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2014年12月 6日 (土)

盛会だった国際シンポ「男たちの性愛―春本と春画と―」

 今日の立川は快晴でした。冬の気配は、国文学研究資料館と国立国語研究所の間の木立にもうかがえます。


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 日だまりで散歩はできそうです。しかし、もうすっかり冷気が身に凍みます。

 国文学研究資料館では、昨年度より国際連携研究「日本文学のフォルム」いう国際シンポジウムを実施しています。本日の第2回のテーマは「男たちの性愛 ―春本と春画と―」です。


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 これは、これまでに国文学研究資料館が取り組んでこなかったものです。今日の今西祐一郎館長の挨拶でも、初代館長だった市古貞次先生は認めなかっただろうし、歴代の館長もこのテーマには難色を示したはずだ、とおっしゃっていました。時代と社会の状況が変わったのです。

 後半のシンポジウムにおいて、昨秋から今春にかけて、大英博物館で春画展を主宰されたロンドン大学のガーストル先生からは、「今日はおめでたい日だ!」とのコメントをいただきました。国文学研究資料館でこのようなシンポジウムが開催されたことは慶賀であり、お祝いしたい、との言葉をいただきました。

 それだけ、このテーマが時宜を得たものであり、充実した内容であった、ということです。
 このシンポジウムの代表を務める者として、好意的に評価されたことを喜んでいます。

 私自身のためにも、本日の4人の先生方の発表とパネルディスカッションでの意見交換に関するメモを、以下に残しておきます。

■ダニエル・ストリューブ先生(パリ・ディドロ大学)
  「西鶴晩年の好色物における「男」の姿と機能」

 西鶴の『色里三所世帯』の再検討を中心にして、男の性愛について語られました。その中で、女性の視点を通して描かれるようになったという指摘に、新しいものの見方の啓発を受けました。
 
■ジョシュア・モストウ先生(ブリティッシュ・コロンビア大学)
  「若衆 ―もう一つのジェンダー―」

 若衆遊びの場画をスクリーンに写しながら、客観的なテキストの分析をなさいました。眼前に写し出された春画が、説明を聞きながら見ていると、まったく卑猥な感じがなく、提示された4つのジエンダーがよく理解できました。
 
■中嶋隆先生(早稲田大学)
  「その後の「世之介」 ―好色本・春本のセクシュアリティと趣向―」

 セクシュアリティが笑いと結び付くことで非日常性が消えた、という趣旨がよく理解できました。浮世草子の春本化については、いろいろな問題があるようなので、今後のものの見方を教わりました。
 
■石上亜希先生(立命館大学)
  「春本・春画の読まれ方―男の読者、女の読者―」

 大英博物館で開催された春画展のコーディネーターでもあり、若さあふれる発表でした。近代から近世へと、春画に対する意識の変化が理解できました。春画の読者として女性がいたことが、昭和の初めまでの寄贈本によってわかるそうです。また、『女大楽宝開』の紹介は興味深いものでした。
 
 4人の発表を受けて、コメンテーターである染谷智幸先生(茨城キリスト教大学)と小林ふみ子先生(法政大学)の意見をいただきました。

 発表の間は静まりかえっていた会場も、意見交換になると場内に活気が蘇りました。スクリーンに映し出された春画に、各自がどう反応していいのか戸惑いながらの進行だったからかもしれません。
 私の記憶に残ったコメントは、次のような内容です。


※春画はアバンギャルドではなくて、保守的な世界が描かれている。

※文化人類学や近世社会の分野から、さまざまな切り口が可能なテーマである。

※風刺と好色だけでなくて、笑いとの関連でもこのテーマは広がりを持つ。


 
 武井協三先生は、今日の成果は笑いを取り上げたことだ、とおっしゃいました。

 来年度の第3回は、「日本文学はどう訳されたか」と題し、谷川恵一副館長にコーディネートしていただくことになっています。これも、すでに準備を始めていますので、お楽しみに。

 最後に、閉会の挨拶を手短かにしました。
 今回のために、日頃は読まない男色関係の本をたくさん読んだことと、『男色の日本史』(ゲイリー・P・リューブ、作品社、2014年9月)が一番印象に残っていることにも触れました。


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 そして、今日は女性からの視点で春画を見るおもしろさがわかった、ということも織り交ぜました。

 来年は、また趣向を凝らした国際シンポジウムにしたいと思います。

 本日のコーディネーターを務められた神作研一先生と、開催実務で奮闘された谷川ゆきさん、お疲れさまでした。

 このシンポジウムは、3回分をまとめて2015年度末に一書として刊行されます。これも、稔り豊かな成果となるように、鋭意編集を進めていますので、楽しみにお待ちください。
 
 
 

コメント

僻村でならさず、畿内でお願いします。

コメントをありがとうございます。
おっしゃるように、関西でやりたいですね。
対象が西鶴を中心とするものであり、上方との縁が深く、ご出席の先生方も関西と縁の深い方々でしたし……。
先般の大英博物館での春画展を日本でも、という動きもあるようです。しかし、人と場所とお金と手間の問題は中々難題のようです。
お引き受けくださる組織と資金のメド(スポンサー)について、情報をお持ちでしたらご教示いただけると助かります。

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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