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2015年7月12日 (日)

京都でハーバード本「蜻蛉」を読む(第21回)

 共立女子大学で収穫の多い触読の確認をした後は、タクシーを飛ばして東京駅へ急ぎました。
 翌11日(土)に、京都のワックジャパンで『源氏物語』を読む会があるためです。
 仕事帰りの妻とは新幹線のホームで待ち合わせ、車中で晩ご飯となりました。

 京都駅に降り立つと、祇園祭の宣伝がそこここにあります。
 山鉾が立つ場所が、ウインドーケースの中の地図上に示されています。
 今年も観光客で賑わうことでしょう。


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 別のウインドウには、各町内の手ぬぐいが展示されていました。
 今年は、どこの山鉾の粽と手ぬぐいをいただくか、まだ決めていません。
 もし可能であれば、昨年から再興された大船鉾を狙っています。昨年は、行った時にはあまりの人気で売り切れだったからです。


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 JR京都駅の在来線の改札口には、各山鉾の提灯が揚がっていました。


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 京の街は、7月17日の前祭山鉾巡行に向けて、しだいに盛り上がって行きます。

 昨日(土)は、蒸し暑い曇天でした。
 東京よりも風が生暖かくて、肌に纏い付くような空気に包まれています。
 賀茂川沿いにワックジャパンを目指して、自転車で下りました。
 いつものように、鷺は相変わらずのポーズで、この温い風に身を任せています。


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 ワックジャパンでは、ハーバード本「蜻蛉」巻を読み続けています。
 第21回目となる11日は、東京の日比谷図書文化館の講座に参加なさっている方が、暑い中をお出でくださいました。
 また、この日から、同志社大学の2回生の若者も参加してくれたこともあり、賑やかなメンバーで進みました。

 次の写真の左上は、東京のお客様からのお土産「彩果の宝石(日本橋オリジナル)」です。
 いつものように、娘からの差し入は、祇園祭の和菓子でした。

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 上右は北尾の「祇園祭」、左下が二條若狭屋の「麩焼き煎餅・京の祇園祭」、右下が金谷正廣の「香魚」です。「香魚」は、鮎を表現した和菓子で、みなさん一番の関心が集まった逸品となりました。

 さて、勉強会ではまず私が、前日に共立女子大学で触読できる学生さんと出会えた報告をしました。その内容は、昨日の本ブログに記したとおりのお話です。

「古写本『源氏物語』の触読に関する【朗報】(共立女子大学の事例)」(2015年07月11日)

 これまでにも、折々にこの京都の輪読会でも触読の話をしていたので、みなさんも興味深く聴いてくださったようです。

 「蜻蛉」巻については、前回詳しく確認できなかった「侍従などに会ひて〜」の箇所にある他本の61文字もの異文について考えました。
 このことは、前回の記録として書いたブログの記事「京都でハーバード本「蜻蛉」と『十帖源氏』を読む(第20回)」(2015年06月21日)を、さらに詳しく説明しながら確認しました。

 問題の異文を持つ写本には、『源氏物語別本集成』の文節番号「520320」から「520684」までが欠文となっているのです。350文節もの長文なので、内容に大きく関わります。

 この欠文箇所を『国文学解釈と鑑賞別冊 源氏物語の鑑賞と基礎知識 No.28 蜻蛉』(伊藤鉄也編、至文堂、2003年)の小見出しで示すと、次のようになります。


「匂宮、訃報を聞き、時方を宇治へ遣わす」
  ※以下、当該写本が欠く内容
「時方、宇治に到着。侍従に会う」
「時方、浮舟急死と聞くも、なお不審」
「侍従、時方に真相をほのめかす」
  ※以下、当該写本が諸本と同じ内容となる
「母君、宇治に到着」

 この欠文は、匂宮の命を受けて時方が宇治に行く下りに該当する部分なのです。
 長文の欠文がありながらも、この時方の宇治行きの部分がなくても、文章はうまくつながっています。
 ここは、『源氏物語』の形成過程が窺われる例になるのではないか、という問題提起に、この日は留めておきました。

 こうした例は、「鈴虫」巻で500文字以上の異文を持つ国冬本の例が思い起こされます。二千円札の裏面には、国宝『源氏物語絵巻』の「鈴虫」巻の本文「十五夜の〜」が引かれています。しかし、その「十五夜の〜」の直前で、国冬本は長大な異文を伝えているのです。
 このことは、『源氏物語の異本を読む—「鈴虫」の場合—』(伊藤鉄也著、臨川書店、240頁、2001年)で詳しく述べたことなので、今は省略します。

 平安時代に物語作者によって最初に書かれた本文が、推敲の過程で削除され、物語がさらにそこからあらためて語り続けられる、というパターンを考えてみると、物語が生成して発展する姿がうかがえて興味深い異文のありようとなるのです。

 そうした可能性がある場所である、ということを確認してから、先に進みました。

 ナゾリの部分がいくつか出てきました。それ以外は、特に難しい変体仮名は出て来ませんでした。

 前回で『十帖源氏』は「明石」を終えたことから一時休止となったので、この日は「蜻蛉」巻の勉強で終わりです。

 お客様と新人が参加されていたこともあり、地下鉄今出川駅真上のワールドコーヒー店で、しばらく自由気儘な歓談となりました。

 次は、予定していた8月8日(土)は休会とし、第22回は9月12日(土)の午後1時から3時までとなりました。

 こうした活動に興味と関心がおありの方は、事前に連絡をいただければ資料を用意してお待ちしています。本ブログのコメント欄を利用して、気軽にお知らせください。
 
 
 

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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