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2015年1月19日 (月)

『源氏物語』の翻字本文に関する凡例の改訂(その2)

 昨日の「A〈翻字本文〉に関して」という凡例文の検討では、翻字データを「変体仮名混合版」へ移行するにあたり、従来の文言の補訂を試みたものでした。赤字で示した箇所がその改訂部分となっています。

 それに続く『源氏物語別本集成 続』の凡例は、「B〈校訂本文〉に関して」です。
 これは、これから池田本と尾州家河内本の校訂本文を作成するプロジェクトが始動する時なので、その過程で見直しをしてご教示を乞いたいと思います。

 「C〈校異〉に関して」について、「変体仮名混合版」の作成に着手することに伴う改訂はありません。これまでの本文校合の結果が、写本に書写された文字の実態に則した、さらに詳細な本文校異が確認できるようになります。
 ただし、現今の『源氏物語』に関する翻字データのすべてを「変体仮名混合版」に移行するまでには、膨大な人手と時間が必要です。

 本文異同を校異という形で確認できるのは、本文を扱う上では一番楽しみなアウトプットの部分です。この結果が、『源氏物語』の諸本の位相を考える手だてを与え、本文に関する研究を飛躍的に進展させるものとなります。しかし、残念ながら、この段階に達するまでには、今しばらくお待ちいただくしかありません。

 「D 翻字・対校上の方針について」は、「変体仮名混合版」に移行するにあたって、翻字を進める上での大切な注意事項です。ただし、特にいま改訂するところはありません。
 ここでは、『源氏物語別本集成 続』に収録した凡例の当該項目を、確認の意味で引用しておきます。

 現在、翻字を進めてくださっている方々からの質問は、実はこの対校のためにデータを加工したことに関してのものが一番多いのです。
 このデータベースのために施した翻字上の処置を理解していただくと、翻字するペースが格段に上がることでしょう。
 お役にたてば幸いです。
 


 D 翻字・対校上の方針について

① 漢字・かなの区別をはじめ、かな遣い・あて字などは、すべて写本通りとした。もとの漢字が通行の文字表記とは異なる場合にも、写本通りに翻刻するように心掛けた。ただし、情報文具を活用した利用を考慮して、補助動詞として用いられた「玉」は「給」に統一するなど、適宜判断して最小限の手を入れた所がある。また、旧字体・異体字は、現行の漢字に改めている。「長恨哥」「萬」「泪」などは、通行の表記である「長恨歌」「万」「涙」として、検索などの便宜を優先した。

② 諸本間の異同は、底本である陽明文庫本の文節単位で対比することを原則とした。複合語については、便宜上二文節、三文節に区切った例もある。原則としては、底本に沿って文節を切っていく。しかし、それによって異文を単語の途中で切ってしまうことのないように配慮した。

③ 文節に切るにあたっては、諸本の異同の状態を考慮し、利用上の便宜を優先した場合がある。文脈と異文の状態を勘案しながら、本文を文節に切る作業においては柔軟に対応している。なお、『源氏物語別本集成』から『源氏物語別本集成 続』へと本文データを移行するのに伴い、文節切りの見直しによる変更がある。そのために、通番号としての文節番号が飛ぶことがある。従来の一文節を細かく切り直した場合は、ハイフォン以下の三桁の枝番号を利用している。

④ 底本の語句に対応する本文(文節箇所)が対校本文に存在しない時は「ナシ」とした。ただし、底本の文節に諸本の異同を対応させることによって、異文が付属語だけになった場合には、前の文節に含まれるものとして扱い、当該文節は「ナシ」とする。例えば、底本が「かひなく・おこにこそ」とある時、他本で「かひなうをたにこそ・ナシ」としたものなどである。また、底本の二文節以上が異本では一文節になっている場合は、異文を底本の一文節目に含め、二文節目以降は「ナシ」と表記するのを原則とした。例外として、利用上の便宜を考慮して、「み・給・しる」「み・もて・ゆくに」「みな・人々」などのように、複合語を分割した場合もある。

⑤ 底本とまったく異質な異文の対校にあたっては、その異同が生じた最初の文節以降を、一括して直前の文節につなげることを原則とした。底本が「給ふを・ひたり・みきに・くるしう・おもへと・かの」とある時の、他本で「給にかほうちあかめてゐたり・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ・ナシ」とある例などの場合である。

⑥ 異本で補入されている形の接頭語や副詞などは、その語が付属することになる文節の最初に置く。底本が「みこも・あはれなる」で、他本が「みこも・いとあはれなる」とある場合の「いと」の扱いなどである。また、異文が複合語となっている場合は、その語の属する文節に含めて扱う。

⑦ 踊り字の記号として、仮名には「ゝ」、漢字には「々」、文字列には「/\」の三種を、それぞれの用途によって使い分けた。「ことゝ」「人々」「こゝろ/\」などである。語頭に踊り字がある場合は、そのすべてに対してカッコを付して読みを開いた(「ゝはには(きはには)」)。語中語尾の踊り字は、開かずにそのままにする。漢字に付いた踊り字で、それがひらがな一語を送るために使用されているものがある。「事ゝ」は、「事と」と読ませようとするものである。「事々」として「ことごと」と読み誤ることのないようにした。

⑧ 「も」と「ん」については、当然「も」と読むべき「ん」でも、表記された字形を優先して書かれているままの文字で対校した。

⑨ 写本の保存状態が悪くて文字が欠損・虫食いとなっていたり、写真版の解像度が低いために肉眼では読み取れないものであっても、文字の一部と文章の流れから類推して読める文字には、〈判読〉と明示して読み取ったものがある。

⑩ 文字の欠損や虫食いにより、判読不明の文字や読みに疑問のある文字は「△」とした。


 
 
 

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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