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2014年12月の31件の記事

2014年12月31日 (水)

平成26年(2014)を記録した写真集【その1】

 平成26年も1年間、毎日このブログを書き続けることができました。
 好き勝手に思いつきを日々書いてきました。
 折々にご教示やコメントをお寄せくださった方々に、あらためてお礼を申し上げます。
 その中から、私の記憶に新しい写真を選んでみました。
 何回かに分けてとりあげます。
 写真の説明は、当該のブログをご覧ください。
 
(1)「京都で『源氏物語「蜻蛉」』の写本を読む(第7回)」
(2014年01月18日)
 
 京都で『源氏物語』を読む会を開催している、ワックジャパンの中庭から町家の母屋を見た、風情のある建物です。
 

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(2)「京洛逍遥(306)角田文衞先生と出雲路橋の夕陽」
(2014年02月05日)
 
 賀茂川で見た夕陽です。
 

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(3)「江戸漫歩(73)大雪前夜の隅田川を行き交う屋形船」
(2014年02月07日)
 
 隅田川のマンション群の間を進む屋形船です。
 

140207_sumida1



 
(4)「伊藤科研の第2回研究会を京都で開催」
(2014年02月26日)
 
 「伊藤科研のホームページ」のデザインが完成しました。

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  (5)「京都で『源氏物語「蜻蛉」』の写本を読む(第8回)」

(2014年03月01日)
 

 賀茂川の鴨たちも、散策路の所まで上がって来て遊んでいます。
 

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2014年12月30日 (火)

歳末に河内高安の里へ墓参

 今日は風が少し温く感じられる歳末となりました。
 鷺と鴨も、ゆったりと賀茂川で年の瀬を迎えています。


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 今年の夏も如意ヶ岳の送り火で賑わった大文字は、人に気付かれまいとするかのように、静かに新年を迎えようとしています。


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 京阪の出町柳駅から大阪京橋駅と鶴橋駅、そして河内山本駅と乗り継いで、我が家のお墓がある終点の信貴山口駅に着きました。2時間の小旅行です。


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 お墓をきれいにし、お花とお菓子をお供えしました。
 少し曇っていたこともあり、眼下には淡路島や四国を望むことはできませんでした。
 手前に、私が通った南高安小学校と南高安中学校の跡地が見えます。


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 帰りの鶴橋駅前で、いつものように回転寿司をいただきました。ここは、ボリューム満点の海鮮サラダがあるので気に入っています。


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 ほとんどのお寿司屋さんでは、サラダを置いていません。しかし、お寿司の健全な発展の観点からも、ぜひサラダを置いてほしいものです。お店でサラダのことを聞くと、小馬鹿にした対応をされる寿司屋さんが大半です。しかし、いずれその勘違いに気付かれると思います。
 お寿司屋さん、一日も早く気付いてください。もし意地でも置かないというのであれば、野菜を取り入れたお寿司を何か一つは考えて用意しておくべきです。

 日本のお寿司は、日本固有の文化を体現するものということに拘った頑固さと、食通を自認する人が回転寿司を極端に軽蔑した結果、世界的に寿司文化から取り残されてしまいました。日本でのお寿司は、ガラパゴス化し、世界的には孤立しています。微かに、プライドだけで和食という看板にしがみついています。痩せ我慢はもういいと、私は思っています。

 サラダについては、日本でお寿司が生き残りるためにも、ぜひとも意識して置くようにしてほしいものです。いつもの持論ですみません。

 帰りの京橋駅の広告で、「あびこ観音」への初詣の看板をみかけました。
 ここに「あびこ」という平仮名が書かれています。この「び」の字母は何でしょうか。


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 私は、変体仮名の翻字の説明をする時に、「ひ」の字母について、1つの点で始まったら「比」、2つの点で始まったら「飛」が字母である可能性が高い、と言います。
 そう思って見ると、この「あびこ」の「ひ」は、2点ではじまると見られるので、この「ひ」の字母は「飛」かと思われます。しかし、中盤からこの字母は「比」となっています。

 もちろん、平仮名の字母を特定できない字体は多いので、これも芸術的に字母の混在を意識したものだとか、無意識にこうなったとも言えるのかもしれません。しかし、この「あびこ」の「ひ」を、私は悩ましく見てしまいました。それだけ、平仮名の字母など関係ない、「ひ」という音さえ伝わればいいということなのでしょう。

 明治33年に、平仮名は1文字に限定して国民に強制し統制されてきました。その日本語の歴史の中を生きる現代人にとって、今の1字1音で不便は感じていないと思われます。しかし、まだこの平仮名は、たかだか100年ほどの歴史しかないものです。
 将来、子孫に矛盾の多い平仮名を使って何とも思わなかったことを笑われないように、それなりの理論武装をしておく必要を痛感するようになりました。
 これは、明治33年に平仮名から外された変体仮名のありように関する問題です。この1字に統制された背景については、今後とも調べていきたいと思っています。

 帰りに、賀茂川と高野川の合流地点である出町柳で、北山を遠望しました。正面の三角州の向こうには糺ノ森が広がり、その奥に下鴨神社があります。
 今年も、元日の初詣は下鴨神社にお参りする予定です。


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 お節料理の買い物は、鯖街道の終点である出町の桝形商店街でしました。
 花屋さんの軒先に、今日行った高安から信貴山を越えた大和平群の菊が積まれていました。
 北の若狭ではなくて、南の大和から運ばれてきた菊なのです。
 高安も平群も、私が長く住んだところなので、これも縁だと思い写真に収めました。


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 今年もあと1日となりました。
 息子がお節料理を作る手伝いに来てくれました。
 慌ただしく今年も暮れていきます。
 
 
 

2014年12月29日 (月)

教科書に見る平安朝・小学校—国語(11)三省堂・信濃教育会出版部

 三省堂が作成した小学校国語の教科書で私が実見したのは、昭和36年度版の13冊だけです。
 また、信濃教育会出版部の教科書も、実見したのは昭和36年度版と昭和40年度版の25冊だけです。
 これらは、京都府立図書館に収蔵されている戦後の学校教科書のコレクションが調査対象だったことに起因するものです。
 
 
【三省堂】(13冊)
 
昭和36年度用


2年下 「小さなかみさま」 大国主命と少彦名命の話
5年上 「日本の文字」 字母のことが少し
5年下 「むかしの都」 京都・奈良・大阪の文章


*本年度の三省堂の教科書には、古典の香りがまったく感じられない編集となっています。

 
 
【信濃教育会出版部】(25冊)
 
昭和36年度用

一ねん中 「一寸法師」
二年下  「かぐやひめ」
三年上  「大きなふくろをしょった神さま」(因幡の白兎の話)
四年上  「海ひこ山ひこ」(神話)
五年下  「わたしたちの文字」 万葉仮名、カタカナ(元の漢字の一部)、平仮名(元の漢字の一部)
六年上  「古都だより」 京都と奈良の文章
     「わたしたちの古典」 「万葉集」「源氏物語」


*五年下の「わたしたちの文字」には次の説明文があります。
 「「源氏物語」のようなりっぱな小説が、一千年もむかし、世界のどこの国にもさきだって作られたのも、かなのおかげである。」
*六年上の「わたしたちの古典」の冒頭説明文中に「万葉集・源氏物語などは、日本の代表的な古典です。」とあります。
 『源氏物語』は二節に分けて紹介されています。「若紫」と「末摘花」の二巻を元にして少女若紫の姿をかわいらしく小学生用に書き換えたものです。

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    昭和40年度用
一ねん上 「一寸法師」 二年下  「かぐやひめ」 三年上  「大きなふくろをしょった神さま」(因幡の白兎の話) 四年上  「海ひこ山ひこ」(神話) 五年下  「わたしたちの文字」 上記昭和36年度版と同じ 六年上  「古都だより」 ただし昭和36年度版を少し削除したもの      「俳句と和歌」 「一茶の俳句」と「万葉集」に変更
*昭和36年度版の「わたしたちの古典」の単元名が「俳句と和歌」に変更されました。そして、この単元では、残念なことに『源氏物語』が削除されて「一茶の俳句」と入れ替わっています。『万葉集』はほぼそのまま再録されています。
   

2014年12月28日 (日)

姉の家へ年末の挨拶に行く

 阪急芦屋川駅の周辺は、谷崎潤一郎の『細雪』の舞台としてよく知られています。


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 その芦屋川駅からバスに乗り、有馬温泉に向かって20分ほど山道をくねくねと登った、芦有ドライブウェーの中に姉の家があります。標高500メートルはあります。何度か山登りを兼ねて、歩いて行ったものです。

 今年の5月に六甲山中にある家に行ったことは、「退院した義兄のお見舞いに芦屋へ行く」(2014年05月03日)に記した通りです。

 義兄が持病の手術で過日入院し、今週退院されたばかりとのこともあって、今年も押し詰まった今日、妻と共に訪問しました。


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 雪こそまだ積もらないものの、寒さは厳しい地域です。
 先月は、義兄のお父さんが98歳でお亡くなりになりました。
 年が明けた来月には99歳になられるので、白寿のお祝いをする予定だったそうです。
 病気ではなくて老衰とのことなので、天寿をまっとうされたことになります。

 庭で採れた柚尽くしの料理をいただきました。
 お昼から夕方まで、尽きない話に花が咲きました。

 みんな元気で歳を重ねていることを、話をする中であらためて確認しました。
 幸運に感謝しながら、来年こそは歩いてこの山を登って訪ねたいとの思いを強くしました。
 
 

2014年12月27日 (土)

教科書に見る平安朝・小学校—国語(10)大阪書籍

 大阪書籍が作成した小学校国語の教科書で、昭和28年度から平成8年度までの40冊の内、平安朝の理解につながる教材を確認します。
 以下に取り上げた教材は、多分に個人的な趣味のものも多いことを、あらかじめご了解ください。
 
【大阪書籍】(40冊)
 
昭和28年度用


5年上 「書物の研究」という文(18頁)に日本の写本のことはまったく出ない。
5年下 絵巻物として「鳥獣戯画」が取り上げられている。「衣川」(『義経記』)

 
 
昭和29年度用

5年下 昭和28年度版にあった「マハトマ・ガンジー」が「インドの父」として採択。
    「衣川」(『義経記』)が「主従愛」(指導の記載)を考えさせる教材として再録。

 
 
昭和32年度用

1ねん下 「いっすんぼうし」
2年上  「浦島太郎」
2年下  「やさしいかみさま」 『古事記』より大国主命の話
3年上  「かぐやひめ」
4年上  ・昭和28年度版にあった「本のれきし」がこの改訂版では削除
4年下  ・昭和28年度版にあった「ぞうの話」がこの改訂版では「羽衣」と共に削除
5年上  「京都の春」 7頁にわたる写真入りの風物詩。
     「春はあけぼの」が再録。
     昭和28年度版にあった「ひえだのあれ」が「『古事記』の編集」として
     挿し絵入り6頁で再掲載。
6年上  「京への旅」(『更級日記』)は、昭和28年度の目次にもある。
6年下  「わかむらさき」(『源氏物語』)


*1ねん下の「いっすんぼうし」では、各頁上下いずれかの段にカラーイラスト(計8枚)が挿し絵として使われています。


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 なお、文節が泣き別れとなる箇所(上図5行目末尾「おかあさん=を」)に「=」が付されていることについては、現在調査中です。この年の教科書は、私が小学校1年生の時に実際に使用した年度です。まったく記憶がありません。大阪書籍以外では、そのような記号は使われていないようです。この件で、何かご存知の方がいらっしゃいましたらご教示をいただけると幸いです。

 昭和28年度版にあった「春はあけぼの」(『枕草子』)が現代語訳と挿し絵入り6頁で再録されています。冒頭の紹介文には、次のような説明があります。
 「同じころに書かれた「源氏物語」とならんで、平安朝文学の代表作とされ、むかしから多くの人々に読まれ、親しまれて来ました。」

 「『古事記』の編集」の最後には、次のような記述があります。
 「「古事記」で、音を表わす字として、漢字を使うようになったことが、やがて、ひらがなやかたかなができるもとになりました。そして、かなが使われるようになって初めて、源氏物語などという、世界じゅうの人々に愛される文学作品が、生まれました。」

 「京への旅」は菅原孝標娘が『源氏物語』を読んだことを、挿し絵入りで語るものです。この冒頭に、「この文に出てくる「源氏物語」は、この日記より五十年ほど前に、書かれたものです。」とあります。

 「わかむらさき」は、冒頭に詳しい『源氏物語』の解説があり、末尾に以下の文が記されています。
 「この文は、源氏物語の一部を、現代語に書き直したものである。(中略)近年英語訳も出版され、日本ばかりでなく、世界で最もすぐれた作品の一つとして、高く評価されている。」
 内容は、「若紫」と「末摘花」の一節を現代語訳したものです。挿し絵は、国宝源氏絵巻とイラスト2葉。

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    昭和36年度用
1ねん下 「いっすんぼうし」

2年上  「白うさぎ」「かぐやひめ」

3年上  「力くらべ」 アイヌ伝説と神話

4年下  「白い鳥」 『古事記』よりヤマトタケルのクマソ征伐の話



*「いっすんぼうし」は昭和32年度と同じ教材の採択。ただし、この昭和36年度用と次の昭和39年度用では、昭和32年度用の最終頁にあった堀川少将になる頁(上掲図版の頁)がカットされています。

 
 
昭和39年度用

1ねん下 「いっすんぼうし」

2年上  「白うさぎ」「かぐやひめ」


 
 
昭和40年度用

三年下 「インドからぞうが来た」「力くらべ」

五年上 「「古事記」の話」で上記同文で『源氏物語』に言及。

    「本の歴史」に写本の説明はない。

五年下 「北国落ち」(『平家物語』)の説明文

六年下 「すさのおと大国主」。「古都の花」は『平家物語』の忠度の都落ちの話。



*「インドからぞうが来た」は、昭和24年にインドのネルー首相から上野動物園に「インディラ」というゾウが贈られた話です。

 
 
平成8年度用

5上 「日本語の文字と言葉」に字母のことが少し

6上 短歌に人麿・敏行・実朝の歌あり。

   与謝野晶子の歌碑のカラー写真が巻頭にあり、晶子の文学碑について8頁もの文章があります。マザーテレサについても書かれています。


 
 
 

2014年12月26日 (金)

教科書に見る平安朝・小学校—国語(9)日本書籍(その2)

 日本書籍が作成した小学校国語の教科書で、五年生と六年生の教材を確認します。
 「ゼロの発見」(インド)については、個人的なメモとして追記したものです。
 
【日本書籍】(127冊の内)
 
昭和28年度用


6年の2 「鳥獣戯画」(説明文だけ)

 
 
 昭和31年度用

5年の1 「御所の岩」(『吉野拾遺』より)は平安らしい内容

 
 
 昭和33年度用

6年の1 「古典から」の単元に『宇治拾遺物語』『徒然草』『十訓抄』(「船上の一曲」)

 
 
 昭和36年度用

6年の1 「古典から」の単元に『徒然草』『十訓抄』(「船上の一曲」)。『宇治拾遺物語』がなくなる

 
 
 昭和40年度用

5/1 「日本の文字」に平仮名とカタカナの字母表
6/1 「古典から」の単元に『宇治拾遺物語』、『十訓抄』(「船上の一曲」)。『徒然草』がなくなる
6/2 「ゼロの発見」(インド)、「和歌(持統天皇・実朝)。「御所の岩」(『吉野拾遺』より)は平安らしい内容

 
 
 昭和43年度用

5.1 「日本の文字」に平仮名とカタカナの字母表
6.1 『十訓抄』(「船上の一曲」)
6.2 「ゼロの発見」(インド)、「和歌(持統天皇・実朝)。「御所の岩」(『吉野拾遺』より)は平安らしい内容

 
 
 昭和46年度用

5上 「船上の一曲」(『十訓抄』より)
5下 「日本の文字」に平仮名とカタカナの字母表
6下 「ゼロの発見」(インド)


*秋山虔加入

 
 

 昭和49年度用


5上 「船上の一曲」(『十訓抄』より)
5下 「日本の文字」に平仮名とカタカナの字母表
6下 「ゼロの発見」(インド)

 
 
 昭和52年度用

5上 「はかまだれ」
5下 「日本の文字」に平仮名とカタカナの字母表
6上 「馬ぬすびと」(頼朝の時代の話)、「ゼロの発見」(インド)


*稲賀敬二加入

 
 
