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2015年12月 2日 (水)

視覚障害をテーマとする3本の記事の紹介

 本年10月24日(土)に京都で開催された、第4回日本盲教育史研究会については、本ブログ「日本盲教育史研究会第4回研究会に関する報告」(2015年10月24日)に記した通りです。

 その研究会全体の詳細な報告が公開されたので、以下に2つを紹介します。

 『月刊 視覚障害─その研究と情報─』(障害者団体定期刊行物協会、社会福祉法人 視覚障害者支援総合センター)という雑誌は、この分野の情報を幅広くよく取り上げています。記者である星野敏康氏は、さまざまな情報を丹念な取材によって的確にまとめておられます。
 今号12月号(No.331、2015 December)では、過日の研究会が要領よく、わかりやすい記事として掲載されています。


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 小見出しの「学校令と源氏物語と海外留学」の項に記されている、私の発表に関する箇所だけを引用します。全体については、同誌をご覧ください。


 つづく国文学研究資料館教授の伊藤鉄也氏は、昨年10月の第3回研究会で紹介されて以来、盲史研会員とも協力しつつ「『源氏物語』を触って読む」研究を続けている。約700年前の鎌倉時代に書写された「須磨」の巻(ハーバード大学美術館蔵)を資料に、毛筆で書かれた変体仮名を立体コピーして触読しようという実証実験だ。日本学術振興会の科学研究費助成事業「視覚障害者と共に古写本の仮名文字を読み日本古典文化を共有するための挑戦的調査研究」として採択されている。
 当日配布されたのは写本の影印を1.5倍に拡大し、立体コピーしたもの。続け字や墨継ぎによる文字の濃淡などが再現され、視覚障害者にも「日本の伝統的な筆による書写の文化が体感できる」ようになっている。この実験に参加している福島盲学校国語科教諭の渡邊寛子氏と共立女子大学の尾崎栞氏も紹介され、ふたりは既に変体仮名の触読を始めているとのことだったし、さらに協力者も募集された。画数の多い漢字は難しいが、仮名を読むだけでもストーリーは追える。なにより変体仮名を読めない、知らないという点で、多くの晴眼者・視覚障害者が同じ条件で古典文化に触れられるのがこの研究の魅力だ。発表を待ちきれずに資料を触り出す人がいたのも当然だろう。今後は書写実践や音声支援システム等の導入を目指すだけでなく、変体仮名の触読に必須ともいうべき『変体仮名触読字典』、オンライン版『触読研究ジャーナル』の発行も予定されている。「700年前の写本に挑戦する」という意欲的なこの研究の進展や関連するイベント情報などは「古写本『源氏物語』の触読研究」(http://genjiito.sakura.ne.jp/touchread/)でも随時紹介されている。(3~4頁)

 
 また、日本盲教育史研究会から、「日本盲教育史研究会事務局通信№25 2015年11月30日」が会員に配信されました。そこで、日本盲教育史研究会副会長である大橋由昌氏の大会報告があります。
 その中に、私の発表に関する記述がありますので、当該箇所を引きます。


 伊藤氏の報告は、先駆的研究テーマであり、興味深く拝聴しました。豊かなかな文字文化であった平安文学作品を視覚障害者が理解するためには、同じ音を表すかな文字も数種類あるので、より深く鑑賞できる可能性が広がります。ただ現実的な教育現場での活用においては、日本点字考案以前における墨字の読み書き指導の限界性が現場の共通認識であるのですから、小中学部の漢字の構成を学ぶ導入部に使えるのではないかと直感したほかには、文字を触読してみようとする試みは、中途視覚障害者などで、今後趣味の世界などで楽しむ人も出るだろうと思いました。

 共に、私が発表した内容とその意図を的確に捉えた要約であり、すっきりとまとめてくださっています。
 ありがとうございました。
 
 3つ目は、『ノーマライゼーション 障害者の福祉 11月号』(公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会、平成27年11月)に掲載された関場理華氏(展示付き百人一首~百星の会 事務局長)の「かるたを通したコミュニケーション」と題する活動報告です。
 関場氏は、「点字付百人一首~百星の会」を精力的に牽引しておられる方です。


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 「京洛逍遥(375)嵯峨野で「点字付百人一首」を楽しんだ後は時雨殿へ」(2015年08月31日)と、「「点字付百人一首〜百星の会」の紹介と活動内容」(2015年09月01日)で紹介した魅力的な活動は、関場氏なくしては実現しないプロジェクトです。

 今回の記事から、一部を引用します。


 助成金で再度、ボランティアの方々に増産していただいたかるた台を100台と、点字付きの札を持って、大阪・埼玉・千葉・神奈川・京都・静岡・愛知・福岡等で、体験会や用具の電話説明、そんな不眠不休の普及活動(!?)の甲斐あって、全国に散らばる百人一首のファンと繋がることができました。
(中略)
 私たちの会では百人一首だけでなく、点字が苦手な弱視者も触れて分かりやすい「坊主めくり」や、「おやじギャグかるた」等々も点字札を作って、かるたを通したコミュニケーションの場の創設を目指しています。
 視覚に障がいをもつ皆さん! なんでもパソコンで終わらせてしまって、ついつい外出が億劫になってしまっていませんか? 私たちと一緒にかるた取りを楽しんで、人と人との生のコミュニケーションを復活させましょう! (58~60頁)

 この「点字付百人一首」に触発され、『源氏物語』の触読の成果を生かして、変体仮名で書かれたカルタ取りにも挑戦しているところです。

 『源氏物語』の触読につながるように、変体仮名の『百人一首』により、日本の古典文化の主流であった和歌の学習とゲームを取り入れた、新たな触読研究に取り組んでいます。

 多くの方のご理解とご支援をお願いするところです。
 
 
 

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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