し、元気に学生生活に戻りました。
 ところが、またまた災難が襲ってきました。

 配達に出る直前の朝3時に、新聞販売店が出火のために全焼したのです。
 煙に咽せながら2階の窓から飛び出したところ、目の前にあった電柱に幸運にもしがみつくこととなり、ズルズルと下まで降りて逃げました。
 その日は、手や足を血だらけにし、小雨の中を裸足で新聞を配ったように記憶しています。

 数日後の成人式では、マラソンにエントリーしていました。
 しかし、満足に着るものもなく、成人式にも出られず、神社の社務所で被災者用の毛布にくるまってじっとしていました。
 両親が作ってくれた背広や、大阪から持ち込んでいた所持品のすべてが焼失しました。
 そのため、20歳までの写真などを始めとして、自分の想い出をたぐり寄せる物は、今に至っても何一つありません。

 そんな中でも、朝日新聞社からは、学生が焼失した書籍は申告通りに買うように、という配慮をしてもらえました。
 そのため、身の回りの物はないのに、本だけはあるという、不思議な生活を送りました。

 そのせいもあってか、こうしてブログでかつてを振り返り、想い出すことは、私の楽しみの一つです。
 20歳までを想い出すことのできる、形あるよすがとなる物がないのですから、自分の想念の中を自由に飛び回れるのです。
 感触という手応えはありません。
 しかし、こうして結構楽しんでいます。

 そんなこんなで、朝日新聞は私にとっては生活と密着した新聞でした。
 自分の過去を振り返ると、どこかに朝日新聞が関係しているように思われるのです。

 三島由紀夫が割腹自殺した時も、私の投書が声の欄で紹介されました。
 初めてマスコミに自分の名前が掲載された、記念すべき出来事でした。

 朝日新聞を配っていた時の連載小説が井上靖の『星と祭』だったことから、以来、井上靖の作品に愛着を抱いています。
 十一面観音めぐりを始めたのも、その頃からでした。

 ところが、私に大きな影響を与えてくれたその朝日新聞も、最近はどうもおかしいところが目に付きます。
 思い入れがある新聞だけに、最近は我慢して読んでいたところもあります。
 しかし、もういいか、と、突き放して見るようになりました。
 自分の青春との決別でもあります。

 これまでに、朝日新聞を褒めたり貶したりしながらブログを書いていました。
 新聞記事に触発されて書いた記事も多々あります。
 朝日新聞との講読契約を解除するのを機会に、これまで朝日新聞に関連して書いてきた記事を抜き出してみました。

 真剣に朝日新聞に抗議をしていたり、問題提起をしていたり、単なる話の切っ掛けにした記事などなど、さまざまです。
 この中から私が今も気に入っている記事は、次の3つでしょうか。
 いずれも長文なので、おついでの折にでもご笑覧いただければ幸いです。
 
「何故かくも愚行を誇らしげに」(2010/9/26)
 
「源氏千年(67)源氏写本発見というエセ新聞報道に異議あり」(2008/10/30)
 
「源氏千年(40)朝日「人脈記」9」(2008/5/2)
 
 
 妄言多謝
 
 
--------------------------------------
「江戸漫歩(78)生まれ変わった日本橋コレド室町」(2014年05月12日)
 
「転居(3)「源氏物語余情」1996年1月分・3月分」(2014年05月10日)
 
「漱石の新聞連載小説『心』を本文異同の視点から読む」(2014年04月20日)
 
「読書雑記(94)高田郁『美雪晴れ―みをつくし料理帖』」(2014年02月20日)
 
「尾州家河内本『源氏物語』の新聞記事に掲載されたコメント」(2013年12月24日)
 
「「天声人語」で紹介された島根県のこと」(2013年12月22日)
 
「授業(2013-4)海外における『群書類従』と学際的研究」(2013年05月10日)
 
「父が遺していた焼けた帛紗の由緒書」(2012年12月24日)
 
「従兄弟の喪中を知って思うこと」(2012年12月05日)
 
「キーン先生と伊井先生の対談に陪席して」(2012年06月20日)
 
「ブームとなりつつある糖質制限食」(2012年06月14日)
 
「鴨長明のシンポジウムに参加して」(2012年05月19日)
 
「昭和8年の高松宮妃殿下のお写真」(2011/10/25)
 
「京洛逍遥(196)京都五山の送り火を考える-2011」(2011/8/16)
 
「何を今更「電磁波」と「発がん性」の認定」(2011/6/1)
 
「何故かくも愚行を誇らしげに」(2010/9/26)
 
「本屋で本が見つけられない」(2010/5/26)
 
「心身雑記(51)口臭の原因判明」(2010/3/29)
 
「新聞が廃止になった帰路のANA」(2010/1/31)
 
「『源氏物語』では「標準本」と言うより「基準本」がいい」(2009/10/31)
 
「京洛逍遙(100)府立植物園で『源氏物語』」(2009/8/23)
 
「学問とは無縁な茶番が再び新聞に」(2009/8/11)
 
「新写本『源氏物語』を平等院に奉納する愚行」(2009/7/8)
 
「情報源としての京都新聞」(2009/6/12)
 
「コメントの再掲載」(2009/5/3)
 
「『源氏物語』の翻訳状況(2009.3.25版)」(2009/3/26)
 
「浅田次郎の講演会」(2009/3/21)
 
「井上靖卒読(55)『詩集 北国』」(2009/1/5)
 
「日本の五重搭と三重塔」(2008/11/26)
 
「ハーバード(2)朝日新聞を見る」(2008/11/20)
 
「源氏千年(67)源氏写本発見というエセ新聞報道に異議あり」(2008/10/30)
 
「源氏千年(66)朝日のニッポン人脈記が文庫本になる」(2008/10/29)
 
「NHKさん、卑怯ですよ」(2008/10/9)
 
「『源氏物語』の別本とは何?」(2008/8/2)
 
「大沢本『源氏物語』の切り抜き帖・追補」(2008/7/21)
 
「源氏千年(51)東西の温度差」(2008/6/30)
 
「源氏千年(50)朝日新聞の文化欄に」(2008/6/24)
 
「源氏絵巻のメガネ拭き」(2008/5/21)
 
「源氏千年(47)音楽で『源氏物語』」(2008/5/18)
 
「源氏千年(42)新聞誤報で「車争図」見られず」(2008/5/7)
 
「源氏千年(40)朝日「人脈記」9」(2008/5/2)
 
「源氏千年(35)朝日の「みだし」への疑問解消!」(2008/4/27)
 
「源氏千年(34)低次元の朝日新聞の記事に溜め息」(2008/4/27)
 
「源氏千年(33)朝日「人脈記」の表題が東西で違う」(2008/4/27)
 
「辻村寿三郎さんの古典人形」(2008/4/26)
 
「源氏千年(27)朝日新聞「人脈記」1」(2008/4/22)
 
「京都大不満の会」(2008/2/10)
 
「源氏千年(4)ドラマ化はいつ」(2008/1/6)
 
「京洛逍遥(22)元旦の新聞に!!」(2008/1/2)
 
「源氏千年(3)【復元】本年元旦の朝日に掲載」(2007/11/15)
 
「今日は22日です。」(2007/10/22)
 
--------------------------------------
 
 
 

コメント

コメントを投稿

コメントは記事の投稿者が承認するまで表示されません。

NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

Powered by Six Apart
Member since 07/2008