 昭和55年度用

5年下 「ゼロの発見」(インド)
6年上 「日本の文字とことば」に平仮名と『源氏物語』のこと。字母表あり。


*これまでの仮名の説明では『万葉集』だけが引かれており、6年生の「日本の文字とことば」で『源氏物語』に触れるのは珍しい。

「今、わたしたちの使っているひらがなのもとになった漢字、くずした形の表を、次のページに示しておきましょう。ひらがなは、平安時代の婦人たちのあいだで発達したものらしく、古くは「おんな手」とよばれていたようです。「源氏物語」などは、このひらがなによって書かれたけっ作です。
 むかしは、同じ音を表すにもいくつかのひらがながあったのですが、明治時代になってから、今日の形に統一されました。そば屋ののれんに残る「楚者゛」という字は、むかしのひらがなのなごりです。」

 なお、ここに掲載された表では「字母」ではなくて「ひらがなの字源」となっています。


 
 
 昭和58年度用

5年下 「船上の一曲」、「ゼロの発見」(インド)
6年上 「日本の文字とことば」に平仮名と『源氏物語』のこと。字母表あり。巻頭に変体仮名で書かれた暖簾のカラー写真を掲載。学習用の「手引き」が一新されている。
6年下 「和歌」に志貴皇子あり

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 昭和61年度用


6年上 「日本の文字とことば」は書き換えられている。字源(字母)表はそのまま。『源氏物語』のことが消える。

「ひらがなは、平安時代(八~十二世紀)から女性に主に使われ始め、作りあげられたので「おんな文字」とか「おんな手」とよばれました。」

 「紙の歴史と文化」の項目が充実し、和紙の価値について詳しく書かれ、紙による文化の育成を強調しています。ただし、写本については触れられていません。

「平安時代の半ばごろからさかんになった絵巻物も、和紙に書かれたみごとな芸術品です。
(中略)「紙は文化のバロメーターである。」といいます。紙の消費量が文化の高さの尺度になるというのです。テレビなど映像文化の発展にもすばらしいものがありますが、紙による文化を守り育てていくことの大切さも忘れてはなりません。」


 
 

2014年12月25日 (木)

教科書に見る平安朝・小学校—国語(8)日本書籍(その1)

 2010年の10月から12月にかけて、小学校国語科教科書の中に見られる平安文学の諸相を調査した結果を整理し、本ブログに報告をしていました。

 その経緯については、以下のブログの記事をごらんください。

「教科書に見る平安朝・小学校—国語(1)」(2010/10/31)

「教科書に見る平安朝・小学校—国語(2)中京出版・大日本図書・二葉図書」(2010/11/8)

「教科書に見る平安朝・小学校—国語(3)学校図書」(2010/11/9)

「教科書に見る平安朝・小学校—国語(4)教育出版(その1)」(2010/11/11)

「教科書に見る平安朝・小学校—国語(5)教育出版(その2)」(2010/11/19)

「教科書に見る平安朝・小学校—国語(6)教育出版(その3)」(2010/11/22)

「教科書に見る平安朝・小学校—国語(7)光村図書出版」(2010/12/16)
 
 その後も少しずつ調査を進めていました。しかし、本ブログに次々と書いておくことが生まれ、いつしか資料が棚の隅に追いやられていました。
 以来、自分では問題意識があるものの、少しずつ忘れていく状態にあるので、空白となった4年を置いてやっと整理を再開し始めました。

 ここでは、日本書籍が作成した小学校国語科教科書をとりあげます。
 この中に取り上げられている平安文学は、以下のものがあります。
 まずは、「日本書籍(その1)」として小学1年生から4年生までの教科書について掲載します。
 
【日本書籍】(127冊)
 
 
 昭和31年度用


2ねんの2 浦島太郎の絵のお姫さまに平安朝らしさはない

 
 
 昭和32年度用

4年の2 「本のいろいろ」の単元に「ひげのおじいさん」、「昔の本・今の本」、「印刷工場見学の記録」を収録


*「ひげのおじいさん」の中に次の文があります。
 「三人は、そっと、つくえの上の本をのぞいてみた。すすけた色の日本紙をつづった本で、字は筆で書いたものであった。
 「昔のほんなんだね。」
と、馬場君が小さな声で言った。谷村君と佐野君は、だまって、うなずいた。」
 挿し絵の写真を見ると、江戸時代の版本の辞書のようです。

141225_jysyo


 「昔の本・今の本」には、次の文章が見られます。

 「紙で本を作るようになってからは、持ち運びは便利になったが、一さつの本を見て、別の本に書き写さなければならないので、手かずが、かかるばかりでなく、写しちがいをすることも多かった。
 それよりも、もっと、こまることがあった。それは、どんなに本をよみたいと思っても、容易に手にはいらないことである。なにぶんにも、一さつ一さつ、一字一字を、手で書き写さなければならないのだから、本が行きわたらないのも、あたりまえのことだ。」

 話はこの後、木版・木活字・鉛活字のことになり、次の文で締めくくられます。

 「今日では、国の文化の高さは、どれだけの紙を印刷物に使っているかということで、わかると言われている。」

 この教科書では、手書きの写本というものに対するイメージを明確に語り伝えようとしています。ただし、最後のまとめの文章は、電子化が進む平成の時代など想像だにし得ない語り口となっています。
 これに続く「印刷工場見学の記録」は、活版印刷の人手による製作過程を詳しく語るものです。


 
 
 昭和33年度用

2ねんの2 浦島太郎の絵の姫に平安らしさはない
4年の1 「本のいろいろ」の「昔の本・今の本」は前記昭和32年版と同文

 
 
 昭和36年度用

2ねんの1 「白ウサギ」の民話に神様たちが出てくる

 
 
 昭和40年度用

1/1 浦島太郎(乙姫の絵だけ)
1/2 浦島太郎と一寸法師に絵はない
2/1 「白ウサギ」の民話に出てくる神様たちの絵が小さくなる

 
 
 昭和43年度用

1.1 浦島太郎(乙姫の絵だけ)
2.1 「白ウサギ」の民話に出てくる神様たちの絵が小さくなる

 
 
 昭和46年度用

1上 一寸法師(姫の絵あり)
3下 「かぐや姫を読んで」
4下 「鳥獣戯画」(相撲)を見て作文する


*別記に秋山虔

 
 
 昭和49年度用

1上 一寸法師(姫の絵あり)
3下 「かぐや姫を読んで」
4下 「鳥獣戯画」(相撲)を見て作文する

 
 
 昭和52年度用

1上 一寸法師(絵が変わり姫が2つになる)
    わらしべ長者、牛車と姫
3下 「かぐや姫を読んで」
4上 「鳥獣戯画」(相撲)を見て作文する


*秋山虔編、他に稲賀敬二

 
 
 昭和55年度用

1ねん下 「ひなまつり」で内裏様とお雛様の写真3種

 
 
 昭和58年度用

1ねん下 「ひなまつり」で内裏様とお雛様の写真3種

 
 
 昭和61年度用

1下 「ひなまつり」で内裏様とお雛様の写真が変わる

 
 
 

2014年12月24日 (水)

2014年の十大出来事

 2014年も、残すところあと1週間となりました。
 今年も不安定な体調ながらも元気に仕事をしました。
 11月8日の人生の一区切りも無事に通過しました。
 折々にお気遣いをいただいた方々に感謝しています。
 今年の私の10大出来事を勝手にまとめてみました。
 来年もこれまで同様のお付き合いを願いいたします。


(1)ベトナムのハノイ市とホーチミン市での調査
(2)アメリカ・ワシントンの議会図書館での調査
(3)『日本古典文学翻訳事典1英語改訂編』刊行
(4)渋谷版ウエブサイトをNPO法人で引き継ぐ
(5)ハーバード大学本『源氏物語・蜻蛉』を刊行
(6)カナダ・バンクーバーで国際研究集会を開催
(7)日比谷カレッジでハーバード本・蜻蛉を読む
(8)東京の放送大学でハーバード本・須磨を読む
(9)視覚障害者と古写本を読むテーマに取り組む
(10)科研の成果としての電子ジャーナルを創刊

 
 
 

2014年12月23日 (火)

お茶のお稽古の後に視覚障害者のことを想う

 9月以来のお茶のお稽古です。
 毎年、炉の季節になると学会シーズンと重なり、なかなかお稽古に行けません。
 久しぶりに来ると、平群町に名所旧跡の案内標識が増えていました。


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 コミュニティバスが、相変わらずえっちらおっちら坂道を登っています。


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 今日は、花月のお稽古です。
 数人で折末に入った木札を取って役割を分担する、ゲーム性を取り入れたお茶が楽しめます。
 もっとも、まだ見よう見まねの私は、言われるがままにお茶をいただき、席を替わっていました。
 それでも、しだいに参加者の役割がわかってくると、多くの要素が盛り込まれていて、いい勉強になります。状況に応じた自分の役割というものを学ぶ、修練の要素が強いものだと思われます。

 花月が終わってから、丸卓を使った薄茶のお稽古もしました。
 久しぶりながらも、流れがわかってきたので、次は何をするのかはほぼわかってきました。ただし、それがスムーズにいかないのです。考え考えなので、まだまだです。
 お稽古の回数を重ねて、身体で覚えるしかないようです。と言うよりも、なかなか時間が取れないのが課題です。

 お稽古の後にいろいろな話をする中で、目の見えない方はお茶はできるだろうか、ということになりました。火傷をしたら大変だから、ということに落ち着きます。
 ところで、茶人で目が見えない方は、過去にいらっしゃったのでしょうか。
 また、現在お稽古をしておられる方は、どうでしょうか。

 早速いろいろな情報を集めてみたところ、全国各地で視覚に頼らない茶道を楽しむイベントがあることを知りました。ただし、いずれも体験してもらう、という趣旨での企画のようです。

 かしかに、お茶を点てるのは、視覚に頼る動作が多いので困難を伴うことが多いと思います。しかし、お手前をいただくことにおいては、目が見えなくても何も問題はありません。

 それよりも、本当にお茶を点てることはできないのだろうかと考えると、お点前を工夫するとできそうです。というよりも、すでになされていることでしょう。

 お茶道具が置かれたり置く位置は、畳の何目空けた場所などなど、決まっていることが多いのです。自分が座っている場所や向きも、一応の了解事項の中で進行していきます。
 物と自分の間合いがわかっていれば、見えなくてもお茶の作法は特別なことではなくなります。約束事の中に、物があるのです。空間の中の自分の立ち位置がわかれば、それでお茶を点てたりいただいたりできるはずです。

 こんな疑問を持ち出したのを機に、少し調べてみようと思います。

 帰りの京都駅前では、ちようどアクアファンタジーが始まっていました。


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 冬の夜空に飛び跳ねるレインボーカラーの水芸。
 前景にはLEDの電飾をまとった冬枯れの枝々。
 背景には蝋燭をイメージした京都タワーが一本。
 この街は新旧の文化が混在して息づいています。
 摩訶不可思議な光景が駅前の広場に展開します。
 
 
 

2014年12月22日 (月)

ツキのなさは幸運の前兆だと思うことに

 先週のことです。
 学術交流フォーラムの初日が終わり、民博からの帰りはバスを使って、ホテルがある茨木駅に出ることにしました。
 ところが、時刻表の土曜日の欄にあったバスは、予定の時間に来ないままに、その次のバスまで雨の中を待たされました。

 宿泊予定のホテルの住所は、茨木市駅前●丁目でした。そこで、乗ったバスがまず止まったJR茨木駅ではなくて、終点の阪急茨木市駅で降りました。
 ところが、駅から1分のはずのホテルがなかなか見当たりません。やがて、ホテルは阪急茨木市駅ではなくて、先ほど通過したJR茨木駅にあることがわかりました。「茨木市駅前」という住所に振り回されたのです。
 ホテルの住所は、「茨木市駅/前」ではなくて「茨木市/駅前」と切るようです。

 阪急茨木市駅からJR茨木駅へ戻るのに、バスは渋滞でかえって時間がかかるとのことです。運動にもなるので、15分ほど歩いてJR茨木駅まで戻りました。
 途中に、電飾で飾られた小川がありました。これも、LED電球の恩恵なのでしょう。


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 どうにかJR茨木駅前のバス停がある広場に行くと、ホテルは賑やかなほうではなくて、線路を渡った反対側だったのです。JRの高架下を潜り、陸橋を渡って迂回し、どうにかホテルにたどり着きました。後で地図を見ると、無駄な道草をしていたことがわかりました。

 民博を出てからホテルまで、3時間弱が経過していたのです。東京から京都まで移動できる時間です。

 ホテルの場所を、事前にインターネットで調べておけばよかったのです。しかし最近は、何でもネットに頼り過ぎる風潮を自ら断ち切るために、自分の感覚を磨く意味からも、自力で物事を探すことを心がけています。それが、裏目に出たようです。しかし、この遠回りも、今は楽しく思い返しています。自分のカンを磨く良い訓練になりました。

 ホテルでは、部屋からインターネットがつながりません。無線 LAN の設備がなかったのです。事前の情報では「インターネット完備」となっていました。しかし、このホテルはLANケーブルでしかネットに接続することができません。

 私のパソコンは、そうしたレガシーデバイス用の端子がないのです。USB接続のLANコネクタを持ち歩いていたのは、もう7年前までのことです。今どき、無線LANがないとは。
 海外から来た人が、日本は街中を含めて無線LANが未発達だとおっしゃいます。たしかに、日本が大きく立ち後れて後進国となっているのは、国内の無線LANの環境が未整備状態ということのようです。

 結局、手持ちのiPhone でネットにつなげました。ただし回線速度が遅くて、なかなか読み書きができず、精神衛生上はあまりよくありません。
 Wi-Fi の電波を探すと、2階のクローゼット内に「AirMac」がある、と画面に表示されます。しかし、宿泊客には開放されていないようです。

 もっとも、最近は悪意のサーバーが至る所にあるそうです。個人が仕掛けた、パスワードや情報を盗み取るための引っ掛けサーバーとは知らずに、つい自動でつなげてしまって後で後悔することが頻発しているそうです。
 そのことを思うと、自分のiPhone でテザリングによってネットにつなげるのは、意外と安全な方法だったとも言えます。

 食事も、駅の周辺なのに飲み屋さんしかなくて困りました。駅の反対側に渡れば、私が食べられる何かがあるかもしれません。しかし、疲れて来たので、コンビニでおかずを買って部屋に戻りました。

 2日目は音楽に関するワークショップに参加しました。
 レクチャーと演奏の合間に、ミュージアムショップで一冊の本を買いました。ところが、販売員の方がクレジットカードの処理に慣れておられなかったのか、なかなか終わりません。そうこうする内に次の演奏が始まったので、後で来ますと言って自分の席に戻りました。

 次の休憩時間に行くと、処理が終わっていて、領収書にサインをしました。ところが、消費税が入っていなかったとのことで、再度手続きをされます。しばらく待たされてから、先ほどの取り消しのためのサインと、新しい領収書のサインをさせられました。最初の金額が取り消されているかどうか、来月の明細書で確認してほしいとのことでした。

 何やら、来月は2冊分の請求が来そうな予感がします。後日また揉めそうです。証明になるからと、取り消しした分のマイナスの金額が記された領収書を渡されました。これが証明になるのか疑問です。とにかく、ツイてないときは、こんな些細な煩わしさが身に振りかかります。

 民博からの帰りも、不運に出くわしました。

 バスに乗って駅まで行こうとしたら、信号待ちしていた目の前をバスが通過して行きました。寒い中を15分待つことになります。バスに見捨てられた直後だけに、じっと待つのも釈然としません。
 それではと、すぐ目の前にあるモノレールに、少し引き返して乗ることにしました。
 改札口では、ちょうど今来ます、とのことでした。しかし、ホームに上がると放送があり、列車の点検のために遅れます……と。

 旅につきものの思わぬ出来事に、この2日間で立て続けに襲われました。たまたまなのでしょう。しかし、それが旅行先でのことなので、ツキのなさへの思いが増幅されます。

 そうであっても、結局は事故にも遭遇せず、身体は何ともないので、運が良かったと思うことにした方がいいようです。
 何事も、前向きに思うように心がけることにします。
 
 
 

2014年12月21日 (日)

学術交流フォーラムの音楽ワークショップで受けた刺激

 太陽の塔は、1970年の万国博覧会以来、何度となく見てきました。
 昨日のような冬の雨の中に立つ姿は、悄然として地球を引き上げて行く怪獣の後ろ姿を見ているようで、どうも元気が出ません。

 昨日とは打って変わり、今日は朝日を浴びる太陽の塔を見ながら国立民族学博物館に入りました。


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 2日目は、学術交流フォーラムの学生企画委員が智慧を絞った、「探究型ワークショップ」「体験型ワークショップ」「神楽の公演」が組まれていました。

