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2016年11月16日 (水)

多言語翻訳について白熱した議論が展開した研究集会の2日目

 研究集会2日目の朝、宿舎の前に拡がるマーケットのATMには、こんな掲示がなされていました。


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 インドの高額紙幣はもとより、インドルピーという現金は、当分手に入りそうにありません。
 今日も、お金の心配をしながらの1日となりそうです。

 国際交流基金へ行くために宿にしているお寺の前に出たところ、右隣の銀行は長蛇の列でした。今日は、銀行が開いているようです。しかし、いつ順番が回ってくるのかわからない、気の遠くなるような行列となっているのです。


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 お寺の左側にも銀行があり、そこの様子はさらに大混乱です。しかし、不思議と暴動にはならず、みなさんルールを守って順番を待っておられます。理知的なインドの人々の姿を見た思いです。


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 さて、昨日の初日に続き、「第8回 インド国際日本文学研究集会」の2日目も大きな成果が得られました。

 昨日も記したように、今回の研究集会の内容は、来年2月に発行を予定している電子版『海外平安文学研究ジャーナル』の特集号として公開します。そのため、発表と討議された内容についての詳細は省略し、ここでは記録としての列記とメモに留めます。

 今日も、司会進行役は入口敦志先生です。
 昨日に続き、今日も写真撮影は高田智和先生です。


(1)挨拶 伊藤鉄也
(2)基調講演 伊藤鉄也
  「〈海外源氏情報〉を科研の成果から見る」
(3)講演 須藤圭(立命館大学)
  「『源氏物語』の英訳について」
 
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(4)問題提起
  リーマ・シン(Ph.D candidate, University of Delhi)
  「パンジャービー語訳の問題点」
  (インド・アーリア諸語の中央語群)

  タリク・シェーク(English and Foreign Languages University)
  「ベンガル語訳の問題点」
  (インド・アーリア諸語の東部語群)

  ナビン・パンダ(Delhi University)
  「オディア語訳の問題点」
  (インド・アーリア諸語の東部語群)

 昼食の後は、須藤圭先生の提案による楽しいイベントタイムとなりました。

■「青海波」の鑑賞■
 ・「青海波」の紹介(須藤先生の解説)
 ・『十帖源氏』の挿し絵を提示(入口先生が準備)
 ・雅楽「青海波」の映像
 ・源氏物語の映画に出てくる青海波を舞う場面

 インドのニューデリーに流れる楽の音は、なかなか優雅なものでした。

 以降、前日同様に、麻田先生が取りまとめと進行役で、各言語の問題点に関する発表へのコメントを踏まえて、全体でのディスカッションへと移りました。


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【シンポジウム】
テーマ:(2)
 『十帖源氏』を多言語翻訳するための方法と課題
   司会・進行 伊藤鉄也
   コメンテータ アニタ・カンナー
          麻田豊
 
 このシンポジウムは、白熱したこともあり3時間たっぷりと行なわれました。
 興味深い内容で、時を忘れて討議討論を交わすことができたので、みなさん充実感を持っての散会となりました。
 来秋には、ハイデラバードにある外国語大学で研究集会ができないかと、その実現に向けての検討に入りました。

 私がメモをしたことを二三拾い出しておきます。

・インドの各種言語をどう呼ぶかということについて、統一的な表記の方針が決まりました。
 「ウルドゥー語」「オディア語」「パンジャービー語」「ヒンディー語」「ベンガル語」「マラーティー語」「マラヤーラム語」

・インドのみなさまの氏名をどう表記するかということに関して、基本的には「名+姓」とする方針が決まりました。日本人は「姓+名」の順に表記します。

・1つの国の中で複数の言語に翻訳された『源氏物語』を見比べることの楽しさとおもしろさは、ネイティブスピーカーと一緒の話し合いの場ならではの臨場感と迫力がありました。とにかく、さまざまな意見がでるのです。自分の言語について語るのですから、熱を帯びるのは当然のことです。

・ベンガル語で『源氏物語』という書名は、「上半身に着る下着の物語」と訳すことになるそうです。これはみんなに笑われた、という話は示唆に富む逸話です。これは、『十帖源氏』をどう訳すか、ということに直結します。『源氏物語』にこだわらず、『紫の物語』『紫のゆかり』『紫文』も含めて、各言語で工夫することになりました。

・脚注をどうするかということが問題になり、私はこれはなくしたいとの思いを強く持ちました。

 これ以外にも、多くの刺激的な意見や、翻訳とは何かということを考える上での有意義な提案をいただきました。
 これらの質疑応答のすべては、来年2月の『海外平安文学研究ジャーナル』の特別号をお読みください、ということでまとめておきます。

 以下に、今回の研究集会で確認したことを整理した「須藤メモ」を転記します。
 今後の討議に向けての確認事項として、貴重な記録となっています。


(1)全体で情報を共有するため、翻訳担当者、関係者が参加するメーリングリストを作ることになりました。

(2)今回のインド国際集会の報告書には、報告原稿とは別に、取り扱う全ての言語の音声を収録することになりました。
 ・収録する音声データは、原則、「桐壺」巻の冒頭、現代語訳「いつの時代のことでしょうか、女御や更衣などといったお后が大勢いらした中に、特に高貴な身分ではなく、帝にとても愛されていらっしゃる女性がいました。」に該当する部分とする。
 ・ただし、その後の文章も一文にして訳している場合、区切りのよいところまで音声データにする。
 ・各言語の音声データは、発表担当者に依頼する。
 ・古文本文、現代日本語訳本文は、須藤が担当する。

(3)今後のインド国際集会では、以下の約束事を設けることになりました。
 ・発表や報告書の原稿でインドの言語を引用する際は、どの言語であっても、必ずローマ字表記を併記する。

(4)翻訳データに関して、ウルドゥー語に限り、(1)ウルドゥー語表記版、(2)ヒンディー語表記版の、2つのバージョンを準備してもらうことになりました。
 これに伴って、翻訳データの多言語比較資料も、この2つのバージョンをともに公開することになりました。
 なお、報告書の原稿には、2つのバージョンを併記してもよいし、しなくてもよいことになりました。

(5)インド6言語の翻訳データについて、以下の点を確認、依頼することになりました。
 ・期日は厳守。
 ・セクション(小見出し)ごとに分割した現代語訳に従って、翻訳したものを区切ってもらう。
 ・和歌の翻訳は可能な限り行なってもらう。ただし、期日に間に合わなくなる場合は、行わなくてもよい。

(6)今回の発表原稿を整理したものと、担当言語の翻訳原稿は、今月11月末までに提出することになりました。それを元にして作成した版下を、12月中旬から本格的な編集に入り、年末年始に校正を回します。

(7)インド関係者が日本以外で公開した日本文学に関する研究論文のリストを、今回あらためて作成することになりました。これは、すでに伊藤が100件弱の情報を整理したものがあり、それを増補することで実現するものです。これまでに整理したものは、国文学研究資料館が公開しているデータベースの中で、「日本文学国際共同研究データアーカイブ」の中のリスト最下段にある、「日本学研究DB〔インド〕Bibliography India-Japan Literature」の項目からリストデータが入手できます。
 今後は、国際交流基金の主導の元、インドの日本文学研究者の協力を得ながら展開させる予定です。


 
 
 

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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