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2014年12月21日 (日)

学術交流フォーラムの音楽ワークショップで受けた刺激

 太陽の塔は、1970年の万国博覧会以来、何度となく見てきました。
 昨日のような冬の雨の中に立つ姿は、悄然として地球を引き上げて行く怪獣の後ろ姿を見ているようで、どうも元気が出ません。

 昨日とは打って変わり、今日は朝日を浴びる太陽の塔を見ながら国立民族学博物館に入りました。


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 2日目は、学術交流フォーラムの学生企画委員が智慧を絞った、「探究型ワークショップ」「体験型ワークショップ」「神楽の公演」が組まれていました。

 私は、エントランスホールで行われた探求型のセッションに参加しました。


音・音楽ワークショップ
寄り添いの音・音楽
―伝える・祝う・送る―

 ここでは、2つの音楽が実演とともに紹介され、講師による説明を聞くことができました。
  


その1
●「伝える」音楽
 ひょうたん笛レクチャー・演奏
 [レクチャー及び演奏/伊藤悟(国立民族学博物館 外来研究員)]
 
レクチャー題目:「にじむ音、あざう音 〜ひょうたん笛と音文化」
 
概要:近年中国で親しまれている民族楽器に「ひょうたん笛」(葫蘆絲)がある。素朴な音色と愛らしい形が話題となり、少数民族の伝統文化の発展を象徴した楽器として 2000 年頃から流行している。そのルーツは、雲南省やビルマ、タイ北部に暮らす少数民族の未婚男性たちがかつて音で女性に恋心を伝えた楽器であった。
 このレクチャーでは、タイ族社会における音によるコミュニケーションの技法や楽器の変化について、実演を交えながら、演奏方法や音色、そして演奏の文脈から解説し、変わりゆく楽器や音楽とともにある音の感性について考えたい。

 非常に興味深い内容でした。音楽が男女の求愛行動の中に、今も生きていたのです。かつての歌垣もこれと同じ性格のものです。
 ひょうたん笛は、日本の雅楽で使う笙の音に通うもので、同時にいくつかの音が流れ続けるのは気持ちのいいものです。

 今日のレクチャーの中で、私は1つの言葉に注視しました。
 ひょうたん笛の説明の中で、「あざう音」という言葉があったからです。
 私は、「あざう」という言葉の意味がわかりませんでした。
 それは、スクリーンに次のように表示された時から、最後まで気になった言葉です。


・環境音と調和した音楽、音の表現形態
楽器の音は、周囲に「にじみ」、自然や生活の音と「あざう」(からみあい、くみあう)ことで、精神的、宗教的表現を実現した。

 手元の電子辞書で調べると、すぐに次の説明が iPhone の画面に表示されました。
 『今昔物語集』や『太平記』に例があるようです。


あざ・う
【▽糾ふ】〔あざふ〕[動ハ下二]
 組み合わせる。より合わせる。あざなう。
 「膝を地に着けて二の手を―・へて地に伏して」〈今昔・一・二九〉
        (『大辞泉』より)
 
あざう
【糾ふ・叉ふ・糺ふ】(動ハ下二)
 組み合わせる。より合わせる。交差させる。あざなう。
 「筆を抛(なげうつ)て手を-・へ/太平記 4」
        (『大辞林』より)

 早速、妻と娘にも「あざう」という言葉を知っているかとメールで聞きました。すると、2人とも知らないとのことです。
 今日の参加者のみなさんは、この「あざう」の意味を理解して話をきいておられたのでしょうか。
 自分の無知を晒すようです。しかし、初めて聞いた言葉であることは確かなので、ここに記しておきます。
 
 
その2
●「祝う」「送る」音楽
 ガムランレクチャー・演奏
 [レクチャー/仁科エミ(総合研究大学院大学 教授)
  演奏/チャンドラ・バスカラ]
 
レクチャー題目:「ガムランへの情報脳科学的アプローチ ─音楽・情報・脳・社会から音“しりょう”を考える」
 
概要:バリ島の祝祭・葬祭儀礼のなかで重要な役割を果たしている青銅の打楽器アンサンブル“ガムラン”。その演奏と舞踊は神々への最上の捧げものであるとともに、共同体の自己組織化を導き社会の葛藤制御に機能している。その響きを分析すると、人間の可聴域上限を遙かに上まわり複雑に変化する超高周波成分が豊富に含まれている。ガムラン音を呈示試料とする実験によって、複雑な超高周波成分が可聴音と共存すると間脳・中脳などの活性を高め、多様でポジティブな生理・心理・行動的効果(ハイパーソニック・エフェクト)をもたらすことを私たちは見出した。しかもそれは耳ではなく、体表面で感じる。ガムランの響きに対する多様なアプローチを紹介するとともに、その楽器体験を通じて、音という“しりょう”へのアプローチの可能性を考えてみたい。

 
 これも非常に興味深い話でした。
 超高周波成分というのは、ヘッドホンでは伝わらない音だそうです。それが可聴音と共存すると、間脳・中脳などの活性を高めるというのですから、これは聞き捨てならぬ内容です。

 さらには、この超高周波成分の音は、耳からではなくて身体の表面から感じ取っているものではないか、というくだりは、もう耳と目が引き寄せられていました。
 今、私は目の不自由な方々と一緒に古写本の変体仮名を読もうとしています。その時に、音の活用によってアシストできないか、と考えているところです。昨日も、私のポスター発表に対して、音によるサポートの教示を数多くいただいたのです。

 そんな折なので、この音の話は特に注意深く拝聴しました。
 このことは、また機会をあらためて独自に勉強してみたいと思います。
 今日も、私の問題意識を刺激するような、新しいヒントをいくつもいただくことができました。
 
 
 

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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