 私は、エントランスホールで行われた探求型のセッションに参加しました。


音・音楽ワークショップ
寄り添いの音・音楽
―伝える・祝う・送る―

 ここでは、2つの音楽が実演とともに紹介され、講師による説明を聞くことができました。
  


その1
●「伝える」音楽
 ひょうたん笛レクチャー・演奏
 [レクチャー及び演奏/伊藤悟(国立民族学博物館 外来研究員)]
 
レクチャー題目:「にじむ音、あざう音 〜ひょうたん笛と音文化」
 
概要:近年中国で親しまれている民族楽器に「ひょうたん笛」(葫蘆絲)がある。素朴な音色と愛らしい形が話題となり、少数民族の伝統文化の発展を象徴した楽器として 2000 年頃から流行している。そのルーツは、雲南省やビルマ、タイ北部に暮らす少数民族の未婚男性たちがかつて音で女性に恋心を伝えた楽器であった。
 このレクチャーでは、タイ族社会における音によるコミュニケーションの技法や楽器の変化について、実演を交えながら、演奏方法や音色、そして演奏の文脈から解説し、変わりゆく楽器や音楽とともにある音の感性について考えたい。

 非常に興味深い内容でした。音楽が男女の求愛行動の中に、今も生きていたのです。かつての歌垣もこれと同じ性格のものです。
 ひょうたん笛は、日本の雅楽で使う笙の音に通うもので、同時にいくつかの音が流れ続けるのは気持ちのいいものです。

 今日のレクチャーの中で、私は1つの言葉に注視しました。
 ひょうたん笛の説明の中で、「あざう音」という言葉があったからです。
 私は、「あざう」という言葉の意味がわかりませんでした。
 それは、スクリーンに次のように表示された時から、最後まで気になった言葉です。


・環境音と調和した音楽、音の表現形態
楽器の音は、周囲に「にじみ」、自然や生活の音と「あざう」(からみあい、くみあう)ことで、精神的、宗教的表現を実現した。

 手元の電子辞書で調べると、すぐに次の説明が iPhone の画面に表示されました。
 『今昔物語集』や『太平記』に例があるようです。


あざ・う
【▽糾ふ】〔あざふ〕[動ハ下二]
 組み合わせる。より合わせる。あざなう。
 「膝を地に着けて二の手を―・へて地に伏して」〈今昔・一・二九〉
        (『大辞泉』より)
 
あざう
【糾ふ・叉ふ・糺ふ】(動ハ下二)
 組み合わせる。より合わせる。交差させる。あざなう。
 「筆を抛(なげうつ)て手を-・へ/太平記 4」
        (『大辞林』より)

 早速、妻と娘にも「あざう」という言葉を知っているかとメールで聞きました。すると、2人とも知らないとのことです。
 今日の参加者のみなさんは、この「あざう」の意味を理解して話をきいておられたのでしょうか。
 自分の無知を晒すようです。しかし、初めて聞いた言葉であることは確かなので、ここに記しておきます。
 
 
その2
●「祝う」「送る」音楽
 ガムランレクチャー・演奏
 [レクチャー/仁科エミ(総合研究大学院大学 教授)
  演奏/チャンドラ・バスカラ]
 
レクチャー題目:「ガムランへの情報脳科学的アプローチ ─音楽・情報・脳・社会から音“しりょう”を考える」
 
概要:バリ島の祝祭・葬祭儀礼のなかで重要な役割を果たしている青銅の打楽器アンサンブル“ガムラン”。その演奏と舞踊は神々への最上の捧げものであるとともに、共同体の自己組織化を導き社会の葛藤制御に機能している。その響きを分析すると、人間の可聴域上限を遙かに上まわり複雑に変化する超高周波成分が豊富に含まれている。ガムラン音を呈示試料とする実験によって、複雑な超高周波成分が可聴音と共存すると間脳・中脳などの活性を高め、多様でポジティブな生理・心理・行動的効果(ハイパーソニック・エフェクト)をもたらすことを私たちは見出した。しかもそれは耳ではなく、体表面で感じる。ガムランの響きに対する多様なアプローチを紹介するとともに、その楽器体験を通じて、音という“しりょう”へのアプローチの可能性を考えてみたい。

 
 これも非常に興味深い話でした。
 超高周波成分というのは、ヘッドホンでは伝わらない音だそうです。それが可聴音と共存すると、間脳・中脳などの活性を高めるというのですから、これは聞き捨てならぬ内容です。

 さらには、この超高周波成分の音は、耳からではなくて身体の表面から感じ取っているものではないか、というくだりは、もう耳と目が引き寄せられていました。
 今、私は目の不自由な方々と一緒に古写本の変体仮名を読もうとしています。その時に、音の活用によってアシストできないか、と考えているところです。昨日も、私のポスター発表に対して、音によるサポートの教示を数多くいただいたのです。

 そんな折なので、この音の話は特に注意深く拝聴しました。
 このことは、また機会をあらためて独自に勉強してみたいと思います。
 今日も、私の問題意識を刺激するような、新しいヒントをいくつもいただくことができました。
 
 
 

2014年12月20日 (土)

視覚障害者と共に古写本を読むためのポスター発表をする

 国立民族学博物館を会場として、総合研究大学院大学文化科学研究科の学術交流フォーラムが開催されました。

 会場となった万博公園では、太陽の塔が雨模様の中で背中を濡らしながら、一人寒そうに佇んでいました。


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 このフォーラムは、総研大の文化科学研究科の基盤機関である5つの研究組織(国立民族学博物館、国際日本文化研究センター、国立歴史民俗博物館、放送大学 教育支援センター、国文学研究資料館)が連携して、学生と教員の意見交換を目的として実施するものです。
 今回の担当機関は国立民族学博物館で、テーマは「文化をカガクする?」でした。


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 第1日目の内容は、口頭発表(2会場)とポスター発表(2グループ)、そしてパネルディスカッションです。

 私は、ポスター発表のAグループでプレゼンテーションをしました。

 このポスター発表は、学生15名、教員8名の合計23名が参加し、1枚のポスターを通して、各専攻の学生と教員がその場で意見交換をするものです。お互いが教え教えられという関係でやりとりができるので、自由に意見を交換できる特徴があります。

 私は、「視覚障害者と共に古写本『源氏物語』を読むための試み」と題するテーマを掲げて参加しました。他専攻の先生や学生さんから有益な多くのアドバイスをいただくことができました。
 みなさま、ありがとうございました。

 予稿集には、以下の内容を掲載していただきました。


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 ポスターには次の文章と写真を掲げました。さらには、ハーバード大学本「須磨」の巻頭部分を原寸大で立体コピーしたものをパネルに貼り付け、実際に浮き出た文字を触ってもらいながら意見交換をしました。


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 本ポスター発表は、総合研究大学院大学の他専攻及び異分野からのアドバイスを期待して参加したものである。
   ---------------------------------------------------------------------------
・視覚障害者(触常者)と見常者とが、日本の古典文化の理解を共有することで、意思の疎通をはかる意義を再認識したい。

・温故知新の知的刺激を実感し実践する1つの方策として、古写本『源氏物語』に書かれた変体仮名の触読に挑戦するものである。

・ここでは、ハーバード大学美術館蔵『源氏物語 須磨巻』を例にして、目標実現に向けての試みを提示し、ご教示を乞うものである。

【「須磨」巻頭部の原寸大立体コピーを実際に触っていただく】

   ---------------- 本計画は次の3点に集約される -----------------

 1.古写本『源氏物語「須磨」巻』を変体仮名触読シートで読解
   (鎌倉中期に書写されたハーバード大学本の影印画像による)
 2.『変体仮名触読字典「須磨」編』の作成と活用法の構築
 3.『点字版古文学習参考書「須磨」編』の作成と学習法の確立

・縦書きが読めるようになれば、触常者の能動的な読字や読書の環境が拡大する。
・朗読素材も用意する。変体仮名の触読と古語の理解を補佐する手段として、併行して活用する。
・この実現は、国文学研究資料館が所蔵する約20万点もの古典籍のマイクロ・デジタル画像資料の、触読による新たな活用の道を開くことにもなる。


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 今回は、ポスターに貼り付けた立体コピーが効果的でした。実際にこの立体コピーを触る方が多かったので、今後もこうしたプレゼンでは実物を一緒に提示したいと思います。
 次の写真から、文字の浮き出し具合が確認していただけるでしょうか。
 実際に触ると、感触で文字を認識できます。ただし、中途失明の方ではなくて、生まれながらにして目の見えない方にとってどうかは、今後の試行錯誤の中で様子を見るしかありません。


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 今回いただいたご教示を、アシスタントとして同行した研究員の淺川槙子さんが、以下のようにまとめてくれました。
 これを大きな収穫として、今後はさらに本テーマを実現すべく、検討を重ねていきたいと思います。
 さらなるご教示を、よろしくお願いします。


(1)写本の文字を押すと音が出る。
 ただし、タッチパネルは凹凸がないので使えない。
(2)レーザー光で文字を追跡できるようにする。
(3)電子辞書の手書き入力のように、自分で書くことも取り入れてみる。
(4)写本を真似て文字を書くと音がでる仕組みも考えられる。
(5)書道教育と関連付けて実現する。
(6)PCを使う場合は、X軸とY軸で、文字が始まる位置を設定することができることも利用する。
(7)音が出るだけでなく、字母に合わせて発生する音を変える。
 1文字につき3段階の変化まで持たせてもいいか。
(8)視覚障害者は音に敏感であり、どこから音が来ているのかがわかる。
 そのことを生かして、文字を書きながら、その文字が表す音を聞けるようにする。
 ただ文字の概念がないので、書き順どおりに書くのは難しいかもしれない。
 また、覚えやすさを重視して、使う音は3種類の高さにする。
(9)まだ文字を読めない幼児などは、絵本の読み聞かせや、大人が「この字は、はるかちゃんの『は』だよ」などと言う発言から、音と字を関連づけていく。
 このことを今回の仮名習得に役立てられないか。
(10)その他の質問
・なぜこの写本を使おうとしたのか
 (回答:『源氏物語』とハーバード大学という知名度から注意を喚起しやる気を起こす)

・なぜ変体仮名を読ませることが目標か
 (回答:多くの見常者も読めない変体仮名が読める達成感を共有し、日本古来の伝統文化を点字以外のコミュニケーションツールで獲得し、写本や文献資料を再認識する)

・立体コピーの複写方法とコスト
 (回答:立体コピー機は普通のコピー機と同じ操作でできる。これは3Dプリンタと共に、今後の電子機器の普及により家電並で低価格へと変動する可能性がある)

(11)今後の課題
・まず、音に関しては高低(3段階)も含めて凡例を決める。
・音声による補助を取り入れた『変体仮名触読字典』を作成する。
・本計画を多くの人に知ってもらう機会をえるため、『総研大ジャーナル』に投稿してはどうか。

 
 
 

2014年12月19日 (金)

今もクラッシュし続ける iPhone 版のエバーノートの事例報告

 研究資料と各種情報を日々集積して活用するために、エバーノートというアプリを活用してきました。しかし、2ヶ月前から iPhone 用のアプリだけがクラッシュして使えない状態が続いています。

 このエバーノートに、何でもかんでも資料や情報を詰め込んでいました。
 移動先や外出中には、iPhone 版のエバーノートで情報を確認したり、データを登録・追加・修正をしていました。
 それが、一番忙しい11月と12月に iPhone 版のエバーノートが使えない状態が続いたので、我が生活は壊滅状態となりました。

 私はプレミアム版を使っているので、ユーザーサポートも丁寧にしてもらえていたと思っています。
 しかし、さすがに2ヶ月もクラッシュが続くと、エバーノート社の対応に疑念を抱くようになりました。どうも、ファーストフード産業と同じように、お決まりのマニュアルで機械的な鸚鵡返しの対応をされているように思われ出したのです。
 結果としても、いまだに何も解決していません。

 私がサポート担当者だと思っているのは、ひょっとして人間ではないのではないか、と思えてきました。どこかで日本語を勉強したか勉強中の人が、とにかく日本語でサポート対応をしているフリをされているようにしか思えなくなりました。
 そう思ってメールのタイムスタンプを見ると、時差がマイナス17時間です。北アメリカのどこかから返事を寄越してくださっているようです。

 クレーマーと言われないように気をつけながら、それでいて堪え切れない腹立ちをひたすら押さえながら、サポート担当者には私が困っていることを伝えているつもりです。ユーザーとしては、これくらいの低姿勢の言葉遣いや配慮しかできません。しかし、先方からの回答は、あまり実効性のない対処策が提示されるだけです。
 私がこの実験に費やす時間も、半端ではない状態です。

 エバーノート社の担当者からの回答は決まり文句の羅列なので、その方の日本語能力についてはわかりません。ただ、助詞が欠落することの多い日本語文なので、日本語が母語ではない方のようです。勉強して覚えた日本語であることは確かなようです。

 とにかく、ひとまず中間報告として、この2ヶ月間のやりとりを記録に残しておきます。

 くれぐれも、私をクレーマーだと言わないでください。そう言われないように、気を付けながらサポート担当者とやりとりをして来たつもりです。とにかく、1日も早く iPhone でエバーノートが使えるようにしてほしくて、何度も提示された対処策に対して、ダメです、まだクラッシュします、という回答を送るしかないのが現状なのです。

 まず、直近の一昨日届いた、エバーノート・サポート・チームからのメールです。
 ここに記されている指示は、これまでに何度も私がやったことです。
 マニュアルでの対処策の提示が、もう底をついたと思われます。
 サポートの内容が一巡し、またこれまでに指示された手順を何度もさせられる気配がします。
 私が、このエバーノート社のサポートが人間ではなくてロボット的な対処だと直感するようになったのは、こうした対応が目に付くように思われてきたからです。

 また、「メモリ処理に関連した可能性」とあるので、この件はあくまでも iPhone というハード起因ではなくてソフト起因であることは、エバーノート社も先刻ご承知のことだと言えます。いわゆる、確信犯というものです。

 冒頭の2行は、これまでのメールすべてに付されている定型文です。
 


Japan Support Team (Evernote Support)
12月17日

ご連絡ありがとうございます。
またこの度は長期に渡りご不便をお掛けし申し訳ございません。

この度の事象、メモリ処理に関連した可能性鑑みまして、すでにお客様側でお試し済みでしたら恐縮ではございますが、事前に下記手順でバックグラウンドアプリを終了頂きました状態ですと、挙動に変化が見られるかご確認頂けますと幸いでございます。

端末のホームボタンをダブルクリックしてください。
起動しているアプリケーションが一覧されますので、Evernote含め全てのアプリケーションを上方向にスワイプ(タップして上方向にスライド)してください。
ホームボタンを1回押して、タスクを閉じます(画面下部のタスクリストが閉じて通常の表示状態に戻ります)。
また本日リリースされました、iOS版Evernote Ver.7.6.3.313347にて幾つかの不具合修正を含んでおります。
よろしければこちらにアップデートいただき、挙動ご確認頂けますと幸いでございます。

度々お手数をおかけし恐縮ではございますが、何卒よろしくお願い申し上げます。

 こんな、これまでに何度もやったことで解決するならば、いつまでもクラッシュにジッと耐え続けながら、何とか回復処置をとサポート係に泣きつく日々は送ってはいません。

 今後は、こうした繰り返しの回答が順繰りに送られてくるのでしょうか。

 エバーノート社のサポート担当だと言う方(名前はおっしゃいません)からの文面を引用しても、それはファーストフード店のメニューのようなものなので、ここでは辞めておきます。使い回しをしておられる文面だと考えざるを得ないものだからです。

 以下、サポート担当者からの返答に応じて私がエバーノート社に送ったメールだけを、時間順に列記します。あくまでも、記録としての拙文の公開です。
 機嫌よくエバーノートが使えている時には、こうしたことは信じられないことかと思います。しかし、一度こうした不具合が発生し出すと、あとは以下のような泥沼の中で足掻くことになる、という好例かと思っています。
 もちろん、私が欠陥商品や不良品によく直面する、というこれまでの実績も無視できないかと思います。
 そうなのです。
 また、なのです。
 

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11月03日

エバーノートのプレミアムを3種類使い分けています。その内の一つが、先週31日(金)から、iPhone で起動後10秒以内で終了する症状が発生しています。これは、その後も今に至るまで続いています。
残り2つのアカウントに切り替えるまでに終了するので、他のアカウントの動作確認はできない状態です。
iPhoneは先月発売と同時に購入した6 Plus 128GBです。
MacBook Proでは何事もなく使えます。
外でエバーノートが使えないので、難儀をしています。
対処方法を、よろしくお願いします。

