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2016年9月25日 (日)

『源氏物語』の小見出しは池田本の校訂本文に合わせること

 現在、池田本の校訂本文を編集する中で、そこに挿入する小見出しを作っているところです。
 これまでに、「桐壺」「帚木」「若紫」の3巻分を終え、以下の通り本ブログで公開しています。

☆(1)「「桐壺」巻の小見出し試案(72項目版)」(担当者:伊藤鉄也)(2014年03月26日)

☆(2)「池田本の校訂本文用に作成した「帚木」巻の小見出し(132項目)」(担当者:高橋麻織)(2016年09月16日)

☆(3)「池田本の校訂本文用に作成した「若紫」巻の小見出し(108項目)」(担当者:淺川槙子)(2016年09月15日)

 この小見出しは、次のような特徴があります。


1 30字の簡潔な小見出し
2 校訂本文150字位(250字以下)に一つの小見出し
3 小見出し末尾に次の3種類を「/」で区切って明示
  ・『源氏物語大成』(中央公論社)の頁行数
  ・『源氏物語別本集成』『同 続』(おうふう)の分節番号
  ・『新編日本古典文学全集』(小学館)の頁数
 

 この小見出し作りを進めていて、その方針を明確にしておく必要が生じました。
 今後とも、お手伝いしてくださる方々と情報を共有しておくためにも、以下に問題点を整理して確認事項とします。

 一例を、「若紫」の場合であげましょう。
 国文学研究資料館蔵の橋本本「若紫」の小見出しを確認している時、早速2つ目の小見出しで中断となりました。

 上記「☆(3)」で、次のようにした小見出しです。

 ■2 聖は、峰が高い山に囲まれた奥深いところに籠り、修行をしている

 ここは、『新編日本古典文学全集』(小学館)では次のような校訂本文となっています。


~御供に睦ましき四五人ばかりして、まだ暁におはす。
 やや深う入る所なりけり。三月のつごもりなれば、京の花、盛りはみな過ぎにけり。~(119~200頁)

 これに小見出しを付けると、「まだ暁におはす。」の次に位置するところが適当です。

 それに対して、橋本本の校訂本文は次のようになります。赤字に注意してください。


〜御供に睦ましき四五人ばかりして、まだ暁におはするにやや深う入る所なりけり。
 三月つごもりなれば、京の花、盛りは過ぎにけり。〜(119〜200頁)

 大島本や池田本による流布本の校訂本文が「まだ暁におはす。」となっていたところが、この橋本本では、「まだ暁におはするに」となります(後掲の本文異同を参照願います)。文章はここで切れずに、「やや深う入る所なりけり。」へとつながっていくのです。

 そのため、上記「■2 聖は、~」という小見出しを橋本本に転用するにあたっては、「三月つごもりなれば、」の位置に付けることが最適な場所といえるでしょう。

 ここは、私案の本文二分別によると、〈甲類〉が「おはするに」であり、〈乙類〉が「おはす」となっているところです。
 池田本は〈乙類〉なので、ここに小見出しを入れるのは大島本のグループの一つなのでいいのです。
 これに対して橋本本は〈甲類〉なので、小見出しの位置が少し後にずれることになります。つまり、次の行の「三月」に対する小見出しとすることになるのです。

 これでは、校訂本文が他本に変わるたびに、小見出しの位置が前後に移動することになります。本文異同の多い巻や写本では、そのたびに小見出しの位置がずれたり、場合によってはなくなったりするのは煩雑です。
 今後は、写本ごとに校訂本文が自由に作成できるシステムを公開する予定なので、目まぐるしく諸本ごとに小見出しが変転しては、使い勝手も悪くなります。

