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2014年9月13日 (土)

日南町でハーバード大学本「須磨」を読む

 鳥取県日野郡日南町で、「鎌倉時代の『源氏物語』古写本を読んで池田亀鑑を追体験してみよう(第2回)」という企画をもちました。
 これは、主催:池田亀鑑文学碑を守る会、後援:NPO法人〈源氏物語電子資料館〉、協力:新典社、で実施されるものです。

 今後とも日南町を舞台として継続する意味からも、町民のみなさま15名に加えて、今回はノートルダム清心女子大学(日本語日本文学科・原豊二ゼミ)の学生さん14名も参加されたことは、非常に意義深いものとなりました。


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 まずは、日南町と文学の関わりをわかってもらうことから。
 井上文学展示室と松本文学展示室を案内していただきました。日南町は、井上靖と松本清張と池田亀鑑に縁の深い町なのです。
 そして、図書館を見学した後、みんなでいっしょに昼食となりました。
 その時に出た割りばしの箸袋に書かれていた文字を、その後の古写本を読む勉強会の枕に使いました。


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 この箸袋には、「御手茂登」と書かれています。まさに、変体仮名で書かれているのです。身近なところに変体仮名が生きていることを、この箸袋から実感してもらえるいい機会となりました。

 第1回の前回は、ハーバード大学本の第52巻「蜻蛉」の巻頭部分を読みました。
 今回は、同じハーバード大学本でも、第12巻「須磨」の巻頭部分を読むことにしました。
 「須磨」は、読みやすい字で書写されています。変体仮名のほとんどが、今と共通する字母で書かれています。「蜻蛉」の時には5行程度しか読めませんでした。しかし、今日は10行すべてを確認しながら読むことができました。


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 また、今回は少し欲張り、学生さんもいらっしゃることを意識して、ハーバード大学本特有の異文があることにも触れました。
 巻頭部分で、現在広く読まれている大島本で「これよりまさること」と書かれている所が、ハーバード大学本では「これよりはしたなきこと」となっているのです。「まさる」と「はしたなき」は、あきらかに異なる語句です。単なる写し間違えではないのです。

 ハーバード大学本「須磨」は、そのように読む楽しみを与えてくれる写本であることを、お話しました。
 こうした異文がハーバード大学本にあることは、これまでまったく指摘されていません。その意味を考えることは、新たな『源氏物語』を読むことにつながります。そのことを、これからという若い方々に訴えました。

 後半の20分は、目の不自由な方と一緒に『源氏物語』の写本を読める環境作りを考えている、ということを話しました。

 ひらがなを媒介として、見常者と触常者がコミュニケーションを図るべきだと思っています。点字だけに頼っていては、お互いの文字体系が違うので、滑らかなコミュニケーションが取れません。すべての文章にひらがなでルビを振り、視覚に障害のある触常者の方々が、立体コピーを活用した凹凸のひらがなが理解できれば、共通の文化を共有できるようになるのです。
 点字による点訳ボランティアに頼って触常者の読書体験を支えることには、どうしても無理があります。

 図書館も総ルビの本を揃え、そこに透明シートにひらがなを立体コピーしたものを貼れば、図書館の役割も変わってきます。目の不自由な方々も、図書館で本が読めるようになるのです。
 読み聞かせに留まっていた図書館の機能が、新たな使命を帯びることになります。
 このことは、今私が必死に取り組んでいることです。

 日南町には、豊富な森林資源があります。今回みなさまにお願いしたことは、ハーバード大学本『源氏物語』の巻頭だけでもいいので、板に彫ってもらえないか、ということです。木にひらがなを彫って、それを教材にして、ひらがなだけでも手の感触で理解できるようになれば、目の見える人と目の見えない人の距離は相当縮まります。

 目の見えない方も写本が読める、ということと、図書館に行ってもひらがなさえ認識できれば本が読める、という環境を1日も早くつくるべきです。

 このことは日南町の何人かの方に理解していただけたこともあり、早速日南町特産の木で変体仮名のカードをつくってもいい、という方が出てきました。言ってみるものです。

 このことについては、今後とも夢のある話として報告できそうです。
 どうぞ、楽しみにしていてください。
 そして、折々に手助けをしてください。
 
 
 

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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