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2014年10月 6日 (月)

読書雑記(110)澤田ふじ子『地獄の始末―真贋控帳』

 澤田ふじ子『地獄の始末―真贋控帳』(徳間書店、2001年7月)を読みました。


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 古物としての書画の鑑定を家職とする古筆見了意を軸にして展開する、連作の物語です。
 個人的には、所有者の思いが籠もった古物を扱う題材の性格からいって、もっと人間の情を盛り込んだほうがふっくらとした作品に仕上がるように思いました。作者のスタンスの問題なので、これはこれで澤田流の味付けとして読みました。
 
 
■「雪村の絵」

 開巻早々、ならず者と浪人が喧嘩をする場面が、生き生きと描かれています。話は、古筆了意が見せた不吉な陰をほのめかして進みます。読者を惹きつけるのがうまい展開です。ただし、最後は話の収まりがよくないと思いました【3】。
 
初出誌︰『問題小説』2000年5月号
 
 
■「利休の判形」

 古筆家の目利の真価が語られます。入門用の知識が参考になります。なぜ古典籍に極め書きが付いているのか、というその理由がわかります。所持者は、これが本物だという証明がほしいのです。それだけ偽物が多い、ということでもあります。
 本話は、利休の掛け花入けの出現で、めでたく話が収まります。趣向が作り事めいていて、興ざめでした。しかし、おもしろく読むことができました【3】。
 
初出誌︰『問題小説』2000年8月号
 
 
■「二天の鵙」

 偽物の古筆了意が、大垣城下に出現します。古筆見としての自家を守るために、江戸からの帰りに通りかかった了意は、当人に会いに行くのでした。人間関係の謎解きに引き込まれます。それ以上に、絵が転々として今に残る事情も語られており、興味深い美術伝来の歴史もうかがえます。気になったのは、最後の詰めの一点だけです【5】。
 
初出誌︰『問題小説』2000年10月号
 
 
■「暗がりの土地」

 清貧の心がけでおかきを焼き続ける清助が、淡々と語られます。清々しささえ伝わって来ます。
 織部の沓茶碗と黒織部や青織部など、室町期の美濃焼が話題にのぼります。目の前の3つの茶碗は本物なのか。清助が庭から掘り出したものだけに、つい読まされます。そして、歴史の背景が語られ、さらに驚かされます。現代の発掘話まで引かれ、たっぷりと楽しめました。ここまでは、あまり情を前面に出さなかった作品の中でも、本作はほろりとさせる仕上がりです。
 題名が暗すぎるので、もっと別の命名にすべきだと思いました【5】。
 
初出誌︰『問題小説』2001年1月号
 
 
■「世間の罠」

 平安・鎌倉時代の仏画が出てきます。応挙に又兵衛と、話題となる出演者も豪華です。西陣の説明に国会図書館の資料が紹介されているなど、現代と江戸時代の自由な往き来がいいと思います。ただし、話は中途半端なままに幕切れとなります【2】。
 
初出誌︰『問題小説』2001年4月号
 
 
■「地獄の始末」

 小野道風が書いた『古今和歌集』の色紙が話題となって始まります。昭和13年の国立京都博物館展覧会の話や、昭和31年の売春防止法のことなど、島原遊廓を舞台にして人情噺が紡がれます。
 書画骨董をからめて人の心を語るのが、本作の本領です。いい話です【5】。
 
初出誌︰『問題小説』2001年6月号
 
 
※本書は、同書名で「徳間文庫」(2004年1月)と「光文社文庫」(2007年11月)にも収録されています。
 
 
 


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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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