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2016年11月20日 (日)

単行本の書名だけを変えた文庫本のこと

 最近は、単行本で出版するのではなくて、最初から文庫本で「書き下ろし」として刊行される本があります。高田郁の作品などです。これを、「いきなり文庫」と言うのだそうです。

 藤田宜永の『悪徒』(2016年10月、角川書店)という書名の文庫本を、新聞の新刊広告で見かけました。藤田宜永の作品はほとんど読んでいるのに、知らない書名です。最新作を文庫で刊行したのかな、と思い、近くの書店に行きました。


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 品揃えのいい書店なのに、売れたばかりのようで、今は店にはないとのことです。
 「取り寄せますか?」と聞かれました。しかし、本は自分の目と手で探し、見つけた本を手にとってレジに持って行く、あの感触が好きなので、別の書店で探すことにしました。

 仕事帰りに、大きな書店で『悪徒』見つけました。本を持ってレジに並びながら、巻末の書誌情報をたまたま確認して失望しました。この本は、『ライフ・アンド・デス』という単行本を改題して、文庫化したものだったのです。

 元の『ライフ・アンド・デス』という本のことは、本ブログ「藤田宜永通読(18)『ライフ・アンド・デス』」(2014年02月06日)で取り上げました。まったく同じ内容の本を買うところだったのです。

 前掲の新聞の新刊案内に、旧題はどこにも書いてありません。
 角川書店のウエブ情報にも、3種類のサイト共に旧題は書かれていません。もちろん、アマゾンにも改題による作品であることは明記されていません(Kindle版にはありました)。

 この改題本において旧題を隠すことは、出版業界では一般的なことなのでしょうか。私は、出版社が意図的に隠しているのではないか、と思うようになりました。

 もしそうであるならば、読者に対する背信行為です。文庫本を買う時に、疑心暗鬼になり、警戒する人が増えることでしょう。特にネットで本を買う時には、こうした書誌情報はいいかげんなので、改題本であるかどうかの確認がほとんどできません。

 もっとも、文庫化されていい点もあります。巻末に解説文が付くことでしょうか。
 電車の中で読むのに重宝します。

 以前、藤田宜永の作品で、改題された文庫を買ったことがあります。こうした、同じ内容の本を書名を変えて売る際には、元の本の題名などの書誌情報を、巻頭や巻末だけでなく、表紙や背文字あるいは裏表紙などの見やすい所にも、その旨を明記してほしいものです。たまに見かけます。しかし、今回はありませんでした。

 単行本を、改題して中身は同じ、という傾向のある作家には気をつけなければいけません。
 藤田宜永の本で、改題して再度文庫として刊行されたものを、「ウィキペディア」で調べてみたところ、以下のとおりいくつもありました。
 書店で見かけ、何度も旧題を確認して、買うのをやめたことを思い出します。
 こうした紛らわしい行為はやめてほしいと思います。
 作家に対する印象も悪くなります。
 


■モダン東京物語(1988年1月 集英社文庫 / 1996年8月 朝日新聞社)
 【改題】美しき屍(2001年12月 小学館文庫)

■モダン東京小夜曲(1988年6月 集英社文庫 / 1996年9月 朝日新聞社)
 【改題】哀しき偶然(2002年1月 小学館文庫)

■探偵・竹花とボディ・ピアスの少女(1992年12月 双葉社)
 【改題】探偵・竹花 ボディ・ピアスの少女(1996年4月 光文社文庫)
 【新装版】探偵・竹花 ボディ・ピアスの少女(2016年4月 光文社文庫)

■怨霊症候群(1988年9月 C★NOVELS)
 【改題】呪いの鈴殺人事件(2001年8月 光文社文庫)

■明日なんて知らない ノーノーボーイ'69(1991年10月 双葉社)
 【改題】遠い殺人者(1996年11月 光文社文庫)

■キッドナップ(2003年8月 講談社)
 【改題】子宮の記憶 ここにあなたがいる(2006年12月 講談社文庫)

■探偵は黒服(2005年10月 角川書店
 【改題】さかしま(2008年10月 角川文庫)

■幸福を売る男(2005年4月 角川書店)
 【改題】セカンドライフ(2008年3月 角川文庫)

■還暦探偵(2010年10月 講談社)
 【改題】通夜の情事(2013年11月 新潮文庫)

■最新「珠玉推理(ベスト・オブ・ベスト)」大全〈上〉(1998年8月 光文社カッパ・ノベルス)「一億円の幸福」
 【改題】幻惑のラビリンス(2001年5月 光文社文庫)
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《参考》恋しい女(2004年8月 新潮社 / 2007年5月 新潮文庫 上下巻、『週刊新潮』連載の「セカンド ヴァージン」を改題)


 
 
 


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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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