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2017年1月20日 (金)

清張全集復読(9)「湖畔の人」「転変」

■「湖畔の人」
 人から愛されないと自認する矢上は、転任先の諏訪で徳川家康の六男松平忠輝の生涯に理解を示します。流れ流れて不遇のままに生きる姿に、作者が寄せる心情が伝わってきました。この背後には、清張自身があるのでしょう。
 人生を斜に見た男の存在や、新聞社、諏訪湖、徳川家、海辺の情景などなど、井上靖の作品の雰囲気を漂わせていることに気づきました。これはいったい何なのでしょうか。『球形の荒野』のときに似た読後の印象です。
 諏訪湖畔に生きる、穏やかな人々が描かれています。筆致は清張らしくなく、控えめな表現でまとまっています。【2】
 
 
初出誌:『別冊 文藝春秋』(昭和29年2月)
 
 
■「転変」
 慶長四年の関ヶ原の戦い後、家康と福島正則の駆け引きから始まります。
 正則は、家康に感謝されて上機嫌です。しかしその後すぐに、正則は窮地に立ちます。そして、家康の巧みな計らいに、正則はまんまと嵌まることになるのです。
 正則は、秀頼と家康の間で、苦境に追い込まれます。正直なだけでは、家康のようにしたたかな者には子供のように捻られます。
 家康の知略に長けた非情さを通して、人間の生き様を問いかけています。【4】
 
 
初出誌:『小説公園』(昭和29年5月)
 
 
参考資料:『松本清張事典 決定版』(郷原宏、角川学芸出版、平成17年4月)
 
 
 

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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