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2016年6月27日 (月)

古写本『源氏物語』の翻字に関する凡例の追加と補訂(その4)

 日比谷図書文化館で翻字講座に参加なさっているOさんから、『源氏物語』の写本を「変体仮名翻字版」に作り替える作業中に疑問に思われた、踊り字に関する質問を受けました。

 忙しさにかまけて、「変体仮名翻字版」の凡例の見直しが不十分なままになっています。こうして問い合わせを受けた機会に、少しずつ凡例を整備しています。

 これまでに、以下の通り3回に分けて凡例の追加や補訂をして、簡単な説明をしてきました。
 これらは、あくまでも「変体仮名翻字版」としての翻字データを作成する、作業上の共通理解となる凡例です。翻字データの利用者向けのものではないことを、あらかじめお断わりしておきます。

「古写本『源氏物語』の翻字に関する凡例の追加(その1)」(2015年09月25日)

「古写本『源氏物語』の翻字に関する凡例の追加(その2)」(2016年03月19日)

「古写本『源氏物語』の翻字に関する凡例の追加(その3)—改丁(改頁)に関する新方針」(2016年05月06日)

 今回これらに続き、【漢字・仮名・記号・その他】に関する凡例の補訂版「その4」としてアップして確認しておきます。

 現在、『源氏物語』の「変体仮名翻字版」のデータ更新をしてくださっている方々や、今後このNPO法人〈源氏物語電子資料館〉の翻字活動に協力してくださる方は、この一連の凡例を折々に確認していただけると、よりよい翻字データが受け継がれていくことになると思います。
 今後とも、ご理解とご協力のほどを、よろしくお願いします。


【漢字・仮名・記号・その他】

1 基本的に、書写されているそのままを翻字。以下の場合は要注意。
 漢字表記は【 】で括る。
 例 「【女御】」(「め【御】」とはしない)、
   「【更衣】」(「【更】え」とはしない)、
   「【左近】」(「さ【近】」とはしない)、
   「【御衣】」(「【御】え」とはしない)、
   「【上達部】」(「【上達】へ」とはしない)、
   「ひめ【君】」(「ひ【女君】」とはしない)、
   「【侍】(6ウ)」【覧】」(改丁箇所で泣き別れとなる場合は別個に処置)
   「ゐ【中人】」(平仮名と漢字が混在するものは、漢字の部分のみを亀甲括弧で括る)
  熟語の漢字部分の表記。
 例 【雲】井(「井」は当て字として漢字にはしない。「【雲居】は熟語とする」
  二種類の語意が共存している場合は、それぞれを漢字として【 】で明示。
 例 「【御事】」(「【御】【事】」としない)
   「【物思】ひ」(「【物】【思】ひ」としない)
 例 「【給】【京】へ」(「【給京】へ」としない)
 例 「【入道】の【宮】」(「【入道の宮】」「【入道乃宮】」としない)
2 旧漢字はすべて新漢字にする。
   萬→万、哥→歌、佛→仏、條→条
3 「【見】る」などで「【見】」を活かす場合は、そのまま「【見】る」とする。
   「【形見】」「【見】くるし」などの場合も同様。
   「【身】つから」「【世】けん」「すく【世】」も漢字の意味が活きているものとする。
4 「けしき」「けはひ」の「け」が「気」の場合はそのまま(「気」を残す)とする。
   「をかしけなり」などの「け」は、そのまま仮名にしておく。
5 踊り字は、基本的に書写されているままの記号・符号で翻字。
 例 「【人】/\」
  従来は「人々」としていた。
  ただし「々」が用いられている場合は「【人】々」)。
  これは「/\」や「々」を記号として扱うことによるもの。
  従来は、翻字記号を統一して、電子データ固有の検索の手間を一元化する処置をしていた。
  文節が、「ゝ」または「/\」ではじまる場合。
   ( )内に踊り字を開いた形を付して、当該文節が踊り字で始まらない形を明示。
 例 おほしゝを・ゝしからぬ(をしからぬ)
6 虫損などにより、文字の一部がわからなくても、残っている部分から類推できる場合。
 例 ・・・/□〈判読〉
7 虫損、汚れなどにより、文字がまったくわからない場合は、その字の部分を△とする。
8 明らかに誤字脱字の場合。
  入力ミス等、見落としではないことをはっきりさせる場合には〈ママ〉を付す。
 例 たてまつつるに/つつ〈ママ〉
9 「ハ」「ミ」「ニ」はひらがな表記で統一。
  ただし、明らかにカタカナである場合はそのまま記す。
10 本文注の朱句点「・(赤字)」、墨句点または句点のない場合は、その旨を巻名の最初に記す。
  「朱点」「墨点」「句点なし」は、本文中には入れない。
11 注記が複数の時。
 例 色にも/△&に〈判読〉、も&も、も$〈朱〉・・・読点で区切る
  その注記内にさらに注記がある時。
 例 そしりをも/も+え、傍え=へ〈朱〉
  補入文字の「え」の右横に「へ」と朱書きの文字が傍記されている。
12 削除された文字(塗り消しや擦り消しされた文字)。
 例 なりぬるか/か〈削〉
13 紙面の一部がくり抜かれたような穴となり、文字が欠落している場合。
 例 お△かた人の/△〈破損〉
14 和歌の始発部と末尾には、カギカッコ(「 」)を付す。
15 底本の語句に対応する本文(文節箇所)が対校本文に存在しない時は「ナシ」と表記。
16 落丁の該当箇所には、「ナシ/落丁」と明示。
17 「も」と「ん」について。
   当然「も」と読むべき「ん」でも、表記された字形を優先して書かれているままの文字で翻字。
18 写本に記入された倒置記号について。
   ○印と引き込み線やレ点などを用いて、字句の転倒を正す符号が付された本文箇所
 例 とやまも/記号ニヨリ「とまやも」
19 付箋に異文などの記載がある場合。
  「あしき/=かなしき〈付箋〉」として傍記扱いとする。
20 異本異文注記が上部余白部分に記されている場合。
  「人や/人$我イ〈上空白部〉」として対処。
21 注記混入かと思われるものが本行に書写されている場合。
  「/本行書写」として対処。
22 本行本文に割り注がある場合。
  「よ/(割注)常陸守取婿(改行)少将たかへす」として、本文に関わる付加情報として注記。
23 底本の和歌に関して、一首全体が補入となっている場合。
  「いせ人の/コノ歌ハ補入」とする。
24 ミセケチ記号(「ヒ」「\」等)や補入記号(「○」「・」等)。
   また書き入れ等が朱筆で書かれている場合は、「〈朱〉」「〈朱合点〉」「〈朱濁〉」等の記号を用いる。
   墨筆であることを強調する場合は、「〈墨〉」等の記号を用いる。
 例 いみしう/し〈朱濁〉・・・「し」に朱筆で濁点が施されている。
 例 はねを/〈墨朱合点〉・・・「は」に墨筆と朱筆で合点が施されている。
25 文字に清音で読む事を示す記号がついている場合。
 例 あつしく/つ〈清〉・・・「つ」に清音で読む事を示す記号が施されている。


 
 
 

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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