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2017年1月 7日 (土)

久しぶりの大阪駅で『源氏物語』の翻字の打ち合わせ

 大阪駅に行ったのは、本当に久しぶりです。
 駅ナカのホテルのラウンジで、『源氏物語』の古写本を翻字してくださる方とお話をしてきました。

 かつて私と同僚だった方の今の同僚で、翻字に興味を持ってくださった方がいらっしゃるとのことで、直接お目にかかって説明をしました。顔を合わせてお話をする、ということを大事にしているからです。
 尾州家河内本『源氏物語』をお願いしようと思います。

 明治33年に策定された、現行のひらがな約50種で作成した翻字データは、すでに私の手元に相当数あります。約30万レコードのデータベースとなっています。それを、書写された文字の字母に忠実な、「変体仮名翻字版」と言っている正確な翻字をお願いし続けているのです。

 「安」も「阿」も、これまでは「あ」という一文字のひらがなで翻字をしてきました。しかし、それは不正確であり、写本に書かれている文字の姿から翻字に戻れないものです。次の世代に嘘の翻字データを引き渡すわけにはいかないので、「安」は「あ」に、「阿」は「阿」で翻字をしていただくのです。今からちょうど2年前に決断した、新しい方針です。

 国文研蔵橋本本「若紫」の冒頭部分の例をあげます。


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 これを翻字する場合、これまでは次の写真の左側列のように、「わらはやみに」としていました。明治33年に一文字に限定されたひらがなで済ませていたのです。しかし、これを「変体仮名翻字版」で翻字をすると、右側列のようになります。


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 「変体仮名翻字版」の列にある、「八」「三」「尓」が、字母を混在させた、写本に戻れる翻字です。左右の列の文字の違いを見ると、今までの左側の翻字の不正確さが明らかでしょう。

 「変体仮名翻字版」であれば、写本に書かれている文字がほぼ正確にデータ化できます。もちろん、崩し字は一様ではないので、字母である漢字に近い形であったり、明治33年に国策として一字体に決められた現行のひらがなの字体であったりと、その間でさまざまな変化があり、揺れがあります。そこまで厳密な違いを文字データベースで再現することは困難なので、写真に依ることにしています。今はひとまず、嘘のひらがなによる翻字ではなくて、字母レベルに一元化しての翻字に移行しているところです。
 これで、これまでよりも少しでもましな「変体仮名翻字版」によるデータが出来上がります。

 翻字をお願いする、と言うと、何やら難しい特殊な能力を求められるかのように思っておられる方が大半です。しかし、私がお願いするのは、写本の影印資料と、すでに完成している現行ひらがなによるテキストデータを渡し、データをパソコンで「変体仮名翻字版」にしてもらうのです。つまり、写本はすでに正確に読まれており、そこに用いられた平仮名を変体仮名に置き換えてもらう作業になるのです。ややこしいいことと言えば、データベース化にともなう、写本が書かれている現状を記述した付加情報でしょうか。しかし、これは2人目の別の方が確認するので、特に神経質になっていただく必要はありません。
 とにかく、後ろを振り向かず、ひたすら前を見て進んでください、と言ってお願いしています。

 私は特に翻字の進捗具合を催促はしないようにしているので、気長に続けていただければ、と願っています。
 『源氏物語』の写本の分量は膨大なので、90年を一応のメドとして取り組んでいます。私一代ではできないプロジェクトなので、特定非営利活動法人〈源氏物語電子資料館〉を設立して取り組んでいるところです。
 NPO活動の一環なので、ほんの少しですが謝金をお渡ししています。翻字作業をお願いする方には、NPO組織の支援会員になってもらうことを原則としています。しかし、その会費は謝金ですぐに相殺されるように配慮がなされています。

 今日も、こうした取り組みに興味を持っていただけたことは、ありがたいことでした。
 東京では、日比谷図書文化館での講座を通して、少しずつ翻字を手伝ってくださる方が増えています。今後は、関西での支援者が一人でも増えるように、意識していろいろな方に語りかけ、呼びかけて行きたいと思っています。

 帰りに、JRで京都方面行きのホームにあがったところ、事故か何かで電車が遅れていました。
 なかなか来そうにないので、いったん改札の外に出て、阪急で帰ることにしました。

 久しぶりに訪れた大阪駅の北側の外観は開放的でした。


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 北向きに見下ろすと、スケートリンクが出来ていました。
 みなさん楽しそうに滑っておられます。


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 この大阪駅の北側地域は、今後はさらに開発が進みそうです。
 新しい大阪駅が、ますます楽しみになりました。
 
 
 

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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