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2015年6月 4日 (木)

聞香の体験会で裏を読みすぎたこと

 今日は、総合研究大学院大学文化科学研究科日本文学研究専攻で博士論文を執筆中の武居さんが、国文学研究資料館の大学院生のための部屋で、聞香の体験会を開催してくださいました。
 大学院生として国文研に来ておられますが、武居さんはお香とお茶の先生です。

 これまでにも、武居さんとお香のことは、以下の記事で取り上げています。

「充実していた総研大学院生の研究発表会」(2012年11月29日)

「同志社大学でお香談義」(2013年05月01日)

「茶道資料館で香道具を見たあと筒井先生にお目にかかる」(2013年05月02日)

「京洛逍遥(316)京都における香道関係の調査に同行」(2014年04月25日)

 今日の参加者は、日本人4名、中国人留学生7名の計11名です。
 日本人というのは、大学院の専攻長や主任指導教授に副主任という、武居さんにとってはプレッシャーのかかる存在の教員たちです。

 まずは、ウエルカムの意味で「夏木立」というお香で部屋に迎えていただきました。
 そして我々お香に馴染みのない者のために、「文学と香道」というわかりやすい内容のレクチャーから始まりました。


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 一通りお香に関する勉強をした後、武井さんが香元となり、組香である玉川香をやりました。
 これは、武居さんの学位論文の中心となる『香道蘭之園』(菊岡沾凉、1737年)の巻7にも記されているものです。武居さんは現在、この『香道蘭之園』と共に大枝流芳による伝書群とも格闘中です。

 香炉の準備から始まる所作を、間近に見ることができたのはいい勉強となりました。
 なお、今日は立礼席で、テーブルのスペースに限りがあったため、作法通りの位置に道具を置けないなど、臨機応変な対処がなされたことを申し添えておきます。以下お読みいただくにあたって、ご理解のほどをお願いいたします。


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 試みの後、3炷を聞きました。

 本番である出香からの3炷を、私は次のように聞きました。
 これも厳密には正確ではありませんでしたが、今は出香された順番が問題なので、それはおいておきましょう。

  1 辛い 2 苦い 3 甘い

 ここで、解答用紙である名乗紙に答えを「一 二 三 むつ千鳥」と書こうとして、はたと思い留まりました。それが、あまりにも単純な数字列だったからです。

 この場に集まっているメンバーはみなさん初心者です。ほとんどが初めての体験です。その意味から言えば、分かり易い「一 二 三」という答えになる出香は、いわば一番無難なものです。
 しかし、と思い返したのです。

 武居さんの横に並んでいるのは、初心者だといっても、ここでは指導教授を始めとして武居さんにとってはそれなりの立場と重みのある先生方です。そうであれば、あまりにも易しい解答となっては、かえって先生方を軽く見たように思われないかと、気づかわれるはずです。

 とすると、あまりにも見え透いた単純な解答ではなくて、香元としては少しひねることで、それなりの敬意を表した対応を考えておられるのではないか、とも思われたのです。

 特に、一番目と二番目の香は、後で聞くと「きゃら」と「らこく」という、似た傾向の香りがするものでした。
 そこで、この似た香で混乱させて、後で間違えた先生方への説明をしやすいように仕組んでおられるのではないか、と私は読みました。
 私が名乗紙に書いた答えは「二 一 三 近江萩」です。「一」と「二」をあえて入れ替えたのです。

 正解は、「一 二 三 むつ千鳥」でした。

 後で武居さんに伺うと、混ぜ合わせることで、香元も答えが何かはわからない状態で進んでいくものだ、とのことでした。
 香元が香包みの用意はなさいます。しかし、焚く直前にシャッフルするため、香元であってもどの香がどの順に出るかは、いついかなる場合もわからないそうです。
 つまり、順番を変えるといったような作為は絶対にできないため、私が勝手に推測したことはまったく無意味なことだったのです。たまたま「一 二 三」という解答になった、というだけのことだったのです。

 まったく余計な先読みをしすぎていたのです。もっと素直に、自分が感じたままに名乗紙に「一 二 三」という答えを書くべきでした。浅知恵で裏を読もうとするな、ということなのでしょう。

 その意味でも、今日の聞香はいい勉強になりました。

 今日の「香之記」は、一点を取った中でも上座におられたひろしさんに贈られました。


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 その後の休憩時間には、両口屋是清の「二人静」と涼しい羊羹がお茶菓子として出されました。


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 和三盆糖を使用した「二人静」だけをいただき、その後の質疑討論会は早退して次の予定が組まれていた千代田図書館へ急ぎました。

 以下、その後の九段下の千代田図書館と、日比谷の日比谷図書文化館でのことは、長くなりますので明日にします。
 
 
 

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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