 そこで、この小見出しを付ける場所については、あくまでも「池田本に合わせる」、という方針に決めたいと思います。

 なお、現在、この池田本の校訂本文のための小見出し作りを、ボランティアでお手伝いしてくださる方を求めています。
 『源氏物語』の本文を200字位で区切り、そこに30文字という制限で短文を作ることは、意外と呻吟するものです。一文字の加除に、何日も費やすことはざらにあります。
 池田本は大島本と大きく本文が異なることはないようなので、身の回りにある校訂本文で小見出し作りは出来ます。面倒なのは、小見出しの末尾に付ける3種類のテキストの頁数や番号だけです。

 手伝ってやろう、と思われる方は、遠慮なく本ブログのコメント欄等を使って連絡をください。
 すでに着手されているのがどの巻か、という情報の共有は、全54巻をやり終える上では重要です。効率的な取り組みを遂行するためには必須の情報であり、これは折々に本ブログを通して流していきたいと思っています。その際、担当者のお名前を巻名に併記することを、あらかじめご了承ください。

 ちなみに、現在私は第3巻「空蟬」に取り組んでいます。
 「12須磨」・「38鈴虫」・「52蜻蛉」も担当者はすでに決まっています。
 
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 参考までに、上記「若紫」の引用例の箇所における、諸本17本の本文異同をあげます。
 これらかも明らかなように、本文は2種類にしか分かれず、橋本本は〈甲類〉([橋尾中陽穂高天])に、池田本や大島本は〈乙類〉([大麦阿池御国肖日保伏])に分別できます。

 まだ「変体仮名翻字版」のデータベースが緒に就いたばかりなので、ここには旧来の平仮名を一文字に限定した、明治33年以来の用字法で翻字した本文の校合を揚げています。また、諸本名や書写状態に関する付加情報($はミセケチ等)も煩雑になるので、ここでは省略しています。


御ともに[橋=大中麦阿陽池御国肖日保伏高天]・・・・050063
 御ともに/と〈改頁〉[尾]
 御共に[穂]
むつましき[橋=全]・・・・050064
人[橋=尾中陽穂高天]・・・・050065
 ナシ[大麦阿池御国肖日保伏]
四五人はかりしてまた[橋=全]・・・・050066
あかつきに[橋=尾麦池日保伏高]・・・・050068
 あか月に[大中御国肖穂天]
 暁に[阿]
 あか月に/月〈改頁〉[陽]
おはするに/るに$[橋]・・・・050069
 おはするに[尾高天]
 おほするに[陽]
 をはします[中]
 おはする[穂]
 おはす[大麦阿池国肖日保伏]
 をはす[御]
やゝ[橋=大尾中麦阿陽池御国肖日保伏高]・・・・050070
 やゝ/う&ゝ[天]
 ナシ[穂]
ふかく[橋=尾中陽高天]・・・・050071
 ふかう[大麦阿池国肖日穂保伏]
 ふかう/△&ふ[御]
いる[橋=大尾陽池御肖日穂保伏高天]・・・・050072
 入[中麦阿国]
ところなりけり[橋=尾中陽高]・・・・050073
 所なりけり[大麦阿池御国日穂保伏天]
 所也けり[肖]
三月[橋=穂]・・・・050074
 三月の[大麦阿池御国日伏]
 やよひの[尾中陽肖保高天]
つこもりなれは[橋=大尾麦阿陽池御国肖日穂保伏高天]・・・・050075
 つこもりなりけれは[中]
京の[橋=大中麦阿陽池国肖日穂保伏高天]・・・・050076
 京の/〈朱合点〉[尾]
 きやうの[御]
花[橋=大麦阿陽池御国肖保伏天]・・・・050077
 はな[尾日穂高]
 はなみな[中]
さかりは/は+みな[橋]・・・・050078
 さかりはみな[大麦阿池御国肖日穂保伏]
 さかりは[尾陽高天]
 ナシ[中]
すきかたになりにけるを/かたになりにけるを$にけり[橋]・・・・050079
 すきにけり[大麦池御国日伏]
 過てけり[阿]
 すきに/に+けりイ[肖]
 すきけり[穂]
 すきにたるを[尾陽高天]
 ちりたるを[中]
 すきて[保]

 
 
 

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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