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2016年7月 5日 (火)

読書雑記(171)山本兼一『弾正の鷹』

 『弾正の鷹』(山本兼一、祥伝社文庫、平成21年7月)は、完成度の高い短編が集まった一書となっています。いづれも、織田信長暗殺が底流にあり、女性を巧みに配した5編の作品が楽しめます。


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■「下針」
 紀州雑賀党の鈴木源八郎は、通り名を「下針」と言い、鉄砲の名人でした。遊び女の綺羅と懇ろになったと思いきや、源八郎は信長襲撃に失敗して亡くなります。最後に綺羅の思いが印象深く描かれています。「読書雑記(163)山本兼一『雷神の筒』」(2016年04月05日)に繋がります。【5】


初出誌:『小説NON』平成12年11月号
 
 
■「ふたつ玉」
 甲賀一の鉄砲名人の善住坊は、白拍子だった菖蒲が好きでたまりません。信長を殺すことに失敗したまま、菖蒲と逃げました。逃避行の果てに信長に捕まります。その後の話は山本兼一らしくないと思いました。【1】


初出誌:『小説NON』平成10年2月号(初題「信長を撃つ」を改題)
 
 
■「弾正の鷹」
 信長への復讐を果たそうとしない松永弾正に対し、父を信長に殺された桔梗は落胆します。そして、韃靼人の鷹匠に信長を襲わせることを思いつくのです。自ら鷹を御して信長に挑んだ桔梗は、信長の眼光に圧されて捕らえられました。その後の桔梗が中途半端だと思います。信貴山や平蜘蛛の茶釜も説明がほしいところです。テーマや趣向が短編には向かないものだったのではないでしょうか。話題を絞りきれなかったか、とも言えます。
 「読書雑記(146)山本兼一『白鷹伝 戦国秘録』」(2015年11月18日)に繋がります。【2】


初出誌:『小説NON』平成11年10月号(初題「信長を撃つ」を改題)
    『小説NON』の創刊150号記念短編時代小説賞で佳作受賞(平成11年)
 
■「安土の草」
 庄九郎は甲斐武田から放たれた、草と呼ばれる忍の仲間。信長を狙うスパイという立場の乱波です。大和奈良、そして岐阜で大工の仕事をし、安土城を手掛けました。棟梁は岡部又右衛門。同じ甲斐の女乱波である楓が、いい役を果たしています。
 「読書雑記(154)山本兼一『火天の城』」(2016年02月04日)に繋がる作品です。【3】


初出誌:『小説NON』平成12年3月号(初題「安土城の草」を改題)
 
 
■「倶尸羅」
 打倒信長の決意を持つ足利義昭は、江口の遊び女である倶尸羅に信長暗殺を唆します。閨では演技派の遊女である倶尸羅は、興味本位で信長に接近しました。そして、次第に情が深まります。懐に隠し持った毒をどうするのか。余韻たっぷりのままに幕が下ります。女からの視点で語る、これまでの作風とは一線を画す、山本兼一を見直す完成度の高い小説となっています。【5】


初出誌:『小説NON』平成13年11月号
 
 
※本書『弾正の鷹』は、平成19年7月に祥伝社より単行本として刊行されたものです。
 
 
 

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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