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2016年9月 3日 (土)

読書雑記(179)高田郁『あきない世傳 金と銀 二 早瀬篇』

 『あきない世傳 金と銀 二 早瀬篇』(高田郁、ハルキ文庫-時代小説文庫、2016年8月)を一気に読みました。


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 元文3年(1738)、大坂天満にある呉服商五鈴屋の元旦から軽快に始まります。

 廓狂いで放蕩三昧の四代目徳兵衛をめぐり、14歳の主人公幸が女衆であった身から一転して後添いとなることに決まります。

 幸は、商いの戦国時代に、知恵を武器にして生きていくことになります。

 知識と知恵の哲学を、この巻で教わることになりました。
 次の治兵衛の言葉が記憶に残っています。


「知恵は、何もないとこからは生まれしまへん。知識、いう蓄えがあってこそ、絞りだせるんが知恵だすのや。商いの知恵だけやない、生き抜くためのどんな知恵も、そないして生まれる、と私は思うてます。せやさかい、盛大に知識を身につけなはれ」(133頁)

 幸が品定めされる場面で『商売往来』を暗誦する様は圧巻です。
 本を置く暇もないほどに、話は展開していきます。
 「店先現銀売り」は三井の商売です。そのこととイメージが重なり、京と江戸の違いにも思いが及びました。

 登場人物が、それぞれに活きています。
 それぞれが、考えながら生きています。

 最後の場面で、月夜に鈴虫の音が響いて綴じ目となります
 印象深い終わり方であり、この話の続きが待たれます。
 新しい物語のシリーズが期待通りに始まりました。【5】

 この前作については、「読書雑記(159)高田郁『あきない正傳 金と銀 源流篇』」(2016年03月11日)をご笑覧ください。

 なお、本作中で「四代目の後添いに迎えたなら、一生、ただ働きで済むよって、五鈴屋にしたらの字だすやろ」(66頁)とあるところの「恩」は「御」とすべき誤植です。この一点だけが、細やかながらも本書の傷だと言えるでしょう。
 
 
 

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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