« 読書雑記(111)澤田ふじ子『宗旦狐』 | メイン | 読書雑記(112)『愛盲―小杉あさと静岡県の盲教育』 »

2014年11月 3日 (月)

第12回オンキヨー世界点字作文コンクールの表彰者

 昨日の「毎日新聞」に、第12回オンキヨー世界点字作文コンクールの入賞者の発表がありました。最優秀オーツキ賞は山本裕子さんの「点字でしゃべる」でした。今月13日に大阪で表彰式があります。

 毎日新聞は、1922(大正11)年から週刊点字新聞「点字毎日」を発行しています。もう87年にもなるのですから、今も発刊し続けている意義は大きいと言えます。

 この「点字毎日」は、毎日新聞大阪本社が拠点となって作成されています。新聞紙面を点字にしたものではない情報誌だそうです。A4判60ページの「点字毎日」は、1年2万円、半年1万円(非課税、送料無料)となっています。
 私は点字が読めないので、受け売りの情報を羅列するだけで申し訳ありません。過日、日本に点字が創案された時代のことを調べていて、この情報メディアのことを知りました。

 毎日新聞のウエブサイト「点字毎日」に、その歴史が詳細に記されています。

 また、「点字と点字毎日に関する主要年表」も便利です。

 「オンキヨー点字作文コンクール」は2003年から取り組まれているものです。「異文化コミュニケーション」の輪が年々拡がってるようです。

 さて、毎日新聞社「点字毎日」が共催する世界規模の点字作文コンクールの名称は、「オンキヨー世界点字作文コンクール」(厚生労働省、日本盲人福祉委員会、毎日新聞東京・大阪・西部社会事業団、オンキヨーエンターテイメントテクノロジー(株)後援)です。今回、この第12回で最優秀賞オーツキ賞を受賞されたのは、山本裕子さんの作文「点字でしゃべる」でした。非常にウイットに富む印象深いものです。国内170編から選ばれたのです。

 視覚障害者を支える側の作品として、今回新設された「サポートの部」の優秀賞は、関場理華さんの「点字百人一首への挑戦」でした。これは、日本の古典文学と遊技がかみあった、競技としての『百人一首』の今後の展開が楽しみになる内容でした。

 ウェブに山本さんの「点字でしゃべる」が掲載されているので、その全文を引用します。
 視覚障害に関する文章などの頒布は著作権が緩やかなので、問題がなければこのまま本ブログで流し続けます。もし問題があるのであれば、ご指摘いただければ早急に対処をいたします。


 手のひらと指先のぬくもり

 私が目の前の人とコミュニケーションをとる時に使う手段は複数あります。まずは「音声」。これは普通ですね。ただ私の場合には補聴器を使ったうえで静かな場所を選び、1対1ではっきりゆっくり発音してもらわなければ聞き取ることができません。実用的なのは手のひらに指で墨字を書く「手のひら書き」、ふせた両手の指の上を点字タイプのキーに見立てて点字を打つ「指点字」です。

 私は視覚に障害があり、そのうえ進行性の聴覚障害(感音性難聴)を持つ、いわゆる盲ろう者です。ここのところ主人がにわかに「指点字」に興味を示してくれました。マイブームとでもいうのでしょうか。握った車のハンドルに「アイウエオアイウエオ・・・」と、信号待ちのたび繰り返し打って覚えたそうです。太い無骨な指は「アイウエオ」、この5文字をおぼえるのに2日かかりました。その後は順調に進み、この1週間で50音のうちア行からマ行、それとラ行が終わりました。

 「わあ、お父さん、もうちょっとで50音、全部覚えられちゃうね」。私は主人をたいそう大げさに励ましました。濁音、撥音(はつおん)、拗音(ようおん)、特殊音、数字にアルファベットと先はまだまだ長いことには……もうしばらく触れないでおくつもりでした。なぜって、気持ちがなえてしまわないように。覚えてもらうためにはこちらも気を使うものです。

 先日、ショッピングセンターのフードコートでお昼を食べることにしました。「ねえねえ、何にしたの?」。私は両手の手の甲を主人の前に出しました。

 「……」なぜだかひと文字も打てない様子です。くんくんと私はにおいの手がかりを探しつつ、手をひっくり返して手のひらの側で尋ねました。よりにもよって「ビビンバ丼」を注文してしまったとのこと。濁音も撥音もまだ教えていませんでしたから、どうりでひと文字も打つことができなかったというわけです。

 難聴の進行のため、ここ数年は補聴器をしてどんなにゆっくり話してもらっても電車やバスの中、スーパーやレストランではほとんど聞き取ることができなくなりました。私が何度も何度も聞き返すと主人は何度も何度も同じことを繰り返し言わなければなりません。そのうえ自分の発した声が聞こえないと音量の調節が難しく、私は大きすぎる声で答えてしまうことがあります。主人はそれが恥ずかしくて人前で話しかけなくなってしまいました。妻の手を取らなければならない「手のひら書き」も、どうも周囲の目が気になるようで外ではしてくれませんでした。

 その点、子供たちには心理的な抵抗感はないようです。もっとも「手のひら書き」については、漢字の書き取りを目で見てやることができませんので、小学校入学以来ずっと私の手のひらに書かせてチェックしていたということもあると思います。

 また彼らは指点字に興味を持つと、あっという間に覚えてしまいました。新たなコミュニケーション手段を「音声で話すよりも容易に通じる便利なもの」とごく自然に受け止めてくれました。今では義父母や近所の人と話す時には通訳を買って出てくれます。子供のことですから、あくまでも気まぐれにですが。