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11月04日

教えていただいた方法で再インストールを実行しました。
結果は悲惨で、iPhone で起動後10秒以内で終了していたものが、さらに短くなり、6秒以内にクラッシュします。
次は何をすればいいでしょうか。
エバーノートがiPhone と共に外に持ち出して使えないので困っています。
よろしくお願いします。

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11月05日

今、iPadミニでも、エバーノートがクラッシュすることを確認しました。
iPadミニの場合は、18秒後にクラッシュします。
iPhoneの6秒以内よりは多少ましです。
しかし、短時間で格納してある情報を確認するのは至難の態です。
iOSにエバーノートが対処できなくなっている、ということでしょうか。
依然として、パソコンでは何事もなく使えます。
金曜日に、エバーノートの有用性について話すことになっています。
申し訳ないのですが、このままではあまりいい話はできそうにありません。
ありのままを話すしかない、と思っています。
ご承知おきください。

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11月15日

連絡いただいた通り、以下の手順の「OFF」を忠実に何度も試みていますが、依然として6秒以内にiPhone のエバーノートがクラッシュします。

「設定」>「プライバシー」の各項目(位置情報サービス、連絡先、カレンダー等)でEvernoteがONとなっている箇所をOFF

iPhone にインストールされている他のアプリは、すべて問題なく動いています。
クラッシュするのはエバーノートだけです。

ご指示の次のステップとして、「iPhone構成ユーティリティー」をダウンロードした後、以下の手順を踏みました。しかし、エバーノートが先月以来のいつもの通り6秒以内に終了し、「コンソール」タブを見ても、何も表示されません。
これは何十回もやったことなので、偶然も期待できず、もうやることがなくなりました。

1.Evernoteを終了し、お持ちのiPhone/iPadをコンピューターに接続してください。
2.ユーティリティーの画面左側のパネルからお客様の携帯端末を選択し、画面右上の「コンソール」タブを選択してください。
3.iPhone/iPad上でEvernoteを起動してください。
4.「コンソール」タブに表示されているログを「名前を付けて保存(画面右下)」からデスクトップなどに保存し、そのログをこちらのメールに添付の上、ご返信ください。

もっと有効な手はないものでしょうか。
家の外でエバーノートが使えないのは、致命的な痛手だと思っています。
このエバーノートが使えないために、プレゼンの一部を省略している旨のお断りをしています。
決して、エバーノートの悪評を故意にばらまいているものではありません。
エバーノートの使用を進めている立場から、お話を聞いてくださる方々に実情を告知しているということで、ご承知おきください。

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11月16日

昨日、「Date: Sat, 15 Nov 2014 18:45:42 +0900」でお送りしたエバーノートがすぐに終了する件で、今日一日をかけて実施したその後の実験結果をお知らせします。

アップルの相談窓口を通して、エキスパートアドバイザーという方からアドバイスをもらいました。
そして、手持ちのiPhone 6 Plus 128Gをメーカー出荷状態にして、アップル純正以外のアプリは何もない状態にしました。
そして、エバーノートをダウンロードした後、いつも使うプレミアム会員としてデータの同期をしました。
結果は、同期が終わるとしばらくしするとエバーノートがクラッシュします。
これまた10秒以内です。
それ以降は、何度エバーノートを起動しても、6秒ほどで終了します。
これまでと同じです。
つまり、アップルの初期インストールされるアプリ以外に何も追加しない状態でダウンロードしたエバーノートでも、起動できないということです。
これは、エバーノートのアプリか、そのデータに起因する症状ではないかと、素人ながら思っています。
取り急ぎ、報告まで。
対処策を、よろしくお願いします。

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11月20日

2014年11月15日に報告したとおり、今回も同じことの繰り返しです。
つまり、iPhone6でエバーノートを起動して、「iPhone構成ユーティリティ」の「コンソール」に何か表示されるのを待っても、5秒以内にiPhoneのエバーノートが終了するため、結局は「コンソール」には何も表示されません。
なにもない画面を送っても意味がないと思いますので、次のご指示をお待ちします。
こんなことを、延々と続けて時間を潰すのがもったいないのですが。
また、知人からもiPhone6でエバーノートが起動しないという報告を受けています。
私だけの症状ではないようですね。
もう、iPhoneでエバーノートが使えなくなって3週間以上が経過します。
この状況においても、アプリの使用に関して対価を支払っているのですから、何とかしてほしいとの思いを強くしています。
いやはや、これまでの便利さのありがたさを痛感するとともに、使えなくなったための不便さに対する御社のフォローの怠慢さに憤りを覚えます。
ブログに、以下の提案を書いています。

「エバーノートに特化した簡易ブラウザが欲しい」
http://genjiito.blog.eonet.jp/default/2014/11/post-e0db.html

実質的には戸外でiPhoneを使ってエバーノートを活用する日々のため、今の状況ではエバーノートに代わるアプリでも紹介していただけませんでしょうか。
その際、後にエバーノートにデータが戻せるアプリを紹介してください。
これ以外で、何か対処策をご提示いただけると助かります。

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11月26日

以下の通り、まったく変化はありません。
これは今後とも延々と続く作業なのでしょうか。
コンピュータに関わって30年。
またもや、一企業のためのテスター役をボランティアでやらされているのですね。
今日もこれから講演に行きます。
たびたび申し訳ありませんが、エバーノートが動かないことを前提にしたお話をします。
決して、この製品を貶すつもりはありません。
あくまでも、現状をありのままに話しているだけです。
せめて、iPhone6Plus でエバーノートに保存しているデータが見られるようにする、何か代替案は示していただけないでしょうか。
ノートパソコンを持ち歩くのは、移動が大変なので。

参考までに、ウエブ版の画像を添付します。
ノートの最下段にあたる、一番古いノートを示している場面です。

以下、ご指示の通り実施しての結果です。

(1)やはり6秒後に Evernote は終了します。

一度お使いのiOS端末の
設定>一般>情報
より、お使いのiOS端末の本体名(名前の欄) を、全く別の名前で、半角英数のみの文字列(AAAや、Test等)に変更したのち、改めてアプリケーション再インストールされた際の挙動、お伺いできますと幸いでございます。

(2)Bの表示が見当たりません。画像参照。

また、こちらアカウント上のデータ等に起因している可能性も鑑みまして、
PCのWebブラウザよりアクセスいただくWeb版Evernoteにて、以下の点ご確認頂けますでしょうか。

A.
Web版Evernote上から、ゴミ箱の中身を一旦空にし、その後iOS版Evernoteでの同期挙動に変化が見られるか

→変化なし。今度は少し延びて9秒後に Evernote が終了します。

B.
Web版でノート数の実数と、ノートブック一覧上の数字にズレが無いか、以下の個所の数字を比較し、お教え下さい
(※当該箇所を示したスクリーンショットへのリンクを本メール下部に記載しておりますので、合わせてご参照ください)

→表示画面が異なるようです。

ノート実数:
Web版Evernoteのノート一覧リスト下部
「ノート1-12/○○」と記載されている個所の「○○」の数

→このような記載箇所がみあたりません。

ノートブック一覧上の数字:
画面左パネルの全てのノートや、各ノートブック横に記載の数字

→ご指示のような場所ではありませんが、最上段に「1,600個のノート」とあります。このことでしょうか。

--------------------------------------

1月28日

ご指示の画面の画像を添付します。
左端が「1601」、右下が「1601」となっており、同じ数字です。
次は何をすればいいのでしょうか。

iPhone のEvernoteは、依然として6秒ほどで終了します。

--------------------------------------

11月30日

了解しました。
今夜、挙動確認をしてみます。

--------------------------------------

12月01日

ご指示の手順を実行しましたが、やはりダメです。
アンインストール→再インストール→サインイン
としても、ノートを読み込む段階でクラッシュします。
再インストールは2度実行しましたが、いずれもダメです。
何度か小刻みにエバーノートを実行してノートを読み込もうとしました。
しかし、すべてを読み込むまでに5回ほどクラッシュを繰り返し、結局はエバーノートは立ち上がりません。
今回は、これまでよりもクラッシュするまでの時間が1秒ほど短縮されたので、さらに状況が悪化したように感じます。
これまでもそうですが、「レポートを送信」するかどうかというエラーメッセージには、「送信しない」をタップしています。
次は、何をすればいいのでしょうか。

--------------------------------------

12月02日

何度も連絡しているように、エバーノートを起動して【6秒以内】にクラッシュします。
したがって、

(1)「ノートを読み込む段階」に関しましては、
いずれかのノートをタップし、こちらを開こうとする際に、クラッシュする事象が発生する状況でしょうか。

(2)もしくはiOS版Evernoteのホーム画面で同期処理が稼働している間にクラッシュする状況でしょうか。

この症状は、いずれの場合も該当します。
とにかく、6秒以内の早業を私がどこまでステップを進めたか、ということに尽きますので。

次の「アクティビティログ取得」についても、クラッシュする6秒以内にその操作までいけません。手順を何度も練習して習熟してから、数時間後にやっと「アクティビティログ」の項目をタッチするところまでは可能となりました。しかし、6秒以内という現実があり、ログを表示する前にクラッシュします。
おそらく、この6秒という時間の内にこれ以上のステップは踏めないような気がします。

(3)また、可能でしたらインデックス情報再構築後の環境にて、
ログデータ取得頂けますと幸いでございます。
【アクティビティログ取得方法】

ということで、まだまだ私のテスター役は続きそうですね。
もっと有効で確実な対処は提案してもらえないものでしょうか。
もう、消耗戦ですね。可能な限り、お付き合いします。この30年間のコンピュータの進展に貢献した実績がありますので。
ただし、私にも自分の人生の時間というものがありますので、その点をご考慮願います。
先般提案した、エバーノートのデータを書き出して、別のアプリで表示検索をすることはできないものでしょうか。ただし、条件はiPhone とパソコンの両方でデータが共有できる、ということを前提とします。
パソコン版のエバーノートはまともに動いているのですから、それくらいの技術はお持ちなのではないでしょうか。

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12月02日

私の懐の中を探られているようで不気味なサポートになってきたように思います。
これは合法的な依頼であり、合意の上の情報提供になるのか、法的な知識の乏しい今の私には不明です。
一般的には、プライバシーの侵害行為に該当するかと思われます。
後日のために、不本意ながら不承不承の情報提供であることを、ここに明記しておきます。
気持ちの悪いことなのでやりたくないことですが、クラッシュし出してもう1ヶ月以上も経過しており、とにかく日々困っています。
解決のためには仕方がないということであると判断し、iPhoneのログを以下に引用します。
ただし、仲間にはこのようなサポートを受けていることは報告し、アドバイスを受けたいと思っています。
また、本件が無事に解決したあかつきには、このような情報提供を求められたことを私のブログに記すことを、あらかじめお知らせしておきます。

(以下、エバーノート社に送った537行ものログデータは省略)

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12月05日

新規アカウントを作ると管理が面倒なので、別に所有するアカウントで試験しました。
現在私は、プレミアムを3本、フリーを3本所有しています。
結果は以下の通りです。

◆クラッシュするプレミアムアカウント1のノート数 1612件
 (現在問題となっていアカウントです。これは毎日データの読み書きをしていました。)

◎クラッシュしないプレミアムアカウント2のノート数 193件
 (あまり使わないアカウントです。)
◎クラッシュしないプレミアムアカウント3のノート数 244件
 (3人でデータを共有することにだけ使うアカウントです。)

◎クラッシュしないフリーアカウント4のノート数 23件
◎クラッシュしないフリーアカウント5のノート数 0件
◎クラッシュしないフリーアカウント6のノート数 0件

ノート数には関係ないと思いますが、参考までに保存管理しているデータ数を記しています。

次に私がすることを教えてください。

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12月08日

ご指示の手順で再インストールをしました。
しかし、やはり5秒でクラッシュします。

以下の操作については、iPhone5のものまで、すべての項目を取り消しました。過去の遡って10個以上はありました。

「アクセスしたことのあるアプリケーション一覧が表示されておりますので、こちらよりiOS端末からアクセスしたものの項目の「アクセスを取り消す」をクリック」

iPhone 6のバックアップのことがありますので、どの段階でiPhone の名前を元に戻せばいいでしょうか。

外でEvernoteが使えないのは、私の生活ではもう限界かと思います。
このEvernoteのデータを書き出して、別のアプリで使用する方法のご教示はまだ教えてもらえないのでしょうか。

何でもやりますので、次の指示をお願いします。

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12月08日

昨日は、ご指示のあった「アクセスを取り消す」という操作をしてもクラッシュが続くことを報告しました。
その回答と対処策をまだ伺っていませんが、さらに深刻な事態が出来しました。

今朝より、パソコンのアプリ版のエバーノートで、サイドリストやサマリーには項目があっても、その右のカード表示欄に何も表示されない現象が起きています。
サイドにある項目を選択した状態で、2分から3分経つと表示されます。
しかし、次の項目を選択して表示を待って、また2、3分後に先ほど表示されたカードを選択しても、また表示までに2、3分待たされます。
つまり、現在1619枚あるカードは、そのすべてが1枚見るのに2、3分ずつかかります。
これは大変なことになりました。

この状況は、ウエブ版のエバーノートではおきません。ただし、ウエブ版では同期が半日以上ずれるようです。

とにかく、これ以上私の情報が壊滅する前に、一日も早く、このエバーノートに保存しているカードの情報を別のアプリで最低見ることができるようにしたいと思います。
このカードが壊滅する前に、早急に何か対策を提示してもらえませんでしょうか。
もう、iPhone がクラッシュすることなどどうでもいい事態だと認識しています。
時間ばかり引き延ばしておられるようですが、責任のある対応をお願いします。 

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12月16日

PC版の不具合については、これ以上被害が拡散するとパソコンそのものへのダメージが懸念されます。
今私のパソコンで問題なソフトはエバーノートだけなので、当面はPC版のエバーノートをできるだけ使わないようにします。
私の業務に関して、被害甚大です。

なお、iPhone 版について、その後、何にも指示がないので、こちらの方が被害はさらに激甚です。
今も、6秒以内にクラッシュし続けています。
もう2ヶ月にもなります。
1日も早くこれまで通りに使えるような方策の提示をお願いします。
年末の業務が、エバーノートに保存していたデータが使えないので、もう悲鳴以前の現状で困惑を越えてパニックに近い中にいます。
どうにかならないものでしょうか。

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2014年12月18日 (木)

井上靖卒読(191)「明治の月」「就職圏外」

 井上靖が残した戯曲はこの2作だけです。
 共に、『井上靖全集』に初めて収録されました。

■「明治の月」
 時は明治元年。場所は会津若松。夫婦と子供を挟んで、夫の親友が時勢に揉まれ、運命の歯車が噛み合わなくなった人間関係が、情を中にして語られる劇です。まさに、劇にふさわしい話となっています。
 最後は意外な幕切れでした。人間を凝視しながらも、その甘さが前面に出てしまいました。井上靖らしいと言えます。しかし、話としては中途半端だと思います。登場人物の関係性がおもしろいので、その展開に物足りなさを覚えたのです。第1幕の緊張感が、第2幕で萎んでしまったと言えます。【2】
 
 
初出誌:『新劇団』(大阪市新劇団発行所)
初出号数:昭和10年7月1日、創刊号
 
※「明治の月」は昭和10年10月、新橋演舞場の「全新作狂言揃男女優大合同十月興行」で、松居桃多郎舞台監督、市川小太夫、河合栄二郎、森律子、守田勘弥らの出演により上演された。(『井上靖全集』621頁、解題より)
 
 
 
■「就職圏外」
 会話のやりとりが生き生きとしています。おもしろさと軽妙さも表現できています。舞台向きといえるでしょう。
 特に何が起きるわけではありません。学生の就職話が展開する中で、人物がよく描かれています。ただし、物語としては退屈でした。舞台では、そこはごまかせることでしょう。会話の妙味を楽しむ作品です。【2】
 
 
初出誌:『新劇団』(大阪市新劇団発行所)
初出号数:昭和11年3月1日、3月号(第8輯)
 
 
〔参照書誌データ〕
「井上靖作品館」
 
 
 

2014年12月17日 (水)

