« 『海外平安文学研究ジャーナル vol. 4.0』を発行 | メイン | 読書雑記(162)中島岳志・島薗進『愛国と信仰の構造 ―全体主義はよみがえるのか』 »

2016年3月23日 (水)

オンライン版『古写本『源氏物語』触読研究ジャーナル vol.1』を創刊

 昨春より来春までの2年間、日本学術振興会 科学研究費補助金 「挑戦的萌芽研究」による研究として、「視覚障害者と共に古写本の仮名文字を読み日本古典文化を共有するための挑戦的調査研究」(課題番号:15K13257、研究代表者:伊藤鉄也)に取り組むことになりました。

 その成果の一部を、ホームページ「古写本『源氏物語』の触読研究」の中の「研究会報告」→「ジャーナル」からダウンロードできるようにしました。
 今回創刊した『古写本『源氏物語』触読研究ジャーナル』(ISSN:2189−597X)という電子ジャーナルは、どなたにでも自由に読んでいただける形で公開しています。
 また、記事の音声読み上げも、パソコンではマッキントッシュとウインドウズで確認しています。目の不自由な方にも読んでいただけるようにしました。何か不具合がありましたら、コメント欄を通してご教示をお願いします。

 このジャーナルの紹介を兼ねて、創刊号の「表紙」と「はじめに」および「目次」を引用します。


160323syokudoku1



 近年、コンピュータに端を発した情報文具が、世界中の人々の生活スタイルを変えています。インターネットが、国と国や人と人の関わり方を変えました。スマートフォンも、情報の取り扱い方を一変させました。情報をアウトプットする道具も、ドットからレーザー、そして3Dとめまぐるしく進歩しています。
 そのような中で、視覚に障害がある触常者の読書や書記活動は、情報文具の活用により多様化しています。目の見えない方からの電子メールの返信がリアルタイムに届くのは、そのことを如実に示しています。
 しかし、情報を受容して発信する環境が豊かになったとしても、やはり受動的な待つ姿勢が日常的にあるのではないでしょうか。点字と音声だけでは、先人が残した日本の文化資産を受容するのに限界があります。
 古代から書き継がれてきた墨書きの文字を手掛かりにした、温故知新の知的刺激を実感し実践することには困難が伴うからです。

 一つのことがきっかけとなり、日本の古典文化を目が見えなくても体感できる環境に思いをいたすようになりました。古写本『源氏物語』を素材とした実験に、素人ながらも挑戦することにしたのです。
 一つのこととは、『群書類従』を編纂した塙保己一との出合いです。
 思いがけないことから、目が見えなくても手書きの文字が識別できる世界をイメージできるようになりました。
 墨字の中でもひらがな(変体仮名)で書かれた紙面を、触常者が能動的に読み取れるかどうか。
 その可能性にアタックすることは、私自身にとっても手探りの中でのチャレンジです。

 その方策を、実践的に調査研究し実現することを目指すことにしました。触常者と視覚に障害がない見常者とのコミュニケーションをはかる意義の再認識です。
 日本学術振興会の科学研究費補助金の中に「挑戦的萌芽研究」があることがわかり、早速プロジェクトを組み立てて申請しました。幸運にも、平成26年4月に、申請課題「視覚障害者と共に古写本の仮名文字を読み日本古典文化を共有するための挑戦的調査研究」が採択されました。

 多くの方々のご理解とご協力が得られ、予想外の成果が実感できるようになりました。
 こうした成果を広く公開して共有するために、「古写本『源氏物語』の触読研究」(http://genjiito.sakura.ne.jp/touchread/)というホームページを立ち上げました。
 さらにオンライン版の「古写本『源氏物語』触読研究ジャーナル」(ISSN番号:2189−597X)を発刊することにしました。
 これは、産声を上げたばかりのジャーナルです。大切に育てていきたいと思います。

 本課題では、新たな理念と現実的な方策の獲得に挑戦します。その舞台の一つとして、この電子ジャーナルが有効に働けば幸いです。ご教示や投稿などでの積極的な参加をお待ちしています。

 なお、ホームページと電子ジャーナルにおける情報収集、整理、発信、更新、編集等は、本科研の運用補助員である関口祐未が主体となり、研究協力者である国文学研究資料館プロジェクト研究員の淺川槙子と技術補佐員の加々良恵子が支援を担当しています。
 このメンバーで、さらなる展開と成果の結実を目指していきます。
 ご理解とご協力のほどを、どうかよろしくお願いいたします。 (2016年3月30日)


『古写本『源氏物語』触読研究ジャーナル vol.1』


【目次】
●はじめに
●原稿執筆要綱
●研究論文
 日本語点字による写本翻刻作成のための表記論 中野真樹
   付属資料:『日本点字表記法 2001 年版』より抜粋
 音声触図学習システムの開発と古写本「源氏物語」の触読への利用 森川慧一、細川陽一
●小論文
 明治33 年式棒引きかなづかいの今  淺川槙子
●ディスカッション
 点字による変体仮名版翻字の検討 伊藤鉄也、中野真樹、渡邊寛子、関口祐未
●研究の最前線
 手書き文字についてミッタル先生との討議(インド報告) 伊藤鉄也
●レポート
 2015 年度「古写本『源氏物語』の触読研究会」活動報告 関口祐未
●巻末付録
 基本的な言葉の説明
●執筆者一覧
●編集後記
●研究組織


 無事に創刊号の発行ができたことを受けて、早速第2号の原稿を募集します。
 詳細は、本科研のホームページに掲載している、「『古写本『源氏物語』触読研究ジャーナル』応募執筆要綱」か、創刊号の巻頭に置いた「原稿執筆要綱」をご覧ください。


・原稿の締め切り 2016年9月30日(金)
・刊行予定    2016年10月31日(月)
・注意 原稿執筆者は公開から1年以内に1度だけ、原稿を《改訂版》に差し替えることができます。

 
 
 

コメント

コメントを投稿

コメントは記事の投稿者が承認するまで表示されません。

NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

Powered by Six Apart
Member since 07/2008