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2016年7月21日 (木)

国冬本「鈴虫」の長文異同(その3-【給】と【侍】)

 国冬本「鈴虫」巻において、諸本にはない539文字もの長文の異文がある箇所の前後に、どのような文字が使われているのかを確認しています。
 特に、二千円札で有名になった「十五夜の夕暮に〜」の直前にある長文の異文は、どのような意味を持つのかを考えようとするものです。

 なお、昨日書き忘れたことを補っておきます。
 ここで抜き出した3箇所の文章は、「長文異同(539字)」とほぼ同じ分量でその前後にあり、意味の上からも切れのいい箇所を取り出したものです。そして、「異同前(539字)」の文字数が539文字なのは、偶然に「長文異同(539字)」と一致したものです。

 今日は、【給】について見ます。併せて【侍】についても触れます。


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 ここで検討対象とする3箇所で語られている内容については、今は吟味をしていません。物語の内容と用字は密接に関連するものなので、当然それを語る用字に話の内容が強く関係します。また、語学的な視点での解明も必要です。しかし、ここでは書写された文字の違いという現象にだけ注目し、その外形的な違いを確認しているところです。

 ここで【給】については、「異同前(539字)」で15例、それに続く「長文異同(539字)」で7例、「異同後(537字)」で6例見られます。「15—7—」です。
 さらに細かく見ると、「【給】て」が「異同前(539字)」で4例、それに続く「長文異同(539字)」で0例、「異同後(537字)」で2例見られます。「4—0—」です。
 その他でも、「給」に続く文字を見ていくと、さまざまなことを考えさせてくれます。「長文異同(539字)」にある「【給】えり个り」の「え」という語尾の表記も気になります。
 なお、この「給」を平仮名で表記した例は、今回切り出した3箇所には1例もありませんでした。
 さらには、今回抜き出した中で「異同後(537字)」に1例だけ見られる「【侍】へ連と」も、「給」と一緒にその使われ方を考える際に参考となるものです。

 国冬本「鈴虫」におけるこうした文字使いを見ていると、私が仮説として提示したことが、外形的な様態からも可能性が高いのではないかと思われます。
 昨日記した私見を、ここに再度引きます。


物語が、上記表の真ん中に位置する「長文異同(539字)」を破棄した後に、それを挟むようにして存在する旧「異同前(539字)」と新「異同後(537字)」をつなげることで、現行の「鈴虫」が構築されているという拙著『源氏物語の異本を読む—「鈴虫」の場合—』で述べた仮説は、ここでの用語例の出現傾向から見て、決して的外れなものではありません。

 この検討は、さらに続きます。
 
 
 


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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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