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2016年10月 4日 (火)

京洛逍遥(376)京都府立盲学校で木刻文字の調査

 京都府立盲学校の入り口には、「日本最初盲唖院」と刻まれた石碑と古河先生の胸像が建っています。


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 学校の中にある資料室は、盲史研究の宝庫です。
 その貴重な品々の保存と管理、そして研究をなさっている岸博実先生の説明を伺いながら、楽しく有意義な調査をすることができました。

 岸先生とお話をしていると、次から次へと疑問が生まれます。その理由と解決策を考えている内に、自分の中に新たな課題がどんどんふくらむのです。整理しきなれない程の課題を抱えて、帰りの道々、先生のおっしゃったことを思い返します。すると、消えては生まれ、生まれた疑問が課題と結びついたり離れたりします。頭の中は大忙しです。

 今日も、そんな楽しい時間を、先生からいただきました。
 資料の整理でお忙しい中を、時間を割いていただきました。ありがたいことです。

 今回じっくりと見せていただいたのは、仮名文字を木片に刻んだもので学習するための、触読用の教材です。私は、盲教育史はわからないことだらけなので、岸先生に対して質問攻めの状態となるなど、中身の濃い時間を共有させていただきました。

 この日のテーマは、木刻凸字が作られた明治という時代と、その凸字の実態の解明です。それを、岸先生にストレートにぶつけることとなりました。
 いつも慎重にことばを選びながら、わかりやすく話してくださいます。わからないことは、そのままわからない、とおっしゃいます。それだけに、わかることとわからないことの間が見えてくると、その先が課題として投げかけられます。
 禅問答のようなやりとりもありました。それが、次のステップへのヒントとなります。

 以下、私が抱いた疑問と課題を整理しておきます。

 今回拝見した木刻凸字の平仮名群は、明治12年に京都盲唖院が発注したものでした。
 いろいろに分類されて、紙に包まれた状態で出てきました。この夏に整理されたものです。
 先生が探し出して見せてくださった明治12年の記録文書綴りの中に、「盲人教授用品」という項目があり、そこには「指頭触感木刻」という文字が記されていました。

 明治13年の『著書草稿 盲唖院』には、「盲生」という節に「捫字感覚」という項目があり、詳細な説明もありました。
 また別の綴りの「京都府盲唖院(学業)器械一覧表」の中に、「凸字木刻」と「七十二例法木刻」という文字が、「器械名」の段にありました。これらは、明治11年から14年までは所有され使用されていたことがわかります。

 さらに、「蝋盤」も文字を学ぶ時に使用されたことがわかります。これについては、機会をあらためて考えます。

 現在、『変体仮名触読字典』の編集を進めています。
 現在試作してもらっている最新版の版下を、木刻凸字の5cm タイプと比較してみしょう。


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 立体コピー版と較べてみても、文字の大きさも、浮き上がり具合も、明治12年の木製と遜色のないものになっていると思います。

 また、持参した立体文字も並べてみました。


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 下段の文字は、紙製で筆順がわかるようになっているものです。

 いろいろと試行錯誤をする中で、明治初期の平仮名に関する触読用の教材を実際に拝見し、また新たな閃きと課題解決のための手掛かりをいただきました。

 現代の視覚障害者が平仮名を触読によって自由に読み、そしてさらには書けるような学習システムを構築したいと考えています。

 前が見えない道を、手探り状態で進んでいるところです。
 さまざまな立場の方からの、この取り組みへのご教示をいただけると幸いです。

 明日から関西には、台風18号の影響が出るようです。
 交通網が混乱しない内にと、急いで新幹線で上京することにしました。
 自転車で京都府立盲学校へ行ったので、帰りには賀茂川を少しサイクリングしました。
 北大路橋の下で休む鴨や鷺は、いつものように少し暑い秋を楽しんでいます。


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 その4時間後。
 夜の東京は、京都よりも涼しい風を感じました。
 宿舎の前の清澄通りから月島方面のマンション群を望みました。


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 この左側の豊洲の市場一帯は、これからさらに揉め事が報じられることでしょう。
 東西の違いを、こうして肌身に感じる日々の中にいます。
 
 
 

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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