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2016年8月 5日 (金)

読書雑記(174)船戸与一『炎の回廊 満州国演義4』

 船戸与一の『炎の回廊 満州国演義4』(新潮文庫、2016年1月)を読み終えました。


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 本との出会いには、さまざまな縁があります。
 昨夏から読み進めている船戸与一の「満州国演義シリーズ 全9巻」は、戦時中に両親がいた地での話であり、両親から聞きそびれた世界が語られています。

 本書第4巻は、文庫版として刊行された今年早々に、東京・大森の書店で購入しました。この書店は、私にとって思い出の本屋さんです。
 昭和47年1月に、住み込みの新聞配達店が全焼し、着の身着のままで焼け出されました。それは成人式の直前でした。大阪から持ち込んで来ていた本がすべて消失し、悄然としていた日々でした。しかし、お店の好意で勉強に必要な本は何でもいくらでも買っていいということで、この本屋さんに数百冊の本を注文しました。毎日のように届く本を、楽しみにして受け取りに行きました。
 たまたま、その思い出の書店に立ち寄ることがありました。この『炎の回廊 満州国演義4』がすぐに書棚に見つかったので、このお店では47年ぶりに、しかも今回は自分のお金で購入したのです。

 また、先月末に、本書を中央線の車中で読み終えてすぐ、電車から降りようとして立ち上がったところ、不覚にも足を捻りました。捻挫だと思っていたところ後日骨折とわかり、今も不自由な日々を送っています。

 そんなこんなで、本との縁や出会いを綴るときりがありません。
 このへんにしておきます。

 さて、昭和9年、溥儀を皇帝とする満州帝国ができます。
 本巻でも、敷島4兄弟が大陸で大活躍する様が活写されます。
 日本での情報が満州にも届く中で、敷島4兄弟は日本のためにめざましい働きを続けているのです。

 さまざまな出来事が、世界史の渦の中で動いていきます。物語のスケールが、ますます大きくなっています。
 日本では、天皇機関説が問題になっている頃が、本巻の中心です。

 毛沢東、蒋介石、金日成、スターリン、東条英機等々。
 断片的にしか知らなかった人物が、この物語の背後で歴史を紡いでいます。
 インド、蒙古、ユダヤ、ロシア等の国が満州の地に絡んできます。
 その現場に立ち会っているかのような構成と語り口に、ぐいぐいと引き込まれていくのです。

 本巻は2.26事件で終わります。ただし、満州の地から見た事件の描写です。その距離の取り方がうまいと思いました。テーマに即した視点が、しっかりと定まっています。【5】

※本書は、2008年6月に単行本として新潮社より刊行されました。

※本シリーズで何度も出てきた「横浜正金銀行券」に関して、神奈川県立歴史博物館で「まぼろしの紙幣 横浜正金銀行券 横浜正金銀行貨幣紙幣コレクションの全貌」という企画展がありました(2016.4.23~5.29)。忙しく日々を送ることがやっとで、この展覧会に行こう思いながらもその時期を逸してしまいました。手元に案内のチラシだけが残っているので、参考のためにその画像を掲載します。
 ここには、高橋是清の肖像写真もあるので、前回の記事「読書雑記(173)幸田真音『天佑なり 高橋是清・百年前の日本国債』」(2016年07月08日)とも関連して、貴重な資料となっています。

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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