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2016年10月 3日 (月)

清張全集復読(4)「西郷札」「くるま宿」

■「西郷札」
 展覧会の準備中に西郷札とその覚書を入手した作者は、覚書を現代語にして広く公開することにしました。明治10年頃の宮崎県がその話の舞台です。
 作者は、この覚書をわかりやすく解き語りします。
 東京で車夫になった主人公の樋村雄吾は、ある日、義理の妹季乃に会います。偶然の出来事が波乱万丈の展開を見せるのです。
 原文の一部を引いて綴るこの物語は実に巧みで、読み耽ることになりました。
 物語の末尾に引かれる覚書では、最後の部分が破られていたとしています。そして、雄吾の決断を読者に考えさせます。なかなか憎い終わり方です。
 これは、松本清張が昭和26年に書いた処女作です。昭和25年の『週刊朝日』の「百万人小説コンクール」で三等に入選し、昭和26年の直木賞候補作ともなりました。【4】
 
初出誌:『週刊朝日 春季増刊号』(昭和26年3月)
 
 
■「くるま宿」
 明治9年の柳橋での話です。
 病気の娘を抱え、生きていくために吉兵衛は人力車夫になりました。
 寡黙で努力家の吉兵衛は43歳。酒も博打もしません。仲間も親方夫婦も、その姿を同情的に見ています。
 ある日、隣の料亭に強盗が入り、それを吉兵衛は見事に蹴散らすのでした。
 それを機に、転職の誘いがあっても断ります。ところが、ある出来事から吉兵衛が実は元直参大目付の山脇伯耆守だったとわかります。しかし、それは娘とともに立ち去った後でした。
 身を隠して市井に生きる男を、静かに見つめる作者の思いは、小倉にいる自分もいつかこのようなことが、との願望が形になったように思われます。依頼原稿の第一号です。【3】
 
初出誌︰『富士』昭和26年12月
 
 
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※この〔清張全集復読〕は、特に断わらない限りは『松本清張全集』(全66巻+別巻、1971年4月~2009年5月、文藝春秋)を読んでの、気ままにメモを記した読書雑記です。
 メモを公開するにあたり、『松本清張事典 決定版』(郷原宏、角川学芸出版、平成17年4月)を参考資料として見、登場人物名や年代などを正確にしました。
 
 
 

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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