« 読書雑記(145)船戸与一『風の払暁 満州国演義 1』 | メイン | インド料理屋さんでインドに関する情報収集 »

2015年11月18日 (水)

読書雑記(146)山本兼一『白鷹伝 戦国秘録』

 『白鷹伝 戦国秘録』は、山本兼一の長編小説におけるデビュー作品です。


151022_hakuyouden


 浅井家の鷹匠だった小林家次は、小谷落城と共に天下一の鷹匠として、長政、信長、秀吉に目をかけられます。その後、家康にも。

 その家次が白鷹「からくつわ」を何とか捕まえました。
 鷹狩りの様子は、図解入りでよくわかります。

 鷹の訓練について、詳細に語られます。その合間合間に、鷹好きの信長や秀吉の動向がオムニバス形式で展開します。

 とにかく、しっかりとした筆致で、丁寧に描かれていくために、知らなかったことが手に取るようにわかってきます。わかった気にさせられます。

 家次は、信長から天下一の鷹師として家鷹という名前をもらいます。
 その直後の、お市の方との邂逅の場面がみごとです。

 信長が東大寺正倉院にある勅封の香木「蘭奢待」を切り取るくだりは、実に生き生きと描かれています。茶人山本兼一の面目躍如たるところです。

 満月の下、相国寺での韃靼人メルゲンの相撲、回想、襲撃の場面、利休が助けて狩野永徳の絵のある大徳寺で養生させられます。作者の筆が生きています。

 家鷹は、師である禰津松鷗軒から何度も諭された「水になったつもりで堪忍して生きよ。」という言葉を心にしまっていました。我慢を信条にしているのです。

 本作で女性は、お市の方にスポットライトが数回当たるだけです。鷹匠の生き様が丹念に、克明に語られています。鷹に魅せられた男の、職人としての一途な姿が語られています。
 信長、秀吉、家康は、あくまでも時間の流れの背景にしか過ぎません。【5】
 
 
書誌:単行本『白鷹伝 戦国秘録』(平成14年4月、祥伝社)
   文庫本『白鷹伝 戦国秘録』(平成19年4月、祥伝社文庫)
 
 
 

コメント

コメントを投稿

コメントは記事の投稿者が承認するまで表示されません。

NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

Powered by Six Apart
Member since 07/2008