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2016年4月15日 (金)

古都散策(47)【復元】初夏の散策(5)岩船寺

 10年前、大和平群に住んでいた頃に書いた、初夏の旅の記を再現しました。
 昨日の「古都散策(46)【復元】初夏の散策(3)浄瑠璃寺」に続く内容です。

(※本記事は、平成19年(2007年)3月に消失したブログの復元です。)

********************** 以下、復元掲載 **********************

2006年5月6日公開分

副題「日本的な美は褪色と極彩色にある」

 岩船寺に入ってすぐ目に飛び込むのは、色鮮やかな三重塔です。
 最近の再建かと思いました。しかし、これは室町時代のものを平成15年に大修理したものでした。

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 素人の私がデジタルカメラで撮影しても、このように絵はがきのような写真になります。カメラを持って、下から上からと、周りをグルッと回れるので、さまざまな角度から撮影できるのです。

 塔内には壁画が描かれています。特別拝観が可能だったので、すぐ傍で見ました。

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 みごとに、十六羅漢や帝釈天などが修復再現されていました。

 三重塔の柱や壁の木材は相当古いもののようで、その風雪に耐えてきたことが見て取れました。しかし、この三重塔の復元は、その木に色鮮やかな朱をこれでもかと重ねて塗ることによって、創建当時の雰囲気を伝えようとしています。船の塗装を連想しました。剥げたところをペンキで塗り重ねた船体をです。
 内陣の柱などを見ると、壁画も相当傷んでいたことが窺われます。それが、今しがた描かれたばかりかと見紛うばかりの、明るい彩色で再現されています。仏教の明るさを見た思いがしました。

 文化遺産を次世代に伝えるために、補修や修復をします。それは、伝わってきたものの状態をそのまま維持するために、最小の手を入れる場合もあります。しかし、多くは、色褪せたものを色鮮やかだった原初の姿に戻すこととなります。

 そこで、近現代の日本人は違和感を覚えます。近代教育の成果として、日本の伝統的な美は、擦れた、色褪せた、わび・さびを感じさせるものである、という刷り込みがなされたと、私は思っています。私も、キンキラキンのお寺や仏像などは、日本的な文化を感じさせないものだと思ってきました。しかし、長い時間を経過して現在に伝わってきたものは、最初からそのようにくすんでいたのではないのです。最初は、新品のころは、目も覚めるような色遣いのものだったはずです。その色の衝撃が、権力者や民衆に対して、神社仏閣の意義や効能を発揮してきたと思います。
 極端かもしれませんが、今に残る色褪せたものは、仮死状態になった文化とも言えます。

 インドへ行ってまず驚くのは、寺院がキンキラで眩いばかりの色で訴えてくることです。電飾は当たり前。やたらと、ピカピカ、チカチカと視覚に訴えてきます。古いものは壊して、すぐに新しくします。色褪せさせることには、ほとんど価値を見いださないのです。
 インドでは、基本的には今を問題にしているようです。

 日本とは対照的なインドの宗教施設のありようなどを見て、振り返って身近な古都奈良を散策すると、本当に古色蒼然とでもいうべき、色褪せたものに価値を見いだしていることに、今更のように驚かされます。

 浄瑠璃寺の極彩色が残る吉祥天女像や、岩船寺の三重塔の朱色を見て、かつては鮮やかな色遣いでいけないと思っていた気持ちが、最近はそれを受け入れて、作られた当時の姿のままを想像する楽しみを会得したように思います。

 国宝の源氏物語絵巻が、科学的な手法を駆使して、その再現が実現しました(『よみがえる源氏物語絵巻—全巻復元に挑む』2006年2月、NHK名古屋「よみがえる源氏物語絵巻」取材班、日本放送出版協会)。復元された源氏物語絵巻は、色鮮やかなものです。鎌倉時代の人々が望んだ色が、そうした明度や彩度の高いものだったのです。鉱物や植物を使った色合いなので、それをぼかすのもまたみごとな色の変化となっていました。
 徳川美術館の以下のウエブサイトで、その一部が見られます。
http://www.hcn.zaq.ne.jp/internet-gallery/frame6-mokuji.htm

 ぼんやりと霞んだものの善さもあります。
 はっきりと見える善さもあります。
 明るさが与えてくれる元気を、少しずつ体得できるようになりたいと思っています。

********************** 以上、復元掲載 ********************** 
 
 
 

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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