読書雑記(116)清水義範『秘湯中の秘湯』

 『秘湯中の秘湯』(清水義範、新潮文庫)をやっと入手して読みました。


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 中部大学の蜂矢真郷先生から本書のことをご教示いただいたのは今夏でした。気にかけながら書店を探しても、絶版とのことでなかなか本屋さんで売れ残ったものが見つからないのです。
 検索をしていたら、たまたまネットで見かけました。しかし、私はネットショッピングは日本文化を破壊し、人間関係を断ち切るおぞましい仕掛けだという信念を持っているので、よほどのことがない限り欲しい品物があってもネットでは買いません。

 とにかく、自力で現物を手にして買うように心がけているのです。この、自分の足で探すことに無上の楽しさを感じます。ほしいものとの出会いは感動的であり、見つけた時の嬉しいことといったらありません。
 そんなある日、宿舎の近くのブックオフに行くと、108円の棚に『秘湯中の秘湯』が並んでいました。捜しあぐねていた本が、なんと108円なのです。ラッキーとばかりに購入し、すぐに読みました。

 本書は、論理的な考察や客観的な報告を心掛けて語っているものです。その真摯な姿勢が行間に溢れているので、おもしろい読み物となっています。
 ただし、ことばに拘りながら同じ調子で語られるので、読んでいて飽きてしまうという問題点も抱えています。その反面、文章をおもしろおかしく綴る上での苦労を、退屈な行間から教えてもらえます。
 裏表紙には「爆笑小説全11編」とあります。しかし、私には「爆笑」というよりも「朗笑」がふさわしいと思いました。

■「秘湯中の秘湯」
 どこまでが本当なのか、訝しがりながら読み進みました。入りたくなる温泉、遠慮したいがどんな所なのか行ってみたくなる温泉。とにかく楽しめます。
 中でも、私は「空中温泉」に入りたいと思います。付載の温泉情報には、次のようにあります。
  交通 秘密。
  泉質 不明。
  効能 気分がいい
  宿  なし
 
■「非常識テスト」
 物を知らないことを競うかのような女子大生の実態報告です。「七輪」を「五輪」からの連想で「ノーベル賞」と答えたのが秀逸だと思いました。
 ただし、最後のオチも含めて、もう一捻りできたように思えます。
 
■「痩せる方法」
 空回りの論理が展開するだけです。面白くしようとしているのはわかっても、まったく話題が盛り上がりません。
 
■「故事付成語」
 最初の矛盾だけが真面目で面白くありません。しかし、それがかえって面白いということになります。ごまかそうとする筆者が顔を出すので、そこを楽しむべきでしょうか。言葉のキレは悪いです。
 
■「取扱説明書」
 文明が高度になり、電子機器が高性能になるにしたがって、それらを使いこなすテクニックが必要になります。その時に言葉での説明が無意味であることが縷々と綴られています。電子機器のトリセツでは、今も悩まされています。
 
■「アンケート結果分析」
 消費者の心理を読んだ分析が綴られています。あまりおもしろくない語り口です。作者の手法に、そろそろ飽きてきました。最後の開き直りの主張は、作者も先刻ご承知だからでしょう。

■「結婚したい女性・百三の条件」
 アイデア倒れかな、と思いながら読み飛ばしました。

■「恐怖のニッポン食べ物ガイド」
 和食を題材にした、異文化体験論が、展開されます。アメリカ人から見た和食です。もっと書いてほしいと思いました。これでは生煮えで中途半端です。

■「周到な手紙」
 母のために、道順を順序立ててくどくどと説明している文です。だらだらと続く所に作者の意図があるとしても、正直言って飽きました。ここにオチがあったらいいですね。

■「只今会議中」
 不毛な会議のパターンが、いくつか例示されています。無駄ということを納得させられます。落としどころもいいですね。

■「ジャポン大衆シャンソン史」
 日本語が翻訳されていて、それを日本語に訳し戻すとどうなるか、という実例が列記されています。
 これは、現在私が科研で研究しているテーマと合致します。
 蜂矢真郷先生は、私が科研のテーマをお話しした時にその連想から、この話が本書にあることを教えてくださったのです。
 例えば、こんな例があります。
 小柳ルミ子が歌った「瀬戸の花嫁」のフランス語訳を、そのまま日本語にしたら……


「瀬戸物の花嫁」(一九七二年)
 瀬戸という陶器の町に夕闇が迫り
 遠くの島へ結婚のために行く陶器の花嫁
 若いということを人々が心配するのだが
 愛があればおそろしいことは何もない
 二段ベッドのような畑がサヨナラをする
 幼い弟は行かなかったり泣いたりした
 もし弟が男だったら泣くこともなく
 ねえ 父と母は陶器を大事にしている

 小柳ルミ子が歌った歌の歌詞をあらためて思い出しては、「あれっ」と意味を考えたりします。

 現在、『源氏物語』の外国語訳を日本語に訳し戻ししてもらっています。
 さて、海外では『源氏物語』がどのように訳されているのでしょうか。
 今しばらく、調査結果を楽しみにお待ちください。
 
 
 

2014年12月16日 (火)

『源氏物語』の写本「明融本」44冊と睨めっこをして

 今日も、日野にある実践女子大学へ明融本の調査で行きました。

 立川駅の手前で、電車がしばらく入線待ちのために止まりました。
 その時、首を傾げざるを得ない放送が車内に流れました。


電車の外は大変危険です。
絶対に電車から降りないでください。

 三鷹駅を過ぎてからは、車内はがら空きです。
 非常ドアのコックを捻って、自動ドアをこじ開けて外に出る人がいるとも限らない、ということを想定した注意喚起の放送なのでしょうか。それとも、電車の外に出ようとした人を見かけたために、その人に対する注意だったのでしょうか。いずれにしても、停車時間は2分ほどだったので、現実離れした放送だと思いました。

 今日も、実践女子大学図書館の司書のみなさんのご高配をいただき、順調に調査が進みました。
 明融本は写本の料紙が薄いため、ウラ写りが甚だしい写本ばかりです。判読に四苦八苦しました。

 空き時間を利用して、参加者5人で明融本44冊の書き手を、独断と偏見で仕分けしてみました。各冊の中央あたりを開き、書かれている文字の特徴を手がかりにしてグループに分けてみたのです。大きく6グループに分かれました。もちろん、孤立する本もたくさんありました。

 今回の参加者は、古写本を正確に翻字することを任務とするメンバーです。筆跡鑑定は、誰もしたことがありません。しかし、結果としては、明融が書写に関わったと思われる本は、ほぼ識別できたようです。

 もちろん、江戸時代の古筆鑑定家である琴山の「上冷泉殿為和卿御息明融」という極札の有無(25冊分)から、仕分けの結果を判断してのことです。どう見ても他の明融筆とされる手とは違う鑑定もあるようなので、これは厳密な識別ではありません。それでも、おおよその仕分けをし終えて、充実感だけはみんなで共有できました。

 今日は、韓国から東京大学大学院に留学生として来ている2人が、いつものようにアルバイトとして実践女子大学までお手伝いに来ていました。明融グループなどは、この2人が特に見定めたグループでした。
 田村隆先生へ。2人の古写本を見据える目が確かなものになっていることを、今日しっかりと確認しました。ご安心ください。

 帰る頃に、ラウンジ周辺は冷たい雨の中でした。


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 日野駅の中で、雨傘の自動販売機を見つけました。


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 ビニール傘が540円と1030円、折り畳み傘が1080円です。
 初めて見たので、JRの他の駅にもあるのかは知りません。この多摩地域の気象状況に何か特性でもあるのでしょうか。
 心遣いの日本、ということを再認識させられました。
 
 
 

2014年12月15日 (月)

片手間ヒロイン映画『女子ーズ』を再度観て

 今秋、カナダからの帰りの飛行機で観た日本映画『女子ーズ』について、本ブログの「カナダからの帰りの機内は気忙しくて」(2014年09月30日)の末尾で、以下のコメントを記しました。


 「女子ーズ」は、脱力系ながらも楽しめる佳作です。地球の平和のために、5人の女の子のヒーローが怪獣たちと闘います。闘うまでの、怪獣たちとのやりとりは秀逸です。女の子の言い分を理解して、暇そうにダラダラと時間つぶしをする怪獣たちの様子がいいですね。登場人物や怪獣たちの掛け合いが、緩急自在に生き生きと描かれています。
 女の子たちの仕事や興味の話が、少しくどいかと思いました。しかし、傑作映画だと言えるでしょう。もう一度観たい、と思っています。【4】

 その後、レンタルDVDが出たので早速観ました。
 再度観て、やはりおもしろい映画であることを再確認!
 「映画「女子ーズ」公式サイトもあります。


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 平成時代における若い女性のものの見方や考え方に加えて、行動規範がコミカルに描かれています。

 私が一番印象に残ったのは、後半で陸橋の袂に座り込んで通過する人をカウントするイエローのアルバイトのシーンです。この場面では、時間の流れが異様にゆったりとしています。同じ頃、戦闘場では、地球を征服するために来た怪獣や怪人たちが、決戦の時を暇そうに待ってくれています。

 イエローの役柄が気に入りました。高畑充希が演ずるイエローのとぼけた台詞とコミカルな演技は、この作品の雰囲気をしっかりと支えています。次に観る機会があったら、このイエローだけを観てもいいかもしれません。

 地球の平和を守るために出動が要請されているとき、自分が生きていくためのアルバイトの仕事をどうするか、という女子ーズの苦悩の背景に、制作者の深い思いが伝わってきました。

 映画の各所に、「今それをしなくても」という突っ込みを入れたくなります。
 ひるがえって、それは自分の日々にも跳ね返ってきます。
 
 
 

2014年12月14日 (日)

千代田図書館の展示「古書目録のここが好き!」

 一昨日、本ブログで「新春刊行予定の『日本古書目録大年表』のこと」(2014年12月12日)と題する記事をアップしました。

 この古書目録に関する展示が、再来週から千代田図書館で開催されます。
 古書目録の魅力を多くの方に知っていただきたいので、ここにそのイベントのパンフレットを紹介します。

 古書目録は、一時の古書売買のための冊子です。
 しかし、そこには人それぞれに思いがけない出会いと恩恵を受ける情報が盛られていることがあります。
 目録の楽しさや面白さを知る機会になるかと思います。

 千代田区立千代田図書館にある「古書販売目録コレクション」へのお誘いを兼ねて、ここに紹介するものです。
 さらに興味をお持ちになった方は、ぜひとも私の調査にも参加してみませんか。
 本ブログのコメント欄を活用して連絡をいただければ、返信で今後の調査の予定をお知らせします。


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2014年12月13日 (土)

豊島科研の源氏本文に関する研究会

 晴天の週末です。渋谷の國學院大學で開催された研究会に、少し風邪気味の身体を気遣いながら参加しました。

 一昨日のブログで紹介した、実践女子大学の渋谷校舎を通りかかったので、バス通りから撮影しました。


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 渋谷の丘に並び立つ國學院大學の若木タワーも、伝統と歴史の上にしっかりと立っています。


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 この光景はなかなか壮観で、目を楽しませてくれます。
 國學院大學の若木タワーの10階からも、実践女子大学を望み見ることができます。
 手前が國學院大學の図書館。その左手向こうが実践女子大学です。


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 さて、豊島先生の研究会では、「先般予告した通り」(2014年12月 8日)に、みなさんの研究成果が発表されました。今回は、いつもに増して充実した内容でした。
 次回はぜひ、もっとたくさんの若手に聞きに来てもらえるように、積極的な働きかけをしたいものです。

 本日は、豊島先生が新しく採択された科研(C)の、第1回目となる研究会です。
 なおこの会は、豊島先生が平成19年に科研(A)を取られてから、通算で21回目だとのことでした。大切な仕事を長く続けておられることになります。


 源氏物語の本文資料に関する共同研究会
 
【プログラム】

河内本の本文の特徴―「夕顔」巻を中心に―
    豊島秀範(國學院大學)

阿仏尼本「帚木」巻本文の宗本的性格
    上原作和(桃源文庫日本学研究所)

米国議会図書館本について―五辻諸仲筆本との関係―
    菅原郁子(専修大学大学院生)

ハーバード大学本「須磨・蜻蛉」の字母に関する一考察
    伊藤鉄也(国文学研究資料館)

源氏物語(三条西家諸本)の表記法について
    上野英子(実践女子大学)

『紫明抄』伝本再考
    田坂憲二(慶應義塾大学)

 本日も、みなさまの発表をじっくりとうかがいました。いつもはそれぞれの発表に質問をしていました。しかし、今日はどなたにもしませんでした。本文に関して「系統」という言葉が、どの発表にもあったので、そこで私の問題意識と隙間が生じたのです。非常に違和感を覚えました。それでも、それぞれの新鮮な視点と切り口に、多くの刺激もいただきました。

 以下、私の発表内容を記録として残しておきます。
 


  ■発表要旨■

 『源氏物語』の翻字において、古写本原本の再現性を高めるためには、変体仮名は字母で表記すべきではないか。従来の現行平仮名での翻字では、翻字表記文から元の写本の表記に戻れない。
 そこで今後は、
  (1)現行漢字平仮名交じり版
  (2)変体仮名交じり字母混交版
という2種類の方針で対処したい。
 ただし、(2)は鎌倉期の写本に限定しての取り組みとしたい。
 これによって、明治三十三年に小学校令施行規則第一号表に四十八種の字体で示された一音一字の原則の矛盾から開放される。
 このことを実際に適用して、ハーバード大学本『源氏物語』「須磨」を翻字した結果を例示する。また、ハーバード大学本『源氏物語』「須磨」「蜻蛉」と国立歴史民俗博物館蔵「鈴虫」との兄弟関係にまで視野に入れた字母資料により、三本の書写環境を確認したい。
 さらに、池田本『源氏物語』(天理図書館蔵)の校訂本文の作成を進めていることと、目の不自由な方々と一緒に古写本を読む取り組みについても報告したい。


 
 まず、ハーバード大学本『源氏物語』「須磨」(巻頭半丁分)における3種類の翻字例を提示しました。
 特に3番目の【字母混交版】は、今日ここで初めて公開したものです。


 【現行仮名版】
よの中・いと・わつらしく・はしたな
き・ことのみ・まされは・せめて・しらすか
ほにて・ありへむも・これより・はしたなき・
こともやと・おほしなりて・かの・すまは・
むかしこそ・人の・すみかとも・ありけれ
と・いまは・いと・さとはなれ・心すこくて・あ
まの・いゑたに・まれになむなりにたると・
きゝ・給へは・人・しけく・をしなへたら
む・すまゐは・ほいなかるへし・さりとて・
みやこを・とほさからんも・ふるさと・おほつ(1オ)」
 
  【変体仮名版】
与乃中・以止・和徒良之久・波新堂奈
幾・己止乃三・末佐礼八・世免天・志良須可
本尓天・安里部武毛・己礼与里・八志多那支・
己止毛也止・於保之奈里天・可乃・春末八・
武可之己曽・人乃・寸三可止毛・安里个礼
止・以末波・以止・佐止者那礼・心寿己久天・安
末乃・以恵堂仁・万礼尓奈武奈利尓堂留止・
幾ゝ・給部八・人・之計久・遠之奈部堂良
武・寸満井八・本以那可留部之・左里止天・
三也己遠・止本左可良无毛・不留左止・於保川(1オ)」
 
  【字母混交版】
よの中・いと・わ徒らしく・は新堂な
き・ことの三・ま佐れ八・せ免て・志ら須可
本尓て・あ里へむも・これよ里・八志多那支・
こともやと・おほしな里て・可の・春ま八・
む可しこそ・人の・す三可とも・あ里个れ
と・いまは・いと・佐と者那れ・心寿こくて・あ
まの・いゑ堂に・万れ尓なむなり尓堂ると・
きゝ・給へ八・人・しけく・をしなへ堂ら
む・す満井八・本い那可るへし・さ里とて・
三やこを・と本さ可らんも・ふるさと・おほつ(1オ)」

 
 実際に【字母混交版】を作成してみて、意外と違和感のない翻字スタイルになっていると思っています。
 これならば、明治33年に一音一字に統制された現行平仮名が抱える矛盾は、十分に回避できています。
 なによりも、原本に帰れる翻字になっているので、長く後世に伝えられる表記だといえます。
 これならば、次世代の人たちに負い目を感じながら翻字データを渡すという、不本意ながらの醜態は晒さなくてもすみそうです。

 次に、ハーバード大学本『源氏物語』「須磨」「蜻蛉」と国立歴史民俗博物館蔵「鈴虫」の字母版をもとにしてわかったことを報告しました。
 次の資料には、細かな数字が列記されています。
 これは、「須磨」「蜻蛉」「鈴虫」の3本の本行に書写された文字のみの、字母レベルでの集計結果です。
 つまり、ナゾリは下の文字を採用しており、ナゾられて上に書かれた文字は取っていません。また、傍記・補入・ミセケチの文字も対象外です。純粋に本行本文として書かれた文字だけの調査結果です。

