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2017年2月22日 (水)

段ボールに詰めた本と永の別れになった本のこと

 今回の引っ越しで最初に段ボール箱に詰めたのは、『広文庫』(全20巻)と『群書索引』(全3巻)のセットです。『広文庫』(復刻版、名著普及会、昭和51年)は、結婚をしてすぐに買った本でした。買った、というのは不正確で、買ってもらったと言うべきでしょう。

 私は学生結婚でした。大学を卒業してすぐに大学院に進学したため、妻に養ってもらう生活でした。そんな中で『広文庫』の復刻版が刊行されたので、妻の許可を得て予約をしました。刊行されるたびに、新婚生活をしていた浦和にあった書店に、代金を持って受け取りに行きました。

 知の宝庫である『広文庫』は、夢のような叢書です。研究を志したばかりのひよっ子の私にとって、ただただ憧れの百科全書でした。それを妻が、こつこつと積み立てていた結婚資金で、購入してくれたのです。以来、勉強机のそばにあるだけで、いっぱしの研究者になったような気にさせてもらえました。後日刊行された別巻に購入者の名前がずらりと掲載されていたので、いやましに充足感を持つこととなりました。

 そんな『広文庫』の次に箱詰めしたのは、陽明叢書の『源氏物語』(全16巻)。そして大島本(全11巻)、新旧尾州家河内本(全20巻)、『源氏物語別本集成 正続』(全22巻)と、快調に進みます。『源氏物語大成』(普及版、全14巻)は、京都と立川にも持っていたので、立川とこの官舎にあるセットは廃棄です。

 研究資料の次は、『井上靖全集』(全29巻)、『谷崎潤一郎全集』(新書版、全30巻)、『源氏物語』の注釈書群です。それぞれ立派な箱入りで、紙質もいい重厚な本なので、どっしりとした重みを感じます。箱にきれいに収まることはまれなので、隙間には雑多な文庫本を埋めました。

 こうした本たちは、とにかく京都という行き場があります。幸せな本たちです。そうではなくて、この東京で行き場をなくす多くの本たちは、ここでお別れです。
 いろいろな経緯で私の手元に集まった本です。人と同じように、本とも別れの時があります。これまで私を支えてくれたことに感謝しながら、段ボール箱ではなくて、部屋の片隅にうずたかく積み上げることになります。

 引っ越しをするたびに、本との別れがあります。今回運ぶのは、これまで以上に古い築80年以上の建物です。本に重さがあることが一番の問題です。そして、空間を占有することも問題です。
 そうしたことを見越して、「京都府立京都学・歴彩館」の近くに住むことにしたのです。
 ほとんどの本がこの歴彩館にあるので、そうした本は廃棄となります。

 本を仕分けることは、なかなか神経を病む選別作業です。引っ越しで一番疲れることです。それを、とにかくやり遂げました。横に妻がいてくれたからこそ、膨大な量の本を整理できました。一人だと、一冊一冊に感情が混じってしまい、とても数週間では片付きません。何でも取っておく私と、何でもドンドン処分する妻とで、喧嘩をしつつも連携プレーが実りました。感謝感謝。

 睡眠不足や筋肉痛と闘いながら、どうにか倒れることもなく、今は、引っ越し疲れの中で、心身共にぼーっとしています。
 
 
 

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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