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2016年6月 7日 (火)

立体コピーによる触読の問題点と平仮名文字の説明文

 北九州で実施した、『変体仮名触読字典』のための触読シート「あ」(立体コピー試作2版)による調査と意見交換については、一昨日の「触読調査の後は小倉の松本清張記念館へ」(2016年06月05日)の冒頭で簡単に報告した通りです。
 そして、以下の2点を今後の課題としておきました。


(1)シートの角に切り欠きをつけることで、文字の上下を判別
(2)紙面に配置されている文字の説明注記を点字で添える

160605_syokudokua


 この触読シートに関しては、科研の研究協力者である福島県立盲学校の渡邊さんと共立女子大学の尾崎さんから、お手元にお送りした立体コピーを触読しての感想を寄せていただきました。
 お2人のコメントを整理して、以下にまとめます。


・文字は大きい方が線がはっきりしていて触読しやすい
・文字が小さいと字母の漢字が把握できない
・文字が小さいと全体的に線がごちゃごちゃして触りにくい
・個々人の指の大きさが異なるので適切な文字の大きさは難しい
・導線となる枠と文字との距離が近すぎるのでかなり窮屈
・空白が少ないので一つの文字をイメージしにくい
・どういう向きで触読するのか迷う
・右上に何らかの指示があるとよい
・ただし点字の「あ」は点が1個なのでわかりにくい
・点字の数字なら前に数符がつくのでわかる
・点字のアルファベットも前に外字符がつくのでわかる
・変体仮名による連綿の例は最初の一文字が読めないと先へ進めない
・すっきりと読み下せないと気になる

 こうした感想や指摘を踏まえて、今は次のような対処と方針で取り組みたいと思っています。


・サイズの大きい方で検討を進める
・字母などを細い線で囲うのはやめる
・文字を囲う枠は文字と離す
・空白をもっと活かした文字の割り振りを心がける
・新しく認定される国際標準のためのユニコードの番号を付加情報として添える
・「愛」と「惡」の変体仮名を採択するかどうか再検討
 (これは、変体仮名としては使用例も少なく、『変体仮名触読字典』に取り上げる必要はないと思います。ただし、ユニコード化にあたって候補として入っているので、一応新ユニコードに対応した字典ということで取り上げています。近世の文書には出てくるので、外すことをためらっています。ただし、仮名を中心として書かれた文学作品を読むという用途に限定した字典を目指すのであるならば、使用頻度の低いこうした「愛」や「惡」という変体仮名は取り上げない、ということも検討すべきかも知れません。)
・付すインデックスとしてのは、点字とアルファベットに関して、さらに検討中
・上部にインデックスとして付す指示文字も検討中
 (点字で「あ」を、その横にアルファベットの「A」と「a」を添えることを考えています。ここで、「あ(字母は「安」)」という、明治33年に一つに統制された文字をインデックスにしなかったのは、4種類の平仮名「安・阿・愛・惡」はいずれも対等の関係であり、現在使われている「あ」だけが唯一のひらがなではなくなる次世代を意識したものです。)
・変体仮名の連綿例に、活字で「平仮名」と「字母」を併記した理由
 (目が見える方にも、そして介助者にもこの字典を使っていただけるようにとの配慮から、変体仮名の連綿例には、活字で「平仮名」と「字母」を併記しました。この列がそうした意図を持ったものであることを、何かの記号を使って明示して、触読のための情報ではないことを明示する必要があります。この振り仮名(読み仮名)の部分だけは立体コピーにしない、という対処もあります。しかし、そうすると立体コピーと混在して印刷が面倒なことになるので、まだ思案中です。)

※2段目の、国語研が公開しているフリーの変体仮名フォント以外は、すべて新典社版の『実用変体がな』から採字したものです。

 なお、一連の触読をサポートするものとして、音声による説明や解説を併用できる環境作りにも取り組んでいます。
 以下に、科研運用補助員の関口祐未さんが作成を進めている、立体平仮名文字「あ」の部の説明文を紹介します。


【平仮名文字の説明文について】
・平仮名文字の説明文は、凸字を触りながら、平仮名の形がより明確にイメージできるように作成しました。
・平仮名文字の説明文は、平仮名を書くときの筆順に従って考えました。短く簡潔で、平易な表現を心がけました。
・曲線の形については、線の形がイメージしやすいように、次のような工夫をしました。
 例1 「弓形」といった場合→半円の曲線を表す。
 例2 「上へ向かって9時から3時までの曲線」といった場合→アナログ時計の文字盤をイメージし、時計回りに9時の位置から12時を回って3時の位置に至る半円の曲線を表す。
 例3 「下へ向かって9時から3時までの曲線」といった場合→アナログ時計の文字盤をイメージし、反時計回りに9時の位置から6時を回って3時の位置に至る半円の曲線を表す。
・説明文は、より分かりやすい文章に仕上げていくために、皆様のご意見を反映しながら更新していく予定です。

■「あ」の説明■

1画目。中央・上の位置。左から右へ横線。
2画目。1画目横線の真ん中を通って、縦に下がる長い線。
3画目。1画目横線の終わり・下の位置。左へななめに、2画目縦線の終わりを通って下がり、上へ向かって8時から5時までの曲線。
 このとき2画目縦線の真ん中と3画目線の始めを通る。
 説明文終わり。

 この他の平仮名については、科研のホームページである「古写本『源氏物語』の触読研究」に掲載している『立体〈ひらがな〉字典』の項目をご覧ください。

 また、この説明文が読み上げられるような仕掛けを、触読の対象となる文字に設定することによって、学習が効果的におこなわれるようにできないか、ということも検討中です。
 これには、タッチパネルの導入が考えられます。
 この「タッチパネルによる古写本触読システム」については、「宇治の街歩きと〈運読〉のワークショップ開催」(2015年12月05日)の後半で、2枚の写真を交えて紹介していますので、参照していただけると実際の触読のための道具をイメージしていただけるかと思います。

 まだまだ、試行錯誤を繰り返している段階です。
 ご教示をいただく中で、よりよい触読環境を作り上げて行きたいと思います。
 また、そのためにも『変体仮名触読字典』を早急に形にして、実際に使っていただく中で改訂をしていく予定です。

 思いつきで結構です。
 ご意見やご提案をお待ちしています。
 
 
 

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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