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 興味のない方には退屈でしょうから、以下に簡単に説明を加えておきます。


(1)三本の文字遣いを字母から見た結果、ほぼ同じ傾向で文字が用いられていることが確認できる。
(2)現行の平仮名を字母とする多くの文字が、700年前も主流として用いられていた。
(3)現行の「か(加)」「た(太)」「に(仁)」は少数派の文字であり、「可」「多」「尓」が主流の仮名として用いられていた。
(4)「須磨」と「鈴虫」は非常に近い文字遣いが見て取れる反面、「蜻蛉」は独自な用字(阿・江・飛)が目立つ。
(5)漢字についても、三本共に共通する文字の使用傾向が顕著である。
(6)三本共に、親本や書写者の生活圏や文化圏は共通するものであったと思われる。

 そうした内容に加えて、これから池田本『源氏物語』(天理図書館蔵)の校訂本文の作成に着手することと、目の不自由な方々(触常者)と古写本を一緒に読むことにチャレンジする旨の報告もしました。

 後の質疑応答で多くの意見をいただきました。ありがとうございます。
 翻字・字母・池田本・触常者の問題は、今後とも折々に報告しながら進めていきます。
 ご意見やご協力をお寄せいただけると幸いです。

 今回の研究会には、藤井貞和先生と日向一雅先生もご参加くださいました。
 そして、いろいろとお考えをお聞きすることもできました。
 ありがとうございました。

 その後の、渋谷での懇親会も楽しく語り合うことができました。
 気の置けない仲間と一緒に、ああでもない、こうでもない、とざっくばらんに話し合える幸せを感じながら、またの再会を約して散会しました。
 
 
 

2014年12月12日 (金)

新春刊行予定の『日本古書目録大年表』のこと

 現在、千代田区立千代田図書館で古書販売目録の調査をコツコツと進めています。まさに、孤軍奮闘という状況にあります。
 さまざまな情報が収集できるので、本ブログでも、この古書販売目録コレクションの調査への参加を呼びかけていました。
 過日の調査の報告は、「千代田図書館の調査中に八木書店の会長と池田本談義」(2014年12月04日)や、「千代田図書館で古書目録の調査を続ける」(2014年11月06日)をご覧ください。
 
 その目録1万冊はすでにデータベース化されており、私はざさざまな情報を活用しながら調査を進行させています。

 新年早々に、この古書目録が整理されて『日本古書目録大年表』(全3冊、金沢文圃閣、2015年1月刊行予定)という、年表形式のレファレンスブックとして刊行されることになっています。

 内容は、明治から平成にかけて、日本全国で発行・配布された古書目録の総整理版です。
 この古書資料コレクションの価値と意義を知っていただきたく、またさらに本資料の調査に興味を持っていただく意味から、ここにそのパンフレットを画像で紹介します。

 古書に興味をお持ちの方の知的好奇心を刺激できたら幸いです。
 

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2014年12月11日 (木)

日比谷図書文化館でハーバード本を読む(5 最終回)

 今期の5回目となり、ひとまず今日が最終回となりました。
 師走ともなり、日比谷公園もイルミネーションがきれいに瞬いていました。
 日比谷パレスの電飾で縁取られた階段が印象的です。


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 日比谷松本楼もクリスマスの飾りが質素で上品です。


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 日比谷図書文化館は、いつも明るくておしゃれです。


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 今回初めて参加させていただいた日比谷カレッジでは、次期の募集となる「古文書塾てらこや 1月期」が開始されています。古写本と変体仮名に興味と関心をお持ちの方で、木曜日の18時半以降の時間が空けられる方は、ぜひお越しください。
 「体験講座」は新年8日(木)の午後6時半から行います。どんなものか、一度体験してみてください。

 30年にわたって古写本を読んできたノウハウを、私なりに語り伝えておきたいと思っています。また、この講座は翻字者の育成を目指しています。読めるようになったら、『源氏物語』の本文をデータベース化しているNPO法人〈源氏物語電子資料館〉の翻字作業に参加していただくことで、さらに腕を磨いてください。
 日本の古典文化の継承者になっていただきたいことと、翻字のスキルを高めていただき、次の世代にデータを引き継ぐ役割も果たしていただけたら幸いです。

 現在のところ、『源氏物語』の古写本の翻字で、後世に伝えられる形式のデジタル・データになっているのは、ほんの一部です。まだまた翻字すべき写本は山ほど残っています。
 一帖でも多くの翻字データを、デジタルで後代に引き渡すためにも、一人でも多くの方に写本に書かれた物語本文を確認できる基礎となる翻字作業を作成することに、ご理解とご協力をよろしくお願いします。
 そのための技術力アップをめざしての講座が、この「【翻字者育成講座】ハーバード大学美術館蔵『源氏物語 蜻蛉』を読む」です。変体仮名を読むことから一歩進んで、スキルを高めて次世代に引き継ぐデータを作成する、というのが高く掲げている目標です。

 今日は、最後ということもあり、たくさんの資料をお配りしました。
 しっかりと、国文学研究資料館の宣伝もしました。

 まず、いつものように、私のブログ「鷺水亭より」に報告した前回(第4回目)の講座記録をもとに、仮名と漢字の使われ方を学んだこと等を確認しました。
 また、今回のテキストに使用した新典社版の『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「蜻蛉」』の翻字で、今現在判明している訂正箇所の一覧をお渡ししました。これは、テキストを作成した者としての最低限のサポートだと思っています。
 詳しくは後日、本ブログでも公開しますので、上記の書籍を購入された方や図書館等で利用なさっている方は、今しばらくお待ちください。

 さらに、本講座では古写本を読むといっても、変体仮名を読むことに終始したために、内容はまったく触れる暇がありませんでした。その点をカバーする意味からも、『国文学解釈と鑑賞別冊 源氏物語の鑑賞と基礎知識 No.28 蜻蛉』(伊藤編著、至文堂、268頁、2003(平成15)年)で、今回読んだ所までの資料を再編集したプリントをお渡ししました。自分で読み進んでいただくための資料として活用していただくためです。

 次に、先週調査に行った国立歴史民俗博物館所蔵の重要文化財山中本「鈴虫」巻で、読むのに苦労した箇所の解説と、昨日調査に行った実践女子大学所蔵明融本「玉鬘」巻の微妙な翻字の記述方法を、具体的に説明しました。ややこしい書写がされている箇所を、どのように現代日本語で表記して次の世代に引き渡すか、ということにつながることでもあります。

 その後、凡例の確認を前回の続きからしました。これは、古写本を読んでその書かれて状況をどのように日本語で記述するかということに関して、ルールとでもいうべきものです。
 翻字のルールはまだ存在しません。そこで、私が『源氏物語別本集成』の作業を通して作成したものを、現在の翻字作業のルールとしています。これは、今後とも翻字された方からの意見を聞きながら、さらに整理されたものに仕上げたいと思っています。
 これについても、近日中に公開します。翻字の基本的な了解事項として通用するように、折々に補訂していきたいと思います。

 お話したいことがありすぎて、ハーバード大学「蜻蛉」の翻字は今日は進めませんでした。
 また、時間切れとなったので、本文異同の確認については、次の3例のみを提示して終わりました。


○「こよひは」(520064)「けにや」は傍記混入か
○「しらせ」(520129)「みせ」
○「ナシ」(520143)「侍従」
  これはテキストの解説(185頁)参照

 私にとって初めての試みということもあり、いろいろと欲張った内容になったせいか毎回時間が足りませんでした。
 新年度から、引き続きハーバード大学本『源氏物語』「蜻蛉」をテキストにして、今回の続きから読み進めていきたいと思います。気長にお付き合いいただければ、と思って続けていくつもりです。
 今回参加なさった方で、次の期もお越しいただける方がいらっしゃることがわかりました。ありがたいことです。ますます翻字の腕を上げていただきたいと思います。

 なお、終了後に新たに4人の方が翻字をやってみたい、とおっしゃってくださいました。
 古写本の翻字に興味を持っていただけたことに安堵しました。
 あまり難しくない資料を取り揃えて、近日中にお届けしようと思います。
 無理をなさらずに、できるときにできる所まで読んでみられたらいいと思います。手にした赤ペンは、ほとんどが漢字と平仮名の違いをチェックすることに使われるはずです。それだけ、こうした作業をやってみると、変体仮名が実践的に読めるようになるのです。

 今回参加された方はもちろんのこと、それに限らず、読んでみたいとお思いの方は、本ブログのコメント欄を活用して連絡をください。メールのやりとりでお話を伺いながら、最適な資料をお届けすることができるように努力いたします。

 それでは、また来年、日比谷図書文化館でお目にかかりましょう。
 よい歳をお迎えください。
 そして、来年もよろしくお願いいたします。
 
 
 

2014年12月10日 (水)

実践女子大学で気の遠くなる明融本の原本調査

 実践女子大学が渋谷から日野に移転したのは、昭和61年(1986)でした。コンクリートの打ちっ放しという、斬新なデザインです。


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 私は、渋谷の國學院大學大学院で勉強していた昭和50年に、すぐ斜め向かいにあった実践女子大学から講師としてお出での山岸徳平先生から、日本漢文学を教えていただきました。山岸先生は、岩波日本古典文学大系『源氏物語』の校注者として、『源氏物語』を牽引しておられたのです。

 しかし、授業を何回か休んだこともあり、山岸先生から単位を落とされました。当時は、厳しい先生が多かったのです。翌年、山岸先生の授業を再度受講しました。

 ある日、私が『源氏物語』の本文を調査していることをお伝えすると、すぐに陽明文庫の重要文化財となっている写本が見られるように、紹介状を書いてくださいました。これが、その後『源氏物語別本集成』の底本へと結実していきます。

 またある日、実践女子大学の常磐松校舎にあった先生の研究室に、國學院大學での授業が終わった後、すぐ前なので連れていってくださいました。先生ご自身が書写なさった貴重な本を、1つ1つ丁寧に説明してくださいました。その時、東海大学の桃園文庫にある9帖以外の明融本44帖も見せてくださったのか、今は思い出せません。

 杖を突いて歩いておられたので、介助しながらご一緒に、バスではなくて歩いて渋谷駅まで行ったように思います。写本にまつわる思い出話や、文学研究における文献の取り扱い方など、多くのことを教えていただきました。先生は昭和62年にお亡くなりになりました。実践女子大学が渋谷から日野に移転した翌年です。

 その後、実践女子大学の創立者である下田歌子の『源氏物語講義』の調査で同校を訪問しました。また、源氏物語千年紀の源氏物語展で、図録に収録する明融本の写真撮影のために、同校を訪問しました。いずれも、横井孝先生と上野英子先生のご高配をいただいてのものです。

 その実践女子大学が、本年平成26年(2014)に、文学部と人間社会学部が渋谷へ逆戻りしての移転を果たしました。渋谷の地には、立派な高層の新校舎が建ちました。國學院大學の若木タワーと共に、渋谷の丘に並び立つ、学問と教育の拠点となっています。

 いろいろと縁のある実践女子大学で、明融本の翻字の確認をすることになりました。文学部は渋谷に移転しても、貴重な資料の多くはまだ日野の校舎に保管されているので、あらかじめ横井先生のご高配を賜り、今日は日野の校舎に行きました。

 事前に紙焼き写真によって、44帖の翻字はしてあります。しかし、その紙焼きは裏写りが甚だしいものなので、原本を確認しないとみなさんに使っていただくデータとして利用に供することができません。

 今日は国文学研究資料館にアルバイトで来てもらい、連日この判読が困難を極める明融本の翻字をお願いしている方々を含めた6人で、直接原本の調査をしました。

 私は、「玉鬘」巻を担当しました。紙焼き写真が不鮮明で裏写りが激しいため、ナゾリやミセケチや朱の書き込みや濁点などなど、1つずつシートに書き込んでいきます。

 10時から17時までかかって、私が分担した「玉鬘」巻は、やっと8丁までを終えました。前途多難な原本調査です。

 来週は2日間をこの調査に当てています。新年から、また通うことになります。折角の機会を与えていただいたので、やれる時にやれることを全力でやり切るしかありません。
 根気に加えて時間との闘いは、まだまだ続きます。

 帰りのエントランスでは、クリスマスのイルミネーションが瞬いていました。


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2014年12月 9日 (火)

若い女性に小言を投げつけるおじさん

 立川駅で電車に飛び乗り、空いていた左端のドアに近い席に座り、今日のブログを書き出した時でした。隣のおじさんが、右端の若い女性に悪態をつきだしたのです。

 曰く、毛糸の編み棒が危ない、とかなんとか。
 ちらりと見ると、確かに女性は一生懸命に編み物をしておられます。


いつもそんなことをしているのか?
電車の中でする事じゃぁないだろ!
長い棒が人に当たったらどうする?

果ては、


どんな教えを受けて育ったんだぁ!

などなど。
 次第に口調が興奮していくのがわかります。

 あまりにもしつこいので、女性は次の駅でスッと立ち上がってホームをすたすたと。
 最後まで編み棒を仕舞うことなく、阿呆おじさんを無視して立ち去る姿は、おじさんの負けです。
 おじさんはすぐに、空いた右端に移動です。
 私は、このあたりで、今日のブログのネタをこの様子に切り替えました。

 やがて、別の女性が、私とおじさんの間に座られました。
 座るやいなや、その女性が、やおら携帯電話を出された途端に、くだんのおじさんが電源を切れと食ってかかるのです。

 女性は、今電源を切るためにカバンから出したのですよ、と丁寧な言葉遣いで答えておられます。確かに、横の女性の手元を見ると、電源が切られる瞬間でした。
 くどくどと、ここは携帯電話の電源を切る場所だ、とねちっこく絡んでくるおじさんを尻目に、女性は電源を切るとサッとカバンの中へ。

 私もかつては、電磁波について問題意識を抱き、電磁波測定器を持ち歩いていたものです。しかし、最近はその数値が異常ではなくなり、医療機器への影響も、実際にはどれくらいのものなのかがわからなくなりました。
 そんな中で、間に座られた女性は、実に指示に素直な方だったのです。

 二の句が継げなくなったおじさんは、そのいらだちを手元のプリントにボールペンで殴り書きすることで晴らしておられました。
 A4のプリントに、大げさな身振り手振りで、わざと音が出るようにペン先を叩きつけて線を引いておられます。かと思うと、紙が破れんばかりにグワッと大きな丸を書かれます。ボールペンを乱雑に扱うと、あんな音が出ることを初めて知りました。

 そんなおじさんを右端に感じながら、私は今この文章を iPhone に入力しています。
 おじさんは、最初から私が iPhone を使っているのに、私には何もおっしゃいません。

 スーツにコートを羽織った、サラリーマン風の年配の方です。
 職場や家庭で何があったのでしょうか。気の毒になるほどの、ぶざまな姿を見せつけられました。
 人生の終末を迎えるころになって、こうした醜悪な態度を公衆の面前で取ることになるとは、どんな人生だったのでしょうか。いろいろとあったとしても、これははた迷惑でしかありません。

 高齢化社会となり、今後とも年配者が若者に難癖をつけることが多くなることでしょう。しかも、標的は若い女性に……
 齢を重ねるにつれて、若者が疎ましく感じられることもあるでしょう。
 退職と共に、新たな生き方がわからないままに、そのはけ口を若者に向ける人もおられることでしょう。
 電車が、そうした高齢者の憂さ晴らしの場となってはいけません。

 若者たちも、こうした人にどう接していいのか、よくわからないままでいるはずです。ひたすら無視するしかないとしても、それが当たり前の社会になっては、あまりにも寂しいことです。

 今日のシーンを見て、すでに進行しているのか、これから蔓延していくのか、今の私にはこうした実情はわかりません。おばさん編も含め、さらには関西と関東の気風の違いもあることでしょう。
 しかし、いずれにしても、老若男女が心穏やかに居心地のいい生活を送れるような、そんな高齢化社会にしなくては、という思いを強くしました。
 
 
 

2014年12月 8日 (月)

豊島科研による『源氏物語』本文資料研究会のお知らせ

 師走はあっという間に刻が過ぎて行くので、山積した仕事を抱えたままで右往左往しています。
 そんな慌ただしい中で、標記の研究会が開催されますのでご案内します。


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科学研究費補助金基盤研究C
─源氏物語の新たな本文関係資料の整理とデータ化及び新提言に向けての共同研究─

