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2015年3月 7日 (土)

鎌倉期の古写本『源氏物語』の正確な翻字をめざして

 お昼前に、仲御徒町でMさんと待ち合わせをし、喫茶店で『源氏物語』の翻字について打ち合わせをしました。
 Mさんは、日比谷図書文化館で翻字の講座を受講なさった方で、今は歴博蔵中山本「行幸」を読んでくださっています。
 一通り最初の翻字を終えられたので、データベースとして仕上げるための記号の使い方の確認や、今年から方針を一新した「変体仮名混合版」にグレードアップするためのコツをご説明しました。

 初心者ですとおっしゃいます。しかし、すでに翻字はしっかりとできているので、次のステップであるデータ入力もお願いしました。河内本のテキストデータをお渡しし、それを中山本の翻字データに作り替えていくものです。

 みなさん、最初は白紙から翻字をするものだと思っておられます。しかし、実際には、よく似たデータに手を入れて改変しながら完成させるのです。一種のマジックのような操作で、新しい翻字データができあがります。必要最低限の修正で、河内本が中山本に変身するのです。

 ただし今年からは、これまでのような原本に戻れない簡略版の翻字をするのではありません。明治33年に一字一音に統制された平仮名で誤魔化した翻字ではなくて、現行の平仮名にない文字は、その変体仮名の字母で表記するものです。そのために、手間はこれまでの数倍かかります。しかし、自信を持って次の世代に引き渡せるデータが出来上がります。

 わからないことや不明な点は、とにかく〈ママ〉としておくこと。そして、後ろを振り返らずに、ひたすら前へ前へと読み進め、入力を続けていってください、とアドバイスをしました。
 翻字データを作成する時は、前だけを見て、迷ったら〈ママ〉として、また前へ、というのが一番です。次の担当者が補ってくれるので、そこは信頼関係です。自分で勝手に解決しないことです。

 翻字のお手伝いをしていただき、そのデータが次の世代に引き継がれていくことは、素晴らしいことだと思います。小さなことでも、駅伝のように襷を手渡してつないでいくことで、膨大な『源氏物語』の本文のデータベースが次第に精度を高めて構築されていくのです。
 ここで私にできることは、写本を読んでくださった方のお名前や、データを入力してくださった方のお名前をデータに付載し、明記することです。非営利活動の一環なので薄謝しかお渡しできません。それだけに、お名前だけは次の世代に語り継ぐ責務がある、と思っています。

 どうひっくりかえっても、鎌倉時代に書写された『源氏物語』の翻字データベースは、私が生きている間には完成しません。しかし、一文字ずつ、一巻ずつでも翻字を進めていけば、その折々に活用できるデータベースとして提供でき、お役にたつことでしょう。とにかく、膨大な写本が手付かずのままに放置されているのが現状です。今あるのは、江戸時代に手が加えられた大島本に関する情報だけです。その大島本ですら、写本を正確に翻字した「変体仮名混合版」はまだないのです。これから、時間をかけて作成する予定です。

 その意味では、名前が知られている作品の割には、『源氏物語』の本文研究は大幅に遅れています。80年も停滞しているのですから。

 気の長い話です。私が生きている内に、鎌倉時代に書写された『源氏物語』だけでも、何セットかデータベース化したいものです。鎌倉時代の古写本だけで30年はかかる、と踏んでいるので、その道筋だけでもつけて、次の世代にバトンタッチしたいと思っています。

 その趣旨を理解してくださり、楽しみながら古写本『源氏物語』を読んでいただける方が数人でもいらっしゃることは、本当にありがたいことです。

 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉という組織を立ち上げ、そこでデータの作成からデータベース化、そして次世代への継承を果たすという趣旨の活動は、少しずつではあっても着実に進展しています。

 この活動を通して、一人でも多くの方の理解と協力が得られ、一文字でも『源氏物語』の写本に写し取られている本文がデータベース化されるよう、気長にNPO活動を続けていきたいと思っています。
 
 
 

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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