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2014年11月 2日 (日)

読書雑記(111)澤田ふじ子『宗旦狐』

 澤田ふじ子の『宗旦狐—茶湯にかかわる十二の短編』(光文社時代小説文庫、2013年10月)を読みました。


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 本書に収録された作品は、裏千家の月刊茶道誌『淡交』の平成14年1月から12月まで連載されたものです。1作品につき400詰原稿用紙20枚という制約があったようです。

 本文庫本に収録された「初版本のあとがき(平成15年春)」で、作者は次のように言っています。


 わたしはこうして短く制限された枚数の中で、一つのテーマにもとづいた作品を書くのが、スリリングで好きだ。
 茶湯は権力や財力に支えられて大きく広まり、茶道具によって贅の色に染められた。当然、血腥い話は数々伝えられている。しかし特殊な茶道誌という関係から、血腫い話はタブーとされ、苦労を強いられたが、徳間書店から刊行されるに当たり、収録作品中「御嶽の茶碗」の最後の部分を二行ほど改稿した。
 表題作「宗旦狐」の千宗旦は、茶道史の中で神格化された人物。多くの逸話をいまに残すが、わたしが作り上げた宗旦狐の話が、やがて歳月が経ったとき、かれの逸話の1つに数え入れられたら幸いだと思っている。
 なおこの一冊の中に平成二年三月、千利休四百年忌にあわせ、講談社が書下ろし短編小説集として刊行した『利休七哲』のうち瀬田掃部「仲冬の月」を収録させていただいた。(300頁)

 この20枚という制約は、作者のことばはともかく、私には中途半端なままで閉じられることになった最大の原因であると思っています。

■「蓬莱の雪」
 京都五条大橋のうどん屋の弥助のもとに留め置かれた雪村の画幅。無銭の客がうどんの形に置いて行ったものでした。話は、思わぬ展開をします。ただし、作り事めいていて、先が見えてしまいました。それでも、年の瀬らしい、いい話に仕上がっています。【3】
 
■「幾世の椿」
 東九条村の百姓甚助親子の話です。裏庭の椿を、一人のあやしい男が、初釜にかけるために見つめています。椿をめぐる話は、爽やかです。【3】
 
■「御嶽の茶碗」
 大垣藩領の天野九左衛門の茶室をめぐる話です。一つの青磁茶碗が2人の運命を狂わせます。最後の急展開がうまいと思いました。【3】
 
■「地獄堂の茶水」
 四条高倉錦小路上ル、小間物問屋菊屋の女主お貞は、毎年3月6日に、鴨川の源流である大原の地蔵堂の水を正午きっかりに汲んで、お茶を一服点てることを続けていました。その水をめぐる話が、感動的に語られます。【4】
 
■「戦国残照」
 山城国大山崎にある、国宝の茶室「待庵」が出てきます。摂津国広瀬村の小夜の話です。小夜の夫は、関ヶ原の合戦で亡くなりました。ところがその夫が、四条小橋のたもとで茶売りをしているのを見つけます。記憶をなくしながらも、小夜が作ったお守りを大事に持っていたのです。感動的な話です。【5】
 
■「壷中の天居」
 応仁・文明の乱の頃の東洞院通りが舞台です。戦の後に新しい町屋が作られていきます。そうした中で、坪庭にまつわる話が語られます。1話としては、まとまりのない作品です。【2】
 
■「大盗の籠」
 上京・五辻通りで竹籠作りを生業としている六蔵の話です。茶の湯と籠花入れの話題が、後の河竹黙阿弥の歌舞伎「白波五人男」へとつながります。利休の孫である宗旦が言った「分相応」を語るいい話です。【4】
 
■「宗旦狐」
 寺町今出川の茶屋が舞台です。利休の孫宗旦が食べた団子の串が話題となります。さらには、筆の話へと、おもしろく展開します。ただし、落ちが見えるので、少しがっかりです。【2】
 
■「中秋十五日」
 丹波篠山藩での、中秋十五夜の茶会の話です。始めは、モタモタしていました。しかし、切れ味のよい、みごとなできの作品です。【4】
 
■「短日の霜」
 上京実相院町の裏店での話です。仇討ちや松江と不昧公が出るなど、仕掛けが気に入りました。ただし、最後がもの足りません。【3】
 
■「愛宕の剣」
 宇治の茶畑が出てくる、今に残る上林家にまつわる話です。ただし、話がまとまりません。ネタがもったいないと思いました。【1】
 
■「師走の書状」
 上京の御所八幡町が舞台です。利休自筆の書状など、やや無理な設定です。いい話なのに、小さくまとまりすぎたようです。【2】
 
■「仲冬の月」
 素性や履歴が不明ながらも、豊臣秀吉の家来で利休七哲にも数えられる瀬田掃部のことから始まります。室町期の絵師のこともよくわかります。瀬田は秀吉のもとで、とんとん拍子に出世します。しかし、やがて離れていくのです。人物の描写がぼんやりとしているのが気になりました。【2】
 
 
※2003年3月 単行本(徳間書店)
 2005年5月 文庫本(徳間書店)
 
 
 

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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