第1回 源氏物語の本文資料に関する共同研究会

日時:2014年12月13日(土)13:00〜18:00
場所:於國學院大學120周年記念2号館2階 2202教室

【プログラム】
河内本の本文の特徴―「夕顔」巻を中心に―
    豊島秀範(國學院大學)
阿仏尼本「帚木」巻本文の宗本的性格
    上原作和(桃源文庫日本学研究所)
米国議会図書館本について―五辻諸仲筆本との関係―
    菅原郁子(専修大学大学院生)
ハーバード大学本「須磨・蜻蛉」の字母に関する一考察
    伊藤鉄也(国文学研究資料館)
源氏物語(三条西家諸本)の表記法について
    上野英子(実践女子大学)
『紫明抄』伝本再考
    田坂憲二(慶應義塾大学)

 これは、國學院大學の豊島秀範先生が平成19年度より開始された、基盤研究(A)「源氏物語の研究支援体制の組織化と本文関係資料の再検討及び新提言のための共同研究」(課題番号:19202009)が平成22年度で4年間の活動をひとまず満了したことを受けて、その継続研究としてスタートされたものです。

 地味な本文研究ではあっても、こうして着実に受け継がれているのは心強い限りです。
 この分野は、池田亀鑑以来80年近くも停滞している分野です。
 特に若手の方々に、その基礎研究の大切さを知っていただきたいと思っています。
 活字で刊行された校訂本文で『源氏物語』を読むこととは異なる、一味違った『源氏物語』が見えてくると思います。
 一人でも多くの方との出会いの場になればいいですね。
 気軽にお越しください。
 もし一人では来にくい場合は、あらかじめこのブログのコメント欄を利用して連絡をください。
 いろいろとご説明しますので。
 
 
 

2014年12月 7日 (日)

江戸漫歩(93)六本木・東京タワー・芝公園へ紅葉狩り

 地下鉄六本木一丁目駅を出てすぐのところに「全特六本木ビル内郵便局」があります。


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 39年前の昭和50年の誕生日に、この場所にあった「全特会館」で結婚式をあげました。
 「全特」とは、「全国特定郵便局長」の略称です。
 新宿伊勢丹のブライダルコーナーで、私の誕生日に式が挙げられる所を相談したところ、ここを勧められました。
 私がまだ大学院に入ったばかりの、修士課程1年生の時です。
 お仲人は、学部生時代の指導教授であった小林茂美先生ご夫妻でした。

 主賓が、大学院での指導教授だった内野吾郎先生。
 内野先生は近世国学の研究者で、ドイツ帰りの先生からドイツ文献学のお話を聞いて、文献学に興味を持ちました。
 それまでが、折口信夫の民俗学的研究の末流にいて、唱導文芸の勉強をしていました。
 民俗学から文献学へと、結婚を境に一念発起の転身でした。
 以来、今に至るまでの40年間、文献を扱う仕事をしています。

 私があちこち歩き回るのは、民俗採訪の調査旅行をしていた頃の影響でしょうか。
 今日も、学生時代から一緒に調査旅行に出かけていた妻と、この会館に足を運びました。

 周りはすっかり変わっていました。この都心で40年も経つのですから当然です。
 会館の前から見えたはずの東京タワーは、今や高層ビル群に囲まれています。少し移動するとやっと見えました。


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 坂を下ると、すでに住む人のいなくなった家々が、肩を寄せ合うように建っていました。周囲とはまったく違う、昭和30年代から時間の流れが止まったかのような姿を見せる一角です。


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 後から聞くと、すでに区画整理の対処となっているところだそうです。
 その場所からも、東京タワーが望めました。


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 さらに進んで東京タワーの裏側に出ると、正面とはまた違うアングルで見上げることができました。


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 隣接する芝公園の紅葉も色付き出したところでした。


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 芝公園から東京タワーを見上げると、お馴染みのシルエットも季節感を纏った姿になります。


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 公園の中では、モデルさんを囲んでの撮影会が催されていました。
 女性を舐めるようにしてレンズを向けるカメラマンの姿態は、あまり見たくない人間の姿なので好きではありません。せっかくの紅葉見物が色褪せそうになったので、早々に公園を出ました。

 モダンな六本木という都心の一角で、想い出の地と共に、古いものが消え去る直前の光景を見たことになります。スライド写真から一部分が消え、そこに新しくビルやマンションが屹立する映像が、数年後には映し出されることになります。
 いい時に、この変わりゆく風景を目にしました。

 先日行った大森の山王一帯がそうであったように、かつて自分が体感した場所は、記憶を鮮やかに押し留めておくためにも、今の内に再訪すべきかもしれません。

 それを意識して、また時間を見つけて散策に出かけることにします。
 
 
 

2014年12月 6日 (土)

盛会だった国際シンポ「男たちの性愛―春本と春画と―」

 今日の立川は快晴でした。冬の気配は、国文学研究資料館と国立国語研究所の間の木立にもうかがえます。


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 日だまりで散歩はできそうです。しかし、もうすっかり冷気が身に凍みます。

 国文学研究資料館では、昨年度より国際連携研究「日本文学のフォルム」いう国際シンポジウムを実施しています。本日の第2回のテーマは「男たちの性愛 ―春本と春画と―」です。


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 これは、これまでに国文学研究資料館が取り組んでこなかったものです。今日の今西祐一郎館長の挨拶でも、初代館長だった市古貞次先生は認めなかっただろうし、歴代の館長もこのテーマには難色を示したはずだ、とおっしゃっていました。時代と社会の状況が変わったのです。

 後半のシンポジウムにおいて、昨秋から今春にかけて、大英博物館で春画展を主宰されたロンドン大学のガーストル先生からは、「今日はおめでたい日だ!」とのコメントをいただきました。国文学研究資料館でこのようなシンポジウムが開催されたことは慶賀であり、お祝いしたい、との言葉をいただきました。

 それだけ、このテーマが時宜を得たものであり、充実した内容であった、ということです。
 このシンポジウムの代表を務める者として、好意的に評価されたことを喜んでいます。

 私自身のためにも、本日の4人の先生方の発表とパネルディスカッションでの意見交換に関するメモを、以下に残しておきます。

■ダニエル・ストリューブ先生(パリ・ディドロ大学)
  「西鶴晩年の好色物における「男」の姿と機能」

 西鶴の『色里三所世帯』の再検討を中心にして、男の性愛について語られました。その中で、女性の視点を通して描かれるようになったという指摘に、新しいものの見方の啓発を受けました。
 
■ジョシュア・モストウ先生(ブリティッシュ・コロンビア大学)
  「若衆 ―もう一つのジェンダー―」

 若衆遊びの場画をスクリーンに写しながら、客観的なテキストの分析をなさいました。眼前に写し出された春画が、説明を聞きながら見ていると、まったく卑猥な感じがなく、提示された4つのジエンダーがよく理解できました。
 
■中嶋隆先生(早稲田大学)
  「その後の「世之介」 ―好色本・春本のセクシュアリティと趣向―」

 セクシュアリティが笑いと結び付くことで非日常性が消えた、という趣旨がよく理解できました。浮世草子の春本化については、いろいろな問題があるようなので、今後のものの見方を教わりました。
 
■石上亜希先生(立命館大学)
  「春本・春画の読まれ方―男の読者、女の読者―」

 大英博物館で開催された春画展のコーディネーターでもあり、若さあふれる発表でした。近代から近世へと、春画に対する意識の変化が理解できました。春画の読者として女性がいたことが、昭和の初めまでの寄贈本によってわかるそうです。また、『女大楽宝開』の紹介は興味深いものでした。
 
 4人の発表を受けて、コメンテーターである染谷智幸先生(茨城キリスト教大学)と小林ふみ子先生(法政大学)の意見をいただきました。

 発表の間は静まりかえっていた会場も、意見交換になると場内に活気が蘇りました。スクリーンに映し出された春画に、各自がどう反応していいのか戸惑いながらの進行だったからかもしれません。
 私の記憶に残ったコメントは、次のような内容です。


※春画はアバンギャルドではなくて、保守的な世界が描かれている。

※文化人類学や近世社会の分野から、さまざまな切り口が可能なテーマである。

※風刺と好色だけでなくて、笑いとの関連でもこのテーマは広がりを持つ。


 
 武井協三先生は、今日の成果は笑いを取り上げたことだ、とおっしゃいました。

 来年度の第3回は、「日本文学はどう訳されたか」と題し、谷川恵一副館長にコーディネートしていただくことになっています。これも、すでに準備を始めていますので、お楽しみに。

 最後に、閉会の挨拶を手短かにしました。
 今回のために、日頃は読まない男色関係の本をたくさん読んだことと、『男色の日本史』(ゲイリー・P・リューブ、作品社、2014年9月)が一番印象に残っていることにも触れました。


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 そして、今日は女性からの視点で春画を見るおもしろさがわかった、ということも織り交ぜました。

 来年は、また趣向を凝らした国際シンポジウムにしたいと思います。

 本日のコーディネーターを務められた神作研一先生と、開催実務で奮闘された谷川ゆきさん、お疲れさまでした。

 このシンポジウムは、3回分をまとめて2015年度末に一書として刊行されます。これも、稔り豊かな成果となるように、鋭意編集を進めていますので、楽しみにお待ちください。
 
 
 

2014年12月 5日 (金)

佐倉の歴博で中山本「鈴虫」巻を熟覧

 古写本の調査のため、千葉県佐倉市にある国立歴史民俗博物館へ早朝より出かけました。
 ネットでルートを検索し、早くて安いという経路で行きました。
 一番のお勧めだったのが、西船橋駅と八千代台駅で乗り換える経路でした。

 東京メトロ東西線の西船橋駅から京成西船駅へ歩いて行こうとしたら、西船橋駅北口前の小さなロータリーで、前首相が手を振っておられました。ここが選挙の地盤だったのですね。

 歩き出してから気付きました。この乗り換えルートは、10分も歩くことと、道幅が狭くて成田空港へ行くときにスーツケース1つがやっと通れる道だったことを。
 特に朝は前から人が来ると、どちらかが車道に避けないと前に進めません。今日は荷物が少ないものの、案の定前から多くの人が来たので、私は車道を歩くことになりました。
 車はひっきりなしに、私の身体すれすれをかすめるようにして通り過ぎて行きます。轢かれなかったからよかったものの、命がけの道だったことを思い出し、乗り換え方がよくなかったことを痛感しました。

 車の往き来が激しい車道を、しかも轢かれないように注意しながら歩いたせいか、次の電車が来るのがあと数分しかないことを、京成線の踏み切りの近くで気付きました。踏み切りの手前の改札から入ったのでは跨線橋を渡って反対側のホームに出るのに手間取ると思い、踏み切りを渡って北側の改札から入れば、すぐに電車に乗れるはずだと即座に判断しました。
 しかし、これが大きな間違いで、歩けど歩けど駅から遠ざかります。民家ばかりで、左折して駅に向かう道がないのです。

 しかたがないので、踏み切りまで引き返すことにしました。駅に着いてみると、この小さな駅は南側にしか改札がなくて、北側に回っても無意味であることがわかりました。
 西船橋駅から10分のはずが、なんと30分も経っていました。

 以前もこの駅には懲りたはずなのに、またまた同じ失敗をしました。
 地元の方々はうまく乗り継いでおられるようです。しかし、年に1回も使わない経路であれば、単なる旅人はその利用に注意が必要だということのようです。

 それでも、あらかじめ調査の許可をいただいていた時間には間に合いました。
 博物館への入口の坂は、緩やかながらも長い登り道です。紅葉を見上げながら行きました。


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 今回の調査は、鎌倉時代に書写された『源氏物語』の「鈴虫」です。一般には中山本とか歴博本と呼ばれ、重要文化財に指定されています。
 この写本は、2008年に国文学研究資料館で開催した〈源氏物語展〉で展示するために、あらかじめ原本の確認に学芸員の立場で来たことがあります。

 私が学芸員の課程を終了したのが2008年3月なので、まさにこの本のために資格を取得したようなものでした。その後、天理図書館・陽明文庫・京都文化博物館等がご所蔵の重要文化財に指定された『源氏物語』の借り出し手続きと搬送に関わったので、学芸員資格はこの年にはフルに活用させていただいたものです。

 歴博本「鈴虫」は、すでに次のように複製本・釈文・影印本が刊行されています。


(1)『複刻日本古典文学館 第1期第3回配本 源氏物語 鈴虫・幻』(監修・編集 日本古典文学会、日本古典文学刊行会、1972年9月)

(2)『複刻日本古典文学館 釈文 中山家本 源氏物語』(日本古典文学会編、日本古典文学刊行会、1972年9月)

(3)『貴重典籍叢書 国立歴史民俗博物館蔵 文学篇第17巻 物語 2 源氏物語古写本六帖(若紫・絵合・行幸・柏木・鈴虫・総角)』(国立歴史民俗博物館館蔵史料編集会編、臨川書店、2000年3月)

 (3)の解題は伊井春樹先生です。しかし、ハーバード大学本との関係までは言及されていません。そこで今回は、『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」』(伊藤編著、新典社、2013(平成25)年)と『同「蜻蛉」』(同、2014(平成26)年)に続く兄弟本として、『国立歴史民俗博物館蔵『源氏物語』「鈴虫」』(カラー版、伊藤鉄也・阿部 江美子・淺川槙子 編著、新典社、2015(平成27)年、予定)として刊行することになったのです。
 この「須磨」「蜻蛉」「鈴虫」の3冊は、かつては一緒に日本のどこかにあったはずの、鎌倉時代中期に書写された古写本なのです。

 歴博本『鈴虫」は墨付18丁ほどの分量なので、40頁以内のカラー頁となります。ハーバード大学本と同じように、墨流しや金粉をまぶした用紙が使われています。
 この影印に翻字を付けることは、これまでのハーバード大学本の刊行スタイルと同じです。ただし、その後半に、3冊一括で、字母レベルでの語句索引を付けます。これに100頁を充てることになります。

 今回の調査は、その最終段階としての原本確認です。
 実際にゲラ刷りをもとにして原本を見ると、何箇所かに補正すべき点が見つかりました。なぞった箇所の文字も、原本を見て疑問が晴れました。精密な複製本があっても、やはり原本で確認することは基本です。
 この原本確認をするための熟覧に、ハーバード大学美術館には3回も足を運びました。原本が日本にあるということは大助かりです。

 今回の熟覧と調査の結果、写真を1枚だけ再撮影していただくことになりました。
 師走から年始にかけて、ご多忙のところを撮影担当の方々にはお世話になります。少しでもいい本に仕上げるためにも、どうかご理解とご協力をよろしくお願いします。

 歴博の仁藤敦史先生には、熟覧にあたってはさまざまなご高配をいただきました。仁藤先生には、2005年の人間文化研究機構連携展示『うたのちから 古今集・新古今集の世界』でも、図録作成や展示に関して多くのことを教えていただき、お世話になりました。


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 今日も、熟覧させていただくにあたり、わざわざお手間と時間を取っていただくことになり、恐縮のしっぱなしです。おかげさまで、予定通りの時間で、じっくりと拝見することができました。

 さらには、現在開催中の〈国際企画展示 文字がつなぐ 古代の日本列島と朝鮮半島〉も見せていただきました。お心遣いに感謝しています。ありがとうございました。
 
 
 

2014年12月 4日 (木)

千代田図書館の調査中に八木書店の会長と池田本談義

 千代田図書館へ古書目録の調査で行きました。10階の食堂から皇居を望むと、小雨にけむる中に黄葉がきれいです。


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 乾門の紅葉が一般公開されているので、この向こうはさらにみごとな色数を誇っていることでしょう。

 今日の古書目録の調査は、小さな展示即売会で配布された簡易版の冊子が多かったため、古写本に関する情報はありませんでした。江戸時代に刊行された注釈書類だけでした。

 その中で、豊国が描いた源氏絵が4点ありました。
 こうしたものも収集しているので、全調査が終了したあかつきには、おもしろい図版の活用が期待されます。


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 目録の調査中に、打ち合わせでお出でになっていた八木書店の取締役会長である八木壮一氏と、いろいろなお話をしました。
 この千代田図書館に収蔵されている古書目録は、八木会長が反町茂雄氏や中野三敏先生が収集しておられた目録等を利用できるようになさったものです。たまたま、この目録を調査中にお目にかかれて幸いでした。
 この資料群については、「千代田区立図書館[古書販売目録]」を参照願います。

