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2016年8月28日 (日)

読書雑記(178)山本兼一『ジパング島発見記』

 『ジパング島発見記』(山本兼一、集英社文庫、2012年7月)を読みました。


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 『日本史』を著したポルトガル人のルイス・フロイスが語り手となっています。フロイスが書ききれなかった逸話を記す、という体裁で語る7編の聞書を編んだものです。異色の戦国物語となっています。語りの視点が新鮮です。

 キリスト教の布教者という立場からの目で見た日本や日本人が、斬新な切り口で描かれています。知性と礼節を重んじる日本を描きます。
 また、地名、人名等の固有名詞が、外国人からの呼び方となっているところにも、作者なりの工夫が凝らされています。

 ポルトガルと日本の行き来に関しては、その中継地としてインドのゴアが出てきます。インド好きの私にとって、当時のインドの役割がわかって楽しめました。
 ただし、ポルトガルから来た宣教師たちと日本人の交流が表面的なのは、その距離感が表現したかったというよりも、一話の短さからの制約に基づく結果のようです。著者が今世にあれば、各話をおもしろおかしく展開させたことでしょう。2014年2月13日に亡くなられたのが惜しまれます。

■「鉄砲を持ってきた男」
 1543年。ポルトガル人のフランシスコ・ゼイモトの話です。火薬の話は、自らの体験と実地調査を通して語ることができたテーマの一つです。そこに、海外からの視点を持ち込んだところが斬新です。【3】

初出誌:『小説すばる』2007年1月号
 
■「ホラ吹きピント」
 ポルトガル人の貿易商人であるメンデス・ピント(1544年来日)の話です。この後の生きざまが知りたくなりました。【3】

初出誌:『小説すばる』2007年8月号
 
■「ザビエルの耳鳴り」
 1541年にリスボンを出帆し、キリスト教の布教をしたフランシス・ザビエル(1549年来日)の話です。人柄が目に浮かぶように描かれています。【3】

初出誌:『小説すばる』2008年2月号
 
■「アルメイダの悪魔祓い」
 正一位の狐さまとイエスの神との戦いが描かれます。ポルトガル人のアルメイダ(1552年来日)をめぐる物語は、いかにもという作り話で終わっています。山本兼一らしさが感じられない作品となりました。【2】

初出誌:『小説すばる』2008年7月号
 
■「フロイスのインク壺」
 盲目の琵琶法師であるロレンソの存在は中途半端でした。日本の習俗と文化を、丹念に布教史として羽ペンで記すフロイス(ポルトガル、1563年来日)は、今で言えばレポーターです。【4】

初出誌:『小説すばる』2008年10月号
 
■「カブラルの赤ワイン」
 ポルトガルと日本の文化の違いが面白く語られます。まさに、比較文化論の素材が満載です。そして、孤独なカブラル(ポルトガル、1570年来日)という男を描ききります。【4】

初出誌:『小説すばる』2009年1月号
 
■「ヴァリニャーノの思惑」
 信長はフロイスに、友好使節をヨーロッパに派遣したいと語ります。それは形を変えて、実際には伊東マンショや千々石ミゲルなど4人がバチカンに行きました。ヴァリニャーノ(1579年来日)だけはイタリア人です。【3】

初出誌:『小説すばる』2009年3月号

※本書は、集英社から2009年7月に単行本として刊行されたものを文庫本にしたものです。
 
 
 

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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