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2014年12月20日 (土)

視覚障害者と共に古写本を読むためのポスター発表をする

 国立民族学博物館を会場として、総合研究大学院大学文化科学研究科の学術交流フォーラムが開催されました。

 会場となった万博公園では、太陽の塔が雨模様の中で背中を濡らしながら、一人寒そうに佇んでいました。


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 このフォーラムは、総研大の文化科学研究科の基盤機関である5つの研究組織(国立民族学博物館、国際日本文化研究センター、国立歴史民俗博物館、放送大学 教育支援センター、国文学研究資料館)が連携して、学生と教員の意見交換を目的として実施するものです。
 今回の担当機関は国立民族学博物館で、テーマは「文化をカガクする?」でした。


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 第1日目の内容は、口頭発表(2会場)とポスター発表(2グループ)、そしてパネルディスカッションです。

 私は、ポスター発表のAグループでプレゼンテーションをしました。

 このポスター発表は、学生15名、教員8名の合計23名が参加し、1枚のポスターを通して、各専攻の学生と教員がその場で意見交換をするものです。お互いが教え教えられという関係でやりとりができるので、自由に意見を交換できる特徴があります。

 私は、「視覚障害者と共に古写本『源氏物語』を読むための試み」と題するテーマを掲げて参加しました。他専攻の先生や学生さんから有益な多くのアドバイスをいただくことができました。
 みなさま、ありがとうございました。

 予稿集には、以下の内容を掲載していただきました。


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 ポスターには次の文章と写真を掲げました。さらには、ハーバード大学本「須磨」の巻頭部分を原寸大で立体コピーしたものをパネルに貼り付け、実際に浮き出た文字を触ってもらいながら意見交換をしました。


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 本ポスター発表は、総合研究大学院大学の他専攻及び異分野からのアドバイスを期待して参加したものである。
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・視覚障害者(触常者)と見常者とが、日本の古典文化の理解を共有することで、意思の疎通をはかる意義を再認識したい。

・温故知新の知的刺激を実感し実践する1つの方策として、古写本『源氏物語』に書かれた変体仮名の触読に挑戦するものである。

・ここでは、ハーバード大学美術館蔵『源氏物語 須磨巻』を例にして、目標実現に向けての試みを提示し、ご教示を乞うものである。

【「須磨」巻頭部の原寸大立体コピーを実際に触っていただく】

   ---------------- 本計画は次の3点に集約される -----------------

 1.古写本『源氏物語「須磨」巻』を変体仮名触読シートで読解
   (鎌倉中期に書写されたハーバード大学本の影印画像による)
 2.『変体仮名触読字典「須磨」編』の作成と活用法の構築
 3.『点字版古文学習参考書「須磨」編』の作成と学習法の確立

・縦書きが読めるようになれば、触常者の能動的な読字や読書の環境が拡大する。
・朗読素材も用意する。変体仮名の触読と古語の理解を補佐する手段として、併行して活用する。
・この実現は、国文学研究資料館が所蔵する約20万点もの古典籍のマイクロ・デジタル画像資料の、触読による新たな活用の道を開くことにもなる。


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 今回は、ポスターに貼り付けた立体コピーが効果的でした。実際にこの立体コピーを触る方が多かったので、今後もこうしたプレゼンでは実物を一緒に提示したいと思います。
 次の写真から、文字の浮き出し具合が確認していただけるでしょうか。
 実際に触ると、感触で文字を認識できます。ただし、中途失明の方ではなくて、生まれながらにして目の見えない方にとってどうかは、今後の試行錯誤の中で様子を見るしかありません。


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 今回いただいたご教示を、アシスタントとして同行した研究員の淺川槙子さんが、以下のようにまとめてくれました。
 これを大きな収穫として、今後はさらに本テーマを実現すべく、検討を重ねていきたいと思います。
 さらなるご教示を、よろしくお願いします。


(1)写本の文字を押すと音が出る。
 ただし、タッチパネルは凹凸がないので使えない。
(2)レーザー光で文字を追跡できるようにする。
(3)電子辞書の手書き入力のように、自分で書くことも取り入れてみる。
(4)写本を真似て文字を書くと音がでる仕組みも考えられる。
(5)書道教育と関連付けて実現する。
(6)PCを使う場合は、X軸とY軸で、文字が始まる位置を設定することができることも利用する。
(7)音が出るだけでなく、字母に合わせて発生する音を変える。
 1文字につき3段階の変化まで持たせてもいいか。
(8)視覚障害者は音に敏感であり、どこから音が来ているのかがわかる。
 そのことを生かして、文字を書きながら、その文字が表す音を聞けるようにする。
 ただ文字の概念がないので、書き順どおりに書くのは難しいかもしれない。
 また、覚えやすさを重視して、使う音は3種類の高さにする。
(9)まだ文字を読めない幼児などは、絵本の読み聞かせや、大人が「この字は、はるかちゃんの『は』だよ」などと言う発言から、音と字を関連づけていく。
 このことを今回の仮名習得に役立てられないか。
(10)その他の質問
・なぜこの写本を使おうとしたのか
 (回答:『源氏物語』とハーバード大学という知名度から注意を喚起しやる気を起こす)

・なぜ変体仮名を読ませることが目標か
 (回答:多くの見常者も読めない変体仮名が読める達成感を共有し、日本古来の伝統文化を点字以外のコミュニケーションツールで獲得し、写本や文献資料を再認識する)

・立体コピーの複写方法とコスト
 (回答:立体コピー機は普通のコピー機と同じ操作でできる。これは3Dプリンタと共に、今後の電子機器の普及により家電並で低価格へと変動する可能性がある)

(11)今後の課題
・まず、音に関しては高低(3段階)も含めて凡例を決める。
・音声による補助を取り入れた『変体仮名触読字典』を作成する。
・本計画を多くの人に知ってもらう機会をえるため、『総研大ジャーナル』に投稿してはどうか。

 
 
 

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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