 八木会長との話は多岐にわたりました。特に、「影印資料 新天理図書館善本叢書」が来年4月から刊行されることが公表されたばかりなので、そのことで詳しいお話が伺えました。今週中に内容見本のパンフレットが発送されるそうなので、大学等の関係者のみなさんは楽しみにお待ちください。
 この新善本叢書については、その「内容見本」がダウンロードできますので、お急ぎの方はご確認ください。

 この第3期に、『源氏物語』全10巻が計画されています。これは、「池田本(伝二条為明筆本)」のことです。今春の中古文学会の折に、天理図書館の岡嶌偉久子さんと八木書店側にプッシュした甲斐がありました。
 この本については、これまでに私が大島本に代わる流布本として推奨していた写本です。すでに、全52巻の翻字を終え、今は校訂本文の作成に着手しているところです。

 これまでに、「桐壺」巻や「空蝉」巻の校訂本文を公開しています。

「3本対照「桐壺」校訂本文の試作版」(2008/10/4)

「3本対照「空蝉」校訂本文の試作版(25.May.2009補訂版)」(2009/5/22)

 さらに、池田本の校訂本文を基準本文として、それに詳細な小見出しを作成しています。
 現在公開しているのは、「「桐壺」巻の小見出し試案(72項目版)」(2014年03月26日)だけです。これは、さらに増やす計画を進めています。

 また、「『もっと知りたい 池田亀鑑と『源氏物語』 第2集』(伊藤編著、新典社、2013(平成25)年)」では、岡嶌偉久子さんの丹念な調査を踏まえた研究成果である論稿「伝二条為明筆本源氏物語」を収載しています。これを読むと、池田本の詳細がわかります。

 池田本を大島本に代わる新たな流布本とすべく、これまでに少しずつ情報や試行版を提示して来ました。これで、本格的に着手できる状況となりました。

 今日は、八木会長から来年のカレンダー「新天理図書館善本叢書 刊行記念 天理図書館所蔵 名品集」をいただきました。その中に、池田本の紹介記事ありますので、池田本のさらなる理解を深めるためにも、以下に引用して広報宣伝の一翼を担いたいと思います。


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 ここに付された解説文は、以下のように記されています。


鎌倉末期写青表紙本48巻を基幹とする源氏物語
   源氏物語伝二条為明筆本(池田本)
『源氏物語』は作り物語の中にあって最多の伝本を伝えるが、平安朝の伝本は確認されておらず、鎌倉期のものが最古写となっている。本書は2巻を欠く全52巻。その内の48巻は2筆からなる鎌倉末期の書写で、本書成立当初の基幹巻と認められる。この48巻はすべて青表紙本系統の本文を持ち、巻によって巻末に奥入を持つ。揃いの古写本の少ない青表紙本諸本の内、特に重要な一一本として注目される。〔新善本叢書第13〜22巻収録(第3期)〕

 この文章中に「青表紙本系統の本文」とあります。この呼び方に異論を唱えている私は、今後の調査と研究を進める中で、池田本の本文を示すのにさらに的確な名称を考えたいと思います。
 現在、私が提唱している本文2分別試案では、池田本は〈乙類〉に属するものとしています。

 今回の新善本叢書の第3期が、『源氏物語』の池田本に確定したので、その刊行までには翻字と校訂本文を公開したいと思います。
 急遽、慌ただしくなりました。
 そこで、この池田本に関して、翻字確認と字母翻字および校訂本文と各巻の小見出しを作成する仕事をお手伝いしてくださる方を募ります。謝金は用意できません。しかし、必ず手応えのある仕事となるはずです。
 大きなプロジェクトなので、その運営主体はNPO法人〈源氏物語電子資料館〉とします。

 老若男女、自薦他薦を問いません。本ブログのコメント欄を活用して、どうぞ積極的に手を上げてください。連絡をいただけましたら、あらためて私から返信を差し上げます。

 このことは、後日さらに要綱をまとめてから、本ブログに協力者募集のお知らせを掲載するつもりです。
 
 
 

2014年12月 3日 (水)

科研HPの「翻訳 - 源氏物語・平安文学論文」を更新

 現在科研のサイトから情報を順次更新している「海外源氏情報」(科研HP)に関して、最新の更新情報をお知らせします。

 トップページの中央下部に「翻訳史&論文データベース」のセクションがあります。


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 その4つのカテゴリーの内、左下にある「翻訳 - 源氏物語・平安文学論文検索」の更新が本日一通り完了しました。

 現在手元にある「翻訳された平安文学についての論文」に関する情報は、これで一応ほとんどを登録し終えたことになります。今後は、新しい情報が集まりしだい、順次追加更新をします。

 この論文検索については、以下でその説明をしていますので、あらかじめご覧いただくと利用しやすいかと思います。併せて、「論文のダウンロードについて」の説明も、ここに記しています。

「「翻訳 – 源氏物語・平安文学論文検索」について」

 本日現在の登録論文数は〈384件〉です。
 現状は、以下をクリックして確認してみてください。

「翻訳 - 源氏物語・平安文学論文検索」

 「PDF」の項目に丸印(○)が付いているものは、機関リポジトリや CiNii のオープンアクセスなどの外部サイトから、論文本体が読めるものです。

 1点でも多くの論文が、ウェブを通して読める環境を作りたいと思います。
 各機関や組織等で公開されていない場合は、当該論文をPDFにしたものを発表機関や発行組織の了承を得た上で、可能な限り公開するお手伝いをしています。

 次の画像にある、〈383〉と〈384〉は、執筆者の了解と掲載誌及び発行機関の了承を得て、論文をPDFにしたものをダウンロード後に読んでいただけるようにしたものです。


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 この方式の公開については、あらかじめ以下の「パスワード請求フォーム」でパスワードを取得してからご利用ください。


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 執筆者および関係者からの、積極的な情報提供やご協力をお待ちしています。
 ホームページにある次の「情報提供のお願い」のメールフォームを利用していただくと迅速な対応ができます。


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2014年12月 2日 (火)

読書雑記(115)大胡田誠著『全盲の僕が弁護士になった理由』

 昨夜(平成26年12月1日午後9時より2時間)、TBS系列で放映された[月曜ゴールデン特別企画『全盲の僕が弁護士になった理由 〜実話に基づく 感動サスペンス!〜』]の原作となった本のことを記録として残しておきます。
 大胡田誠著『全盲の僕が弁護士になった理由 あきらめない心の鍛え方』(2012年3月、日経BP社刊)がそれです。帯には、次のように書かれています。


困難と闘う すべての人へ
「だから無理」より
「じゃあどうする」のほうが面白い!

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 昨夜のドラマのように、全盲(触常者)の弁護士のもとに持ち込まれた離婚話や、工場での殺人事件を解決したことが本書に書いてあるわけではありません。
 本書の内容が一覧できるように、目次をあげておきます。


はじめに
序章 ある受刑者からの手紙
    見えないから、見えてくるもの/ある受刑者からの手紙
    痛みに寄り添う/被害者に土下座/声にならない声
第1章 全盲弁護士の仕事術
    弁護士はつらいよ/最後の受け皿/いつもマイナスからのスタート
    アシスタントと二人三脚/IT機器を駆使する/耳で読む
    見えなくても、何とかなる/法廷で勝つために
    毎週ハーフマラソン/安心できる町医者
第2章 光を失って
    生い立ち/先天性緑内障/「肉を食べてはいけない」
    小学校は特等席/一番の理解者/特別扱いしないという「特別」
    7歳で富士山登頂/最後の景色/初めての絶望/故郷を去る決意
    毎日が合宿/人生を変えた一冊/門前払い/住む場所がない
    差し伸べる手/憧れの人との対面
第3章 司法試験
    出だしでつまづく/初挑戦で木端微塵に
    孤独な闘い/ロースクールへ/法務省の門戸を開く
    36時間30分/新司法試験始まる/限界の先にある自分
第4章 家族
    全盲のパートナー/一期一会/会話の多い夫婦
    「助けられ上手」になること/震災、そして出産/全盲夫婦の子育て
    人と人とは鏡映し/あげられないもの、あげられるもの
終章 見えない壁を打ち破る
    17人に1人は障がい者/悪意のない差別/一言で世界が色づく

 著者である大胡田氏ご本人は12歳で失明、3歳下の弟は11歳で失明ということで、非常に困難な家庭環境が推し量られます。しかし、両親の理解と温かい見守りの中で、著者である兄は弁護士に、弟は県立高校で英語の教員にと、能力を遺憾なく発揮しての生活をしておられます。

 全編を通して、自分のことや家族のことを、ありのまま率直に語っておられます。日常に始まり、素直な思いが綴られているので、身構えて読みそうなところが少ないのがいいと思いました。
 必死に、がむしゃらに生きて来られたはずなのに、それをあけすけに朗らかに語っておられるので、読む側の負担も軽減されます。
 この手の本にありがちな、悲壮感や同情を共有させられることはないので、好感のもてる文章となっています。それでいて、各所で感心し、感激もしました。

 静岡県の伊豆に生まれ、沼津に移ったとのことなので、井上靖を思い起こさせる生い立ちです。先般記した「読書雑記(112)『愛盲―小杉あさと静岡県の盲教育』」(2014年11月04日)にも思いが及びました。静岡県に親近感を抱くようにもなりました。

 本書を読みながら印を付した箇所を、以下にメモとして引用しておきます。

 著者は、人の心を的確に読み取ることに長けておられます。それは、目が見えないことから、聞こえる音声で人を判断しておられることに起因するものです。音声に対する指摘は、我が身に当て嵌めるとドキッとすることでした。確かに、私も声では正直に自分をさらけ出しているのでしょう。これは意外な指摘です。


 自分の感情を初対面の相手にストレートに出す人はほとんどいない。相手への気遣いや警戒心、恥じらいや後ろめたさを誰でも持っている。目が見える人は、無意識のうちにまず表情を作る。しかし、声となると正直なものだ。言葉を選ぶことはできても、息遣いや抑揚、間のとり方まで装うのは意外と難しい。(10頁)

 目が不自由な触常者が、最近では電子機器を駆使しておられる実態も、詳細に語られています。この点は、触常者がおかれている環境を理解するのに、大いに役立ちました。
 身近には、国立民族学博物館の広瀬浩二郎さんがおられます。確かに彼も、情報機器を駆使しておられます。これは、これからのお付き合いにおいて、知っておくべきことです。
 その意味でも、障害を持った方が、どのような方法でコミュニケーションをとっておられるのかは、見常者である我々は知る必要があります。そうでないと、余計なことに神経を使い、知らないために遠慮をしたり、誤解をしかねないのです。


 読み書きが難しい視覚障がいは、長年、「情報障がい」とも言われてきた。しかし、IT機器の進歩によって健常者との格差は大幅に縮んできている。(中略)
 最近では、点字の電子手帳が普及しつつある。「点字電子手帳」は筆箱ほどの大きさの機械で、中には大量の点字データを記憶するメモリーが入っている。値段は1台20万円と高性能パソコン並みだが、僕にとってはなくてはならない道具になっている。毎日のスケジュールや、依頼者との面談のメモなど、大事な情報は何でもこれに記録する。本体の上面には15文字ほどの点字を表示できるディスプレーがあって、小さな突起が忙しなく出たり入ったりして次々と点字を表示する。
 本体の上面にはディスプレーのほかにボタンがいくつかついていて、これを両手でタイプして点字データを入力する。USBでパソコンなどにつなげば、外部から点字データを取り込むこともできる。ネット上には、ボランティアが点字に翻訳(点訳)した小説などのデータを提供しているサイトがある。それをパソコンでダウンロードしてから点字電子手帳に取り込んで、通勤時間などに読むのが僕の毎日の楽しみの1つになっている。
 事務所には、紙に点字を打ち出す「点字プリンター」も置いてある。これをパソコンにつなぐと、ワープロソフトで作成したテキストなどを点字として打ち出してくれる。ただ、打ち出す際の音が昔のドット・インパクト・プリンターよりもさらに数段うるさいのが難点だ。
 スピーチなどでこうして打ち出した点字の原稿を手元に置いて指でなぞりながら読むと、正面を向いたまま、まるで原稿なしでしゃべっているように見える。(48~49頁)

 次の、大学の授業での体験は、今はどのような状況になっているのでしょうか。現在が知りたくなります。その意味からも、触常者が活用している電子機器に関する情報は、もっとまわりに語られてもいいと思いました。


 大学でも障がいを理由に、ある英語の授業の履修を断られたことがあった。その授業は、毎回英字新聞のコピーを配布して、それを教材にして講義をする形式だった。僕にはそのコピーが読めないから履修はできないというのだ。
 しかし、授業の前日までにコピーを渡してくれれば、スキャナーでパソコンに取り.込んで、音声で予習をしてから授業に臨むことができる。なぜ、話を聞きもせずに、初めから「できるはずがない」と決めつけてしまうのだろうか。(112~113頁)

 視覚に障害を持つ触常者の実態は、意外なことが多いものです。
 点字は、触常者のほぼ全体に普及していると思っていました。これは、認識を新たにさせられます。


 実は意外と知られていないのだが、全国に約30万人いる視覚障がい者のうち、点字を満足に読み書きできるのはおよそ1割にすぎない。大人になってから視力を失った中途視覚障がい者では、点字をまったく読めない人も多い。
 仮に読めたとしても、何歳から点字を覚え始めたかで、読める速さは全くと言っていいほど異なる。健常者も文字を読む速さは人それぞれだが、点字ではそれとは比べ物にならないほど大きな個人差が生じる。例えば、12歳で視力を失った僕よりも、生まれつき目が見えず点字で言葉を覚えた妻の亜矢子の方が、2倍も速く読める。(143頁)

 読み進んでいるうちに、著者が書かれている、「障害」でも「障碍」でもなく「障がい」と書く理由を、知りたくなりました。どこか他のところで、この用字について語っておられるのでしょうか。ご教示いただけると幸いです。

 本書は、日ごろはなかなか知ることのない、障害を持った方が素直に語られる、その心の中が伝わってくるものです。自分の意識を再認識する上でも、いい本との出会いとなりました。
 
 
 

2014年12月 1日 (月)

テレビドラマ『全盲の僕が弁護士になった理由』を観て

 今、私が一番関心を持って情報を集めているテーマがドラマになったので、心待ちにして観ました。
 ドラマ自体は、先ほどTBS系列の[月曜ゴールデン特別企画『全盲の僕が弁護士になった理由 〜実話に基づく 感動サスペンス!〜』]として放映されました。ご覧になった方も多いことでしょう。そして、ドラマに対する充実感を持って、いくつかのシーンを振り返っておられることでしょう。

 暗い話の展開を想像していた多くの方にとって、あまりにも明るくて拍子抜けがしたのではないでしょうか。私自身が、そうだったのです。

 弁護士の大河内健介役を演じた松坂桃李さんは、初めて見る俳優さんでした。その演技の巧さには感心しました。何よりも、視線がいいと思いました。演技を越えて迫真の身振り手振りでした。

 このドラマの宣伝文句には「大胡田誠弁護士の著書をベースとしたヒューマンミステリー」とあります。今、横に大胡田誠著『全盲の僕が弁護士になった理由』(2012年3月、日経BP社刊)があります。この原作のことは後日にします。

 さて、今日のドラマです。
 非常によく練られた台本であり、演出であり、演技でした。出演者も充実していました。

 全盲同士の夫婦が、訪れた弁護士事務所の所長のために協力して料理を作るシーンは、息の合った見応えのあるものでした。妻の奈津美役を演じた南沢奈央も、全盲の妻役を自然な身振りでこなしていました。

 随所に出てきた「なんとかなる」という主人公大河内のことばは、このドラマに通底する柱となっています。それにも増して、主人公の明るい笑顔がよかったと思います。

 日ごろは、目を覆いたくなるような番組が、テレビ各局に垂れ流しされています。
 予算がないことを理由にして、売れない芸人を並べて無駄話をさせるトーク番組、学校教育の現場で児童生徒に強制的に体育は押し付けても食育はしてこなかった日本を象徴する立ち食いのし放題で目を覆いたくなる食べ物番組、そして演出が不要でお手軽にカメラを構えれば一丁上がりの旅番組などなど。
 今のテレビは、無能な演出家の駄作で埋め尽くされています。そんな中で、このドラマは芯の通った、真剣に取り組んだ成果が結実した、見ごたえのある仕上がりでした。

 今後とも、こうした番組をテレビ関係者には作ってほしいと思います。
 やればできるんですから。その気になってやれば、「なんとかなる」のですから。
 このドラマにも何度も出てきたように、テレビ関係者も「諦めてはいけない」と思います。
 
 
 

NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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