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2015年8月26日 (水)

銀座探訪(31)書道展で左から右への横書きを見る

 今夏も、「慶山會書道展」(会場:東京銀座画廊・美術館 銀座貿易ビル8階)に行ってきました。


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 学生時代に書道を教わっていた吉田佳石先生が代表として、長年にわたり事務局を引き受けておられる息の長い会の展覧会です。

 私は相変わらずの、自他共に認める悪筆にもかかわらず、書作品を見るのは好きです。
 特に吉田先生の文字は、その迫力にいつも圧倒されています。

 昨年のことは、「銀座探訪(28)書道展へ行ってから帰洛の途に」(2014年08月20日)に記しました。
 もろもろの背景は、その記事に譲ります。

 今回の吉田先生の作品は、「皇甫冉詩(山館長寂寂〜)」「禅語(花開無根〜)」「石川啄木歌(アカシヤの〜)」の3点でした。
 このうち、「皇甫冉詩」の作品で「寂〻」と書かれている箇所の印刷物での釈文が、「寂寂」となっていました。


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 このことについて先生に伺ったところ、原典のことや印刷の都合もあり、一般的にこのようにしている、とのことでした。そういえば、他の方の作品も、「深〻」が釈文では「深深」となっています。
 書の世界には素人の身で思うことなので、読み流してください。作品と同じように釈文の表記も「寂〻」としていただいた方が、落ち着いて見られます。
 『源氏物語』の古写本を読んで「変体仮名翻字版」を作成しているところなので、ついこのように些細なことが気になってしまうのです。

 私の目を引きつけた大作が2点ありました。

 1つは、最初の部屋にあった、横3.8m、高さ1.7mの6曲屏風仕立ての作品です。青い和紙に鶴が飛ぶ様が印刷されたその上に、堂々と「自然は 静寂~」と書いてあったのです。
 書家の関良法氏と写真家の佐和賢爾氏とのコラボレーションです。
 単彩の墨とあざやかなカラーと飛ぶ鶴が、うまくまとまっていると思いました。

 写真を取り入れた作品は、近年の流行のようです。

 また、もう一つの部屋には、写真に縁取られて表装された作品が、大きな額装として掲げられていました。横3.6m、縦1m弱なので、見る者に迫ってきます。しかも、ここには「慎之莫怠」という倭姫命の言葉が、左から右へと横書きで大書してあります。

 額などで、漢字の文字を左から右へと横書きしたものを、私は見たことがありませんでした。
 横書きは右から左へだと思い込んでいたのです。

 会場に入ってすぐの時に、吉田先生から、この大作の作者である臼井南風氏を紹介されました。
 『源氏物語』の「須磨」巻の巻頭部分の立体コピーを見てもらい、こうした写本の触読に興味を持たれる方がいらっしゃったらご紹介を、という話はしました。しかし、臼井氏の作品を見たのがその後だったので、この左から書くことについて、ついご本人に聞きそびれてしまいました。

 先生に伺うと、これも最近の傾向で、世の中が何かと横書きになったことに合わせて、書道でも横一文字に書く際に、左から右へと書いたものを時々目にするようになった、とのことでした。

 私にとってまったく知らないことだったので、いろいろな分野での社会を反映した変化を知るいい機会となりました。

 この慶山會の書道展は、男性がよく出展しておられるように思っています。
 今回も、そのように感じたので、そのことを先生に尋ねると、出品者16名の内で男性は7名だったので、確かにそうだと納得してくださいました。

 書道の世界もお茶と同じように、女性が8割から9割という状況にあるようです。
 そのような中で、この慶山會は、先師続木湖山先生の影響なのか、男性陣が元気に活躍しておられるようです。
 吉田先生の書の力強さも、そうした流れを継承しておられることと関係するかもしれません。
 
 
 

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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