 ここにきて主人が外でも「手のひら書き」をしてくれるようになりました。不思議に思っていた矢先、今度は「指点字」を覚えようというのです。これまでも私は目のつきそうなところにさりげなく、かつあからさまに点字の一覧表を置いておいたりしてきましたがそれを一切無視してきた主人がです。なぜ今突然に「指点字」なのでしょう。

 進行に順応できず戸惑い悩むのは、実は本人以上に周囲の家族だったりします。本人は寄せくる大きな波にのまれまいともう必死ですから、いざ前に進むことを決意したら躊躇(ちゅうちょ)したり考えたりしている余裕はありません。

 思えばずっと主人を苦しめてしまっていました。今ようやくその苦しみから抜け出し、さらにもう一歩踏み出そうとしてくれているのです。

 お父さん、今までいつも隣にいてくれてありがとう。子供たちは成長し、ふたりとも中学生になりました。母親に対して口を開くのが億劫(おっくう)になってきたようで少し寂しく感じていたところです。これからはお父さんの手に触れて言葉を聞き、お父さんの目に映る情景を感じながら日々をともに過ごしていけることを楽しみにしています。たくさんおしゃべりをしましょう。そしてたくさん笑いましょう、いつまでも。

 同じ趣旨で、「サポートの部」で優秀賞となった関場さんの「点字百人一首への挑戦」も引用します。これは抜粋が公開されています。これも、引用に問題があれば対処する用意があります。


 広がる笑顔の輪

 「春すぎて 夏来にけらし 白妙の〜」。上の句が読み上げられるのと同時に選手の手が一斉に点字が付いた百人一首の札の上を走る。「はい」。70代女性の声に一同どよめく。「また取られちゃった」と主婦が悔しそうに言えば「次こそ取るぞ!」と若者の声。

 ここは東京・高田馬場にある新宿区社会福祉協議会・視覚障害者交流センターだ。新年会で催されたのが「点字百人一首のデモンストレーション」。発案者は全盲の友人と私。友人も子育て真っ最中、私の子供も全盲だった。その友人が話し始めた。「子供たちが学校に行くと、お正月に百人一首のカルタ大会があるでしょう。一度親子で見学に行ってビックリしちゃった。読み手の声に耳をすます静寂感。一瞬で勝負がつく緊張感。あれを点字の札でできないかしら?」。私の子供も授業で百人一首に取り組む前だったので、よし! 取り組んでみようと決めた。

 調べるうちに「五色百人一首」という、小学校で活用されている用具を知った。枚数は1回戦につき20枚。レベルごとに分けられ、最初のレベルには有名な歌など、百人一首をよく知らなくても対戦でき札を取る喜びが味わえる。

 「これだ!」。近所の100円ショップで材料を買ってきて枠を作った。次は我が家の子供たちで実験だ。全盲対晴眼になるので「点字使用者は試合開始5分前に自分の作戦で札を並べて良い」というハンディを付ける。結果は互角。ビックリした! でも百人一首の特性はそこにあった。記憶力も問われており、上の句を読む間に早く下の句を思い出せれば札を取ることができるのだ。

 「これは面白い!」。体験した人は口々に褒めてくれた。ところが問題が。「点字百人一首」は売っていない。私が手作りできる数にも限界がある。冒頭の視覚障害者交流センターの職員の方に声を掛けられたのはそんな時だった。「絶対に喜ばれますよ。見えない人も見える人も楽しめる。社協に登録している方々の力を借りましょう」と呼び掛けてくださった。ボランティアの方と全盲の使用者の打ち合わせが始まり、2カ月後には試合用のセットが5組もできた。私1人の力ではここまで来られなかった。地域の力、専門家や当事者の助言、何より参加した方々の笑顔が大きく実った。仲間を広げ、この輪を大きくつなげてゆきたい。(抜粋)

 なお、作家の玉岡かおるさんの「選評」も、毎日新聞に掲載されています。
 これは応募作全般に関するものなので、冒頭部分のみを引用します。
 視覚障害者(触常者)と文字に関して、その意義を再認識する視点で語り始めておられる部分です。


 選評 指先から伝わる文字の力

 人類が生み出したツールで、もっとも功績が大きかったのは文字であろう。文字に書き記すことで、相手が知らない、気づかない世界を伝え合える。その意義の大きさを、今回ほど痛切に再認識させられたことはない。見える文字はなくとも、指先で触れる小さな点字により、これほども多様な体験や思いが表され、伝わってこようとは。
(下略)

 参考までに、「その他の入選者(敬称略)」についても記録として残しておきます。
 ここでは、年齢を外しています。

 【国内】
「優秀賞」千葉県、中村和子
「佳作」沖縄県、上地翔子
学生の部「優秀賞」栃木県立盲学校・大久保春佳
 同 「佳作」兵庫県立視覚特別支援学校・石井千月呼
 同 「特別賞」(小・中学生対象)大阪府立視覚支援学校・辻本麗美
サポートの部「佳作」東京都、中山敬
 同 「特別賞」静岡県、斯波千秋▽大阪府、加治川千賀子

 【海外】
「優秀賞」WBUAP=ドロシー・ハミルトン(オーストラリア)▽アダム・プラタマ・プトラ(インドネシア)。
 ABU=ニマル・ジャヤラトゥナ(スリランカ)▽サミーナ・ゼフワク(アフガニスタン)
 EBU=ジュセフ・ズブラネック(スロバキア)▽ブランドン・C・ハルクープ(イギリス)
 WBU−NAC=デボラ・ケンドリック(アメリカ)▽クリスティン・スティール(同)
 
 
 

コメント

コメントを投稿

コメントは記事の投稿者が承認するまで表示されません。

NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

Powered by Six Apart
Member since 07/2008