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2016年6月23日 (木)

読書雑記(170)船戸与一『群狼の舞 満州国演義3』

 『群狼の舞 満州国演義3』(船戸与一、新潮社、2007年12月)を読みました。
 全9巻の大河小説なので、まだ前半です。


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 昭和7年、奉天で満州国の建国宣言がなされたことから始まります。国都は長春を改名した新京です。

 新京については、私の両親が戦時中ここにいたため、折々によく聞いた地名です。自分との接点があることもあり、物語の背景がよく見えました。
 本ブログの「【復元】母子の絆の不可思議さ」(2010/4/29)で、長春のことを記しています。
 本作でも舞台となっているハルビンでの戦闘場面や夕陽が沈む景色は、両親から何度も聞いた話を思い出させます。ハルビン、チチハル、ハイラル、そして満州里などなど、耳に馴染んだ地名です。当時のことを、もっと聞いておくんだった、と思いながら読み進めています。

 過酷な歴史の中に、一人一人の人間が克明に描き出されていきます。
 満州の地における敷島4兄弟の動きが、巻を追う毎に慌ただしくなります。歴史が激しく動く中を、それぞれの役割を背負って前を向いて歩んでいく姿が活写されます。

 5・15事件のことは、満州や中国を舞台とする物語であるためか、その意義が今後の日本にどう影響するかに留まり、語り口は客観的に冷めた目であることが印象的でした。
 「国家の創造は男の最高の浪漫」という思いが、満州の男たちを突き動かしているというのです。

 登場人物たちは、時勢の中でさまざまな立場に身を置き、それぞれの思いから考え方を変転させます。これを、人間としての成長と言うべきか、おもねると見るべきか。
 激動の時代に生きる男たちの姿が、4兄弟の動向と心中を語ることで、多角的な視点から躍動する筆致で語られています。

 満州を舞台にした組織と個人の力関係が、敷島4兄弟を介して巧みに物語られているのです。満州の地での実情や実態が、克明に描き出されており、一つの歴史に身を置いた臨場感が、肌身に直に伝わってきます。

 そうした中で、関東軍はしだいに満州における影響力を獲得し、満州帝国を構築する段階へと突入していきます。新都としての新京(長春)の建設も、着実に槌音を響かせて進んでいるのでした。

 敷島太郎の4歳だった長男明満が亡くなり、満州事変が勃発した記念の花火が奉天神社で打ち上げられているところで、この巻は綴じられます。一気に読ませてくれました。
 船戸作品は、ダイナミックな描写とドラマチックな物語展開で、読む者の心を摑みます。これからどうなるのか。続きを読みたくさせます。【4】
 
 
 

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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