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2015年12月 5日 (土)

宇治の街歩きと〈運読〉のワークショップ開催

 京都の宇治を舞台にして、「4しょく会 秋のイベント 〈運読〉で楽しむ『源氏物語』〜視覚障害者が古典文学を味わう三つの方法〜」が開催されました。
 主催は、視覚障害者文化を育てる会(4しょく会)で、宇治市源氏物語ミュージアムと、宇治観光ボランティアガイドクラブの協力を得ての大きな行事です。参加者は、北は福島県、西は福岡県に跨がって50人以上となり、当初の予定を大きく上回っての盛会でした。

 私は、宇治にゆかりの深い『源氏物語』をテーマにした内容で参加してもらえないか、という国立民族学博物館の広瀬浩二郎さんの依頼を受けて、講演とワークショップを担当しました。

 広瀬さんが配布なさったお誘いの文章から、その一部を引きます。


 目で『源氏物語』を読んできた見常者に対し、視覚障害者は「聴読」(耳で読む=録音図書)と「触読」(指で読む=点字図書)という方法で、源氏の世界にアプローチしてきました。
(中略)
 聴読と触読は視覚障害者にとって伝統的な読書法だと定義できますが、じつはその背後には見常者にも共通する「行間を読む」文化があることは重要です。今回の4しょく会イベントでは、視覚障害者発の第三の読書法として「運読」(体で読む=立体コピー)を提案します。
(中略)
 物語を書いた作者、それを筆写した老若男女の思いや息遣いを実感するためには、写本そのものを立体コピーし、指で文字をなぞる身体運動が必要です。墨で書かれた線を指先で辿る行為は、写本作りの追体験ともいえます。千年以上もの間、先人たちの手から手へと伝えられてきた『源氏物語』。その運筆(筆の使い方)の妙味を体感するのが運読なのです。
(中略)
 『源氏物語』の情景を想像しつつ、写本の立体コピーをみんなで解読してみましょう。運読をより効果的なものにするために、今回は実際に『源氏物語』の舞台となった宇治に足を運ぶ予定です。
(中略)
 聴読・触読に加え、運読というユニークな鑑賞法を獲得すれば、視覚障害者にとって古典文学は身近で豊かなものになるでしょう。

 〈運読〉というのは、広瀬さんの造語です。〈聴読〉〈触読〉〈運読〉という3つの読書方法を提示して、多くの方々の注意を惹き付けて、宇治の街歩きを織り込んでの開催です。

 まず、お昼にJR宇治駅の改札口で集合し、4班に分かれて宇治市内の街歩きを楽しみにました。
 駅前では、道路に埋め込まれていた標識の絵柄を確認しました。十二単を着たお姫さまを図案化したものです。


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 宇治橋の袂に座す紫式部像の前では、その姿を手で確認なさっている方がいらっしゃいました。


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 さらに歩いて、源氏物語ミュージアムを見学(聴学)しました。
 入口のいろは紅葉のみごとさは、言葉で説明するのが大変です。


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 ミュージアムの中では、お香体験がみなさん一番印象的だったようです。

 世界遺産の宇治上神社周辺の散策も、紅葉の中を楽しく回りました。


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 平安時代後期の本殿は国宝です。その扁額に「正一位離宮太神」と書かれていることに注意が向きました。「太神」についてボランティアガイドの方と神職の方に尋ねると、「太神」はなぜ「太」の字になっているのかはわからないとのことでした。


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 この扁額は、長く倉庫に眠っていてぼろぼろだったものを、補修をして今年の2月から元あったここに掲げているのだそうです。
 「天照大神」が太陽神であることから「天照太神」と書くこともあるので、それと関連する表記なのでしょうか。どなたか、ご存知の方がいらっしゃいましたら教えてください。

 宇治上神社から宇治神社にもお参りし、知恵の輪も潜りました。


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 宇治川では、鵜と鷺が仲良く日向ぼっこです。


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 平等院は、外から垣間見ただけです。


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 本日の講演とワークショップは、宇治市観光センターが会場です。


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 ここでの内容は、「源氏写本研究の魅力と可能性」と題するもので、用意した『源氏物語』の説明を記したプリント4頁分と、立体コピーと科研の宣伝用リーフレットを配布してお話をしました。
 今日配布した資料は、私の科研のホームページである「古写本『源氏物語』の触読研究」の中の「イベント情報/配布資料・源氏写本研究の魅力と可能性」に、その全文を公開しています。参照いただけると、宇治の地を話題にして〈運読〉の実際をみなさんとやった内容がわかるかと思います。

 今日は、「【心】うかりけるところ可な お尓なとやすむらん」という箇所を立体コピーして配布しました。
 また、その前後を、朗読したものも iPhone を使って流しました。

 みなさん、思いがけない長駆の散策でお疲れのところを、熱心に聞いてくださいました。

 その後半で、名古屋工業大学大学院生の森川恵一さんが開発した、タッチパネルによる古写本触読システムの実演をしました。


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 本邦初の公開実験ということもあり、みなさん興味深くハーバード大学本「蜻蛉」の一節を指でダブルタップして、音声による説明に耳を傾けておられました。

 例えば、「心うかりける」の「心」をダブルタップすると、「心という漢字です」という音声が流れます。次に、もう一度「心」をダブルタップすると、「読み飛ばしましょう!!」という声が聞こえるようになっています。
 私は、漢字は無視して、ひらがな(変体仮名)だけを読むシステムを構築しているところです。
 読むことが困難な漢字は、今はパスすることにしています。

 次に、「うかりける」の「う」をダブルタップすると、「うかりける の う です。うかりける は、憂し の連体形です。憂し は 物事が自分の思うようにならず情けない 嫌だ という意味です。」という説明が流れます。

 今日の初公開で、いろいろと問題点も見えてきました。
 今後のさらなる改良において、おおいに意義深い試行となりました。

 今日は好天にも恵まれ、楽しく宇治を散策できました。
 参加者のみなさま、お疲れさまでした。
 関係者のみなさまも、お疲れさまでした。
 また来年、楽しいイベントでお目にかかりましょう。

 なお、『百人一首』の〈運読〉については、福島県から参加の渡邊寛子さんにいろいろと触っていただき、有益なアドバイスをいただきました。これも、今後とも試行錯誤をする中で、変体仮名の学習システムの中に組み込んでいくつもりです。

 懇親会も多くの参加を得て、いい出会いがたくさんありました。
 今後の楽しい企画も、すでに始動しました。
 みなさん、ありがとうございました。
 
 
 

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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